連載小説
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6.夢うつつ。
「いや〜クリームシチュー、美味しかったですねぇ…」
「まさか魔物産のミルクだったとは……はぁ、先が思いやられる……」
「まぁまぁ、とっても美味しかったしいいじゃないですか〜!ちょっと元気になるだけですから!」
「それが僕にとっては一番危険で困るんだけど……」

夕食後、自室に戻った2人はまだ眠るには早いということもあり、セトネの仕事道具でもあるカードで遊戯に興じながら夜の雑談に花を咲かせていた。
大きな街の外れに位置するこの宿屋付近は大通り近辺とは打って変わって静寂に包まれ、星が煌めき月光が仄かに夜闇を照らし出している。サリィが気を利かせてくれたのだろうか、どこか甘い香りのする香が気分を落ち着けてくれる。これ以上ない最高のロケーションにセトネは心躍るが、それとは真逆に、ソリードの心境は決して好天的ではなかった。

「……やっぱり不安なんですか?これからのこと。」
「まぁ、ね。というか不安な要素には君だって入ってるんだけど。」
「嫌ですねぇ、私は無理やり襲ったりしませんって。ソリードさんに嫌われて一番困るのは私自身なんですよ?今ソリードさんに見捨てられたら、私だって魔力が取り戻せないんですから。」
「ふーん……まぁ、現状僕もセトネさん以外アテなんてないんだけど。どうしようかなこれから……って何その役、強くない?」
「ふっふ〜ん、私にかかればこれくらい朝飯前ですよ!なんたって私はマジシャンですから!」

自慢げに踏ん反り返るセトネを尻目に、ソリードは手早くカードをシャッフルし直し、次のゲームを始める。ちなみにここまでセトネが10勝、ソリードが8勝。僅かに負けている。

「そういえば最初に会ったときも言ってたっけ。マジシャンね……丁度こういう大きな街で披露すれば、結構稼げるんじゃないか?」
「確かにそうですね〜、でも私、あまりお金には興味なくて。興味があるのは素敵な旦那様ですから!」
「……魔物娘って皆そうなの?はい、今度は僕の勝ち。」
「むむっ……この私相手に互角の戦いをするなんて、ソリードさんやっぱり只者じゃないですね……それで質問の答えですけど、だいたいの魔物娘は旦那様が最優先ですよ。まあ特殊なパターンもありますけどねぇ、人間と愛し合う為に産まれたようなものですし、私達って。」
「人間と愛し合う、ねぇ……なんで?魔物は魔物同士でくっついても、別にいいんじゃないの?」
「デリケートな話題にズケズケと突っ込んできますね……まぁそれには色々と事情があるんですよ、詳しく知りたいなら、リリムさんにでも聞いてください。」
「リリム?それってセトネさんの知り合い?」
「いやいや、そうじゃないです。種族名ですよ、魔王様の娘達のことです。大きな親魔物領には大抵統治の為にいらっしゃるから、きっとこのアムールにもいると思いますよ?」
「成程ね……魔王の娘か、いろんな意味で凄そう。」
「実際すごいらしいですよ、男はリリムの姿を見ただけで射精してしまうとか。」
「それじゃ会えないじゃん……嫌だよ流石に公衆の面前でそういうことするの。」
「まぁこの街でそんな事したらあっという間に取り囲まれて乱交パーティーが始まっちゃうでしょうからね〜……」

ソリードが欠伸を噛み殺しながら客室にある大きな柱時計を見やると、話に夢中になっていたせいか既に時計の針は9の文字盤を過ぎ、10の位置に短針が差し掛かる頃になっていた。ついつい話し込みすぎたようだ。

「もう10時か……そろそろ寝る準備始めようか。」
「あっ、もうそんな時間ですか?いっぱい歩いたからお風呂入りたいですねぇ……ソリードさぁん、よければ……」
「駄目。」
「せめて内容くらい聞いて下さいよ〜!」
「はいはい、じゃセトネさんお先にどうぞ。」
「ははぁ、私が入ったあとで残り香を存分に堪能しようっていう魂胆ですか〜?私には丸わかりですよ、残念でした〜!」
「はいはい、いいから早く入って。」
「ちょ、ちょっと〜!そんな乱暴に押し込めないで下さいよ〜!」

自慢げに踏ん反り返るセトネを脱衣所に押し込み、ソリードはベッドに座り込む。暫くするとお風呂場からふんふ〜んと機嫌よく鼻歌が漏れ聞こえてくる。結局諦めて大人しく入ることにしたようだ。
一つ屋根の下、魅惑の肢体を持つ美女が裸で自らの身体に泡を這わせている……つい意識してしまうと、ソリードの男性の象徴がその存在を主張し始めてしまう。きっとこの街の雰囲気がそうさせてしまうのだ。なにせ周りにはどれも一級品の見目麗しい女性ばかり。しかもその女性達がこぞって自分という異性を好み、狙っているのだ。男性としてはまるで天国のような世界だろう。

「……こんなところセトネさんに見られたらどうする。勘違いされかねない……」

かといってここで自慰に耽ろうものなら、ほぼ間違いなく精の匂いとやらを嗅ぎつけて、セトネに迫られることは間違いない。そうしている間にもそれはますます充血し、堅く大きく膨張し続けている。どうしようか考えていた時、不意に頭の中にエコーのかかった不思議な女性の声がこだまする。

「お困りのようですね……ふふっ、お手伝いシてあげましょうか……?」

一種の魔術のようなものなのだろうか、頭の中で誰からだと考えれば、それに反応して再び頭の中に反響するような声が響く。意思疎通は取れるようだ。

「私のことなんて今はどうでもいいじゃありませんか。それよりも……そこ、そんなに大きくしてしまって……いいんですか?このままじゃ、見つかってしまいますよ……?」
「……何が狙い?」
「狙いなんてありませんよ、ただ相当お困りのようなので、助けて差し上げたいと思っただけです……ふふ……」

怪しさしかないその言葉に、ソリードは思わず顔をしかめる。しかし事実、このままではセトネに襲われかねない。誘いに乗るべきか否か、ソリードの中で天秤がゆらゆらと揺れる。

「大丈夫、夢の中でなら精の匂いも残りません……さぁ、ベッドに身体を預けて、力を抜いて……」

明らかに罠だとわかりきっているというのに、ソリードはその提案に乗るのが最善だと思ってしまう。ふらふらとした足取りで整えられた寝台へ向かい、そのまま倒れ込むようにうつ伏せに横たわると、ぐるぐるとした視界が急速に闇へと落ちていく。深く、より深く、どこまでも深く……

ーーーーーーーーーー

「ふぅ、気持ちよかったぁ……あれ?ソリードさ〜ん?どうしたんです?」

半ば無理やり入れられたお風呂を充分に満喫した私は、バスタオル一枚の姿で戻ってくる。胸の上部が殆ど露出しており、少しずらすだけで乳首が露出してしまいそうだ。風呂上がりで暑いのもあるが、こんな格好をしている理由はもちろんソリードさんを誘惑するた。きっとこれくらい直接的にアピールしたほうが、彼みたいなむっつりな人には効果てきめんなのだ。ホルスタウロス印のミルクだけであれ程に顔を赤らめる人だ。きっと目の前でこのタオルをはだけさせればイチコロだろう。……しかし、誘惑しようとしたソリードさんがベッドにうつ伏せで倒れるように眠っていなければ、の話だが。

「ソリードさ〜ん、お風呂空きましたよ〜?今なら私の残り香でいっぱいですよ〜!」

身体をいくらか揺すってみるが、ソリードさんが目覚める気配はない。すっかり熟睡しており、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。

「ちょっと長く入りすぎましたかね……?」

しかしこれくらいで諦めては魔物娘として失格だ。私はバスタオルの格好のままソリードさんの横に潜り込む。俗にいう添い寝というものだ。ぎゅっと抱きつき、胸を背中に押し付けると彼の鍛えられた硬い背中の感触が伝わってくる。

「ふっふっふ、これで朝起きたらソリードさんはどうしようもない劣情を私に抱いてくれること間違いなしですね……」
「……」

沈黙と静寂。甘い香りと彼の寝息だけが微かに聞こえている。こんなにも近くで触れているのに、ソリードさんが目を覚ます様子は全くなく、ポツリポツリとつい私の口から本音が漏れ出してしまう。

「……確かに、私は魔物娘です。でも精を求めて疼く本能を抜きにしたって、私はソリードさんの事好きなんですからね……馬鹿。」

温かいのにどこか寂しさのようなものを感じながら、私はそのまま目を閉じる。ぐるぐると思考を巡らせながら、浅い眠りへと私は落ちていった。

ーーーーーーーーーー

「ここは……あれ、僕の家?いつの間に帰ってきたんだ……?」

気がつくとソリードは今となっては懐かしさを感じる自室のベッドで目を覚ます。まだ半分眠っている頭を何度か叩き、状況を把握しようとソリードは起き上がろうとするが、しかしそれはとある人物によって防がれてしまう。

「おはよう、ソリード。本当にねぼすけさんだね。」
「その、姿は……リク、お前なんでここ、に」
「ん?なんでって、ここは私とあなたの家じゃない!酷いわソリードったら……」
「いや待て、僕が言ったのはそういう意味じゃなくて、いやなんて言えばいいのか……」

何故、どういうことだ。ソリードは目に見えて慌てだす。自分がいつ自宅へ帰ってきたかもよく思い出せない上に、何せ目の前には絶対にこの場にいるはずのない女性が頬を膨らませながら、おまけにほぼ半裸に近い格好……俗にいう裸にエプロン姿でこちらを見つめているのだから。
その女性……ソリードの想い人であったリクは、むっとした表情を和らげ、鼻の頭がくっつきそうな程に近づいてくる。

「もう、そんなことより……昨日の夜のソリード、とっても格好良かったよ♡」
「なっ……!?そういえばリク、お前なんで半裸……」
「なんでって……言わなきゃ分からないかな?ソリード、そんなに鈍感だったっけ?自分の身体見てみなよ?」

慌てて自分の身体に目線を落とすと、ベッドの上の自分は何も着ておらず、生まれたままの姿のままだ。それが意味することをソリードは連想し、途端に顔を赤くする。

「う、嘘だろ……」
「どうしてそんなに落ち込んでるの?夜はあんなにカッコ良かったのに……僕のことだけ見てろって言ってくれた時、すごくキュンとしたんだけどなぁ……」
「ぼ、僕がリクにそんなことを……?というか、さっきから言ってるけどなんで君がここに……」
「会いたかった、それじゃダメなの?ソリードのいじわる。」
「ダメじゃないし、僕もリクと一緒に居られるのは嬉しいけれど……だって、君は」

そこまで言いかけ、ソリードは言葉を飲み込む。この先を口にしてはいけない。口にすると、何かとてつもなく恐ろしい事が起こるような、そんな予感がしたからだ。段々と冴えてきた頭が理解する。ここはきっと夢だ。自分の今までの思い出が作り上げた、幻。だからこそ自分はアムールの宿屋ではなくヴォール・クロイツの自宅にいて、この場に居ないはずのリクが目の前にいる。夢でなければこれらに到底説明がつかない。
そんな状況を把握しつつあるソリードをリクは優しく抱きしめる。柔らかな胸の感触と人肌の温かみをほのかに感じ、ソリードの思考が一瞬、止まる。

「ソリード、何難しい顔して考えてるのさ。私といるときくらい、面倒な考え事はしないで欲しいんだけどな。」
「……ごめん。」
「そんなに落ち込まないでよ。別にソリードを虐めたかったわけじゃないんだから。それに……お礼は、こっちでシてもらうから♡」
「ちょ、リクお前……」
「……やっぱり興奮してたんだ、男は朝は興奮しやすいんだもんね♡」

リクはベッドの中に潜り込むと、ソリードの肩を押してベッドに押し倒し、充血してそそり立つソリードのそれを柔らかく小さな手で包む。リクは後ろで結んでいたエプロンの結び目をほどき、ソリードの視界には、自らのそれを愛おしげに上下に擦るリクの扇情的な姿が映り、興奮を否が応でも高めさせる。

「おいリク冗談じゃ……っ」
「ソリード、いくらなんでも鈍すぎ。ここまでシてるのに……あむっ……」
「うっ……ほんとに、まて、ってぇ……」

先端に柔らかく瑞々しい唇が触れ、そのままぱくりと咥えられる。人肌の生暖かい舌がうねうねと蠢き、亀頭全体を這いずり回る。カリ首や裏筋を丹念に舐め取られ、ソリードの腰が意図せず浮いてしまう。

「ふふっ、ひもひいーれしょ……」
「リクっ……くっ、咥えたまま、しゃべるなっ……んんっ……」
「ぷはぁっ……私、ずっと我慢してたんだから……我慢させた分、付き合ってもらうからね……」

リクの激しい口淫はソリードを容赦なく責め立てていく。いつの間にこのような性技を身に着けていたのだろうか。幼馴染の腐れ縁な恋人に、まだ知らないことがあったのかとソリードは一瞬思考するが、その思考も徐々に高められていく自らの欲に押し流されていく。童貞で自慰も人並み以下しかしないソリードに口淫、しかも自らの恋人によって行われるそれはあまりに刺激が強く、意志とは無関係に射精感が込み上げてくる。

「あっ、くあぁっ……リク、リクっ……」
「ふふっ、やーっと気取った態度じゃなくなった。本当に素直じゃないんだから……ほら、このまま吸い出してあげるから、そのまま出しちゃって……」

リクは再びビクビクと脈動するソリードの肉棒に吸い付くと、口を窄めて亀頭全体を激しく吸い始める、まるで射精しかけの精液を絞り出すかのように。これまでの過程で高められたソリードはトドメとでも言わんばかりのその責めにとても耐えることが出来ず、思わずリクの頭に手を乗せてしまう。

「リクっ、もう、駄目だっ……イくっ……!」
「んっ、んんっ……」

溜まりに溜まった欲望が勢いよくリクの口内へと吐き出される。びゅくびゅくと吹き出てくるソリードの欲望はリクの小さい口には収まりきらず、口の端からはどろりとした白濁液が溢れ出す。リクは最後の一滴まで吸い出すようにソリードの肉棒を吸い上げ、達してもなお与えられる快感にソリードは喘ぎ悶える。

「じゅるるっ……んんっ、んむっ……」
「あぁっ、はっ、くうっ……リ、クっ……」
「んっ……ごくっ、ごくっ……ぷはぁっ、ふふっ、いっぱい出たね……少し溢れちゃった。勿体無い……」

リクは端から漏れた白濁液を指で掬い、舌で舐め取って恍惚とした表情を浮かべる。その姿はまさに淫魔のようだ。その姿を見たソリードは、射精後の呆けた頭でなんとか1つの仮説を立てる。

「これ、やっぱり夢だろ……リク、いやサリィさん。」
「……あらら、バレちゃいましたか。ちょっと急ぎ過ぎちゃいましたかね。」

リクの顔をした美女……宿屋の主人、サリィは口の端を釣り上げ、ニヤリと笑う。たどたどしく、蚊の鳴くような細い声で話していた彼女は、まるで別人かの様にハキハキと言葉を紡ぎ、ソリードに怪しげな目線を送る。

「すっごく溜まってらしたんですね……ソリードさんの精、とても濃厚で美味しかったですよ♡」
「なんでリクの姿に……というか、どうやって……」
「そんなこと、今はどうでもいいじゃないですか……それよりもほら、もっとシましょうよ♡私、まだまだ食べたりません……♡」

扇情的な笑みと汗まみれの身体を惜しげもなく見せつけながら、リクの姿をしたサリィはソリードの上に馬乗りになる。触れてもいないのに彼女の秘所は下着をぐしょぐしょに濡らしており、淫隈な性臭を漂わせながら既に性行為の準備が出来ていることを水音と共に知らしめてくる。

「ほら、聞いてくださいこの音……にちゃにちゃって、私の愛液が下着をぐちゃぐちゃに濡らしてる音ですよ……もっと聞こえやすくしてあげます♡」

彼女は凡そ既に機能していない下着をずらし、自らの秘所に指を突き入れて掻き回す。ぐちゃぐちゃとピンクの肉ひだが露わになり、更に溢れ出る愛液はぽたぽたとソリードの肉棒を濡らしていく。

「あはぁ……ほらほら、見てください……私のえっちな穴、早くソリードさんのが欲しくて、もっとえっちな液垂らしちゃってる……♡あぁっだめぇ、オナニー止められないっ……」

目の前で恥じらいもなく自慰に耽るサリィ。膣口はぱっくりと開き、濃厚な性臭を辺りに振りまきながら更に物欲しそうに中の肉壁を蠢めかせている。匂い、音、眼前に広がる痴態。ソリードのそれは五感を刺激され、強制的に隆起させられる。

「ふふっ、うふふふっ……はい、勃起完了ですね……はぁ、とても逞しくて、いい匂い……♡素敵ですよ、ソリードさん……」
「……したくて、したわけじゃない……」
「カラダは正直なんです。ここは夢ですから……欲を我慢することなんて、出来ないんですよ。」

サリィは自らを慰めていた指を引き抜き、飴を舐めるように舌を這わせて自らの蜜を舐め取り、恍惚とした表情を浮かべる。

「んっ……ちゅぱっ、じゅるっ……んむっ……とーってもえっちな味……ソリードさん、私もう我慢出来ません♡挿れちゃい、ますよ……」
「ちょ、待てサリィさん、それは……っ!」

サリィのどろどろに蕩けきった肉壺が、ソリードの肉棒を納めようと迫る。逃げようにも身体が動かない。もう諦めて、この性交を受け入れるしかない。ソリードがそう覚悟を決めた時だった。

「ふふっ……うふふっ、あはははっ……えっ何、嘘っ!?きゃあっ!」
「……えっ?」

驚きの声と共にサリィは消え失せ、ソリードがただ一人残された。そしてこの部屋が、いや、この夢自体がぐにゃりと形を失い、崩れ去っていく。

「これは、一体……うわっ、なんだ……?」

呆気にとられるソリードの身体もまた、ふわりと浮き上がり、上へ上へと浮上していく。真っ白な光に視界を奪われ、そこでソリードの意識はプツリと途切れた。
19/10/23 21:48更新 / 翅繭
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■作者メッセージ
色々書いてたら遅くなりました。ということで最初のお相手はセトネさんではなくサリィさんです。内気な魔物娘って性欲他の魔物娘より強そう。
最後あの展開になった理由は次回明かされます。

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