天気雨
「卒業式だってのに、変な天気だなぁ」
卒業式当日の朝、家を出たら天気雨が降ってた。
空模様はどう見ても晴れてるのに傘がいるってのはなんか変な気分だ。
雨の強さはそれほどでもないけど、微妙にテンションが落ちる。
「そ、そうだね」
なんとなく堅い顔で返事をしたのは、横を歩く小薄 典子(こうす のりこ)。
俺んチの隣にある豆腐屋の1人娘で、いわゆる幼馴染ってやつ。
高校に上がって告白してからは、彼女でもあったりする。
ただ変なところでお堅くて、最後の一線はなかなか越えさせてくれない。
「なんだテンコ、緊張してんのか?」
言いながら、彼女の頭をぽんぽんと軽くたたく。
テンコってのは小さい頃に俺がつけた典子のあだ名。
まあ、俺の他にそのあだ名で呼ぶやつはいないんだけど。
「ちょ、ちょっと、ヨーくんっ」
テンコが首を振って俺の手を払うと、胸あたりまである黒髪が揺れた。
なんかコイツ、今朝は家の前で合流してからずっとそわそわしてるんだよな。
小中の卒業式はこんなにガチガチじゃなかったハズだけど。
「ヨーくんは緊張してないの?」
「するわけねーだろ、何回リハやらされたと思ってんだ」
テンコはなんかムッとした感じで言い返してくるけど、もう俺の頭は式の間どうやってヒマをつぶすかに移ってる。
卒業生の名前を呼んでるときとか、エライ人たちが話してるときとか。
しかも俺の名前は阿部 揚介(あべ ようすけ)、そのうえA組……早くに呼ばれるもんだから、後がなおさらヒマになるんだよな。
「つか、雨が降ってんじゃ校長とかも晴れの日って言えねーな」
「ヨーくん、それオヤジギャグ」
「へ?」
「え? ハレの日って、天気のことじゃないのは知ってる……よね?」
「え……あ、と、当然だろ! 馬鹿にすんな!」
マジか。ずっと天気の晴れだと思ってたのに。
「ふふっ」
笑われた。ちくしょう。
まあ、テンコの緊張もちょっとはほぐれたっぽいし、結果オーライってことで。
そんな感じでどーでもいいことを喋りながら、俺たちは学校へ向かうのだった。
* * * *
式が終わった後はいつもつるんでる奴らと遊びに行って、アッという間に夜。
テンコは何だか用事があるってんで、夕方には帰った。
お祭りテンションにかこつけたらもしかして……とか考えてたのに。無念。
親父たちはあまり遅くならないで帰ってこいって言ってたけど、家に着く頃にはもう12時になりそうだった。
ま、いいよな。卒業式だったんだし。
ちょっとくらい帰りが遅くなるのは仕方ないってもんだろ。
「ただいまー、と」
玄関を開けたら、
「ヨーくん……お、お帰り……」
「あれ? テンコ?」
白い和服を着たテンコが、玄関先に正座してた。
「お前、なんでウチにいんの? しかもこんな夜中に」
「ちょっと話があって……ついてきて」
「お、おう」
なんでウチにテンコがいるのかはわからないけど、とりあえず言われるままにテンコの後についていく。
「はい、到着」
「到着っつってもなあ」
着いたのは、リビングの隣にある和室。
普段は親父がゴロゴロしてる畳には、なぜか新品っぽい布団が敷いてあった。
端の方に服掛けとハンガーがあるし、一応、上着とカバンをそこに。
「ヨーくん」
「ん?」
すると、テンコは布団のすぐ横に正座して俺を呼んだ。
俺はまだ何がなんやらなんで突っ立ってたんだけど、
「ヨーくんも正座するの」
「はいはい」
ポンポンと畳を叩いてそう言うんで、わけがわからないながら俺も正座。
「こ、これから、私たちの『卒業式』を始めます!」
「……はぁ?」
なに言ってんだコイツ?
「悪いテンコ、お前がなに言ってんのかわかんない」
「な、なにって……その、あの……うぅ〜〜」
布団と俺との間で目を泳がせながら、テンコは赤面する。
……あれ?
夜。
布団。
俺。
テンコ。
……え、そういうこと?
「テ、テンコ」
声が震えてるのが自分でわかった。
やばい、意識したら一気に緊張してきたぞ。落ち着け俺。
「……なに」
「親父とか、お袋とか、あ、えっと」
「う。……出かけるって……言ってた……」
お膳立てまで完璧じゃねえか。
そして俺の言葉で、テンコも俺が気付いたことがわかったっぽい。
そわそわもじもじ動いて、もう床を見るような勢いで俯いてる。
「じ、じゃあ……始める、か?」
「ちょ、ちょっと待って」
テンコの方に身を乗り出そうとしたら、ストップかけられた。
ここまで来て、お預けとかドッキリとかじゃないだろうな。
今まで散々我慢してきたんだぞ。こんな据え膳、もう止まらないっての。
「ヨーくん、目つむってて。私がいいって言うまで開けちゃダメだからね」
「わ、わかった」
衣擦れの音とか気配とかで、テンコが近づいてくるのを感じる。
と、いきなりまぶたに何かが触れた。どうも何か塗ってるっぽくて、ちょっとひんやりする。
それが終わると、また衣擦れの音がしてテンコが離れるのがわかった。
「はい、もういいよ」
そう言われて目を開けると――
「……コスプレ?」
「ち、違うよ!」
テンコの見た目が、いろいろと変わってた。
黒かったハズの髪は、山吹色って言うの? 少し茶色がかった金髪になってるし、頭の上には動物みたいな三角耳がついてる。
「そか、そうだったのな」
「わ、わかった?」
ああ、わかった。
「お前はコスプレ大好きっ子だったんだな……」
「え」
「んで、アレだ。コスプレHで初めてをしたかったけど、俺がそれをどう思うかって悩んでて、だから今までさせてくれなかったんだろ? だけど決心してカミングアウトしてくれたんだよな」
「ちっがーーう!?」
大声とともにテンコが身を乗り出してきて、四つん這いの格好になる。
おしりの辺りからは尻尾も生えてて、テンコのこだわりを感じさせた。
「私は人間じゃなくて、狐なの! 狐の妖怪で、稲荷っていうの!」
「うん、わかった。ちょっとビビッたけど、似合ってるぞ」
「わかってない!? 設定とかじゃないんだよ!?」
大丈夫、お前がコスプレ好きでも、俺はお前を嫌いになったりはしない。
だから。
「……ヨーくん? どしたの?」
俺はテンコの肩に片手を置き、もう片方の手をその頭の後ろに回して。
「ちょ、ヨーくンむッ――!?」
もう限界だったし、ちょっと強引だけど襲うわ。
コスプレのインパクトはデカかったけど、性欲を消し去る程じゃなかったから。
「……いいんだよな?」
いったん唇を離して、改めて聞く。
少し間が空いてから、テンコは小さく頷いた。
もう一度キスをして、今度は舌をテンコの唇へとのばす。
軽く入口をつつくと、テンコは口を開いてそれを受け入れてくれた。
俺が入るのとほぼ同時、テンコの側からも舌を絡めてくる。
唾液が、舌が、唇が混じりあっていく、なんとも言えない感覚。
ただ快楽のまま、テンコの口を味わい尽くす。
「んふっ……ぁむぅ……」
テンコの半開きの口から吐息が漏れる。
その艶っぽい声色に、俺の興奮はますます加速していく。
結局、その後もしばらく俺たちのディープキスは続いた。
やっと離れたときにはお互いすっかり息は荒いし、相手の口内で味わってないところは無いってくらいだった。
「ふふ……よぉくん……♪」
まだキスしただけなのに、テンコはすっかりトロけた瞳で微笑む。
俺も興奮のせいか心臓の拍動がやたらと早くて、胸から飛び出しそうだった。
「ほらテンコ、こっち」
すぐ横に布団があるのに、座ったまま続けるのもバカらしい。
俺はテンコの手をとって布団へ誘導、そのまま押し倒した。
「ん……ヨーくん、ほら……」
仰向けになったテンコは俺の手を掴むと、真っ白な着物の上から自分の胸に押し当てる。
見て分かるくらいに激しく上下するその胸は、ちょっと指を曲げると沈み込むくらい柔らかくて。
「わかるかな……わたし、すごくドキドキしてる……」
「お、おぅ」
いちおう生返事はするものの、俺自身が混乱ぎみで感触なんてほとんどわからない。
それでも、テンコが俺と同じ気持ちなのは目を見ればわかる。
「好きだよ、ヨーくん……世界でいちばん、大好き」
その率直な告白に、言葉で返すのはどうにも照れ臭かった。
だから俺は、そっとテンコに口付けた。俺の返事が伝わるように、何度も、細かく。
「ン……」
すっ、とテンコは俺の背中に手を回してくる。
引き寄せるでもなく、ただ撫でるような遠慮がちなおねだり。
俺はそれに応えて、できるだけ体重をかけないようにしながら身体を降ろす。
「あっ……ふふっ」
そして、お互いの身体が密着する。
テンコは一瞬だけ目を見開いたかと思えば、嬉しそうに微笑んだ。
「ヨーくん。当たってる」
「うっせ」
このシチュで硬くすんなってのが無理な話だ。
第一、そう言うテンコ自身がかなりデキあがってきてる。
息は湿っぽいし瞳は潤んでるし、腰をもぞもぞ動かして俺のを擦ってくるし。
俺は片手をテンコの頬に当てて、軽く撫でてやった。
「ひゃあっ……」
くすぐったかったのか、テンコは目を閉じて小さく喘いだ。
耳のすぐ近くで聞こえるその声に背筋がゾクゾクするのを感じながら、その手を下ろしていく。
首筋、鎖骨と来たら、当然つぎに到着するのは胸。
テンコの呼吸に合わせて、乱れた和服の胸元からたわわに実った果実がチラチラと見え隠れしてる。
「うわ……」
そこに手を滑り込ませた瞬間、手の平に驚くほど柔らかい感触。
さっき服の上から触ったときとは違って、吸い付いてくるようなモッチリ感だった。
「んっ……ちょっと待ってね」
そう言って、テンコは俺の背中に回してた手を解く。
脱がせやすいようにしてくれるなんて、よく出来た彼女だ、ホント。
自分の幸せを実感してる内に、テンコはもぞもぞ体をよじって着物を脱ぎ始めていた。
着物の襟は肩口まで落ちて、上半身はもうほとんど半裸と言っていい。
「や、もぅ……ヨーくんの目、やらしい」
うるせ、お前だって満更でもなさそうな顔してるくせに。
てか、自分から脱いでる奴のセリフじゃねーぞ。
俺はその緩んだ襟元を左右に開いて、テンコの胸をはだけさせる。
下着は着けていないので、当然生まれたままの姿が現れるワケで。
テンコの乳房は仰向けなのに潰れてない上、青い静脈が透けて見えるほど白かった。
大きな膨らみの頂上には薄ピンク色の小さな円があり、その中心ではプックリと蕾が起ち上がっている。
俺は首筋と浮き上がった鎖骨にキスしながら、やわやわと左の乳房を撫でた。
「ふぅっ……く、くすぐった……っぁ」
大きいわりに敏感なのか、表面はほんのりと赤く染まり、乳首もテンコの興奮を示してピンと立ってる。
揉んでみると、指が沈み込むように形を崩すけど、すぐに元に戻ろうと押し返してもくる。
「やあぁ……それ、すご……はぁう……ッ!?」
胸の突起をそっと摘むと、テンコは身体を小さく震わせた。
指の腹で転がしてみれば、コリコリと硬くなってるのがわかる。
軽く唇でくわえて、舌先でつついたり、舐めたり、押しつぶしたりしてみた。
「だめっ……ぃ、ぁ……お、おかしくなっちゃうからぁ」
テンコはいやいやと激しく頭を振りながらも、俺の首に腕を巻き付けている。
言葉とは裏腹に、もっとシて欲しいと言うかのように離してくれない。
だから俺もそのまま次のステップに進ませてもらうことにした。
帯の下あたり、着物の合わせ目に手を突っ込み、秘部を直に触る。
クチュリという音とともに、一気に喘ぎの声色がトーンもボリュームもアップする。
「ひぃんっ!? あ、そこ、そこはっ……」
クレバスに沿って撫でるだけでクチクチといやらしい水音が立ち、指先が暖かい液体に包まれる。
その液体の感触を頼りに手探りで秘裂を探し当て、ためしに中指を1本だけ入れてみた。
その途端にテンコの腕に力が入って、俺の顔はますます強く柔らかなクッションに押し付けられる。
2つのクッションとその間にある谷間からは、甘く安らぐような、いつまでも嗅いでいたいと思える匂いがした。
膣内でも、肉の波が指を貪るように吸い付いてきてはうごめいている。
性感帯ではないはずの指先から背筋へと、快感が走り抜けていくのを感じずにはいられなかった。
「なにこれっ……? 自分でスるのと、ぜんぜん、ちが……こんなの、知らないよぉ!」
甘い香りと声に興奮はますます加速して、指を動かしてテンコの中を探っていく。
お腹側の膣壁に触れると、テンコは全身を大きく跳ねさせた。
周りとは少し感触の違うソコが何なのか、俺のエロ知識は知っている。
「ひぁ、あ、ぅあ、あっ! く、くるっ、きちゃっ――!」
そして、その場所――たぶんGスポットを中心にナカを攻めるうち、テンコは大きくエビ反った。
そのまま何度も震えたかと思えば、その身体から力が抜けていく。
目尻に水滴を乗せた瞳はぼんやりとしたまま、少しにやけたような形の口も開けっ放し。
俺の頭を押さえていた腕も、身体の横に投げ出していた。
「テ、テンコ? 大丈夫か?」
「……はぁっ……はぁ……ぁぅぅ……」
返事もおぼろげで、息も絶え絶えな様子。
これ……イったのか? 俺の指で?
とりあえず自由に動けるようになったので、テンコの秘所を見てみることにする。
裾をめくり上げ、脱力しきった足を広げて露になったそこは、綺麗な桃色をしていた。
ぷっくりと膨らんで柔らかな外側と、時折ひくひくと動き蜜を漏らす内側。
胸に抱かれてた時とは違う、もっと刺激的な香りが鼻から入ってくる。
愛液で妖しく光る大陰唇をベロリと両開きにさせて、クリトリスを軽くつまんでみた。
「んにぃっ!?」
すると、すっかり気の抜けていたテンコが目を覚ました。
両手を俺の手に伸ばして弄るのをやめさせようとしてくるけど、力が入ってない。
皮に覆われた淫核をくりくりしながら、淫汁を垂れ流す桃色の縁取りもイジメてやる。
「ら、やっ、あ、あぁっ! も、や、あぅぁ、ま、まってよっ!」
「痛っ!?」
もっかい指を入れて中と外のダブルで攻めてやろうかと思ったけど、それは阻止された。
テンコが俺の腕に爪を立てて掴んできたからだ。
そしてそれに対する俺の文句は、口に出る前に消えた。
「もう、もう我慢できないよぉ……。はやく、よぉくんのいれてほしぃのぉ……」
切なげな声で言いながら、テンコは自分の恥肉を左右に広げていた。
大きく開いた自分の入口を見せつけるように、くいくいと腰を動かして俺を誘う。
そんなエロ過ぎる誘惑に、健全な男が抵抗できるわけもなく。
焦りと興奮とでもたつきながらも、服と下着を脱ぎ捨てた。
「テンコ……」
「ぁんっ、よぉくん……♪」
亀頭を押し当てると、テンコの淫唇は貪欲に吸い付いてくる。
擦れるたびにお互いの粘液が混じり合い、ねっとりとした音が耳を侵した。
「い、いいよな……」
「あ……そうだ。ちょっと、いい……?」
いよいよって所でまたお預けかよ。萎えるぞ。
もしかして俺、試されてんのか? どのくらいでオオカミになるかとか。
ちょっぴり拍子抜けする俺をよそに、テンコは寝返りをうって俯せになると、四つん這いで俺に尻を向けた。
獣の体位と呼ばれるだけあって、この格好だと頭の三角耳と尻尾がより強調される気がする。
「おもいっきり、きていいよ……」
「ちょ、おまっ……初めて、だよな?」
まあ、それは俺もなんだけど。
初エッチがバックとか、どうなんだろうと。
初めては愛をささやきながら正常位で……ってのは、やっぱり童貞の幻想なのか。
「感じたいの……わたしに、よぉくんを刻みつけてほしいのぉぉ……♪」
幻想でいいです。後ろからでも全然OKだよね。
お尻をフリフリしながら蕩けた声でそんなこと言うとか、反則だろマジで。
そそり立つ肉塊をとば口にあてがい、テンコの内側へと徐々に沈みこませる。
「あぁぁ……入ってきてる……くぅぅ……っ♪」
「っ……なんっだ、コレ……」
白い腰を震わせて、初めての快楽を受け止めるテンコ。
内側は潤ってるってレベルじゃないくらいに大洪水で、次々と湧き出す蜜が優しく俺の分身を包み込む。
柔らかな肉壁はさっき指を入れたときと同じように、むしろもっと貪欲に絡み付いてくる。
ただ、そういう気持ちよさとは別に、俺は熱いものを感じていた。
繋がりを通して、テンコから俺に流れ込んでくるような。
「あぅぅ……もっと……いちばん、奥までぇぇ……」
シーツに細い指先を立てて尻尾をピンと垂直に伸ばし、それでもなおテンコは俺を誘う。
尻尾は毛が逆立って、もとの倍近い太さになっていた。
ゆらゆらと左右に揺れ、ときどき腹に当たるせいでくすぐったい。
……アレ? この尻尾、動いてる?
改めて見てみると、尻尾はテンコのお尻の少し上あたりから直に生えていた。
コスプレじゃなくて、ホンモノ? そういえばさっき妖怪とかって……。
「テ、テンコ?」
今更ながらテンコに聞いてみようとしたら、
「ほしい……わたしのナカ……よぉくんで、いっぱいにしてほしいのぉぉ……♪」
「うわ!?」
その尻尾がしゅるしゅると伸びて、俺の腰に巻き付いてきた。
その状態のまま、まるで抱きしめるような動きで俺を引き寄せる。
すると、俺の肉棒は肉壷へ飲み込まれていき――
こつん。
「ぁああ……刺さってる、わたし、よぉくんに串刺しにされてるぅ……っ♪」
「あ」
媚肉を押し分け、先端がテンコの最奥に達したそのとき。
俺たちが限界まで深く繋がって1つになった、その瞬間に。
「くぁぁぁあぁぁっ!?」
さっきから感じてた熱さ、それを何百倍にも強くしたようなものが一気に全身を駆け巡った。
まるでテンコの中心にスイッチがあって、それで俺の中にあった爆弾が起爆したみたいに。
全身が熱くなって、身体の中が溶けるような、作りかえられるような感覚。
「はっ、はっ、はっ……テンコ、テンコっ!」
「よ、くん、っ! んあっ、はげし、ぃよぉっ!」
その熱に浮かされるように、俺は肉棒をテンコの中へ突きこんでいた。
頭では労ってやりたいと思ってるのに、腰の動きが止められない。
幸いなのは、テンコの身体はもう完全に俺を受け入れてるみたいで、痛みを感じてないっぽいこと。
どんなに乱暴に犯しても、膣壁と肉ヒダはもっともっととねだるようにうねり、絡み付いてくる。
俺に突かれながらのせいで言葉は途切れ途切れだけど、テンコは処女を失ったばかりとは思えないくらいによがっていた。
「く、ぐっ、う、もぅ、出ちまうっ……!」
「だ、出してぇ、あたしのナカに、ぜんぶ、だしてぇぇ!」
「ぅあ゛ッ!?」
テンコが叫ぶと、膣全体が一気に締め付けてくる。
その刺激に、射精感が込み上げてくるのを止められなくなって。
ぎちぎちにきつくなった肉壁をえぐりながら、俺は思い切り腰を突き出した。
「ああぁあぁあああ―――――!!」
「っぐ……!?」
絶頂に達したテンコが、全身を強張らせて叫ぶ。
腰に巻き付けられた尻尾も締め付けを強め、さらに俺を密着させようとして。
肉杭を打ち込んだ最奥で、俺は大量の精液を噴き出した。
今までの自家発電じゃありえない量が出てるのがわかる。
まるで、自分の身体の中身が全部出ていってるかのような感覚。
「ぁうぅ……よぉくんの、まだ出て……きゃっ!?」
「わ、わりぃ……」
腰砕けになった俺はそのまま前のめりに倒れ、四つん這いなテンコの上に被さるような形になる。
どうにか手をついてテンコが潰れないようにはしたけど、ちょっとすぐには動けそうにない。
頭がクラクラしてうまく回らないというか、手足に指示が伝わらないというか。
「ちょ……ちょっと、タンマ、な……」
「う、うん……ひゃっ」
そうは言ったけど、この体勢だとテンコのうなじ辺りに顔が来て匂いがヤバい。
髪のいい香りと1戦終えた汗の匂いとが混じって、なんていうかこう、嗅いでるとムラムラしてくる。
テンコはテンコで俺の息が首筋に当たってるみたいで、ときたま頭上の三角耳を動かしては小さな声をあげていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「んっ!? ちょ、よぉくんっ、やめっ」
小休止とはいっても、この興奮と匂いの中で息が整うはずがなく。
動くようになった手を伸ばして、さっきからぴこぴこ動くテンコの三角耳に触れる。
滑らかな毛と柔らかな皮膚とが作り出す触り心地は、予想外に良いものだった。
「もしかして、敏感なトコだったりすんの?」
「そ、そだよっ。だからやめ――ひゃっ!?」
それはいいことを聞いた。
俺は耳全体を手の平で包み込むようにして、内側に人差し指を入れてみた。
内側は毛が少なめなのか皮膚の暖かさが感じられて、ぐにぐにしてみたくなる。
「だ、ダメっ、なか、こしょこしょしちゃ、だめぇっ」
しかも、外側よりさらに敏感らしい。
指の腹で軽く擦ってやると、逃げるように首を後ろに反らせる。
すると、背後から覆いかぶさる俺の目の前にテンコの頭頂部、つまり耳が来るわけで。
「……あむっ」
「んっ……ょ、よぉくん? だ、ダメだって、耳いぢめるの、はぅぅ、ダメぇぇ……」
唇にくわえてはむはむしてやると、テンコの抗議の声は小さくなった。
自分で弱点と言うだけあって、ずっと小さく震えたり喘いだりするのが止まらないっぽい。
かと言って一方的に俺だけが攻めているかといえば、そうでもなかったり。
テンコの意思か無意識かはわからないけど、繋がったままの陰唇が甘噛みを返してくる。
そうなると、さっきの射精で落ち着いた"あの熱"がまた復活してくるわけで。
テンコから流れ込んで俺の体を1周し、腰の辺りに溜まっていくような。
「テンコ。もう1回……いくぞ」
「はぅ……うん、いいよ……また、いっぱい出してぇ……」
耳元でそう囁いて、ゆっくりと腰を動かし始める。
さっきのガンガン突くセックスとは変えて、テンコの中を味わうようにゆるゆると。
1回戦を済ませた余裕か疲れか、多少は理性を残していられる。
そんな俺の動きに対応したのか、はたまたテンコも小慣れてきたのか。
さっきまできつかった膣道は、俺を受け入れ包み込むのに適度な締まりぐあいになっていた。
「あー……これ、イイな……」
「はあぁっ……私も、気持ちいいよぉ……」
じんわりと、粘膜から染み込んでくるような快感。
少し焦れったいけど、それがいっそう気持ちよさを引き立てるというか。
テンコも楽しんでいるようで、俺が出入りするのに合わせて甘い息を漏らす。
これが正常位ならキスでもしてやりたいところなんだけど。
今はバックなんで、俺はとりあえずテンコのうなじにキスを落とした。
「やんっ……アトが残っちゃうよぉ♪」
いやよいやよも好きのうち、とはよく言ったもんだと思う。
言われたのは文句だけど、テンコの声色は完全に愉しんでるそれだった。
だったら、その期待に応えてやるのが男の義務。
うっすらと汗が滲む首筋に、キスマークが残るように強めに吸い付いた。
「それ、背中ぞくぞくってするよぅ……」
そのまま舌を這わせたり甘噛みしたりと、首周りにいじわる。
軽い刺激を与えてやる度に、テンコはきゅうきゅうと締め付けて反応する。
落ち着かないのか、まだ巻き付いたままの尻尾の先端がわさわさ動く。
軟らかい毛で腹のあたりを撫で回されて、すげーくすぐったい。
「っ、この……」
「ひぅ!?」
尻尾を掴んだらテンコはピンと耳を立て、陰穴の締め付けがさらに強まった。
完全に油断してたせいで出しそうになったけど、なんとかセーフ。
でも、今のタイミングは……
「てーんこ」
少しニヤつきながら名前を呼ぶと、声だけで俺が悪巧みしてるのがわかったっぽい。
振り返りつつ、拗ねたような照れたような目でこっちを見てくる。
「しっぽ、ぎゅーってするの、反則だもん……」
「……」
うん。なんだろうね、今の。ゾクッと来たわ。
あーもう、可愛いなこのキツネっこは!
「そっか、これがいいのなー?」
「や、やめっ、ぁうぅ……ばかぁぁ……!」
ふわふわした尻尾を、握ったり、撫でたり、しごいたり、揉んだり。
喘いでるのか悪態ついてるのかわからないけど、感じてるのは間違いない。
その証拠に、柔ヒダがきゅうきゅう吸い付いてくる。
「なぁ、テンコ」
「なによぉ……っふ……くぅぅ……♪」
尻尾弄りは続行したまま、腰を軽くグラインドさせての攻めも追加。
上下左右とか回転させてみたりとか、締め付けてくる肉壁に擦り付ける。
ただ、テンコを攻めるぶん俺自身にもその刺激は返ってくるので。
2人してゆっくりと、でも着実に射精への階段を上がっていく。
「俺も好きだ。大好きだぞ」
「なんの、はぅん、話ぃ……?」
さっき、照れ臭くて言えなかった返事。
テンコは何のことだかわかんないかもだし、俺も今ふと思い出したんだけど、なんか言いたくなった。
俺の頭も、エッチしてる間に蕩けてきたのかも。
「あ、そろそろ、来る……!」
「うん……わたしのナカで、びくびくしてるよぅ……」
そうこうしてるうちに、限界が迫って来る。
テンコはまだ余裕ありげなのが、ちょっと情けない気もするけど。
気持ちいいもんは気持ちいいし、出そうなもんは出そうなんだから仕方ない。
とはいえ、先にイくのもなんだかなあ、俺にも意地ってもんが――
「よぉくん、我慢しないでいいから……」
「く……うっせ……ぇ」
「無理して射精ガマンしても、わたし気持ち良くないよ……?」
「ッ……」
「よぉくんが気持ち良くなってくれたら、そのほうがわたし、幸せだもん……」
ホントに、こいつって奴は。
なんでこんなに――!
「あっ、よぉく、ぅあ、あああぁぁぁああ〜〜〜!」
テンコの腰を抱きしめるようにして、1番奥までひと息に押し込む。
亀頭の先端を子宮口に密着させて、そのさらに奥へと精液を注ぎ入れた。
びゅくん、びゅくんと、まるで心臓が腰にあるかのような鼓動が体内に響く。
ようやく射精が終わると、一気に全身から力が抜けた。
襲ってくる脱力感に立っていられなくて、思わず尻餅をつく。
その拍子にズルリと抜けたムスコは、まだ硬くそそり立ったまま。
それどころか、今まで見たことのない逸物になってる気もする。
おかしい。自家発電じゃ2回も出せば萎えてるハズなのに。
「っは、はあっ……はぁ」
ともかく、ぱったり倒れて仰向けになる。
冷静に振り返れば、初めて同士のくせに後背位で、しかも抜かずの2ラウンド。
俺達、何気にスゴイことをしてしまったんじゃないか……。
などと、勃ったままなのに賢者になって初体験を振り返ってたら。
「よぉくん、わたし……もっと、したいな」
「えっ」
すっかりやり遂げた気分だった俺に、テンコからまさかのアンコール。
驚いて視線を向ければ、俺の棒に手をかけようというまさにその瞬間だった。
止める間もなく幹を握られ、手の平でやわやわと軽く刺激される。
「よぉくんだって、まだこんなに元気……ん」
「そ、そこは……ぁうぅ」
そう言ってテンコが顔を寄せたのは肉棒の根本、つまり玉の部分。
男の体で最も敏感なそこを唇でくわえて、あむあむと軽く挟んできた。
思わず声を漏らすと、いたずらっぽい表情でこっちを見てくる。
わかった、コイツ俺がさっき耳とか尻尾を散々いじめた仕返しのつもりだ。
「ふぁ……よぉくんのお稲荷さん、おいし♪」
玉袋に吸い付かれるのは、男としてちょっと怖い。どうしても弱点だし。
でも好きな女にそういう奉仕をされてる、ってのはゾクゾクして、いい気分っていうか気持ちいいっていうか。
そんな俺の葛藤を知る由もなく、テンコは口撃を加えてくる。
玉を手の上で転がしたり揉んだりしながら裏筋を舐め上げ、亀頭にキス。
先っぽを唇で挟んで固定すると、舌先を器用に動かして鈴口を弄る。
「くぅ……いや、テンコ、ちょっと休憩とか……」
「いいよ。よぉくんはそのまま寝てて。今度はわたしが動くから」
俺の提案を即答で否決すると、テンコは俺の上に跨がってきた。
もっと正確に言うなら、『俺のムスコの上に』跨った。
その状態のまま、テンコは腰を前後にスライドさせ始める。
裏筋がちょうど陰唇にあてがわれ、そこから漏れ出る粘液で幹がコーティングされる。
「お、おい?」
「だいじょーぶ、最後はちゃんとナカで出させてあげる。あ、でも……このまま出して、よぉくんのカラダに飛び散ったのを舐めるのもアリかも……?」
そう言って俺を見る目は、淫欲にとろけてたけど冗談を言ってる感じじゃなかった。
いつもの穏やかな眼差しはどこへやら、完全に俺を襲う気満々なケモノの目だ。
俺が言いたかったのはそういうことじゃないんだけど、もし止めても今のテンコは止まらないだろうことはわかった。
「うん、やっぱりナカがいいなぁ」
もう好きにしてくれ……。
俺はテンコのなすがままにされることを覚悟して、気の済むまでさせることにした――
* * * *
気が済むまでヤらせてたらいつのまにか寝てたみたいで、目を覚ましたら朝になってた。
あの後は騎乗位に始まって、背面騎乗位では尻尾を弄り、対面座位で胸を堪能。
尻尾を尻に入れられて無理やり射精させられたりもしたし、足で踏まれたりもした。
そんな最中も終始テンコはノリノリで、今まで知らなかった新たな1面を見たような気がする。
てか、エッチはかなり体力を使うから疲れるって思ってたのに、割と平気だったな。
朝、リビングで顔を合わせてからお互いになんか気まずくて話ができないカンジだったけど、いざ喋ってみればいつも通り普通に話せた。
……起きたとき、隣にテンコがいなくてちょっと焦ったのは秘密だ。
で、今はテンコと2人で朝食中。
1人で先に起きて作ってくれてたみたいで、残り物を温めただけじゃないのはよくわかる。
味付けは母親の奈緒おばさん譲り。たまにごちそうになる隣家のご飯と同じ味がした。
「で、狐ってマジなの?」
「だからそう言ったじゃない」
テーブルの対面、2本の尻尾をふりふりと動かしながらテンコはジト目でこっちを睨んでくる。
本気でコスプレだと思ってたの、けっこう気にしてるのかも知れない。
「つってもなぁ……」
いきなり妖怪って言われても、信じられないだろ、普通に考えたら。科学万能な現代で妖怪とか。
そんな感じのことを言うと、テンコからの答えは予想外なものだった。
「でも、けっこう人間に混じって生活してるよ? B組の学級代表はカラス天狗だし、C組の大木さんもわたしと同じ稲荷だし、当然、お母さんもそうだし」
「マジかよ」
B組の学級代表といえば、校内で成績No.1の女生徒。
でもそれを鼻にかける素振りもないってんで、男女関係なく慕われ、頼りにするやつが多かったってのを聞いてる。
C組の大木は、その美貌と穏やかな性格で校内でも1、2を争う美人として男子の間で有名な生徒だった。
『だった』って過去形なのは、去年の夏休みにどこかのクラスの何とかってやつと付き合うことになったから。
あ、昨日の卒業式には彼氏と2人で欠席してたとかって誰かが言ってたな。
「だから……ヨーくんも、妖怪のお父さんになるんだよ?」
「ぶっ!? げほ、げほっ!?」
「やっ、きたないなあもう」
テンコの爆弾発言に、つい白米を噴き出した。いきなり何言い出すんだコイツ。
まだ1回シただけなのに、子どもとかそういうのは早いっての!
……うん、ナマでした奴が言えることじゃないってのはわかってるけど。
「ねえ、ヨーくん」
「なんだよ……」
「そういうわけで。不束者ですが、末永くよろしくお願いします」
いじらしく眉をハの字にして微笑みながら、左手を差し出してくる。
これって、アレだよな。つまり――
「……あいよ」
俺はその答えを考えて出したのか、考えなかったのか。
それはわからないけど、自然と俺はその手を握り返していた。
そうして手をとると、テンコは手をギュッと掴んで離せないようにして、俺の左手の薬指にキスをした。
「えへへ……指輪の代わり。ほら、ヨーくんも」
「わーったよ」
ずっと繋いだままの手をグイグイこっちに押し付けてくるから、俺も同じようにテンコの左薬指に口づける。
「ちゃんとした指輪も待ってるからね」
「はいはい」
「そんじゃ、メシ食ったら布団でも洗うか」
「あー……ヨーくん。それ、たぶん、無理だよ」
「なんでだよ」
ちょいちょいと窓を指さすテンコ。ただ、その窓からは太陽の光がサンサンと降り注いでいる。
無理どころか、とんだ洗濯日和だと思う。
それでも無理だと言い張るので、テーブルから立ち上がって窓に近づくと――
「今日もかよ……」
遠目からでは見えないような細かい雨が降っていた。快晴なのに。つまり、天気雨。
「ゴメンね」
「なんでお前が謝るんだよ」
「昨日のは大木さんだけど、今日のはあたしだから」
「はぁ?」
要領を得ない俺に、テンコは晴れのなか降る雨を見ながら言った。
ヨーくん、知ってる? 天気雨ってね。
『狐の嫁入り』とも言うんだよ。
卒業式当日の朝、家を出たら天気雨が降ってた。
空模様はどう見ても晴れてるのに傘がいるってのはなんか変な気分だ。
雨の強さはそれほどでもないけど、微妙にテンションが落ちる。
「そ、そうだね」
なんとなく堅い顔で返事をしたのは、横を歩く小薄 典子(こうす のりこ)。
俺んチの隣にある豆腐屋の1人娘で、いわゆる幼馴染ってやつ。
高校に上がって告白してからは、彼女でもあったりする。
ただ変なところでお堅くて、最後の一線はなかなか越えさせてくれない。
「なんだテンコ、緊張してんのか?」
言いながら、彼女の頭をぽんぽんと軽くたたく。
テンコってのは小さい頃に俺がつけた典子のあだ名。
まあ、俺の他にそのあだ名で呼ぶやつはいないんだけど。
「ちょ、ちょっと、ヨーくんっ」
テンコが首を振って俺の手を払うと、胸あたりまである黒髪が揺れた。
なんかコイツ、今朝は家の前で合流してからずっとそわそわしてるんだよな。
小中の卒業式はこんなにガチガチじゃなかったハズだけど。
「ヨーくんは緊張してないの?」
「するわけねーだろ、何回リハやらされたと思ってんだ」
テンコはなんかムッとした感じで言い返してくるけど、もう俺の頭は式の間どうやってヒマをつぶすかに移ってる。
卒業生の名前を呼んでるときとか、エライ人たちが話してるときとか。
しかも俺の名前は阿部 揚介(あべ ようすけ)、そのうえA組……早くに呼ばれるもんだから、後がなおさらヒマになるんだよな。
「つか、雨が降ってんじゃ校長とかも晴れの日って言えねーな」
「ヨーくん、それオヤジギャグ」
「へ?」
「え? ハレの日って、天気のことじゃないのは知ってる……よね?」
「え……あ、と、当然だろ! 馬鹿にすんな!」
マジか。ずっと天気の晴れだと思ってたのに。
「ふふっ」
笑われた。ちくしょう。
まあ、テンコの緊張もちょっとはほぐれたっぽいし、結果オーライってことで。
そんな感じでどーでもいいことを喋りながら、俺たちは学校へ向かうのだった。
* * * *
式が終わった後はいつもつるんでる奴らと遊びに行って、アッという間に夜。
テンコは何だか用事があるってんで、夕方には帰った。
お祭りテンションにかこつけたらもしかして……とか考えてたのに。無念。
親父たちはあまり遅くならないで帰ってこいって言ってたけど、家に着く頃にはもう12時になりそうだった。
ま、いいよな。卒業式だったんだし。
ちょっとくらい帰りが遅くなるのは仕方ないってもんだろ。
「ただいまー、と」
玄関を開けたら、
「ヨーくん……お、お帰り……」
「あれ? テンコ?」
白い和服を着たテンコが、玄関先に正座してた。
「お前、なんでウチにいんの? しかもこんな夜中に」
「ちょっと話があって……ついてきて」
「お、おう」
なんでウチにテンコがいるのかはわからないけど、とりあえず言われるままにテンコの後についていく。
「はい、到着」
「到着っつってもなあ」
着いたのは、リビングの隣にある和室。
普段は親父がゴロゴロしてる畳には、なぜか新品っぽい布団が敷いてあった。
端の方に服掛けとハンガーがあるし、一応、上着とカバンをそこに。
「ヨーくん」
「ん?」
すると、テンコは布団のすぐ横に正座して俺を呼んだ。
俺はまだ何がなんやらなんで突っ立ってたんだけど、
「ヨーくんも正座するの」
「はいはい」
ポンポンと畳を叩いてそう言うんで、わけがわからないながら俺も正座。
「こ、これから、私たちの『卒業式』を始めます!」
「……はぁ?」
なに言ってんだコイツ?
「悪いテンコ、お前がなに言ってんのかわかんない」
「な、なにって……その、あの……うぅ〜〜」
布団と俺との間で目を泳がせながら、テンコは赤面する。
……あれ?
夜。
布団。
俺。
テンコ。
……え、そういうこと?
「テ、テンコ」
声が震えてるのが自分でわかった。
やばい、意識したら一気に緊張してきたぞ。落ち着け俺。
「……なに」
「親父とか、お袋とか、あ、えっと」
「う。……出かけるって……言ってた……」
お膳立てまで完璧じゃねえか。
そして俺の言葉で、テンコも俺が気付いたことがわかったっぽい。
そわそわもじもじ動いて、もう床を見るような勢いで俯いてる。
「じ、じゃあ……始める、か?」
「ちょ、ちょっと待って」
テンコの方に身を乗り出そうとしたら、ストップかけられた。
ここまで来て、お預けとかドッキリとかじゃないだろうな。
今まで散々我慢してきたんだぞ。こんな据え膳、もう止まらないっての。
「ヨーくん、目つむってて。私がいいって言うまで開けちゃダメだからね」
「わ、わかった」
衣擦れの音とか気配とかで、テンコが近づいてくるのを感じる。
と、いきなりまぶたに何かが触れた。どうも何か塗ってるっぽくて、ちょっとひんやりする。
それが終わると、また衣擦れの音がしてテンコが離れるのがわかった。
「はい、もういいよ」
そう言われて目を開けると――
「……コスプレ?」
「ち、違うよ!」
テンコの見た目が、いろいろと変わってた。
黒かったハズの髪は、山吹色って言うの? 少し茶色がかった金髪になってるし、頭の上には動物みたいな三角耳がついてる。
「そか、そうだったのな」
「わ、わかった?」
ああ、わかった。
「お前はコスプレ大好きっ子だったんだな……」
「え」
「んで、アレだ。コスプレHで初めてをしたかったけど、俺がそれをどう思うかって悩んでて、だから今までさせてくれなかったんだろ? だけど決心してカミングアウトしてくれたんだよな」
「ちっがーーう!?」
大声とともにテンコが身を乗り出してきて、四つん這いの格好になる。
おしりの辺りからは尻尾も生えてて、テンコのこだわりを感じさせた。
「私は人間じゃなくて、狐なの! 狐の妖怪で、稲荷っていうの!」
「うん、わかった。ちょっとビビッたけど、似合ってるぞ」
「わかってない!? 設定とかじゃないんだよ!?」
大丈夫、お前がコスプレ好きでも、俺はお前を嫌いになったりはしない。
だから。
「……ヨーくん? どしたの?」
俺はテンコの肩に片手を置き、もう片方の手をその頭の後ろに回して。
「ちょ、ヨーくンむッ――!?」
もう限界だったし、ちょっと強引だけど襲うわ。
コスプレのインパクトはデカかったけど、性欲を消し去る程じゃなかったから。
「……いいんだよな?」
いったん唇を離して、改めて聞く。
少し間が空いてから、テンコは小さく頷いた。
もう一度キスをして、今度は舌をテンコの唇へとのばす。
軽く入口をつつくと、テンコは口を開いてそれを受け入れてくれた。
俺が入るのとほぼ同時、テンコの側からも舌を絡めてくる。
唾液が、舌が、唇が混じりあっていく、なんとも言えない感覚。
ただ快楽のまま、テンコの口を味わい尽くす。
「んふっ……ぁむぅ……」
テンコの半開きの口から吐息が漏れる。
その艶っぽい声色に、俺の興奮はますます加速していく。
結局、その後もしばらく俺たちのディープキスは続いた。
やっと離れたときにはお互いすっかり息は荒いし、相手の口内で味わってないところは無いってくらいだった。
「ふふ……よぉくん……♪」
まだキスしただけなのに、テンコはすっかりトロけた瞳で微笑む。
俺も興奮のせいか心臓の拍動がやたらと早くて、胸から飛び出しそうだった。
「ほらテンコ、こっち」
すぐ横に布団があるのに、座ったまま続けるのもバカらしい。
俺はテンコの手をとって布団へ誘導、そのまま押し倒した。
「ん……ヨーくん、ほら……」
仰向けになったテンコは俺の手を掴むと、真っ白な着物の上から自分の胸に押し当てる。
見て分かるくらいに激しく上下するその胸は、ちょっと指を曲げると沈み込むくらい柔らかくて。
「わかるかな……わたし、すごくドキドキしてる……」
「お、おぅ」
いちおう生返事はするものの、俺自身が混乱ぎみで感触なんてほとんどわからない。
それでも、テンコが俺と同じ気持ちなのは目を見ればわかる。
「好きだよ、ヨーくん……世界でいちばん、大好き」
その率直な告白に、言葉で返すのはどうにも照れ臭かった。
だから俺は、そっとテンコに口付けた。俺の返事が伝わるように、何度も、細かく。
「ン……」
すっ、とテンコは俺の背中に手を回してくる。
引き寄せるでもなく、ただ撫でるような遠慮がちなおねだり。
俺はそれに応えて、できるだけ体重をかけないようにしながら身体を降ろす。
「あっ……ふふっ」
そして、お互いの身体が密着する。
テンコは一瞬だけ目を見開いたかと思えば、嬉しそうに微笑んだ。
「ヨーくん。当たってる」
「うっせ」
このシチュで硬くすんなってのが無理な話だ。
第一、そう言うテンコ自身がかなりデキあがってきてる。
息は湿っぽいし瞳は潤んでるし、腰をもぞもぞ動かして俺のを擦ってくるし。
俺は片手をテンコの頬に当てて、軽く撫でてやった。
「ひゃあっ……」
くすぐったかったのか、テンコは目を閉じて小さく喘いだ。
耳のすぐ近くで聞こえるその声に背筋がゾクゾクするのを感じながら、その手を下ろしていく。
首筋、鎖骨と来たら、当然つぎに到着するのは胸。
テンコの呼吸に合わせて、乱れた和服の胸元からたわわに実った果実がチラチラと見え隠れしてる。
「うわ……」
そこに手を滑り込ませた瞬間、手の平に驚くほど柔らかい感触。
さっき服の上から触ったときとは違って、吸い付いてくるようなモッチリ感だった。
「んっ……ちょっと待ってね」
そう言って、テンコは俺の背中に回してた手を解く。
脱がせやすいようにしてくれるなんて、よく出来た彼女だ、ホント。
自分の幸せを実感してる内に、テンコはもぞもぞ体をよじって着物を脱ぎ始めていた。
着物の襟は肩口まで落ちて、上半身はもうほとんど半裸と言っていい。
「や、もぅ……ヨーくんの目、やらしい」
うるせ、お前だって満更でもなさそうな顔してるくせに。
てか、自分から脱いでる奴のセリフじゃねーぞ。
俺はその緩んだ襟元を左右に開いて、テンコの胸をはだけさせる。
下着は着けていないので、当然生まれたままの姿が現れるワケで。
テンコの乳房は仰向けなのに潰れてない上、青い静脈が透けて見えるほど白かった。
大きな膨らみの頂上には薄ピンク色の小さな円があり、その中心ではプックリと蕾が起ち上がっている。
俺は首筋と浮き上がった鎖骨にキスしながら、やわやわと左の乳房を撫でた。
「ふぅっ……く、くすぐった……っぁ」
大きいわりに敏感なのか、表面はほんのりと赤く染まり、乳首もテンコの興奮を示してピンと立ってる。
揉んでみると、指が沈み込むように形を崩すけど、すぐに元に戻ろうと押し返してもくる。
「やあぁ……それ、すご……はぁう……ッ!?」
胸の突起をそっと摘むと、テンコは身体を小さく震わせた。
指の腹で転がしてみれば、コリコリと硬くなってるのがわかる。
軽く唇でくわえて、舌先でつついたり、舐めたり、押しつぶしたりしてみた。
「だめっ……ぃ、ぁ……お、おかしくなっちゃうからぁ」
テンコはいやいやと激しく頭を振りながらも、俺の首に腕を巻き付けている。
言葉とは裏腹に、もっとシて欲しいと言うかのように離してくれない。
だから俺もそのまま次のステップに進ませてもらうことにした。
帯の下あたり、着物の合わせ目に手を突っ込み、秘部を直に触る。
クチュリという音とともに、一気に喘ぎの声色がトーンもボリュームもアップする。
「ひぃんっ!? あ、そこ、そこはっ……」
クレバスに沿って撫でるだけでクチクチといやらしい水音が立ち、指先が暖かい液体に包まれる。
その液体の感触を頼りに手探りで秘裂を探し当て、ためしに中指を1本だけ入れてみた。
その途端にテンコの腕に力が入って、俺の顔はますます強く柔らかなクッションに押し付けられる。
2つのクッションとその間にある谷間からは、甘く安らぐような、いつまでも嗅いでいたいと思える匂いがした。
膣内でも、肉の波が指を貪るように吸い付いてきてはうごめいている。
性感帯ではないはずの指先から背筋へと、快感が走り抜けていくのを感じずにはいられなかった。
「なにこれっ……? 自分でスるのと、ぜんぜん、ちが……こんなの、知らないよぉ!」
甘い香りと声に興奮はますます加速して、指を動かしてテンコの中を探っていく。
お腹側の膣壁に触れると、テンコは全身を大きく跳ねさせた。
周りとは少し感触の違うソコが何なのか、俺のエロ知識は知っている。
「ひぁ、あ、ぅあ、あっ! く、くるっ、きちゃっ――!」
そして、その場所――たぶんGスポットを中心にナカを攻めるうち、テンコは大きくエビ反った。
そのまま何度も震えたかと思えば、その身体から力が抜けていく。
目尻に水滴を乗せた瞳はぼんやりとしたまま、少しにやけたような形の口も開けっ放し。
俺の頭を押さえていた腕も、身体の横に投げ出していた。
「テ、テンコ? 大丈夫か?」
「……はぁっ……はぁ……ぁぅぅ……」
返事もおぼろげで、息も絶え絶えな様子。
これ……イったのか? 俺の指で?
とりあえず自由に動けるようになったので、テンコの秘所を見てみることにする。
裾をめくり上げ、脱力しきった足を広げて露になったそこは、綺麗な桃色をしていた。
ぷっくりと膨らんで柔らかな外側と、時折ひくひくと動き蜜を漏らす内側。
胸に抱かれてた時とは違う、もっと刺激的な香りが鼻から入ってくる。
愛液で妖しく光る大陰唇をベロリと両開きにさせて、クリトリスを軽くつまんでみた。
「んにぃっ!?」
すると、すっかり気の抜けていたテンコが目を覚ました。
両手を俺の手に伸ばして弄るのをやめさせようとしてくるけど、力が入ってない。
皮に覆われた淫核をくりくりしながら、淫汁を垂れ流す桃色の縁取りもイジメてやる。
「ら、やっ、あ、あぁっ! も、や、あぅぁ、ま、まってよっ!」
「痛っ!?」
もっかい指を入れて中と外のダブルで攻めてやろうかと思ったけど、それは阻止された。
テンコが俺の腕に爪を立てて掴んできたからだ。
そしてそれに対する俺の文句は、口に出る前に消えた。
「もう、もう我慢できないよぉ……。はやく、よぉくんのいれてほしぃのぉ……」
切なげな声で言いながら、テンコは自分の恥肉を左右に広げていた。
大きく開いた自分の入口を見せつけるように、くいくいと腰を動かして俺を誘う。
そんなエロ過ぎる誘惑に、健全な男が抵抗できるわけもなく。
焦りと興奮とでもたつきながらも、服と下着を脱ぎ捨てた。
「テンコ……」
「ぁんっ、よぉくん……♪」
亀頭を押し当てると、テンコの淫唇は貪欲に吸い付いてくる。
擦れるたびにお互いの粘液が混じり合い、ねっとりとした音が耳を侵した。
「い、いいよな……」
「あ……そうだ。ちょっと、いい……?」
いよいよって所でまたお預けかよ。萎えるぞ。
もしかして俺、試されてんのか? どのくらいでオオカミになるかとか。
ちょっぴり拍子抜けする俺をよそに、テンコは寝返りをうって俯せになると、四つん這いで俺に尻を向けた。
獣の体位と呼ばれるだけあって、この格好だと頭の三角耳と尻尾がより強調される気がする。
「おもいっきり、きていいよ……」
「ちょ、おまっ……初めて、だよな?」
まあ、それは俺もなんだけど。
初エッチがバックとか、どうなんだろうと。
初めては愛をささやきながら正常位で……ってのは、やっぱり童貞の幻想なのか。
「感じたいの……わたしに、よぉくんを刻みつけてほしいのぉぉ……♪」
幻想でいいです。後ろからでも全然OKだよね。
お尻をフリフリしながら蕩けた声でそんなこと言うとか、反則だろマジで。
そそり立つ肉塊をとば口にあてがい、テンコの内側へと徐々に沈みこませる。
「あぁぁ……入ってきてる……くぅぅ……っ♪」
「っ……なんっだ、コレ……」
白い腰を震わせて、初めての快楽を受け止めるテンコ。
内側は潤ってるってレベルじゃないくらいに大洪水で、次々と湧き出す蜜が優しく俺の分身を包み込む。
柔らかな肉壁はさっき指を入れたときと同じように、むしろもっと貪欲に絡み付いてくる。
ただ、そういう気持ちよさとは別に、俺は熱いものを感じていた。
繋がりを通して、テンコから俺に流れ込んでくるような。
「あぅぅ……もっと……いちばん、奥までぇぇ……」
シーツに細い指先を立てて尻尾をピンと垂直に伸ばし、それでもなおテンコは俺を誘う。
尻尾は毛が逆立って、もとの倍近い太さになっていた。
ゆらゆらと左右に揺れ、ときどき腹に当たるせいでくすぐったい。
……アレ? この尻尾、動いてる?
改めて見てみると、尻尾はテンコのお尻の少し上あたりから直に生えていた。
コスプレじゃなくて、ホンモノ? そういえばさっき妖怪とかって……。
「テ、テンコ?」
今更ながらテンコに聞いてみようとしたら、
「ほしい……わたしのナカ……よぉくんで、いっぱいにしてほしいのぉぉ……♪」
「うわ!?」
その尻尾がしゅるしゅると伸びて、俺の腰に巻き付いてきた。
その状態のまま、まるで抱きしめるような動きで俺を引き寄せる。
すると、俺の肉棒は肉壷へ飲み込まれていき――
こつん。
「ぁああ……刺さってる、わたし、よぉくんに串刺しにされてるぅ……っ♪」
「あ」
媚肉を押し分け、先端がテンコの最奥に達したそのとき。
俺たちが限界まで深く繋がって1つになった、その瞬間に。
「くぁぁぁあぁぁっ!?」
さっきから感じてた熱さ、それを何百倍にも強くしたようなものが一気に全身を駆け巡った。
まるでテンコの中心にスイッチがあって、それで俺の中にあった爆弾が起爆したみたいに。
全身が熱くなって、身体の中が溶けるような、作りかえられるような感覚。
「はっ、はっ、はっ……テンコ、テンコっ!」
「よ、くん、っ! んあっ、はげし、ぃよぉっ!」
その熱に浮かされるように、俺は肉棒をテンコの中へ突きこんでいた。
頭では労ってやりたいと思ってるのに、腰の動きが止められない。
幸いなのは、テンコの身体はもう完全に俺を受け入れてるみたいで、痛みを感じてないっぽいこと。
どんなに乱暴に犯しても、膣壁と肉ヒダはもっともっととねだるようにうねり、絡み付いてくる。
俺に突かれながらのせいで言葉は途切れ途切れだけど、テンコは処女を失ったばかりとは思えないくらいによがっていた。
「く、ぐっ、う、もぅ、出ちまうっ……!」
「だ、出してぇ、あたしのナカに、ぜんぶ、だしてぇぇ!」
「ぅあ゛ッ!?」
テンコが叫ぶと、膣全体が一気に締め付けてくる。
その刺激に、射精感が込み上げてくるのを止められなくなって。
ぎちぎちにきつくなった肉壁をえぐりながら、俺は思い切り腰を突き出した。
「ああぁあぁあああ―――――!!」
「っぐ……!?」
絶頂に達したテンコが、全身を強張らせて叫ぶ。
腰に巻き付けられた尻尾も締め付けを強め、さらに俺を密着させようとして。
肉杭を打ち込んだ最奥で、俺は大量の精液を噴き出した。
今までの自家発電じゃありえない量が出てるのがわかる。
まるで、自分の身体の中身が全部出ていってるかのような感覚。
「ぁうぅ……よぉくんの、まだ出て……きゃっ!?」
「わ、わりぃ……」
腰砕けになった俺はそのまま前のめりに倒れ、四つん這いなテンコの上に被さるような形になる。
どうにか手をついてテンコが潰れないようにはしたけど、ちょっとすぐには動けそうにない。
頭がクラクラしてうまく回らないというか、手足に指示が伝わらないというか。
「ちょ……ちょっと、タンマ、な……」
「う、うん……ひゃっ」
そうは言ったけど、この体勢だとテンコのうなじ辺りに顔が来て匂いがヤバい。
髪のいい香りと1戦終えた汗の匂いとが混じって、なんていうかこう、嗅いでるとムラムラしてくる。
テンコはテンコで俺の息が首筋に当たってるみたいで、ときたま頭上の三角耳を動かしては小さな声をあげていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「んっ!? ちょ、よぉくんっ、やめっ」
小休止とはいっても、この興奮と匂いの中で息が整うはずがなく。
動くようになった手を伸ばして、さっきからぴこぴこ動くテンコの三角耳に触れる。
滑らかな毛と柔らかな皮膚とが作り出す触り心地は、予想外に良いものだった。
「もしかして、敏感なトコだったりすんの?」
「そ、そだよっ。だからやめ――ひゃっ!?」
それはいいことを聞いた。
俺は耳全体を手の平で包み込むようにして、内側に人差し指を入れてみた。
内側は毛が少なめなのか皮膚の暖かさが感じられて、ぐにぐにしてみたくなる。
「だ、ダメっ、なか、こしょこしょしちゃ、だめぇっ」
しかも、外側よりさらに敏感らしい。
指の腹で軽く擦ってやると、逃げるように首を後ろに反らせる。
すると、背後から覆いかぶさる俺の目の前にテンコの頭頂部、つまり耳が来るわけで。
「……あむっ」
「んっ……ょ、よぉくん? だ、ダメだって、耳いぢめるの、はぅぅ、ダメぇぇ……」
唇にくわえてはむはむしてやると、テンコの抗議の声は小さくなった。
自分で弱点と言うだけあって、ずっと小さく震えたり喘いだりするのが止まらないっぽい。
かと言って一方的に俺だけが攻めているかといえば、そうでもなかったり。
テンコの意思か無意識かはわからないけど、繋がったままの陰唇が甘噛みを返してくる。
そうなると、さっきの射精で落ち着いた"あの熱"がまた復活してくるわけで。
テンコから流れ込んで俺の体を1周し、腰の辺りに溜まっていくような。
「テンコ。もう1回……いくぞ」
「はぅ……うん、いいよ……また、いっぱい出してぇ……」
耳元でそう囁いて、ゆっくりと腰を動かし始める。
さっきのガンガン突くセックスとは変えて、テンコの中を味わうようにゆるゆると。
1回戦を済ませた余裕か疲れか、多少は理性を残していられる。
そんな俺の動きに対応したのか、はたまたテンコも小慣れてきたのか。
さっきまできつかった膣道は、俺を受け入れ包み込むのに適度な締まりぐあいになっていた。
「あー……これ、イイな……」
「はあぁっ……私も、気持ちいいよぉ……」
じんわりと、粘膜から染み込んでくるような快感。
少し焦れったいけど、それがいっそう気持ちよさを引き立てるというか。
テンコも楽しんでいるようで、俺が出入りするのに合わせて甘い息を漏らす。
これが正常位ならキスでもしてやりたいところなんだけど。
今はバックなんで、俺はとりあえずテンコのうなじにキスを落とした。
「やんっ……アトが残っちゃうよぉ♪」
いやよいやよも好きのうち、とはよく言ったもんだと思う。
言われたのは文句だけど、テンコの声色は完全に愉しんでるそれだった。
だったら、その期待に応えてやるのが男の義務。
うっすらと汗が滲む首筋に、キスマークが残るように強めに吸い付いた。
「それ、背中ぞくぞくってするよぅ……」
そのまま舌を這わせたり甘噛みしたりと、首周りにいじわる。
軽い刺激を与えてやる度に、テンコはきゅうきゅうと締め付けて反応する。
落ち着かないのか、まだ巻き付いたままの尻尾の先端がわさわさ動く。
軟らかい毛で腹のあたりを撫で回されて、すげーくすぐったい。
「っ、この……」
「ひぅ!?」
尻尾を掴んだらテンコはピンと耳を立て、陰穴の締め付けがさらに強まった。
完全に油断してたせいで出しそうになったけど、なんとかセーフ。
でも、今のタイミングは……
「てーんこ」
少しニヤつきながら名前を呼ぶと、声だけで俺が悪巧みしてるのがわかったっぽい。
振り返りつつ、拗ねたような照れたような目でこっちを見てくる。
「しっぽ、ぎゅーってするの、反則だもん……」
「……」
うん。なんだろうね、今の。ゾクッと来たわ。
あーもう、可愛いなこのキツネっこは!
「そっか、これがいいのなー?」
「や、やめっ、ぁうぅ……ばかぁぁ……!」
ふわふわした尻尾を、握ったり、撫でたり、しごいたり、揉んだり。
喘いでるのか悪態ついてるのかわからないけど、感じてるのは間違いない。
その証拠に、柔ヒダがきゅうきゅう吸い付いてくる。
「なぁ、テンコ」
「なによぉ……っふ……くぅぅ……♪」
尻尾弄りは続行したまま、腰を軽くグラインドさせての攻めも追加。
上下左右とか回転させてみたりとか、締め付けてくる肉壁に擦り付ける。
ただ、テンコを攻めるぶん俺自身にもその刺激は返ってくるので。
2人してゆっくりと、でも着実に射精への階段を上がっていく。
「俺も好きだ。大好きだぞ」
「なんの、はぅん、話ぃ……?」
さっき、照れ臭くて言えなかった返事。
テンコは何のことだかわかんないかもだし、俺も今ふと思い出したんだけど、なんか言いたくなった。
俺の頭も、エッチしてる間に蕩けてきたのかも。
「あ、そろそろ、来る……!」
「うん……わたしのナカで、びくびくしてるよぅ……」
そうこうしてるうちに、限界が迫って来る。
テンコはまだ余裕ありげなのが、ちょっと情けない気もするけど。
気持ちいいもんは気持ちいいし、出そうなもんは出そうなんだから仕方ない。
とはいえ、先にイくのもなんだかなあ、俺にも意地ってもんが――
「よぉくん、我慢しないでいいから……」
「く……うっせ……ぇ」
「無理して射精ガマンしても、わたし気持ち良くないよ……?」
「ッ……」
「よぉくんが気持ち良くなってくれたら、そのほうがわたし、幸せだもん……」
ホントに、こいつって奴は。
なんでこんなに――!
「あっ、よぉく、ぅあ、あああぁぁぁああ〜〜〜!」
テンコの腰を抱きしめるようにして、1番奥までひと息に押し込む。
亀頭の先端を子宮口に密着させて、そのさらに奥へと精液を注ぎ入れた。
びゅくん、びゅくんと、まるで心臓が腰にあるかのような鼓動が体内に響く。
ようやく射精が終わると、一気に全身から力が抜けた。
襲ってくる脱力感に立っていられなくて、思わず尻餅をつく。
その拍子にズルリと抜けたムスコは、まだ硬くそそり立ったまま。
それどころか、今まで見たことのない逸物になってる気もする。
おかしい。自家発電じゃ2回も出せば萎えてるハズなのに。
「っは、はあっ……はぁ」
ともかく、ぱったり倒れて仰向けになる。
冷静に振り返れば、初めて同士のくせに後背位で、しかも抜かずの2ラウンド。
俺達、何気にスゴイことをしてしまったんじゃないか……。
などと、勃ったままなのに賢者になって初体験を振り返ってたら。
「よぉくん、わたし……もっと、したいな」
「えっ」
すっかりやり遂げた気分だった俺に、テンコからまさかのアンコール。
驚いて視線を向ければ、俺の棒に手をかけようというまさにその瞬間だった。
止める間もなく幹を握られ、手の平でやわやわと軽く刺激される。
「よぉくんだって、まだこんなに元気……ん」
「そ、そこは……ぁうぅ」
そう言ってテンコが顔を寄せたのは肉棒の根本、つまり玉の部分。
男の体で最も敏感なそこを唇でくわえて、あむあむと軽く挟んできた。
思わず声を漏らすと、いたずらっぽい表情でこっちを見てくる。
わかった、コイツ俺がさっき耳とか尻尾を散々いじめた仕返しのつもりだ。
「ふぁ……よぉくんのお稲荷さん、おいし♪」
玉袋に吸い付かれるのは、男としてちょっと怖い。どうしても弱点だし。
でも好きな女にそういう奉仕をされてる、ってのはゾクゾクして、いい気分っていうか気持ちいいっていうか。
そんな俺の葛藤を知る由もなく、テンコは口撃を加えてくる。
玉を手の上で転がしたり揉んだりしながら裏筋を舐め上げ、亀頭にキス。
先っぽを唇で挟んで固定すると、舌先を器用に動かして鈴口を弄る。
「くぅ……いや、テンコ、ちょっと休憩とか……」
「いいよ。よぉくんはそのまま寝てて。今度はわたしが動くから」
俺の提案を即答で否決すると、テンコは俺の上に跨がってきた。
もっと正確に言うなら、『俺のムスコの上に』跨った。
その状態のまま、テンコは腰を前後にスライドさせ始める。
裏筋がちょうど陰唇にあてがわれ、そこから漏れ出る粘液で幹がコーティングされる。
「お、おい?」
「だいじょーぶ、最後はちゃんとナカで出させてあげる。あ、でも……このまま出して、よぉくんのカラダに飛び散ったのを舐めるのもアリかも……?」
そう言って俺を見る目は、淫欲にとろけてたけど冗談を言ってる感じじゃなかった。
いつもの穏やかな眼差しはどこへやら、完全に俺を襲う気満々なケモノの目だ。
俺が言いたかったのはそういうことじゃないんだけど、もし止めても今のテンコは止まらないだろうことはわかった。
「うん、やっぱりナカがいいなぁ」
もう好きにしてくれ……。
俺はテンコのなすがままにされることを覚悟して、気の済むまでさせることにした――
* * * *
気が済むまでヤらせてたらいつのまにか寝てたみたいで、目を覚ましたら朝になってた。
あの後は騎乗位に始まって、背面騎乗位では尻尾を弄り、対面座位で胸を堪能。
尻尾を尻に入れられて無理やり射精させられたりもしたし、足で踏まれたりもした。
そんな最中も終始テンコはノリノリで、今まで知らなかった新たな1面を見たような気がする。
てか、エッチはかなり体力を使うから疲れるって思ってたのに、割と平気だったな。
朝、リビングで顔を合わせてからお互いになんか気まずくて話ができないカンジだったけど、いざ喋ってみればいつも通り普通に話せた。
……起きたとき、隣にテンコがいなくてちょっと焦ったのは秘密だ。
で、今はテンコと2人で朝食中。
1人で先に起きて作ってくれてたみたいで、残り物を温めただけじゃないのはよくわかる。
味付けは母親の奈緒おばさん譲り。たまにごちそうになる隣家のご飯と同じ味がした。
「で、狐ってマジなの?」
「だからそう言ったじゃない」
テーブルの対面、2本の尻尾をふりふりと動かしながらテンコはジト目でこっちを睨んでくる。
本気でコスプレだと思ってたの、けっこう気にしてるのかも知れない。
「つってもなぁ……」
いきなり妖怪って言われても、信じられないだろ、普通に考えたら。科学万能な現代で妖怪とか。
そんな感じのことを言うと、テンコからの答えは予想外なものだった。
「でも、けっこう人間に混じって生活してるよ? B組の学級代表はカラス天狗だし、C組の大木さんもわたしと同じ稲荷だし、当然、お母さんもそうだし」
「マジかよ」
B組の学級代表といえば、校内で成績No.1の女生徒。
でもそれを鼻にかける素振りもないってんで、男女関係なく慕われ、頼りにするやつが多かったってのを聞いてる。
C組の大木は、その美貌と穏やかな性格で校内でも1、2を争う美人として男子の間で有名な生徒だった。
『だった』って過去形なのは、去年の夏休みにどこかのクラスの何とかってやつと付き合うことになったから。
あ、昨日の卒業式には彼氏と2人で欠席してたとかって誰かが言ってたな。
「だから……ヨーくんも、妖怪のお父さんになるんだよ?」
「ぶっ!? げほ、げほっ!?」
「やっ、きたないなあもう」
テンコの爆弾発言に、つい白米を噴き出した。いきなり何言い出すんだコイツ。
まだ1回シただけなのに、子どもとかそういうのは早いっての!
……うん、ナマでした奴が言えることじゃないってのはわかってるけど。
「ねえ、ヨーくん」
「なんだよ……」
「そういうわけで。不束者ですが、末永くよろしくお願いします」
いじらしく眉をハの字にして微笑みながら、左手を差し出してくる。
これって、アレだよな。つまり――
「……あいよ」
俺はその答えを考えて出したのか、考えなかったのか。
それはわからないけど、自然と俺はその手を握り返していた。
そうして手をとると、テンコは手をギュッと掴んで離せないようにして、俺の左手の薬指にキスをした。
「えへへ……指輪の代わり。ほら、ヨーくんも」
「わーったよ」
ずっと繋いだままの手をグイグイこっちに押し付けてくるから、俺も同じようにテンコの左薬指に口づける。
「ちゃんとした指輪も待ってるからね」
「はいはい」
「そんじゃ、メシ食ったら布団でも洗うか」
「あー……ヨーくん。それ、たぶん、無理だよ」
「なんでだよ」
ちょいちょいと窓を指さすテンコ。ただ、その窓からは太陽の光がサンサンと降り注いでいる。
無理どころか、とんだ洗濯日和だと思う。
それでも無理だと言い張るので、テーブルから立ち上がって窓に近づくと――
「今日もかよ……」
遠目からでは見えないような細かい雨が降っていた。快晴なのに。つまり、天気雨。
「ゴメンね」
「なんでお前が謝るんだよ」
「昨日のは大木さんだけど、今日のはあたしだから」
「はぁ?」
要領を得ない俺に、テンコは晴れのなか降る雨を見ながら言った。
ヨーくん、知ってる? 天気雨ってね。
『狐の嫁入り』とも言うんだよ。
12/05/25 03:08更新 / かめやん