謀略姫
「はー。かったるいたらありゃしないよ。クソ親父とボンクラ兄貴共にいい顔するのも疲れるもんだわ」
部屋に入るとイザベラはイスに深く腰掛けた。
「あーハインケルだっけか?あんたも楽にしてていいわよ。私が王女だからってあんな似合わなさすぎる敬語使わなくていいからさ」
イザベラはだるそォにこっちを見ながら言った。
「勘違いしてるよォだから言っとくが、オレがあいつらに敬語を使ってンのは王族だからじゃネェよ。へり下っておいた方がめんどくさくネェし、疑われることもネェからだ」
オレの言葉にイザベラはニヤリと笑った。
「へー。じゃあ何で私には敬語を使わないんだい?」
「バレてるのにごまかすしても見苦しいだけだ。それにお前がネコ被ンのやめたのはそォしても問題ネェって信用したからだろ?だったら信用で返すのが礼儀ってモンだろォよ」
オレがそォ言うとイザベラはプッと吹きだした。
「あははは。そんな言葉遣いでよく礼儀だなんて言えたもんだね」
「ククク。違いネェ」
こんな言葉遣いで礼儀もクソもあったモンじゃネェよな。
「で、そろそろ部屋に連れてきたわけを聞こうか。まさか本気でイチャイチャするためじゃネェよな?」
まァあの場にいたやつらはそォ思っただろォな。オレとしてもそっちの方が都合がいい。…後でベルたちをどォするか考えなけりゃだけどな。
「私はそれでもいいけど。私といいことする気ない?」
イザベラは目を潤ませて見つめてきた。
「お互いもっと大きくなってからな。いいから早く話してくれ」
イザベラはふてくされた顔をして頬をふくらませた。
「ちぇっ、連れないねえ。まあいいや。…あんたどこまで知ってるんだい?」
イザベラが探るよォな目で聞いてきた。
「どこまでって言われてもなァ。オレたちの村を滅ぼしたのが魔物じゃなくて騎士団だってことと、魔物はエロいだけで害はネェってことと、主神が魔物を殺そォとする本当の理由くらいしか知らネェぞ」
オレの言葉にイザベラは呆れたよォに溜息を吐いた。
「ほとんどバレてるじゃないか。教団の騎士ってそんなに無能なのかい?」
「少なくとも自警団のオレの親父にまとめて殺される程度には無能だな。隊長なンか顔に技まで特定できるよォな傷を負わされてるしよ。それでわかるなって方がムリだゼ」
オレの言葉にイザベラは申し訳なさそォな顔をした。
「…すまないねえ。うちの国の騎士団のせいで辛い思いをさせてしまって」
「気にすンな。別にお前のせいじゃネェよ。それにそォ言ってもらえただけで十分だ。この国のクズどもに言っても秘密を知ったオレたちを殺そォとするだけだしよ」
オレが軽い口調で言ってもイザベラはうつむいたままだ。そこで黙られても困るンだが。
「そ、そう言えば主神が魔物を殺そうとする本当の理由とか言ってなかったかい?人を堕落させるから悪だとか、人間の数が減るとかいううさんくさい理由じゃなくってもっとちゃんとした理由があるっていうの?」
イザベラはわざとらしく話題を変えた。
「あァ。もっとうさんくさくてちゃんとしてネェ理由がよ」
オレはスピエルとアシュエルから聞いた話をイザベラに話した。
「しょうもない理由だねえ。そんな理由で人を振り回す神とか死ねばいいと思うよ」
イザベラは心底あきれ返った顔をした。
「同感だ。とっとと主神とか言う身の程知らずにも程がある地位から下りてくたっばっちまえばいいと思うゼ」
オレの言葉にイザベラは苦笑を返した。
「まあそんな腐った国の姫の私が言えることじゃないけどね。それにしても天使をたらしこむなんてやるじゃないか。一体どんな色仕掛けをしたんだい?」
イザベラはからかうよォな口調で聞いてきた。
「別に色仕掛けなンかしてネェよ。単に勇者が裏切るよォに仕向けてきただけだろ」
アシュエルはスパイをやってる神のエンジェルなンだからよォ。
「でも普通はバカ正直に聞きに行って消されるか、何も考えずに教団から脱走するかのどっちかでしょ。まさか天使も自分が利用されることになるなんて思ってなかっただろうね」
利用するとか人聞きが悪ィ言い草だな。まァ否定はできネェがよ。
「まあ重要なのはどう天使を握ったのかじゃなくて、握ったこと自体だよね。完全に裏から教団を操って破滅させられるじゃないか」
イザベラは楽しそォに言った。
「あァ。神敵を作り出したり、損にしかならネェこともできるしよ。おまけにこっちには情報が筒抜けになるしよ」
「えげつないねえ。あんたどう考えても勇者じゃないわ。よくて悪逆勇者って所じゃない?」
イザベラは腹黒い笑みを浮かべて言った。
「いいなそれ。これからは味方には『悪逆勇者』って呼ばせることにするゼ」
オレの言葉にイザベラは微笑ンだ。
「うん。やっぱりそっちの方があんたにはしっくり来るよ。あんたが裏切った時にはちゃんと広めてあげるからね」
明らかに楽しンでるなこいつ。
「頼ンだゼ。教団のやつらに絶望を広げてやってくれ。オレもそのために希望を与えとくからよ」
「了解」
イザベラは二カッと笑った。かなり腹黒いが今だけは年相応な女の子に見えたゼ。
「オレにも聞きてェことがあるンだがいいか?」
「いいよ。何でも聞いてごらん」
そォかい。だったら遠慮なく聞かせてもらうゼ。
「何でお前は教団や王族をそンなに嫌ってンだ?別に教団に何かされたわけでもネェだろォし、親も溺愛してるよォに見えたンだが」
オレの言葉にイザベラは目を閉じて考え込ンだ。
「うーん。なんか気持ち悪いからかねえ」
「気持ち悪い?」
オレが聞き返すとイザベラはうなずいた。
「うん。神の教えなんていうあやふやな物にとらわれてただ誰かを傷つけるだけの教団も、王族って理由だけで権力をふりかざして守るべき民を傷つける王族も何か生理的に受け付けないのさ。…この国の姫の私がこんなこと考えるのってやっぱりおかしいかねえ?」
イザベラは苦笑混じりで言った。
「どォ考えてもおかしィゼ。生まれてくる国も家も間違えたンじゃネェの?」
オレがそォ言うとイザベラはふくれっ面をした。
「そんなはっきり言わなくてもいいじゃないか」
イザベラは軽くすねたよォな口調で言った。
「別にけなしてるわけじゃネェよ。むしろ本気でそォ言えるのはすげェと思うゼ。反魔物領のやつらってガキのころからそうするのが当然だって言い聞かされてンだろ?」
オレが聞くとイザベラはうなずいた。
「うん。私の教育係もそう言ってたよ。でも何聞いても当然とか、そう決まってるとかしか言わなかったからしつこく追及してたら寝込んじゃってね。それで次からは表面上納得したふりをしてたのさ」
こいつひねくれてンな。まァオレと違って素直すぎてひねくれちまったみてェだがよ。
「そろそろ戻った方がいいな。仲間が心配してるからよ」
「そうだね。そろそろクソ親父が騒ぎ出すころだからね」
イザベラはそォ言って立ち上がった。
「今日は有意義な話ができてよかったよ。また呼び出してもいいかい?」
イザベラが少し不安そォに聞いてきた。
「あァ。いいゼ。オレもお前ともっと話したいことがあるからな」
オレがそォ言うとイザベラはにっこり笑った。
「うん。その時はよろしくね」
そンな話をしてると前から足音が聞こえた。
「遅かったじゃないかイザベラ。一体どんな話をしてたんだ?」
デブが気持ち悪ィ猫なで声で聞いてきた。
「どんな話と聞かれても…。恥ずかしくて私の口からは言えません」
イザベラはそォ言って顔を赤らめた。明らかに楽しンでやがるなこいつ。
「ぐははは。勇者と親しくなったようだな。これで我が王家も安泰だ!」
ホントにおめでたい頭してるゼ。まァこっちとしてはやりやすいがよ。
「勇者様。今日は楽しかったです」
「ええ。ぼくもです」
後ろからの殺気を考えなけりゃな。イザベラもあまり刺激しネェでくれると助かるンだが。
「ふふ。またお会いしましょうね勇者様」
イザベラはそォ言ってオレの頬にキスをした。
「なっ、モガモガ」
ベルが何か言おうとした所をデビーが押さえ込ンだ。それを見たイザベラはニヤリと笑って、自分の部屋に戻って行った。
「どうやら仲良くなったようだな。これからも娘をよろしく頼むぞ」
「はい」
チッ。イザベラのやつオレが何も言えネェからって調子に乗ってやがンな。まァ恋人だってことにしておけば会う時にも都合がいいのは認める。認めるがよ。
「…」
必要以上にベルを刺激することはやめて欲しかったンだが。髪がバチバチ言ってやがる。
「…」
「…」
ってデビーとクリスからも殺気が出てるじゃネェか。だからいつフラグ立てたってンだよ。
「「「説明してくれるわよね(ますよね)(よね)」」」
「…はい」
あの女絶対いつか泣かせてやる。…この状況を切り抜けられたらな。
つづく
部屋に入るとイザベラはイスに深く腰掛けた。
「あーハインケルだっけか?あんたも楽にしてていいわよ。私が王女だからってあんな似合わなさすぎる敬語使わなくていいからさ」
イザベラはだるそォにこっちを見ながら言った。
「勘違いしてるよォだから言っとくが、オレがあいつらに敬語を使ってンのは王族だからじゃネェよ。へり下っておいた方がめんどくさくネェし、疑われることもネェからだ」
オレの言葉にイザベラはニヤリと笑った。
「へー。じゃあ何で私には敬語を使わないんだい?」
「バレてるのにごまかすしても見苦しいだけだ。それにお前がネコ被ンのやめたのはそォしても問題ネェって信用したからだろ?だったら信用で返すのが礼儀ってモンだろォよ」
オレがそォ言うとイザベラはプッと吹きだした。
「あははは。そんな言葉遣いでよく礼儀だなんて言えたもんだね」
「ククク。違いネェ」
こんな言葉遣いで礼儀もクソもあったモンじゃネェよな。
「で、そろそろ部屋に連れてきたわけを聞こうか。まさか本気でイチャイチャするためじゃネェよな?」
まァあの場にいたやつらはそォ思っただろォな。オレとしてもそっちの方が都合がいい。…後でベルたちをどォするか考えなけりゃだけどな。
「私はそれでもいいけど。私といいことする気ない?」
イザベラは目を潤ませて見つめてきた。
「お互いもっと大きくなってからな。いいから早く話してくれ」
イザベラはふてくされた顔をして頬をふくらませた。
「ちぇっ、連れないねえ。まあいいや。…あんたどこまで知ってるんだい?」
イザベラが探るよォな目で聞いてきた。
「どこまでって言われてもなァ。オレたちの村を滅ぼしたのが魔物じゃなくて騎士団だってことと、魔物はエロいだけで害はネェってことと、主神が魔物を殺そォとする本当の理由くらいしか知らネェぞ」
オレの言葉にイザベラは呆れたよォに溜息を吐いた。
「ほとんどバレてるじゃないか。教団の騎士ってそんなに無能なのかい?」
「少なくとも自警団のオレの親父にまとめて殺される程度には無能だな。隊長なンか顔に技まで特定できるよォな傷を負わされてるしよ。それでわかるなって方がムリだゼ」
オレの言葉にイザベラは申し訳なさそォな顔をした。
「…すまないねえ。うちの国の騎士団のせいで辛い思いをさせてしまって」
「気にすンな。別にお前のせいじゃネェよ。それにそォ言ってもらえただけで十分だ。この国のクズどもに言っても秘密を知ったオレたちを殺そォとするだけだしよ」
オレが軽い口調で言ってもイザベラはうつむいたままだ。そこで黙られても困るンだが。
「そ、そう言えば主神が魔物を殺そうとする本当の理由とか言ってなかったかい?人を堕落させるから悪だとか、人間の数が減るとかいううさんくさい理由じゃなくってもっとちゃんとした理由があるっていうの?」
イザベラはわざとらしく話題を変えた。
「あァ。もっとうさんくさくてちゃんとしてネェ理由がよ」
オレはスピエルとアシュエルから聞いた話をイザベラに話した。
「しょうもない理由だねえ。そんな理由で人を振り回す神とか死ねばいいと思うよ」
イザベラは心底あきれ返った顔をした。
「同感だ。とっとと主神とか言う身の程知らずにも程がある地位から下りてくたっばっちまえばいいと思うゼ」
オレの言葉にイザベラは苦笑を返した。
「まあそんな腐った国の姫の私が言えることじゃないけどね。それにしても天使をたらしこむなんてやるじゃないか。一体どんな色仕掛けをしたんだい?」
イザベラはからかうよォな口調で聞いてきた。
「別に色仕掛けなンかしてネェよ。単に勇者が裏切るよォに仕向けてきただけだろ」
アシュエルはスパイをやってる神のエンジェルなンだからよォ。
「でも普通はバカ正直に聞きに行って消されるか、何も考えずに教団から脱走するかのどっちかでしょ。まさか天使も自分が利用されることになるなんて思ってなかっただろうね」
利用するとか人聞きが悪ィ言い草だな。まァ否定はできネェがよ。
「まあ重要なのはどう天使を握ったのかじゃなくて、握ったこと自体だよね。完全に裏から教団を操って破滅させられるじゃないか」
イザベラは楽しそォに言った。
「あァ。神敵を作り出したり、損にしかならネェこともできるしよ。おまけにこっちには情報が筒抜けになるしよ」
「えげつないねえ。あんたどう考えても勇者じゃないわ。よくて悪逆勇者って所じゃない?」
イザベラは腹黒い笑みを浮かべて言った。
「いいなそれ。これからは味方には『悪逆勇者』って呼ばせることにするゼ」
オレの言葉にイザベラは微笑ンだ。
「うん。やっぱりそっちの方があんたにはしっくり来るよ。あんたが裏切った時にはちゃんと広めてあげるからね」
明らかに楽しンでるなこいつ。
「頼ンだゼ。教団のやつらに絶望を広げてやってくれ。オレもそのために希望を与えとくからよ」
「了解」
イザベラは二カッと笑った。かなり腹黒いが今だけは年相応な女の子に見えたゼ。
「オレにも聞きてェことがあるンだがいいか?」
「いいよ。何でも聞いてごらん」
そォかい。だったら遠慮なく聞かせてもらうゼ。
「何でお前は教団や王族をそンなに嫌ってンだ?別に教団に何かされたわけでもネェだろォし、親も溺愛してるよォに見えたンだが」
オレの言葉にイザベラは目を閉じて考え込ンだ。
「うーん。なんか気持ち悪いからかねえ」
「気持ち悪い?」
オレが聞き返すとイザベラはうなずいた。
「うん。神の教えなんていうあやふやな物にとらわれてただ誰かを傷つけるだけの教団も、王族って理由だけで権力をふりかざして守るべき民を傷つける王族も何か生理的に受け付けないのさ。…この国の姫の私がこんなこと考えるのってやっぱりおかしいかねえ?」
イザベラは苦笑混じりで言った。
「どォ考えてもおかしィゼ。生まれてくる国も家も間違えたンじゃネェの?」
オレがそォ言うとイザベラはふくれっ面をした。
「そんなはっきり言わなくてもいいじゃないか」
イザベラは軽くすねたよォな口調で言った。
「別にけなしてるわけじゃネェよ。むしろ本気でそォ言えるのはすげェと思うゼ。反魔物領のやつらってガキのころからそうするのが当然だって言い聞かされてンだろ?」
オレが聞くとイザベラはうなずいた。
「うん。私の教育係もそう言ってたよ。でも何聞いても当然とか、そう決まってるとかしか言わなかったからしつこく追及してたら寝込んじゃってね。それで次からは表面上納得したふりをしてたのさ」
こいつひねくれてンな。まァオレと違って素直すぎてひねくれちまったみてェだがよ。
「そろそろ戻った方がいいな。仲間が心配してるからよ」
「そうだね。そろそろクソ親父が騒ぎ出すころだからね」
イザベラはそォ言って立ち上がった。
「今日は有意義な話ができてよかったよ。また呼び出してもいいかい?」
イザベラが少し不安そォに聞いてきた。
「あァ。いいゼ。オレもお前ともっと話したいことがあるからな」
オレがそォ言うとイザベラはにっこり笑った。
「うん。その時はよろしくね」
そンな話をしてると前から足音が聞こえた。
「遅かったじゃないかイザベラ。一体どんな話をしてたんだ?」
デブが気持ち悪ィ猫なで声で聞いてきた。
「どんな話と聞かれても…。恥ずかしくて私の口からは言えません」
イザベラはそォ言って顔を赤らめた。明らかに楽しンでやがるなこいつ。
「ぐははは。勇者と親しくなったようだな。これで我が王家も安泰だ!」
ホントにおめでたい頭してるゼ。まァこっちとしてはやりやすいがよ。
「勇者様。今日は楽しかったです」
「ええ。ぼくもです」
後ろからの殺気を考えなけりゃな。イザベラもあまり刺激しネェでくれると助かるンだが。
「ふふ。またお会いしましょうね勇者様」
イザベラはそォ言ってオレの頬にキスをした。
「なっ、モガモガ」
ベルが何か言おうとした所をデビーが押さえ込ンだ。それを見たイザベラはニヤリと笑って、自分の部屋に戻って行った。
「どうやら仲良くなったようだな。これからも娘をよろしく頼むぞ」
「はい」
チッ。イザベラのやつオレが何も言えネェからって調子に乗ってやがンな。まァ恋人だってことにしておけば会う時にも都合がいいのは認める。認めるがよ。
「…」
必要以上にベルを刺激することはやめて欲しかったンだが。髪がバチバチ言ってやがる。
「…」
「…」
ってデビーとクリスからも殺気が出てるじゃネェか。だからいつフラグ立てたってンだよ。
「「「説明してくれるわよね(ますよね)(よね)」」」
「…はい」
あの女絶対いつか泣かせてやる。…この状況を切り抜けられたらな。
つづく
11/04/30 19:28更新 / グリンデルバルド
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