［某海水浴場］


「わぁ・・・海だよ、あーちゃん」
「・・・綺麗だね」


海水浴場へ向かうバスの中、窓から見えた青い海を見て、真闇と天河が喜んでいた。

「やっと着くのか・・・長かったぜ・・・」

貞春は、真闇と天河の後ろの座席にいて、なぜか目に見えてイライラしていた。

「ただでさえ、お前はタダのりなんだぞ、ワガママを言うな」

その横には、貞春の兄、斗真が座っていた。しかし貞春は斗真を睨み、怒りをぶつけるように言った。

「タダのりでもなぁ・・・こんな幼稚園児バスみてぇに狭くてうっせぇところに長時間座らされたらイライラすんだよッ！！！」


『わいわいがやがや！』
『きゃっきゃっ！あははは！』


バスの中は、主に魔女、ときどき他のロリぃ魔物が占拠していた。彼女らの大騒ぎっぷりといったら、怒りで大きくなった貞春の声さえかき消し、何事もないように騒いでいるのだ。彼女たちの彼氏や、真闇と天河は、とても静かに、いい子にしているのだが。

「うおーっ！キレーッ！甲くん！海、海！」
「あ、茜さん・・・もうちょっと静かに・・・ね？」

中には魔女たちに混ざって大声で騒ぐ茜と、なんとか落ち着けようとする甲もいた。

実はこのバス、『サバト日本支部専用団体移動用魔法駆動式大型バス』なのである。ちなみに運転手は・・・


「ねーねー、お兄さん。まだ着かないのー？」
「兄貴、ハラ減ったー！」
「・・・にー、おちっこ・・・」

「もうしばらくしたら着くから。きっと浜辺に海の家あるから・・・え、おしっこ！？もうちょい我慢しなさい！すぐ着くから！！」


バイトのために第二種運転免許を持っていた成竜が任されていた。運転前に『見知らぬ娘とイチャついたら・・オシオキダヨ？』と天河に言われていたが、果たしてどうなるのだろうか？


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事情を説明するには、三日前まで遡る。


『貞春。お前、バス運転できるか？』


「・・・は？」

クーラーをきかせて真闇とのんびりしていた貞春の元に、斗真からの電話がかかった。

「意味わかんねぇし。順を追って話せよ」

『実はな、ギーヤ、覚えてるか？俺の嫁のバフォメット。彼女のサバトの社員旅行にサバト所有のバスを使うんだが、運転手が入院しちゃってな。代わりが見つからんのだ』

「運転代行頼めよ」

『なんかよくわからんが、あまり頼みたくないらしい。今、運転できるやつを探してるんだ』

「んなこと言ったって俺、運転免許持ってな・・・」

その時、貞春が言葉を止め、しばらく考えたあと、ニヤリと笑った。

「・・・兄貴、社員旅行いつだよ？」

『今度の土日だ』

「兄貴、ひとり心当たりがあるぜ」

『・・・なぁんか嫌な予感するのは、俺だけか？』

「おそらくご名答。成竜連れてくっから、俺らも連れてってくれよ」

『・・・はぁ。全く・・・成竜くん、運転できるのか？』

「あいつ、確かバイトのために第二種運転免許とったはずだぜ。１年未満だが、あいつビビリだから、すげぇ安全運転だ」

『・・・ギーヤに相談してみる。お前、真闇ちゃん、成竜くんに天河ちゃん、４人だな？』

「サンキュー、兄貴♪」

『今日の夜には連絡する。成竜くんに話はつけといてくれ』

「あいよっ」

そう言って貞春が電話を置くと、黒いネグリジェを着た真闇が貞春の足元に駆け寄って来た。

「どうしたの？誰？」

「兄貴だ。喜べ真闇・・・今週末、旅行に行けるぞ」

「え？どうして？」

「あとで詳しく話してやる。とりあえず、成竜に電話だ」

小首を傾げる真闇を横に、貞春は成竜の携帯の電話番号をプッシュした。少ししたあと、女の子の声が聞こえた。

『・・・ほい。茜です』

「・・・あ？電番間違えたか？」

何故か出たのは、茜だった。

『ん？あ、いや、成竜のヤロー待ちだろ？今トイレ行ってるぜ』

「・・・なんでお前、成竜んちにいるんだよ？」

『・・・真闇に黙っててくれ。もう真闇に勉強教わりたくない・・・』

「・・・あぁ、なる・・・」

『あ、帰ってきた。ちょっとかわるわ』

おーい、電話！だの、勝手にとるんじゃねぇよ！とか聞こえたあと、成竜が出た。

『・・・はい、成竜です』

「おぅ、成竜。俺だ」

『・・・切っときゃよかったかな』

「なんだと？」

『お前が電話してくるなんて、なんかしらのめんどくさい頼みなんだろ！』

「まぁ待て。今回はお前にも大きなリターンがある」

『・・・なんだよ？』

「実はな・・・」

貞春が説明すると、成竜は心配そうな声をあげた。

『え〜・・・？俺でいいのか？』

「知らね」

『知らねってお前・・・』

「とりあえず用意しといてくれよ。頼んだぜ」

『ちょ、おま！』

やはり一方的な終わり方で、貞春は電話を切った。

「貞春、旅行って？」

「ん？今話してやるよ」

貞春はちゃぶ台に座り、真闇に事情を説明した。

「だ、大丈夫なの？」

「わからねぇ。兄貴とギーヤ姉次第じゃね？」

「う〜ん・・・迷惑じゃないかなぁ？」

「兄貴から言い出したんだぜ？これぐらいワガママ言わせてもらおうぜ」

その時、部屋の電話が急に鳴った。斗真が早めに連絡して来たのだと思った貞春は、ニヤニヤしながら電話を取った。

「おぅ、兄貴。どうだった？」

『だぁれが兄貴だよ。私だよ、茜だよ』

ところが、また茜であった。一瞬で不機嫌になった貞春が、声色をコロっと変えて続けた。

「なんだよ？」

『お前さぁ・・・なんか楽しそうなことしようとしてんじゃないか』

「・・・あ？」

そこまで聞いて貞春は、成竜が口を滑らし、茜にぶちまけたのだと理解した。

『アタシと甲くんも連れてけ。さもねぇと成竜の腕折るぞ』

「やめろバカ。チッ、めんどくせぇな・・・聞いてみるよ」

『サンキュー、貞春♪』

先ほど、自分が斗真に言った時も、こんなムカつくテンションだったのだろうかと思いながら、貞春は電話を切った。


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結局、斗真は貞春に成竜の運転代行を依頼。それの折り返しに、貞春が茜たちの追加を依頼すると、ギーヤ曰く、『ロリなら許す！』ということで、結局、貞春たちに加え、茜たちも社員旅行に同行することになったのだ。

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そして今、『サバト所有、露理海水浴場』という看板がある海水浴場にたどり着き、貞春たちはサバトの魔女たちと整列していた。

「皆のもの、我々サバトの徒である我々はサバトを繁栄させるために布教・勧誘をし、黒ミサを重ねて、毎日毎日汗水垂らして働いている。その苦労は今のサバトを・・・」

整列した魔女やロリ魔物たちと彼氏たちに、プラス貞春たち。その前で、ギーヤが演説をしていた。貞春は小さい声で、隣に立つ斗真に聞いた。

（兄貴、ギーヤ姉って、こんなカリスマあったのか）
（知らなかったのか。ギーヤは素晴らしい有力者なんだぞ）
（へ〜・・・）

「・・・が、今日は日々の疲労を癒し、また日々を頑張るために。サバトをさらに発展させるために。皆のもの、本日と明日は無礼講じゃ！しっかり羽を伸ばすが良い！」

『サバト万歳！やたーーーっ！』

ギーヤの演説が終わった瞬間、ロリ魔物たちは喜び勇んでカバンを持って更衣室へ走ったり、彼氏に飛びついて甘えたり、服も着替えてないのに海へ走って行ったりしていた。

「貞春、私も着替えてくる」

「おう、出入り口で集合な」

真闇は、他の魔物たちと一緒に更衣室へ駆けていった。貞春も、他の彼氏たちと共に更衣室へ入っていった。

「ダーリン、早く♪早く♪」

「待って、待ってあーたん。上着くらい脱がせ・・・あぁ、まぁいいや」

天河は鱗を海水仕様に変換（スク水が白スクへ）し、成竜の手を引いてさっそく海へ歩いていった。

「茜さん、水着・・・あ、着て来たの？」

「おぅ！どう？可愛い？」

「ピンクのビキニ・・・うん。可愛いよ」
（・・・下着忘れたりしてないよね？）

茜は服の下に着ていた水着を甲に見せてクネクネしていた。（おそらく誘惑中）
ちなみに茜の水着はピンクのAAカップビキニ。過激な水着を着てくるかと思いきや、他人が多いことを見越してかマトモだった。

「・・・兄者・・・」

「ん？どうした？」

「・・・水着忘れた」

「バカかお前は」

ギーヤは見事にヘマをしており、斗真は怒りながらも、ギーヤの頭を撫でて慰めていた。

で、結局、はしゃいで先に行った天河と成竜を除き、貞春、斗真、茜と甲は真闇とギーヤ（水着を借り水着屋で借りた）の着替え終わりを待っていた。


「貞春・・・どう？」


更衣室から出てきた真闇はモジモジしながら水着をお披露目した。
前にお披露目した水着は、黒のフリフリワンピースの水着だったのだが、今回は違う。

色は黒。これは変わらないが、大きな違いはワンピース型ではなく、ビキニ型であることだ。
黒のビキニでその小さい胸が隠され、腰部分は腰巻状の布が巻かれていた。
ワンピース型とは違い、今回はお腹が露出し、ツルツルの肌、可愛いおへそが見えていた。
さて、貞春の反応は・・・

「・・・最ッ、高！！！」

見事、撃沈。
鼻血をボッタボタ垂らしながら、右手の親指を立てていた。

「あ、あーたんに勧められたんだけど・・・は、恥ずかしい・・・////」

「俺はここにカメラがないことを惜しむぞ」

「貞春っ！？////」

「いや、普通に似合ってますよ？」

「真闇ちゃんは元がいいからな」

貞春に続き、甲も斗真も褒めるものだから、真闇は顔を真っ赤にして俯き、指をもじもじさせた。


「兄者ーっ！お待たせなのじゃ！」


そして、元気いっぱいに更衣室から飛び出したギーヤを見て、全員がギョッとした。

「ぎ、ギーヤ・・・それが、借りた水着か？」

「そうじゃが？」

ギーヤが着ていたのは際どすぎるヒモビキニだった。乳首がギリギリ隠せるか否かという細い生地に、アソコの端が見えてしまうような股布。元気に蹄を鳴らして走って来たギーヤのあんなとこやこんなとこがチラチラ見えてしまいそうだった。

「ワシはスク水を頼んだのじゃが、何故かないらしくての・・・なにか、おかしいかの？」

「いや、うん。なんだ、その・・・まぁ、いいや」

「？？？」

ギーヤが小首を傾げたが、他のメンバーはたじたじだった。

（はわわわわ・・・だ、大胆・・・////）
（まるで痴女じゃねぇか・・・）
（ぬぎぎぎ・・・負けた・・・）
（茜さん！？張り合っちゃダメだよ！？）


こうして、一泊二日、サバト旅行が始まった。







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さて、先に海へ行ってしまった天河たちはどうしているのかと言うと。

「・・・あの、あーたん。なぜ俺はこんな人気のない岩場に連れてこられた上、両腕を岩に拘束されているのでしょうか？さっきまでご機嫌だったのに・・・」

「・・・ダーリン？運転は楽しかった？」

「・・・ハッ！？いや、違う！確かに色んなロリと話してたけど、そんな楽しんでなんて・・・」

「うふ、うふふ・・・」

「いやちょっと待ってあーたん流石にこれは横暴ってちょっとズボン下ろさないでこんなとこでお仕置きフェラはやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇっ！！」


いつもの、平和なオチだった。

■作者メッセージ
夏ですね。海開きがありましたね。
ま、私は部活で馬と汗水垂らすことになりますが。（馬術部なもんで）
女の子とプール？ははっ。なにそれウケる。

おそらく前・中・後編となります。
また、再度pi-sannから茜様と甲くんをお借りしました。借りたからには色々やらせるぜ！ひゃっはー！(バキィッ！