修業
シンカを手に入れてからオレはデビーと一緒に剣の稽古をつけられている。デビーは今まで剣を握ったことがネェらしいがグングン上達して行った。オレは親父から叩きこまれてたから一通りの基礎はできていた。しかし少し問題があった。
「…ふむ。やはり勇者の剣には何か違和感があるな」
オレたちに剣を教えている騎士が難しい顔をしてつぶやいた。
「すみません。まだ型を覚えていないもので」
オレは使いたくもネェ敬語で答えた。オレは基本教団のやつらには勇者っぽく見えるよォに演技をしてンだよ。あン?じゃあ何で親父を殺した騎士には礼儀正しくしないのかって?他に憎しみとか怒りとかいう負の感情をぶつけられる相手がいネェからだよ。教団のやつらに本当の敵を知ってるなんて気取られたくネェし、同じ境遇の孤児院の皆に当たるわけにもいかネェ。その点あの騎士は村の人たちを守れなかったっていう理由で怒りをぶつけられるからな。こいつがいるからオレは教団への恨みを忘れずにいられるンだろォよ。
「いや、型には特に問題はない。ただ何か動きがぎこちないような気がするのだ」
騎士はそう言って首をかしげた。
「習い始めたばかりで身についてないんでしょう。もう一度お願いします」
オレはそう言って剣を構えなおした。
「…さっきの指摘はゼファー流の動きが出かけてたってことですか?」
剣の稽古が終わってからデビーが小声で聞いてきた。
「あァ。つい体が動いちまうンだよな」
「ゼファー流と騎士の剣術ってそこまで違いがあるんですか」
デビーは首を傾げた。
「根本的に違うな。騎士の剣術ってのはほとんどが師匠の型をなぞる綺麗なモンだ。それに対してゼファー流はかなり実戦的なモンだ。そのズレを修正するのにできる隙があの騎士が感じてる違和感の正体ってわけだ」
それがわかるあの騎士はかなり腕がいいンだろォよ。
「そういう物なんですか」
デビーが感心したようにうなずいた。
「まァとりあえず習っておいて損はネェな。騎士の剣術を覚えておけば相手の考えも読めるしよ」
「そうですね。私もがんばって騎士の剣術を極めます。どの道他に習える所もありませんからね」
まァデビーは剣を握ったのはこれが初めてだからな。オレのゼファー流もまだ人に教えられるレベルじゃネェしよ。
「ま、とにかくがんばろうゼ」
「はい!」
そんなことを話しながらオレたちは孤児院に戻った。
剣術が終わって、昼食をはさんだ後はベルと一緒に魔法の勉強だ。主に得意な属性を勉強している。他の属性も使えないことはネェらしいが覚える効率が悪いから教えてネェンだとよ。教団はそんなに早く裏切ってもらいてェのかねェ。
「『サンダーボルト』!」
ベルが唱えると雷が的を貫いた。ベルの得意属性は雷だ。確かめてみた所他の属性にも適性はあるらしい。だが一番相性がいいのが雷だからメインでやることにしている。
「『ダークネスレーザー』」
ちなみにオレの属性は闇と光だ。ついでに言うと闇の方が圧倒的に使いやすい気がする。
『きっと腹黒さがにじみ出てるんだよ。マスターが白いのって黒さを隠すための保護色なんじゃない?』
シンカが破壊された的を見てそう言った。
「うっせェよシンカ」
『きゃはは。ごめんごめん』
全く反省してネェなこいつ。最初から期待してネェけどよ。
「光より闇の方が使いやすいってとても勇者とは思えないわね。あんたらしいって言えばあんたらしいけどね。…『マグネイト』!」
ベルが唱えると砂が手に集まってきた。ベルによると雷を磁力に変換するらしい。だから砂に含まれてる砂鉄が集まってきたってわけだ。
「『アルケム』!」
次にベルは錬金呪文を唱えて砂鉄を固めてコインの形にした。そしてコインを指で弾く。
「『サンダーチャージ』!」
コインが宙を持っている間に指に電気を溜める。コインが指に落ちると溜めた電気をコインに一気に流し、狙いをつける。
「『マグネルド』!」
磁力系の上級呪文で的につながる磁力の道をつくる。
「…『超電磁砲』!」
ベルが指を前に弾くと、コインがすごい速さで的に飛んで行った。コインは的を砕き、しばらく進んでから溶けた。的の残骸にある焦げ跡でコインがかなり高温だったことがわかるゼ。
「うーん。なかなか射程距離が伸びないわね。やっぱり練金の精度が甘いのかしら?」
確かに威力はあるが射程距離はあまりネェな。高速で飛ばしてるから摩擦熱で溶けるから仕方ネェよォな気もする。
「そもそも鉄だけなのも問題なのかもな。せめて他の金属を混ぜて合金でも作り出せたらいいンだけどよ」
オレがそう言うとベルは苦笑した。
「ま、ないものねだりしてても仕方ないわ。今は精度を上げることを考えましょ」
「そォだな」
それからオレたちはひたすら攻撃呪文だけを唱え続けた。
夜になるとシスターたちの所で回復呪文や破邪呪文などをやっていたクリスが戻ってきた。それから夕食を食って、しばらくみんなと遊んでいた。だが盛り上がってる所でヒルダ母さんがやってきた。
「いつまで起きてるの。もう寝なさい」
チッ。ヒルダ母さんが言うンじゃ仕方ネェ。オレたちは部屋に戻ってそのまま眠りについた…
「『防音』」
わけじゃネェンだよなこれが。むしろここからが本番だ。外で剣術や魔法を習う時は見張りがいるから寝る前にやるしかネェンだよ。
「『転移』」
ベルが転移呪文を唱えるとベルのベッドの枕がオレのベッドの上に飛ばされた。最初ビー玉くらいしか動かせなかったがずいぶん進歩したな。
「『身体強化』」
デビーが唱えると体が赤い光に包まれた。魔力を調べる部屋にこっそり忍び込んで測定した所デビーにも魔力があることがわかったから覚えさせてンだよ。攻撃呪文はともかく強化とか加速とかは覚えても損はネェだろ。
「『プログラム』」
オレが唱えると部屋に壁にかけてある剣が飛んできた。オレが練習しているのは操作系の呪文だ。この呪文は無生物に魔力で干渉して操れンだよ。
「確かこンな動きだったな」
そしてその剣に今日習った騎士剣術をさせて、それにゼファー流で応戦する。こうすりゃ並列思考の練習になるし、敵の戦い方の対処法にもなるってわけだ。
「えーと今日覚えた呪文で治せる呪いはー」
クリスは習った回復呪文で治せる呪いを勉強している。一見呪文で治せる呪いを勉強するのは意味ネェかもしれネェがそれは間違いだ。クリスが解ける呪いを使えるよォになれば手札が多くなるし、その呪いを解けるやつも少なくなるしよ。
『きゃははは。教団もかわいそうだよねー。自分たちの中に敵がいることに気付いてないどころか、その敵を自分たちの希望として育て上げてるんだもん。本当傑作としかいいようがないよ』
シンカが楽しそうな口調で言った。
「あいつらがやってきたことを考えりゃ当然の報いだろォよ。オレたちは絶対に教団の希望になってやるゼ。…やつらに絶望を与えるためによォ」
オレの言葉に皆は力強くうなずいた。こォして秘密特訓をしてるうちに夜は更けていった。
つづく
「…ふむ。やはり勇者の剣には何か違和感があるな」
オレたちに剣を教えている騎士が難しい顔をしてつぶやいた。
「すみません。まだ型を覚えていないもので」
オレは使いたくもネェ敬語で答えた。オレは基本教団のやつらには勇者っぽく見えるよォに演技をしてンだよ。あン?じゃあ何で親父を殺した騎士には礼儀正しくしないのかって?他に憎しみとか怒りとかいう負の感情をぶつけられる相手がいネェからだよ。教団のやつらに本当の敵を知ってるなんて気取られたくネェし、同じ境遇の孤児院の皆に当たるわけにもいかネェ。その点あの騎士は村の人たちを守れなかったっていう理由で怒りをぶつけられるからな。こいつがいるからオレは教団への恨みを忘れずにいられるンだろォよ。
「いや、型には特に問題はない。ただ何か動きがぎこちないような気がするのだ」
騎士はそう言って首をかしげた。
「習い始めたばかりで身についてないんでしょう。もう一度お願いします」
オレはそう言って剣を構えなおした。
「…さっきの指摘はゼファー流の動きが出かけてたってことですか?」
剣の稽古が終わってからデビーが小声で聞いてきた。
「あァ。つい体が動いちまうンだよな」
「ゼファー流と騎士の剣術ってそこまで違いがあるんですか」
デビーは首を傾げた。
「根本的に違うな。騎士の剣術ってのはほとんどが師匠の型をなぞる綺麗なモンだ。それに対してゼファー流はかなり実戦的なモンだ。そのズレを修正するのにできる隙があの騎士が感じてる違和感の正体ってわけだ」
それがわかるあの騎士はかなり腕がいいンだろォよ。
「そういう物なんですか」
デビーが感心したようにうなずいた。
「まァとりあえず習っておいて損はネェな。騎士の剣術を覚えておけば相手の考えも読めるしよ」
「そうですね。私もがんばって騎士の剣術を極めます。どの道他に習える所もありませんからね」
まァデビーは剣を握ったのはこれが初めてだからな。オレのゼファー流もまだ人に教えられるレベルじゃネェしよ。
「ま、とにかくがんばろうゼ」
「はい!」
そんなことを話しながらオレたちは孤児院に戻った。
剣術が終わって、昼食をはさんだ後はベルと一緒に魔法の勉強だ。主に得意な属性を勉強している。他の属性も使えないことはネェらしいが覚える効率が悪いから教えてネェンだとよ。教団はそんなに早く裏切ってもらいてェのかねェ。
「『サンダーボルト』!」
ベルが唱えると雷が的を貫いた。ベルの得意属性は雷だ。確かめてみた所他の属性にも適性はあるらしい。だが一番相性がいいのが雷だからメインでやることにしている。
「『ダークネスレーザー』」
ちなみにオレの属性は闇と光だ。ついでに言うと闇の方が圧倒的に使いやすい気がする。
『きっと腹黒さがにじみ出てるんだよ。マスターが白いのって黒さを隠すための保護色なんじゃない?』
シンカが破壊された的を見てそう言った。
「うっせェよシンカ」
『きゃはは。ごめんごめん』
全く反省してネェなこいつ。最初から期待してネェけどよ。
「光より闇の方が使いやすいってとても勇者とは思えないわね。あんたらしいって言えばあんたらしいけどね。…『マグネイト』!」
ベルが唱えると砂が手に集まってきた。ベルによると雷を磁力に変換するらしい。だから砂に含まれてる砂鉄が集まってきたってわけだ。
「『アルケム』!」
次にベルは錬金呪文を唱えて砂鉄を固めてコインの形にした。そしてコインを指で弾く。
「『サンダーチャージ』!」
コインが宙を持っている間に指に電気を溜める。コインが指に落ちると溜めた電気をコインに一気に流し、狙いをつける。
「『マグネルド』!」
磁力系の上級呪文で的につながる磁力の道をつくる。
「…『超電磁砲』!」
ベルが指を前に弾くと、コインがすごい速さで的に飛んで行った。コインは的を砕き、しばらく進んでから溶けた。的の残骸にある焦げ跡でコインがかなり高温だったことがわかるゼ。
「うーん。なかなか射程距離が伸びないわね。やっぱり練金の精度が甘いのかしら?」
確かに威力はあるが射程距離はあまりネェな。高速で飛ばしてるから摩擦熱で溶けるから仕方ネェよォな気もする。
「そもそも鉄だけなのも問題なのかもな。せめて他の金属を混ぜて合金でも作り出せたらいいンだけどよ」
オレがそう言うとベルは苦笑した。
「ま、ないものねだりしてても仕方ないわ。今は精度を上げることを考えましょ」
「そォだな」
それからオレたちはひたすら攻撃呪文だけを唱え続けた。
夜になるとシスターたちの所で回復呪文や破邪呪文などをやっていたクリスが戻ってきた。それから夕食を食って、しばらくみんなと遊んでいた。だが盛り上がってる所でヒルダ母さんがやってきた。
「いつまで起きてるの。もう寝なさい」
チッ。ヒルダ母さんが言うンじゃ仕方ネェ。オレたちは部屋に戻ってそのまま眠りについた…
「『防音』」
わけじゃネェンだよなこれが。むしろここからが本番だ。外で剣術や魔法を習う時は見張りがいるから寝る前にやるしかネェンだよ。
「『転移』」
ベルが転移呪文を唱えるとベルのベッドの枕がオレのベッドの上に飛ばされた。最初ビー玉くらいしか動かせなかったがずいぶん進歩したな。
「『身体強化』」
デビーが唱えると体が赤い光に包まれた。魔力を調べる部屋にこっそり忍び込んで測定した所デビーにも魔力があることがわかったから覚えさせてンだよ。攻撃呪文はともかく強化とか加速とかは覚えても損はネェだろ。
「『プログラム』」
オレが唱えると部屋に壁にかけてある剣が飛んできた。オレが練習しているのは操作系の呪文だ。この呪文は無生物に魔力で干渉して操れンだよ。
「確かこンな動きだったな」
そしてその剣に今日習った騎士剣術をさせて、それにゼファー流で応戦する。こうすりゃ並列思考の練習になるし、敵の戦い方の対処法にもなるってわけだ。
「えーと今日覚えた呪文で治せる呪いはー」
クリスは習った回復呪文で治せる呪いを勉強している。一見呪文で治せる呪いを勉強するのは意味ネェかもしれネェがそれは間違いだ。クリスが解ける呪いを使えるよォになれば手札が多くなるし、その呪いを解けるやつも少なくなるしよ。
『きゃははは。教団もかわいそうだよねー。自分たちの中に敵がいることに気付いてないどころか、その敵を自分たちの希望として育て上げてるんだもん。本当傑作としかいいようがないよ』
シンカが楽しそうな口調で言った。
「あいつらがやってきたことを考えりゃ当然の報いだろォよ。オレたちは絶対に教団の希望になってやるゼ。…やつらに絶望を与えるためによォ」
オレの言葉に皆は力強くうなずいた。こォして秘密特訓をしてるうちに夜は更けていった。
つづく
11/03/06 00:03更新 / グリンデルバルド
戻る
次へ