おまけA:初期構想
※流れだけの試作なので、全編通して会話文のみです。
約22年前、病院にて
「む、そちらもご懐妊か?」
「ええ。隣2軒が揃って妊娠なんて、なんだか不思議ね」
「これも何かの縁、お互い妊婦どうし、協力していこう」
「そうね。あらためて今後ともよろしく」
「ああ、よろしく」
「ところで、もし私の子が男の子だったら、未来の婿にどう?」
「気が早すぎるだろう。何年先の話なんだ」
「計画を立てるのはあなたの特技でしょ?」
「む。それは……そうだが」
「娘と幼なじみがくっつく計画を立ててみない?」
「どんな人生計画だ」
「楽しみね――幼い頃から姉弟のように育った2人。でも、だんだんとお互いを異性として意識し始めて……きゃっ♪」
「いや、だからまだ男が生まれると決まったわけでもないだろうに……」
約21年前、とある民家にて
「ふふふ、可愛いわね。えい、にくきゅうっ。てい、尻尾♪」
「あまり人の娘で遊ばないでくれ」
「あら、ごめんなさい。でも、そっちだって私の息子を撫で回してるじゃない」
「……まあ、たしかに」
「それとも、興味があるのは息子のムスコなのかしら?」
「むう……このかわいらしいモノが、やがて夫のような逞しいモノに……って、何を言わせるのだッ!!」
「そして、この子のココから私たちの孫が生まれてくるのね♪」
「ええい、いい加減にしろっ!!」
がつん。
「あうう、怒られちゃった……エジェレちゃん、あなたのママは怒りんぼね?」
「〜〜〜ッ!!」
約18年前、とある民家にて
「うふふ、あの子たちまた一緒に眠ってる。ホントに姉弟みたいね」
「そうだな。しかし、そんなことを言っているうちに……」
「そうねえ、やっぱり男女の仲になっちゃうのかしら」
「いや、だからそうと決まっては……」
「えー、つまんなーい」
「……私は、たまにあなたが人間なのが信じられないことがあるよ」
「だあってつまんないじゃなーい」
「しかし、本人の意思というものが」
「だからぁ、本人がそう思うように誘導するのよ♪」
「……どうやって」
「まっかせなさーい。人間の特技は騙すことなんだから」
「……恐ろしい、話だ」
「うっふふふふふぅ」
約16年前、とある民家にて
「かあさま、おはなしがあります」
「どうした、エジェレ」
「きょう、レイスにけっこんをもうしこんだのですが」
「何!?」
「おとなになったらいいよ、というへんじでした」
「あ、ああ……それで、何故私にその話を?」
「わたしを、りっぱなおよめさんになれるようにしてほしいのです」
「……少し、質問がある」
「なんですか?」
「もしかして、隣のおばさまに何か言われたのか?」
「いっしょにいたいとおもうのは、あいてのことがすきだからだ、と」
「お前は、レイスくんと一緒にいたいのか?」
「はい」
「いつからだ?」
「……まいにちレイスといっしょで、おばさまにいろいろいわれるうちに……」
(人間とは、さても恐ろしい存在だな……他者の心すら操るとは)
「……わかった。予定より早いが、炊事洗濯掃除に夫の管理、すべて教えよう」
「はいっ!」
約11年前、公園にて
「やっと見つけたぞ、レイス」
「げえっ、エジェレ! やばっ……」
「逃がすか!」
「ぐえッ!?」
「さあ、もう門限は過ぎているのだ。帰るぞ」
「くそっ、離せよ!」
「ダメだ。お義母……おばさまから、君のことを任されている」
「お前、なんでそんなに俺に付きまとうんだよ!」
(父様とお義父様の話では、男女はこの時期が一番離れやすいらしいからな……)
「君を管理するのは、(妻の)私の役目だからだ」
(多少ムリヤリにでも、レイスに最も近い位置をキープしなければ!)
約8年前、帰り道にて
「あーあ、最近はどいつもこいつも色気づきやがって」
「何の話だ?」
「お前もわかってんだろ、学校が浮ついてんのが」
「ああ……好きな相手にチョコレートを渡すというアレか」
「すぐその話になるせいで、ダベっててもちっとも楽しくねえ」
「安心しろ、君には私が作ってやる。飛び切り手をかけた特別製をな」
「へーへー、そりゃどーも」
(そのせいで俺は男子全員から妬まれてハブられてんだよ!)
「なんなら、チョコレートだけでなく私自身もつけようか?」
「……。勘弁してくれ……」
(チクショウ! なにちょっと期待してんだ俺のバカ野郎!)
約6年前、帰り道にて
「あーもー、なんだよ進路調査って」
「なんだ、まだ決められないのか?」
「うっせーな、配られた瞬間書いて提出できるお前が異常なんだよ」
「しかし、いつまでも子供ではいられないのだ。そろそろ将来のことを意識するべき時期に入ってきていると思うぞ?」
「わかってるよ、そんなことはよ」
「計画はしっかり立てておいて損はないからな」
「そういえば、お前は何て書いたんだ?」
「……わからないのか?」
「わかるワケねーだろ。なんでわかって当然みたいな顔してんだ。で?」
「君の妻に決まっているだろう」
「……えーと、イマナンテイイマシタカ?」
「だから、君の妻、嫁、家内、細君、配偶者、ハニー、だ」
「とりあえず、お前の意見がまったく参考にならないことはよくわかった」
「できれば、君は毎日定時に帰ってこれる職に就いてくれるとありがたい」
「……一応聞いとくが、なんでだ?」
「その方が規則正しい生活計画が立てやすいからだ。それに、夜の性活もより計画的に送れ「もういいから黙れよお前」
約3年前、とある民家のリビングにて
「ふぁ〜あっと、母さん、朝メシは……」
「おはよう、レイス」
「あら、やっと起きてきたわね。もう朝ごはん出来てるわよ」
「……母さん、なんでウチの台所にエジェレがいんの?」
「お手伝い。あなたの分はエジェレちゃんが作ってくれたのよ」
「今日から働きに出るのだろう? 弁当も用意したから、持っていってくれ」
「いや、待て。なんでここまですんだよ、普通に母さんが作れば」
「母さん、栄養とか考えるの苦手でしょ? エジェレちゃんはそういうところも考えてくれるから助かるわ〜」
「では、夕飯もお手伝いさせていただいても」
「全然オッケーよ。あの子の分、全部任せるわ」
「おーい。俺の声、聞こえてますかー?」
「当然聞こえてるとも。ところで、早く食べないと仕事に遅れるぞ」
「げ、マジかよ……いただきます」
もぐもぐ。
「味はどうだ? 口に合うか?」
「……美味いよ」
「そうか、それはよかった」
(ひとまず成功のようです、お義母様)
(アレは相当おいしいと思ってる顔よ、いい滑り出しだわ)
約2年前、とある民家にて
「ふわぁ……あれ、母さん、エジェレは?」
「なんか風邪ひいちゃったらしいわよ。お見舞い行ってあげたら?」
「んー……」
「まあ、とりあえず朝ごはん、ね」
「なんか、母さんの料理久しぶりだな」
「毎日エジェレちゃんの愛情料理だったからねー? うふふ」
「うっさいな! ……あれ?」
「どうかした?」
「いや、別に……」
(なんか、あんまり美味いと思えないな……)
「やっぱり、エジェレちゃんの料理がいいみたいね?」
「そ、そんなことねーよ」
「ふふっ、素直じゃないんだから」
同日、とある民家にて
「おじゃましまーす」
「おや、レイスくん。君がウチに来るのは久しぶりだな」
「そうっすね。アイツの具合はどうです?」
「心配する程じゃないさ。よければ様子を見ていってくれ」
「母様……その、必要は、ありません……ケホッ」
「エジェレ!?」
「やあ、レイス……わざわざ……会いに、来てくれたのか……」
「バカお前、顔色悪いぞ? 起きてきて大丈夫なのか?」
「エジェレ……まだ起きてくるには休養が足りないはずだ、寝ていろ」
「しかし、レイスが、来てくれた、と、あっては……ゴホ、ゴホッ」
「おいおい、ホントに大丈夫かよ」
「な、なんのこれしき……」
「あーもー、危なっかしいな。ほれ、おぶってやるから乗れ」
「レ、レイス!?」
「部屋まで運んでってやっから。おとなしく寝てろよ」
「……くぅん」
「ヘ、ヘンな声出すなよバカ」
(フフ……よかったな、エジェレ。さて、そろそろゴールインか……)
「おばさん、何ニヤニヤしてんすか」
「ん? いや、何でもないさ」
約1年前、レイスの部屋にて
「ん……朝か……」
「おはよう」
「うあー、あと5分……ってエジェレ!? お前何してんだそんな恰好で!?」
「裸リボンというらしい。さすがに少し恥ずかしいが、見るのが君ならば」
「いいから上になんか着ろ! そして俺の上から降りろ!」
「今日は君の二十歳の誕生日だな。おめでとう」
「俺の話聞いてるか!?」
「というわけで、私からの誕生日プレゼントは私だ」
「……は?」
「結婚しよう」
「……はああああ!?」
「何を驚く。大人になったら結婚してくれると言ったのは君だぞ?」
「嘘だッ!!」
「本当だとも」
「嘘だー、信じねー」
「……君は、私のこと……嫌いなのか……?」
「うぐッ! 反則だろ、その質問……」
「………」
「耳を寝かすな尻尾をへたらせるな! ガラにもなくシュンとすんじゃねえ!」
「………くすん」
「〜〜! ……ああ、好きだよ! お前なしの生活なんて考えらんねえよ! ……言わせんなバカ! マジ恥ずかし「きゃううん!」
「どわっ!? や、やめろバカ!! 脱がすな!」
「わうっ、わん、きゃんっ」
「ぐああっ! これはっ……マミーの呪い!?」
「あおんっ♪」
「あっ、や、やめっ、チクショウッ!(ビクンビクン」
現在、とある民家(新築)にて
「うむ、あらためて振り返れば、我ながら実に計画的に生きてきたものだ」
「……そうか? 単に俺に付き纏ってるだけのような……」
「だからこそ、こうして計画通り君と夫婦になり、子を授かったのだよ」
「あー、さいですか。ところで、今後も予定とか計画ってあんのか?」
「当然だ。差し当たっては、君に何らかの延命薬を飲ませることだな」
「人魚の血とかか?」
「それでもいいが、他にも色々あるからな。何がいいかはこれから検討しよう」
「わりとアバウトなんだな」
「うむ、だから変更もしやすい」
「そんなんでいいんかい」
「今も一つ、予定が変更になったしな」
「へ? 何だよ」
「出産予定日」
「え、まだ二週間くらい先……まさか!?」
「……その、まさか、だ。なんだか、お腹、が……陣痛、来た、らしい」
「わああああああ!?」
後日、病院にて
「ったく、一時はどうなることかと思ったぜ……」
「いいじゃない、別に。無事に生まれたんだから」
「あー、はいはい。で、エジェレとお義母さんは何を?」
「私は娘の人生計画を考えている」
「私は娘と義息子の夫婦計画を見直している」
「……なんつーか、言葉が出ねぇわ」
「エジェレ、今後の子作りの予定だが、3年以内にもう1人でいいのか?」
「5年でもう2人、とも考えていますが……母様はどちらがよいと思いますか?」
「そうだな……」
「ちょ、夫の俺には相談なし!? 母さんも何とか言っ」
「はーい、おばーちゃんですよー♪ えいっ、にくきゅー」
「孫で遊ぶなよ……」
「いいじゃない、時代は回るのよ。デジャヴにして再現なの」
「意味わからん」
「おーい、レイス、5年以内に2人で決まったからな、また頑張ろう」
「本当に俺に相談なかったーーーっ!?」
「大丈夫だ、君と私の2人でたっぷりと『交渉』しようじゃないか」
「……もう、いいや。どうでも」
約22年前、病院にて
「む、そちらもご懐妊か?」
「ええ。隣2軒が揃って妊娠なんて、なんだか不思議ね」
「これも何かの縁、お互い妊婦どうし、協力していこう」
「そうね。あらためて今後ともよろしく」
「ああ、よろしく」
「ところで、もし私の子が男の子だったら、未来の婿にどう?」
「気が早すぎるだろう。何年先の話なんだ」
「計画を立てるのはあなたの特技でしょ?」
「む。それは……そうだが」
「娘と幼なじみがくっつく計画を立ててみない?」
「どんな人生計画だ」
「楽しみね――幼い頃から姉弟のように育った2人。でも、だんだんとお互いを異性として意識し始めて……きゃっ♪」
「いや、だからまだ男が生まれると決まったわけでもないだろうに……」
約21年前、とある民家にて
「ふふふ、可愛いわね。えい、にくきゅうっ。てい、尻尾♪」
「あまり人の娘で遊ばないでくれ」
「あら、ごめんなさい。でも、そっちだって私の息子を撫で回してるじゃない」
「……まあ、たしかに」
「それとも、興味があるのは息子のムスコなのかしら?」
「むう……このかわいらしいモノが、やがて夫のような逞しいモノに……って、何を言わせるのだッ!!」
「そして、この子のココから私たちの孫が生まれてくるのね♪」
「ええい、いい加減にしろっ!!」
がつん。
「あうう、怒られちゃった……エジェレちゃん、あなたのママは怒りんぼね?」
「〜〜〜ッ!!」
約18年前、とある民家にて
「うふふ、あの子たちまた一緒に眠ってる。ホントに姉弟みたいね」
「そうだな。しかし、そんなことを言っているうちに……」
「そうねえ、やっぱり男女の仲になっちゃうのかしら」
「いや、だからそうと決まっては……」
「えー、つまんなーい」
「……私は、たまにあなたが人間なのが信じられないことがあるよ」
「だあってつまんないじゃなーい」
「しかし、本人の意思というものが」
「だからぁ、本人がそう思うように誘導するのよ♪」
「……どうやって」
「まっかせなさーい。人間の特技は騙すことなんだから」
「……恐ろしい、話だ」
「うっふふふふふぅ」
約16年前、とある民家にて
「かあさま、おはなしがあります」
「どうした、エジェレ」
「きょう、レイスにけっこんをもうしこんだのですが」
「何!?」
「おとなになったらいいよ、というへんじでした」
「あ、ああ……それで、何故私にその話を?」
「わたしを、りっぱなおよめさんになれるようにしてほしいのです」
「……少し、質問がある」
「なんですか?」
「もしかして、隣のおばさまに何か言われたのか?」
「いっしょにいたいとおもうのは、あいてのことがすきだからだ、と」
「お前は、レイスくんと一緒にいたいのか?」
「はい」
「いつからだ?」
「……まいにちレイスといっしょで、おばさまにいろいろいわれるうちに……」
(人間とは、さても恐ろしい存在だな……他者の心すら操るとは)
「……わかった。予定より早いが、炊事洗濯掃除に夫の管理、すべて教えよう」
「はいっ!」
約11年前、公園にて
「やっと見つけたぞ、レイス」
「げえっ、エジェレ! やばっ……」
「逃がすか!」
「ぐえッ!?」
「さあ、もう門限は過ぎているのだ。帰るぞ」
「くそっ、離せよ!」
「ダメだ。お義母……おばさまから、君のことを任されている」
「お前、なんでそんなに俺に付きまとうんだよ!」
(父様とお義父様の話では、男女はこの時期が一番離れやすいらしいからな……)
「君を管理するのは、(妻の)私の役目だからだ」
(多少ムリヤリにでも、レイスに最も近い位置をキープしなければ!)
約8年前、帰り道にて
「あーあ、最近はどいつもこいつも色気づきやがって」
「何の話だ?」
「お前もわかってんだろ、学校が浮ついてんのが」
「ああ……好きな相手にチョコレートを渡すというアレか」
「すぐその話になるせいで、ダベっててもちっとも楽しくねえ」
「安心しろ、君には私が作ってやる。飛び切り手をかけた特別製をな」
「へーへー、そりゃどーも」
(そのせいで俺は男子全員から妬まれてハブられてんだよ!)
「なんなら、チョコレートだけでなく私自身もつけようか?」
「……。勘弁してくれ……」
(チクショウ! なにちょっと期待してんだ俺のバカ野郎!)
約6年前、帰り道にて
「あーもー、なんだよ進路調査って」
「なんだ、まだ決められないのか?」
「うっせーな、配られた瞬間書いて提出できるお前が異常なんだよ」
「しかし、いつまでも子供ではいられないのだ。そろそろ将来のことを意識するべき時期に入ってきていると思うぞ?」
「わかってるよ、そんなことはよ」
「計画はしっかり立てておいて損はないからな」
「そういえば、お前は何て書いたんだ?」
「……わからないのか?」
「わかるワケねーだろ。なんでわかって当然みたいな顔してんだ。で?」
「君の妻に決まっているだろう」
「……えーと、イマナンテイイマシタカ?」
「だから、君の妻、嫁、家内、細君、配偶者、ハニー、だ」
「とりあえず、お前の意見がまったく参考にならないことはよくわかった」
「できれば、君は毎日定時に帰ってこれる職に就いてくれるとありがたい」
「……一応聞いとくが、なんでだ?」
「その方が規則正しい生活計画が立てやすいからだ。それに、夜の性活もより計画的に送れ「もういいから黙れよお前」
約3年前、とある民家のリビングにて
「ふぁ〜あっと、母さん、朝メシは……」
「おはよう、レイス」
「あら、やっと起きてきたわね。もう朝ごはん出来てるわよ」
「……母さん、なんでウチの台所にエジェレがいんの?」
「お手伝い。あなたの分はエジェレちゃんが作ってくれたのよ」
「今日から働きに出るのだろう? 弁当も用意したから、持っていってくれ」
「いや、待て。なんでここまですんだよ、普通に母さんが作れば」
「母さん、栄養とか考えるの苦手でしょ? エジェレちゃんはそういうところも考えてくれるから助かるわ〜」
「では、夕飯もお手伝いさせていただいても」
「全然オッケーよ。あの子の分、全部任せるわ」
「おーい。俺の声、聞こえてますかー?」
「当然聞こえてるとも。ところで、早く食べないと仕事に遅れるぞ」
「げ、マジかよ……いただきます」
もぐもぐ。
「味はどうだ? 口に合うか?」
「……美味いよ」
「そうか、それはよかった」
(ひとまず成功のようです、お義母様)
(アレは相当おいしいと思ってる顔よ、いい滑り出しだわ)
約2年前、とある民家にて
「ふわぁ……あれ、母さん、エジェレは?」
「なんか風邪ひいちゃったらしいわよ。お見舞い行ってあげたら?」
「んー……」
「まあ、とりあえず朝ごはん、ね」
「なんか、母さんの料理久しぶりだな」
「毎日エジェレちゃんの愛情料理だったからねー? うふふ」
「うっさいな! ……あれ?」
「どうかした?」
「いや、別に……」
(なんか、あんまり美味いと思えないな……)
「やっぱり、エジェレちゃんの料理がいいみたいね?」
「そ、そんなことねーよ」
「ふふっ、素直じゃないんだから」
同日、とある民家にて
「おじゃましまーす」
「おや、レイスくん。君がウチに来るのは久しぶりだな」
「そうっすね。アイツの具合はどうです?」
「心配する程じゃないさ。よければ様子を見ていってくれ」
「母様……その、必要は、ありません……ケホッ」
「エジェレ!?」
「やあ、レイス……わざわざ……会いに、来てくれたのか……」
「バカお前、顔色悪いぞ? 起きてきて大丈夫なのか?」
「エジェレ……まだ起きてくるには休養が足りないはずだ、寝ていろ」
「しかし、レイスが、来てくれた、と、あっては……ゴホ、ゴホッ」
「おいおい、ホントに大丈夫かよ」
「な、なんのこれしき……」
「あーもー、危なっかしいな。ほれ、おぶってやるから乗れ」
「レ、レイス!?」
「部屋まで運んでってやっから。おとなしく寝てろよ」
「……くぅん」
「ヘ、ヘンな声出すなよバカ」
(フフ……よかったな、エジェレ。さて、そろそろゴールインか……)
「おばさん、何ニヤニヤしてんすか」
「ん? いや、何でもないさ」
約1年前、レイスの部屋にて
「ん……朝か……」
「おはよう」
「うあー、あと5分……ってエジェレ!? お前何してんだそんな恰好で!?」
「裸リボンというらしい。さすがに少し恥ずかしいが、見るのが君ならば」
「いいから上になんか着ろ! そして俺の上から降りろ!」
「今日は君の二十歳の誕生日だな。おめでとう」
「俺の話聞いてるか!?」
「というわけで、私からの誕生日プレゼントは私だ」
「……は?」
「結婚しよう」
「……はああああ!?」
「何を驚く。大人になったら結婚してくれると言ったのは君だぞ?」
「嘘だッ!!」
「本当だとも」
「嘘だー、信じねー」
「……君は、私のこと……嫌いなのか……?」
「うぐッ! 反則だろ、その質問……」
「………」
「耳を寝かすな尻尾をへたらせるな! ガラにもなくシュンとすんじゃねえ!」
「………くすん」
「〜〜! ……ああ、好きだよ! お前なしの生活なんて考えらんねえよ! ……言わせんなバカ! マジ恥ずかし「きゃううん!」
「どわっ!? や、やめろバカ!! 脱がすな!」
「わうっ、わん、きゃんっ」
「ぐああっ! これはっ……マミーの呪い!?」
「あおんっ♪」
「あっ、や、やめっ、チクショウッ!(ビクンビクン」
現在、とある民家(新築)にて
「うむ、あらためて振り返れば、我ながら実に計画的に生きてきたものだ」
「……そうか? 単に俺に付き纏ってるだけのような……」
「だからこそ、こうして計画通り君と夫婦になり、子を授かったのだよ」
「あー、さいですか。ところで、今後も予定とか計画ってあんのか?」
「当然だ。差し当たっては、君に何らかの延命薬を飲ませることだな」
「人魚の血とかか?」
「それでもいいが、他にも色々あるからな。何がいいかはこれから検討しよう」
「わりとアバウトなんだな」
「うむ、だから変更もしやすい」
「そんなんでいいんかい」
「今も一つ、予定が変更になったしな」
「へ? 何だよ」
「出産予定日」
「え、まだ二週間くらい先……まさか!?」
「……その、まさか、だ。なんだか、お腹、が……陣痛、来た、らしい」
「わああああああ!?」
後日、病院にて
「ったく、一時はどうなることかと思ったぜ……」
「いいじゃない、別に。無事に生まれたんだから」
「あー、はいはい。で、エジェレとお義母さんは何を?」
「私は娘の人生計画を考えている」
「私は娘と義息子の夫婦計画を見直している」
「……なんつーか、言葉が出ねぇわ」
「エジェレ、今後の子作りの予定だが、3年以内にもう1人でいいのか?」
「5年でもう2人、とも考えていますが……母様はどちらがよいと思いますか?」
「そうだな……」
「ちょ、夫の俺には相談なし!? 母さんも何とか言っ」
「はーい、おばーちゃんですよー♪ えいっ、にくきゅー」
「孫で遊ぶなよ……」
「いいじゃない、時代は回るのよ。デジャヴにして再現なの」
「意味わからん」
「おーい、レイス、5年以内に2人で決まったからな、また頑張ろう」
「本当に俺に相談なかったーーーっ!?」
「大丈夫だ、君と私の2人でたっぷりと『交渉』しようじゃないか」
「……もう、いいや。どうでも」
10/12/28 00:40更新 / かめやん
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