非情な過去。それでも私は君が大好き。
夕餉の時にクレアがアルへ言った何気ない疑問。アルは少年とは思えない悲しげな表情で自分の過去を話していく。
「元はあの勇者さん達と同じで教団に居ました。居たと言っても…売られたみたいなんですが…親に…」
「なっ⁉それは本当なのか⁉」
「はい……なんでも、遊んで暮らせるぐらいのお金と交換で子どもを教団は引き取っていたみたいで……」
アルの言葉に驚愕してしまう。そして、教団が子どもを集めていると聞いた時点でクレアは魔物退治に利用しようとしているのだろうと思った。教団の教えに従う者を子どもの時から刷り込ませようとしているのかと思えた。
「集めてた理由は……集めてた……理由は……」
声を震わしながらアルは俯きながら告げる
「薬を使っての身体強化や……魔力を増加させて……勇者を作ろうとしていました……ただ、その薬が身体に合わなかった子も居て……その子は……」
薬の体質に合わなかった子の末路を言えないアルだが、その様子にクレアは察する。そして、子どもに対しての非業な行いに、怒りすら覚える。教団全てがそんなことをしているとは思えないが非人道的過ぎる行いには魔物としても許せなかった。
「偶然僕は身体に合って、身体はあんまり強くないですが魔力はかなり強くなったみたいで、その時の教団の人たちはすごい喜んでいました……」
「人体実験のようなことの実績ができたのだから、喜ぶだろう。実験で使われた子ども達のことなんて全く考えもせずに……」
「それで、魔法を教えられた僕は……教団の人たちの命令で……魔物達を捕まえてました……でも、そんな毎日が本当に辛くて……それで……かなり前に逃げ出して……そのあとは…申し訳無さから魔物達を助けるようになりましたね」
話し終えたアルの心情を悟ったクレアは涙を浮かべてアルを抱きしめる。しばらくの間、抱きしめていたがゆっくりと力を緩める。アルはクレアが力を緩めたのに反応して膝から降りる。
「ごめんなさい……こんな話……僕も話すような事じゃないとは知ってるのですが……クレアお姉さんになら……と思っちゃ、思ってしまって……」
「私が聞いたことだ。気にしなくていい。だが、その年でそんな過酷で辛い日々を過ごしたからから、敬語なんて使ってるのは」
そう言うとクレアは椅子から立ち上がればアルを前から抱きしめる。
「安心しろ。アルは悪くない。だから……泣いていいんだからな?」
「く、クレアお姉…さん…おね…ぇさん…うぅぁぁん!」
突然の抱擁にアルは戸惑いながらも安心感から離れたくないと思い、初めて自分からも抱きつく。クレアの手が優しくアルの頭を撫でていけば少しして、アルの口からは嗚咽が漏れ始めていく。過酷な日々しか知らないアルにとって初めて感じる優しさ、安心感。アルから溢れ始めた涙はアルが泣き疲れて眠ってしまうまで溢れ続けた。
次にアルが目を覚ました時、最初に目に入ったのはクレアの寝顔であり、抱きしめられてはいないがそれでもかなり近い距離であった。アルは眠ってしまう直前の事を思い出しては少しの恥ずかしさと嬉しさを感じる。そして、ずっと抱きしめていてくれたクレアを見つめれば段々と顔が熱くなるのを感じ、戸惑いながらもクレアから目を離せなくなっていた。
(クレアお姉さん……すごく綺麗…それに…とっても優しくて……)
(なんだろうこの気持ち……クレアお姉さんのこと見てるだけで胸が苦しい…)
アルは無意識に、そして、引き寄せられるかのようにクレアの顔に自分の顔を近づける。そして、クレアの唇を見つめては少し前にしたクレアとのキスを思い出し、ゆっくりとアルからクレアにキスをする。唇を触れさせてはすぐ離すだけのキスである。アルは自分からキスしたことに顔を真っ赤にしながらもクレアの柔らかい唇の感触に心が満たされる思いで放心状態であった。
「んん……」
「わぁ⁉」
クレアが少し声を漏らせば慌ててアルは体を離す。そして、ゆっくりとクレアは目を開けると笑みを浮かべる。その様子にアルも笑顔を向けるけど内心はキスした事を気付かれていないか不安であった。しかし、少し伸びをしながら体を起こすクレアに杞憂かなとホッとするアルであった。
(よかった…あれ、でも、クレアお姉さんからもされたし、隠すことじゃないのかも?)
「おはようアル。よく休めたかい?」
「はい!その…本当にありがとうございます!」
「ふふ、お礼なんて構わないさ。アルが元気になってくれたなら……まあ、お釣りがくるほど幸せな思いを先ほどさせてくれたが…」
「え?最後なんて言ったんですか?」
「いや、気にしないでくれ」
笑顔で言うクレア。身体を起こしたクレアの顔は赤く、尻尾はかなりバタバタと揺れている。喜びを表している行動から分かる通り、先ほどのアルからのキスにクレアは気づいていた。本当ならそのまま襲うつもりだったがアルからキスをしてくれると予想しておらず、あまりの幸せと嬉しさに固まっていた。
(こ、これはもう両想いということでいいのか⁉いや、もしかしたらお礼でキスをしてくれた…例えそうだとしてもなんて幸せな気分だ♡ダメだ、襲いたい♡アルのおちんちんが欲しい♡落ち着け私…ま、まだ抑えるのだ)
限界間近なクレアの表情はどれだけ冷静を装おうとしても笑みをこぼしてしまっており、襲わないのもドラゴンとしてのプライドや理性があってこそである。だが、このまま一緒に過ごせば、ほんの数時間でプライドや理性も消し飛ぶであろう。他ならぬクレア自身が確信していた。
(早くアルの気持ちを確認しなければ…いつ襲ってしまうかわからない♡)
「そ、そのアル……こうやって出会って、私が名前を付けて……それにアルの過去も知った……その、また1人でどこかに行くより私と…色んな場所を見ていかないか?」
「そ、それは……」
(さすがに早すぎたか?襲った後に提案した方が確実だったかもしれない…いや、それでは流された感じになってしまう……)
クレアの提案にアルは少し悩んでいる表情であり、クレアはアルの反応を見て、先走ってしまったかなと思いながら返答を待っていた。
「その…クレアお姉さんが良いなら……よろしくおねがいします!」
「キタァァァア…‼はっ‼」
思わずを口に出して喜んでしまったクレアは慌ててアルを見れば少し驚いた表情をしてしまっていた。クレアは赤面してしまいながらもコホンと咳き込んで区切るのであった。クレアとアル、2人の旅が始まることが決まったタイミングである。
「元はあの勇者さん達と同じで教団に居ました。居たと言っても…売られたみたいなんですが…親に…」
「なっ⁉それは本当なのか⁉」
「はい……なんでも、遊んで暮らせるぐらいのお金と交換で子どもを教団は引き取っていたみたいで……」
アルの言葉に驚愕してしまう。そして、教団が子どもを集めていると聞いた時点でクレアは魔物退治に利用しようとしているのだろうと思った。教団の教えに従う者を子どもの時から刷り込ませようとしているのかと思えた。
「集めてた理由は……集めてた……理由は……」
声を震わしながらアルは俯きながら告げる
「薬を使っての身体強化や……魔力を増加させて……勇者を作ろうとしていました……ただ、その薬が身体に合わなかった子も居て……その子は……」
薬の体質に合わなかった子の末路を言えないアルだが、その様子にクレアは察する。そして、子どもに対しての非業な行いに、怒りすら覚える。教団全てがそんなことをしているとは思えないが非人道的過ぎる行いには魔物としても許せなかった。
「偶然僕は身体に合って、身体はあんまり強くないですが魔力はかなり強くなったみたいで、その時の教団の人たちはすごい喜んでいました……」
「人体実験のようなことの実績ができたのだから、喜ぶだろう。実験で使われた子ども達のことなんて全く考えもせずに……」
「それで、魔法を教えられた僕は……教団の人たちの命令で……魔物達を捕まえてました……でも、そんな毎日が本当に辛くて……それで……かなり前に逃げ出して……そのあとは…申し訳無さから魔物達を助けるようになりましたね」
話し終えたアルの心情を悟ったクレアは涙を浮かべてアルを抱きしめる。しばらくの間、抱きしめていたがゆっくりと力を緩める。アルはクレアが力を緩めたのに反応して膝から降りる。
「ごめんなさい……こんな話……僕も話すような事じゃないとは知ってるのですが……クレアお姉さんになら……と思っちゃ、思ってしまって……」
「私が聞いたことだ。気にしなくていい。だが、その年でそんな過酷で辛い日々を過ごしたからから、敬語なんて使ってるのは」
そう言うとクレアは椅子から立ち上がればアルを前から抱きしめる。
「安心しろ。アルは悪くない。だから……泣いていいんだからな?」
「く、クレアお姉…さん…おね…ぇさん…うぅぁぁん!」
突然の抱擁にアルは戸惑いながらも安心感から離れたくないと思い、初めて自分からも抱きつく。クレアの手が優しくアルの頭を撫でていけば少しして、アルの口からは嗚咽が漏れ始めていく。過酷な日々しか知らないアルにとって初めて感じる優しさ、安心感。アルから溢れ始めた涙はアルが泣き疲れて眠ってしまうまで溢れ続けた。
次にアルが目を覚ました時、最初に目に入ったのはクレアの寝顔であり、抱きしめられてはいないがそれでもかなり近い距離であった。アルは眠ってしまう直前の事を思い出しては少しの恥ずかしさと嬉しさを感じる。そして、ずっと抱きしめていてくれたクレアを見つめれば段々と顔が熱くなるのを感じ、戸惑いながらもクレアから目を離せなくなっていた。
(クレアお姉さん……すごく綺麗…それに…とっても優しくて……)
(なんだろうこの気持ち……クレアお姉さんのこと見てるだけで胸が苦しい…)
アルは無意識に、そして、引き寄せられるかのようにクレアの顔に自分の顔を近づける。そして、クレアの唇を見つめては少し前にしたクレアとのキスを思い出し、ゆっくりとアルからクレアにキスをする。唇を触れさせてはすぐ離すだけのキスである。アルは自分からキスしたことに顔を真っ赤にしながらもクレアの柔らかい唇の感触に心が満たされる思いで放心状態であった。
「んん……」
「わぁ⁉」
クレアが少し声を漏らせば慌ててアルは体を離す。そして、ゆっくりとクレアは目を開けると笑みを浮かべる。その様子にアルも笑顔を向けるけど内心はキスした事を気付かれていないか不安であった。しかし、少し伸びをしながら体を起こすクレアに杞憂かなとホッとするアルであった。
(よかった…あれ、でも、クレアお姉さんからもされたし、隠すことじゃないのかも?)
「おはようアル。よく休めたかい?」
「はい!その…本当にありがとうございます!」
「ふふ、お礼なんて構わないさ。アルが元気になってくれたなら……まあ、お釣りがくるほど幸せな思いを先ほどさせてくれたが…」
「え?最後なんて言ったんですか?」
「いや、気にしないでくれ」
笑顔で言うクレア。身体を起こしたクレアの顔は赤く、尻尾はかなりバタバタと揺れている。喜びを表している行動から分かる通り、先ほどのアルからのキスにクレアは気づいていた。本当ならそのまま襲うつもりだったがアルからキスをしてくれると予想しておらず、あまりの幸せと嬉しさに固まっていた。
(こ、これはもう両想いということでいいのか⁉いや、もしかしたらお礼でキスをしてくれた…例えそうだとしてもなんて幸せな気分だ♡ダメだ、襲いたい♡アルのおちんちんが欲しい♡落ち着け私…ま、まだ抑えるのだ)
限界間近なクレアの表情はどれだけ冷静を装おうとしても笑みをこぼしてしまっており、襲わないのもドラゴンとしてのプライドや理性があってこそである。だが、このまま一緒に過ごせば、ほんの数時間でプライドや理性も消し飛ぶであろう。他ならぬクレア自身が確信していた。
(早くアルの気持ちを確認しなければ…いつ襲ってしまうかわからない♡)
「そ、そのアル……こうやって出会って、私が名前を付けて……それにアルの過去も知った……その、また1人でどこかに行くより私と…色んな場所を見ていかないか?」
「そ、それは……」
(さすがに早すぎたか?襲った後に提案した方が確実だったかもしれない…いや、それでは流された感じになってしまう……)
クレアの提案にアルは少し悩んでいる表情であり、クレアはアルの反応を見て、先走ってしまったかなと思いながら返答を待っていた。
「その…クレアお姉さんが良いなら……よろしくおねがいします!」
「キタァァァア…‼はっ‼」
思わずを口に出して喜んでしまったクレアは慌ててアルを見れば少し驚いた表情をしてしまっていた。クレアは赤面してしまいながらもコホンと咳き込んで区切るのであった。クレアとアル、2人の旅が始まることが決まったタイミングである。
18/11/03 20:44更新 / かなでゆうき
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