連載小説
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遊園地だよ!ドッペルたん!

<貞春 視点>

[大学キャンパス内]


「・・・なんかすっげぇ久しぶりな気がする」


貞春が大学内の喫煙ルームにて、タバコを咥えて呟いた。

「あん?なにが?」

「いや、別に・・・てか、なんか違和感もするな・・・こう、話し方的な・・・」

「どゆこと?」

「・・・わかんね」

「???」

貞春と、喫煙ルームの外にいる成竜(成竜は吸ってない)がルームの壁を介して駄弁っていると、ルームに成竜の友人が来た。

「いよっ、成竜。いいもん持って来てやったぜ」

「ん・・・なんだ?」

「へっへー・・・じゃんっ!『遊園地ペア無料チケット』!しかも2枚っ!」


『ぴくっ!』


成竜も反応したが、より露骨に反応したのが貞春だった。

「へ、へぇー・・・そ、それで?」

貞春が反応したことに口元をひくつかせた成竜が尋ねた。内心で、こう思いながら。

(頼む、格安で譲るとか言うなよ・・・あと、自慢するもタブーだかんな!)

しかし、彼の希望は、友人の言葉に両断された。

「おいおい、お前にしちゃあ鈍いなぁ・・・余ってるから格安で譲ってやるって言っ」


『ガラガラガラッ』


スライド式の扉が開いたかと思うと、ニッタリと笑った貞春が立っていた。


「・・・いくらで譲ってくれんだ?ん?」


成竜の友人は凍りつき、成竜はやれやれと頭を振った。

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[遊園地『テンプテーション』]


最近できた、魔物娘メインのこの遊園地直通バスから、ふた組の親k…(げふんっ!)ふた組のカップルが出てきた。

「わぁ♪ここ、最近出来たとこだよね!」

「・・・楽しみ♪」

きゃっきゃっと喜ぶ真闇に、少しだけ口元をゆるめて笑う天河のあとを、貞春と成竜がついてきた。

「いやぁ、あの男、親切だなぁ。まさかタダでくれるなんてよ!」

「お前が気に入らねぇ値段言われた途端、学校の壁にヒビ入れられたらそらビビってタダにするわ・・・」

「・・・真闇にバラしたら、バラすぞ」

「意味がわかりまっしぇん」

すんごい形相で睨む貞春と、わざとらしく肩を竦めた成竜。

『ぎゅっ、ぎゅっ!』

そんな二人に、前から誰かしがみついた。無論、彼女らである。

「ぶぅ・・・貞春、早く行こ!」

「…ダーリン、早く…」

自分らに構わず、ふたりで喋っていたことに不満を覚え、しがみついてきたその様子に、男どもは鼻の下を伸ばした。

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[エントランス・エリア]


入ってすぐ、真闇たちを歓迎したのは、サキュバスやエルフなど、人型、主にサキュバス属の魔物たちだった。

「こんにちわ〜♥一人寂しい童貞男子から、奥さんと疎遠になったお爺様まで、カップルも含めて歓迎!遊園地『テンプテーション』へようこそっ!」

「男一人の方が歓迎されんのかよ」

「貴方たちは・・・カップルのようですね!」(リア充爆発しろks)

「なんか小声ですごいこと言わなかった?」

「そうですか?さて、ここはインフォメーション、及び、お土産エリアです♪主に人型の魔物たちがいるので、お気に入りの魔物をナンパしてもいいですよ♪」


「俺、真闇一択なんで」(キリッ
「あーちゃん以外認めない」(キリッ



貞春は真闇を、成竜は天河を抱き寄せながら言った。

「貞春・・・////」

「…ダーリン♥」

「そうですか?では、遊園地を楽しんでってくださいね♥」
(う、羨ましい・・・ギリギリギリギリ・・・)

周りにいた魔物たちが小さく舌打ちしていたのに、誰も気づかなかった。

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[シャウト・エリア]


「ここは・・・絶叫系が多いな」


シャウト・エリアにはジェットコースターやフリーフォールやバイキングなど、空中に浮いたり水に突撃したりするものがたくさんあった。

「あーちゃん、どれ乗りたい?」

「…ダーリンに合わせる」

「え?うーん・・・」

成竜と天河が悩んでいる横では。

「乗るの?ねぇ、ホントに乗るの?」

「あったり前だろ?タダ券なんてめったにねぇんだから。おもっくそ遊ぼうぜ」

「はぁうぅぅ・・・( ;ω;)」

すでに怖くて泣きそうな真闇を貞春が説得?していた。

「よし!あの『ピラミッドの魔宮』っての乗ろうぜ!」

成竜が指定したアトラクションは、室内型ジェットコースターで、お化け屋敷の要素も含まれているようだ。入り口周りの装飾はマミーやゴーストなどのモデルが飾られていた。
ちょうど列が掃け始めたようで、すぐ入口まで行けた。入る前に、従業員のスフィンクスがにこにこしながら近寄ってきた。

「こんにちわにゃ〜。お客さん、可愛い彼女さんお連れだにゃ?」

「ほう・・・テメェ、見る目あるじゃねぇか」

「従業員さんに向かって『テメェ』はやめろよ・・・」

「うーん、可愛いのはいいんだけどもにゃ。ちょこーっと身長が足らんかもにゃ」

「・・・なに?」
「げ!?」

「ちょっとこちらの身長計で身長測ってほしいにゃ」

スフィンクスが指差した身長計は時々遊園地にある板ボードで、バフォメットが「ワシより高ければ乗れるぞ!」と吹き出しが出ていた。

「じゃ、まずはそっちのサハギンちゃんからにゃ」

「…わかった」

天河がボードの前に立つ。

一瞬、天河の身長がにゅんと高くなった。

「・・・サハギンちゃん、尻尾で身体支えて身長ごまかしちゃダメにゃ」

「………チッ」

「舌打ちしちゃダメにゃ。可愛さ台無しにゃ」

(・・・あの尻尾、結構力あんだな)

(あれでひっぱたかれるとミミズ腫れできるんだぜ・・・)

「はーい、それじゃ次はそっちのドッペルゲンガちゃんだにゃ」

「・・・」

真闇はすたすたと歩いてボードの前に立つと。

「・・・届いてませんよね?」

「にゃ?」

「私、高さ、足りませんよね?」

「えーとにゃ・・・」

「貞春ー!届いてないって!私、乗れないって!」

あっという間に貞春にしがみつき、真闇は慌てて、どこか嬉しそうに言った。

「乗れないんじゃしょうがないよね!他のアトラクション行こう!ね!ね!!」

「・・・あのー、お嬢ちゃん?」

その後ろから聞こえた声に、真闇はピタリと止まった。



「・・・ばっちり届いてるにゃ。ドッペルゲンガちゃんだけ」



「・・・ぇ・・・」

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ー数分後ー


「えぐっ、ひっぐ、ぐしゅ・・・」

「はいはい怖かったなー。よーしよし・・・」

『ピラミッドの魔宮』から、ジェットコースターの『恐い』とお化け屋敷の『怖い』により、腰が抜けてべそかいた真闇をお姫様抱っこした貞春が出てきた。

「おかえりー・・・やっぱ真闇ちゃん、腰抜けたか」

「ん?やっぱり?」

「いや、お前らが入って行ったあとに、あーたんとパンフレット見たら『全アトラクション中、最高の恐怖!!』って紹介文があったから・・・」

「ごわがっだよぉぉぉ・・・」

「…よしよし。まーやん、怖かったね」

入れなかった天河と、成竜が出口で迎えたが、天河はさっそく真闇をあやすことを始めた。

「てか、なんで入ったんだよ。俺とあーたんが入れなかったのに」

「いやぁ・・・こんなときでねぇと、真闇が恥ずかしがってお姫様抱っこやらせてくんねぇから」

「・・・普通、それ、女子からお願いするもんじゃねぇのか?」


「びぇぇぇ・・・」

「…よしよし、よしよし」(ハァハァ)

「・・・なんであーたん、息荒いの?」


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[スマイル・エリア]

やっとこさ泣き止んだ真闇を引き連れ、全員は次にメルヘン・エリアへ向かった。スマイル・エリアでは、いわゆる小さい子が遊ぶようなほんわかした雰囲気のアトラクションが多かった。

「・・・き、キツいぜ、この雰囲気・・・」

「メリーゴーランドにコーヒーカップにミニ機関車にエトセトラ・・・小さい子供ばっかのそこにひとりの不良顔・・・シュールだな、オイ」

どうやら貞春はこの子供ワイワイな雰囲気が苦手なようで若干ぐったりしている。

「成竜、テメェ平気なのかよ・・・」

「実は親戚の子守をよくやってて、こーゆう雰囲気慣れてる」

「・・・真闇がなんか乗りたいって言い出さん限り、さっさとこの場を去r」



「貞春!私、メリーゴーランド乗りたい!!貞春と一緒に、馬車のやつ!」



とても目をキラキラさせた真闇が、貞春の手を引いた。

「ぐへあ・・・」

「乙。あーたんは、なに乗りたい?」

「…ダーリン、いいの?…恥ずかしく、ない?」

「あーたんが乗りたいならなんでもいいよ」

成竜がニコリとイケメン笑顔をし、天河が頬を赤くさせた。

「…コーヒーカップ」

「お。よーし、俺が回してやるよ」

「…♥」

ハートマークを浮かべた天河が成竜に手を引かれていく。


「貞春!早く早く♪」

「先ほどの天罰なのか、これは・・・?」

逆にこちらは、とても楽しそうな真闇が、げっそりした貞春の手を引いていった。


それから、成竜ペアは回しすぎでクラクラになり、貞春ペアは真闇はご機嫌、貞春はテンションだだ下がりになっていた。


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[レスト・エリア]

そのあとも、結構スマイル・エリアで遊び(主に真闇)、ふらふらに疲れた貞春を休ませるため、レスト・エリアに来ていた。
レスト・エリアでは様々な魔物娘が店を開いていた。店から買ったものをトレイに乗せ、机や椅子がたくさん置いてある場所で自由に食えるのだ。

「・・・大丈夫か、お前?」

真闇と天河が食べ物を取りにいってる間、机に突っ伏す貞春に、成竜が声をかけた。

「・・・・・・・・・死にたい

「そこまで?」

「俺はガキんころでさえあんなとこに行かなかったんだよ・・・」

(・・・こいつの子供のころ、想像できねぇな・・・)

突っ伏す貞春の前で、ずずーっとストローからジュースを飲む成竜。
そのとき、真闇と天河が帰ってきた。

「ただいま」

「…ただいま」

「おう。おかえり」

真闇が『た』を言う瞬間に、がばりと貞春が起き上がった。

「貞春・・・ごめんね、はしゃぎすぎちゃった」

「気にすんなって。全く疲れてねぇから。まっっっっっったく。

(変にやせ我慢するな・・・さっきの疲労度、初めて見たぜ・・・)

真闇は貞春の隣に座ると、手元のパスタにフォークを刺し、くるくると回して。


「・・・貞春。あ、あ〜ん・・・////」


貞春の口に、パスタを差し出した。

「・・・あ〜、む」

「美味しい?」

「真闇のには劣る」

「・・・えへへ////」

貞春の表情はいつも通りだったが、やはりどこか嬉しそうだった。

「今にも鼻血垂らしそうだな」

「…ダーリン♥」

「ん?なぁ・・・」

「…ん♥」

成竜が天河の方に向くと、デザートの流体ゼリーを胸元に垂らしていた。

「…召し上がれ♥」

「まだお日様高いから!」

成竜は慌ててゼリーを拭き取り、天河は不満そうに頬を膨らませていた。



ちなみに、店の方では。

「ギリギリギリギリギリギリギリギリ・・・」

「耐えよう!耐えるんですよ、ミノタウロスの姉御!」

「彼氏なし2○年のアタシの前で見せつけてくれやがって・・・」

「他の店主さんも耐えてますから!頑張ってくだせぇ!」

昼間っから見せつける彼らに、嫉妬や羨望の眼差しが集中していた。


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[インプレス・エリア]

最後に来たエリアには、大きな観覧車と、複数の室内アトラクションだった。貞春たちは、ひとつの室内アトラクション、『ドラキュリーナ劇場』に入っていた・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「おのれ、ヴァンパイアめ!貴様の悪行に人々は苦しめられている!このダンピールの『ヴェルディ』が成敗してやろう!」

「ふははは!愚か者め、人間に加担する半人半魔の半端物め!このヴァンパイアの『グラヴィル』様の下に跪くがいい!」

ストーリーが進み、主人公ヴェルディと敵の首領グラヴィルが対決する場面となった。貞春たちは座席に座り、それを鑑賞していた。
高いベランダ状の場所から見下ろすグラヴィルが部下(ゾンビたち)を出し、ヴェルディが切り払っていた。

「でぇい、てやーっ!」

「ぎゃー」
「やーらーれーたー」

(わぁ。カッコいい・・・)
(…おぉ…)

(くぉぉぉ・・・ねみぃ・・・)
(お前こーいうのもダメかよ)

「ふん!やりおるわ!それならばこれならどうだ?」

その瞬間、グラヴィルがパチンと指を鳴らすと、真闇が一瞬で闇に包まれた。

(ふぇっ!?)
(真闇!?)

次の瞬間、真闇はグラヴィルの横に転送されていた。

「ふはははは!人質を取ったぞ!どうだ、心優しき貴様には攻撃できまい!」

「くっ!?卑怯だぞ!グラヴィル!」

「勝てばよかろうなのだぁ!ふはははは!」

グラヴィルは高笑いしたあと、横の真闇に囁いた。

(安心せよ。毎回やる、この劇場の演出だ。すぐ帰してやるからな)

「いや、あの、えと、私はいいんですけど、あの、私の、あの、彼氏が・・・」

(む?彼氏殿がどうし・・・)

その瞬間だった。



「お、お客様!困ります!」

「真闇を攫うとはなにしやがんだ蝙蝠女ァァァッ!!!」



『ぶぅん!ガンッ!!!』

「あぴぎゅっ!?」

貞春が席から立ち上がって壇上に上がり、部下役のゾンビが持っていたハンマー(軽量プラスチック)を投げ、グラヴィルの顔面にクリティカルヒットした。
そして、ふらふらと倒れ、そのままベランダから転げ落ちた。

『ドターーーンッ!』

「ちょっ!?母様!?しっかりーっ!?」

「きゅぅ・・・」

落ちて来たグラヴィルをガクガクと肩を掴んで揺り起こそうとするヴェルディだった。
それを置いて、貞春は真闇の元へ行った。

「真闇!?大丈夫か!?怪我ないか!?」

「・・・さ」

「さ?」

「・・・貞春の」

「俺の?」



「バカーーーーーーーーーッ!!!」



次の瞬間、真闇は手元にあったプラスチック製ハンマーを思いっきり振っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぶぅーっ・・・」

「悪かったって!そう怒らないでくれよ。な?」

劇場がグラヴィルの気絶により強制閉幕し、追い出された貞春は、真闇と観覧車に乗っていた。

「ぶぅ・・・」

「真闇が急に消えて、マジビビったんだって。その・・・劇場の演出とか、わかんなかったんだって」

「・・・」

「頼む!なんでもすっから!許してくれ!」

頬を膨らませていた真闇が、チラッと貞春を見た。

「・・・反省してる?」

「もちろん!」

「・・・じゃあ・・・」

真闇は、貞春に向かって顔を突き出し、瞳を閉じた。



「・・・謝りの、チュウ・・・」



「・・・・・・」

夕日の見える観覧車。
そのてっぺんで、貞春と真闇の影が唇を合わせた。


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「…まーやん、仲直り、できたかな…」

ひとつ次の観覧車のゴンドラで、天河が呟いた。

「真闇ちゃん優しいし、貞春謝ってたし、きっと許してくれるだろ」

「…そうだね…」

「ね。」

「…ダーリン♥」

「ん?」

天河が成竜にしだれかかり、目を細めた。

「…大好き♥…ずっと、一緒♥」

「・・・なに?急に?」

「…♥」

「・・・やれやれ」

成竜が天河の頭を撫でてやると、天河は猫が甘えるように頬をこすりつけた。


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数日後、遊園地に『ドッペルゲンガーを連れたヤンキー、お断り』という立て札が立てられたのは、別のお話・・・
12/06/14 09:09更新 / ganota_Mk2
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■作者メッセージ
なんかドッペル成分が足りないと言う感想の声を聞いて、久しぶりに書きました。

ただ、昔の書き方が逆に書きにくくなったので、これから書く際は、この書き方にします。

貞春「・・・弁明の時間は終わったか?」

へ・・・げ。

貞春「さぁて、死ぬ準備はできたか?神様にお祈りは?他の作品にうつつを抜かしていたことに後悔しながらガタガタ震える準備はオーケー?」

いや、ちょ、ま・・・

貞春「死 ぬ が よ い」

ぎゃーーーーーーっ!!!

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