第一話「花園から始まる物語(正確には違うが)」
トットットットット……
ここは魔王城と呼ばれる場所。
といっても本物ではなくリリムが主の城である。
他にもこういった感じの城は沢山あるのだが今は置いておこう。
その城に遊びに来たリリムがいた。その名はアミチエ。通称アミと呼ばれる。
彼女は極度のシスコンであり、妹の事になると周りが見えなくなるタイプである。
そのシスコン度は新しい妹が産まれる度にわざわざ里帰りをするレベルだ。
今回のお話はそのシスコン王女が妹の城に遊びに来たというものである。
スタ…
おっと、いつのまにかアミチエが扉の前に到着していたようだ。
恐らく、いや、ほぼ間違いなくここが例の妹の部屋なのだろう。
コンコン
??????
「誰じゃ?」
アミチエが扉をノックすると返事が聞こえてきた。
しかし、この声は妹のものではなかった。
だがアミチエは驚いた様子もなく、質問に答える。
アミチエ
「私よ。」
??????
「なんじゃお主か、アミよ。鍵はかかってないから入ってもよいぞ。」
許可が出たのでアミチエは扉を開けて部屋へと入る。(出なくても入ったかもしれないが)
そこにいたのはリリムではなくバフォメットであった。
バフォメットは椅子に座るようにジェスチャーしたのでアミチエは椅子に座った。
続けてバフォメットも向かい側の椅子に座る。
バフォメット
「よくここへ来るのう、そんなに愛しのリエラが恋しいかの?」
リエラ…それはアミチエが会いに来た妹のことである。長くするとリエラ・エルテージ。
当然ながらリリムの一人であり、このバフォメットはお世話役というわけだ。
だから妹とは別の声が部屋から聞こえても驚かなかったのである。
アミチエ
「それもあるけど、あの娘は昔から無茶をする娘だったから放っておけなくて…ね。」
バフォメット
「相変わらずのシスコンじゃのう。」
アミチエ
「それはありがとう。」
シスコン呼ばわりされても動揺どころか誇らしげなのは流石である。
彼女曰く「シスコンの称号はステータスだ!誇らしい事だ!」とのこと。
バフォメット
「ところでアミチエよ、ここにはワシとお主以外は誰もおらん。」
バフォメットは唐突に話題を変えた。
その内容はさきほどの会話とはあまり関係なさそうだが…?
アミチエ
「あら?どうしてなの?」
バフォメット
「みんなには事前に休暇を出しておいたのじゃよ。」
アミチエ
「へ〜、準備がいいじゃない。」
バフォメット
「だからここではリエルの名前で呼んでも大丈夫じゃ、問題ない。」
アミチエ
「リエル…か。その名でリエラのことを呼ぶのはいつ以来かしら?」
リエル…それはリエラ自身が考えた愛称である。
「リエ」ラ・「エル」テージの「」の部分を合体させて作り出した愛称なのだ。
この愛称は親しい者のみに呼ばすことを許す、信頼の証みたいなものである。
なお、知らない者に教えてはならず、許してないのに勝手に呼ばれると泣く。
怒るでもなく号泣する。演技ではなくマジ泣きである。
余談だがこの愛称は両親はもちろん、リリム達も全員ではないが知っている。
アミチエ
「ところで…リエルはどこにいるのかしら?さっきから姿が見えないけれど…」
バフォメット
「ギクッ!」
バフォメットは素人が見てもわかるぐらい体をビクつかせた。
当然それをアミチエが見逃すわけがなく…。
アミチエ
「お世話係ちゃん、リエルはどこにいるのかしら?」
バフォメット
「えっと…それは…」
アミチエ
「…………」
アミチエは無言でバフォメットを睨みつける。
ここだけの話、アミチエは怒ると本当に怖いらしい。
このままでは実力行使されかねないのでバフォメットは白状することにした。
決してアミチエが怖かったのではなく、実力行使されたら面倒だっただけである…多分。
バフォメット
「こことは別の世界へ行ったのじゃ。」
アミチエ
「別の……世界……?」
バフォメット
「うむ。アミチエが見つけた世界とは違う場所へ行ったのじゃ。ワシの開発した魔導機械での。」
それを聞いた瞬間、アミチエの顔色が明らかに変わった。
そしてアミチエは瞬時に椅子を倒しながら立ち上がり、バフォメットに机をはさんで迫った。
アミチエ
「どこへ?どこへいったの!?リエルは!!」
バフォメット
「落ち着くのじゃ!第一アミチエなら妹が危険な目にあっても瞬時にわかるじゃろう!」
冷静さを失ったアミチエを安心させるように説得するが…。
アミチエ
「何かあってからじゃ遅いのよ!ちょっとその魔導機械使わせて!!」
効果はなかったようだ。流石シスコン王女である。
バフォメット
「駄目じゃ!その魔導機械は充魔しないと使えんのじゃ!」
アミチエ
「私の魔力を使えばいいじゃない!!」
バフォメット
「駄目なものは駄目じゃ!冷静になるのじゃアミチエ!!」
なんとしてでもここで説得してくれないと例のSSがヌルゲーと化してしまうのだ。
頑張れバフォメット。
バフォメット
「よいか!?これはリエルの成長の為でもあるんじゃ!それを妨害してはならん!!」
アミチエ
「でも…」
バフォメット
「でも…ではない!!リエルに嫌われてしまうぞ!?」
最後の一言が効いたのか、アミチエはうーん、うーん、と悩んで悩んで……。
そして、顔を上げると覚悟を決めた顔でバフォメットに言い放った。
アミチエ
「…わかったわ。ただし、リエルに危険が迫ったら即使わせてもらうわね?」
どうやら条件付きで納得してくれたようだ。
嘘を言う可能性は彼女の性格からして多分0%だろう。
バフォメット
「わかっているのじゃ…相変わらずのシスコン王女っぷりに疲れるのじゃ…」
アミチエ
「妹が危機に陥っているなら誰だってそうするわ。私だってそうする。」
まったく困った王女様である。
バフォメット
「そういえば初めて出会った時もこんな感じで言い争ってたのう。」
アミチエ
「……そうね、ちゃんとリエルを見てくれるか心配だったもの。」
バフォメット
「懐かしいのう………」
アミチエは過去の出来事を思い出していた。
色々あったのだろう、その顔には懐かしいという感情が現れていた。
アミチエ
「そう、確かあれは360000…いえ、14000年前だったかしら?」
バフォメット
「そんなに長生きしとらんじゃろ。」
アミチエ
「それでも人間で言う婚期を逃した歳なのよ?これでもね。」
アミチエは哀しみを含んだ声で返答したが…。
バフォメット
「お主それ実年齢1000超えのワシの前でも同じこと言えるのかのう?」
アミチエ
「む、イヤミで言ったんじゃないからね?」
バフォメット
「ワシにデレられても困るんじゃが…」
アミチエ
「ふふふ……♪」
それでは皆様、お待たせしましたね…。
アミチエ
(本当に……過去のリエラにも色々なことがあったわねぇ……)
プロローグはこれでおしまい。
これから本編である過去編が始まります…。
ちなみに過去編ではアミチエ視点になるのでご了承ください。
アミチエ
(そう、私とリエラが初めて出会ったのは…私が15歳の時だった……)
アミチエ
「マズイわ!5年も遅刻よ!!これじゃあ姉としてダメダメだわ!!」
ああ、なんということかしら!
私ともあろう者が、新しく誕生した妹に会う為の里帰りに5年も遅刻してしまうなんて!
手紙がすぐに届かなかったこと、私が忙しかったこと、タイミングが最悪すぎるとはいえここまで遅れてしまうだなんて!!
魔法を駆使して移動スピードを早めているけれど…遅刻した時間は取り戻せないわ!
早く急がないと……。
魔物娘A
「大変だ!早く探し出さないと!」
魔物娘B
「まったくあの娘は元気がありすぎです!!」
あら?何やら騒がしいわね?
何かあったのかしら?
アミチエ
「どうしたの?そんなに慌てて。落ち着いて話してごらんなさい?」
魔物娘B
「へ?あ、アミチエ様!それが…」
魔物娘C
「お世話をしていたリリム様の一人がお部屋を抜け出したんです!!」
アミチエ
「な…なんですって!?」
それは一大事だわ!
これを放っておくなんてこと、私には出来ない!!
アミチエ
「その娘の名前はなんていうの!?」
魔物娘C
「はい!名前はリエラ・エルテージ様です!!」
リエラ・エルテージ……私が今から会いに行く愛しの妹じゃない!
これは手伝わざるを得ないわね!
アミチエ
「わかったわ!私は外部を探すから貴方達は内部をお願い!!」
魔物娘B&C
「サー!イエッサー!」
城の内部は彼女達に任せて、私は城の外を探すことにしたのよ。
……今思えばこの判断は正しかったのね。
アミチエ
「どこにいるのかしら…?」
私は今、空を飛んで行方不明の妹を探している。
だけどいくら探してみても見つからないわ…。
これはちょっとおかしいわね。
アミチエ
(もしかしてどこかへ遊びに行ったの?)
それならありえる話ね。
この近くで子供が遊びに行きそうな場所と言えば……。
アミチエ
「あのお花畑!!」
魔王城の近くには不思議な花園がある。
そこには魔の植物などは一切生えないというミステリースポットなのよ。
安心して遊べる場所でもあるからほぼ子供の遊び場と化しているわ。
そこにいる可能性が高い……!!
アミチエ
「待っててね!リエラ・エルテージちゃん!もうすぐお姉ちゃんが迎えに来てあげるから!」
私は空を飛ぶスピードを上げてその場所を目指した。
そこにいる…根拠のない自信を持ちながらそこに向かう。
アミチエ
「ついた…!!」
私はなるべく花弁が飛ばないように静かに足を地面に着いた。
アミチエ
「やっぱりいつ来ても不思議な場所ね…」
噂の花園、私でも何度か来たことはある。
ここに来ると決まって思うことは…懐かしい。
それと何故かここへ来ると魔物娘特有の邪な感情すら消え、清々しい気分になるのだ。
なんとも不思議な場所である。
アミチエ
「……でも、あんまり浸ってはいられないわ。」
そう、自分はここへ癒されに来たのではない。
あくまで我が愛しの妹を見つける為に来たのだ。
……まだ出会ってすらいないが。
アミチエ
「…あら?」
そんな事を考えながら歩いていると人影が見えたような気がした。
今の時間は夕方、そんな時間に出歩いている子供はあまりいないだろう。
なら、ここにいる可能性のある子供は一人だけ。
アミチエ
「見つけたわよ…!」
私は走りたい衝動を抑えつつ、一歩一歩確実に近づいてゆく。
???
「わあ〜…このお花…綺麗……」
ふと、声が聞こえた。
意識すると更に声が聞こえてきた。
???
「あ!蝶々!待て〜!!」
聞いているこっちまでほのぼのしてしまいそうな声が聞こえてくる。
まるで平和そのもののような雰囲気が私の心を和ませる。
???
「待ってってば……きゃあ!?」
頬が緩んでしまいそうなのを我慢して近づこうとした瞬間、倒れる音と共に悲鳴が聞こえた。
アミチエ
「………!!」
私はその叫びを聞いた途端、走っていた。
しかし、花弁が散ってしまうので足を止めようとしたが、止める頃には目的地へと到着していた。
そこで私は、やっとその姿をハッキリと目に捉えたのだ。
アミチエ
「こ、これは…」
そこにいたのは、まるで天使のような存在の子供だった。
もちろんただの子供ではない。魔王の娘リリムの子供である。
その子は花畑に座り込んでいて、恥ずかしそうに自分の頭を撫ででいた。
???
「転んじゃった…えへへ。」
すると、その子の身を案じるかのように数々の動物達が集まりだしていた。
中にはその場でお昼寝してしまう小鳥もいたのだ。
???
「心配してくれてるの?ありがとー!!」
その幻想的な光景に思わず動きを今まで止めていた。
彼女は……あのリリムは、本当に私達と同じ魔物なのだろうか?
性欲や淫欲(一緒とか言わないで)を全く感じない……。
けれど、このままボーっとしているわけにもいかないので意を決して近づいた。
アミチエ
「……………」
???
「あ、動物さん達が……あれれ?」
私が近づいた影響からか、動物達は一目散に逃げていた。
悪いことをしてしまった気もするが、今はこの子がリエラか確かめなくてはいけない。
動物達が全員逃げ出した後にやっと子供は私の存在に気がついた。
アミチエ
「貴方が、リエラ・エルテージっていう新しく産まれたリリムかしら?」
リエラ
「うん!そうだよ!それで、お姉ちゃんは誰なの?」
やはりこの子が例のリエラ・エルテージという子供だったのだ。
そして、この子との出会いがこれからの劇場の幕開けとなる。
しかし当たり前ながらこの頃の私はそれを知る術はなかった…。
〜つづく〜
ここは魔王城と呼ばれる場所。
といっても本物ではなくリリムが主の城である。
他にもこういった感じの城は沢山あるのだが今は置いておこう。
その城に遊びに来たリリムがいた。その名はアミチエ。通称アミと呼ばれる。
彼女は極度のシスコンであり、妹の事になると周りが見えなくなるタイプである。
そのシスコン度は新しい妹が産まれる度にわざわざ里帰りをするレベルだ。
今回のお話はそのシスコン王女が妹の城に遊びに来たというものである。
スタ…
おっと、いつのまにかアミチエが扉の前に到着していたようだ。
恐らく、いや、ほぼ間違いなくここが例の妹の部屋なのだろう。
コンコン
??????
「誰じゃ?」
アミチエが扉をノックすると返事が聞こえてきた。
しかし、この声は妹のものではなかった。
だがアミチエは驚いた様子もなく、質問に答える。
アミチエ
「私よ。」
??????
「なんじゃお主か、アミよ。鍵はかかってないから入ってもよいぞ。」
許可が出たのでアミチエは扉を開けて部屋へと入る。(出なくても入ったかもしれないが)
そこにいたのはリリムではなくバフォメットであった。
バフォメットは椅子に座るようにジェスチャーしたのでアミチエは椅子に座った。
続けてバフォメットも向かい側の椅子に座る。
バフォメット
「よくここへ来るのう、そんなに愛しのリエラが恋しいかの?」
リエラ…それはアミチエが会いに来た妹のことである。長くするとリエラ・エルテージ。
当然ながらリリムの一人であり、このバフォメットはお世話役というわけだ。
だから妹とは別の声が部屋から聞こえても驚かなかったのである。
アミチエ
「それもあるけど、あの娘は昔から無茶をする娘だったから放っておけなくて…ね。」
バフォメット
「相変わらずのシスコンじゃのう。」
アミチエ
「それはありがとう。」
シスコン呼ばわりされても動揺どころか誇らしげなのは流石である。
彼女曰く「シスコンの称号はステータスだ!誇らしい事だ!」とのこと。
バフォメット
「ところでアミチエよ、ここにはワシとお主以外は誰もおらん。」
バフォメットは唐突に話題を変えた。
その内容はさきほどの会話とはあまり関係なさそうだが…?
アミチエ
「あら?どうしてなの?」
バフォメット
「みんなには事前に休暇を出しておいたのじゃよ。」
アミチエ
「へ〜、準備がいいじゃない。」
バフォメット
「だからここではリエルの名前で呼んでも大丈夫じゃ、問題ない。」
アミチエ
「リエル…か。その名でリエラのことを呼ぶのはいつ以来かしら?」
リエル…それはリエラ自身が考えた愛称である。
「リエ」ラ・「エル」テージの「」の部分を合体させて作り出した愛称なのだ。
この愛称は親しい者のみに呼ばすことを許す、信頼の証みたいなものである。
なお、知らない者に教えてはならず、許してないのに勝手に呼ばれると泣く。
怒るでもなく号泣する。演技ではなくマジ泣きである。
余談だがこの愛称は両親はもちろん、リリム達も全員ではないが知っている。
アミチエ
「ところで…リエルはどこにいるのかしら?さっきから姿が見えないけれど…」
バフォメット
「ギクッ!」
バフォメットは素人が見てもわかるぐらい体をビクつかせた。
当然それをアミチエが見逃すわけがなく…。
アミチエ
「お世話係ちゃん、リエルはどこにいるのかしら?」
バフォメット
「えっと…それは…」
アミチエ
「…………」
アミチエは無言でバフォメットを睨みつける。
ここだけの話、アミチエは怒ると本当に怖いらしい。
このままでは実力行使されかねないのでバフォメットは白状することにした。
決してアミチエが怖かったのではなく、実力行使されたら面倒だっただけである…多分。
バフォメット
「こことは別の世界へ行ったのじゃ。」
アミチエ
「別の……世界……?」
バフォメット
「うむ。アミチエが見つけた世界とは違う場所へ行ったのじゃ。ワシの開発した魔導機械での。」
それを聞いた瞬間、アミチエの顔色が明らかに変わった。
そしてアミチエは瞬時に椅子を倒しながら立ち上がり、バフォメットに机をはさんで迫った。
アミチエ
「どこへ?どこへいったの!?リエルは!!」
バフォメット
「落ち着くのじゃ!第一アミチエなら妹が危険な目にあっても瞬時にわかるじゃろう!」
冷静さを失ったアミチエを安心させるように説得するが…。
アミチエ
「何かあってからじゃ遅いのよ!ちょっとその魔導機械使わせて!!」
効果はなかったようだ。流石シスコン王女である。
バフォメット
「駄目じゃ!その魔導機械は充魔しないと使えんのじゃ!」
アミチエ
「私の魔力を使えばいいじゃない!!」
バフォメット
「駄目なものは駄目じゃ!冷静になるのじゃアミチエ!!」
なんとしてでもここで説得してくれないと例のSSがヌルゲーと化してしまうのだ。
頑張れバフォメット。
バフォメット
「よいか!?これはリエルの成長の為でもあるんじゃ!それを妨害してはならん!!」
アミチエ
「でも…」
バフォメット
「でも…ではない!!リエルに嫌われてしまうぞ!?」
最後の一言が効いたのか、アミチエはうーん、うーん、と悩んで悩んで……。
そして、顔を上げると覚悟を決めた顔でバフォメットに言い放った。
アミチエ
「…わかったわ。ただし、リエルに危険が迫ったら即使わせてもらうわね?」
どうやら条件付きで納得してくれたようだ。
嘘を言う可能性は彼女の性格からして多分0%だろう。
バフォメット
「わかっているのじゃ…相変わらずのシスコン王女っぷりに疲れるのじゃ…」
アミチエ
「妹が危機に陥っているなら誰だってそうするわ。私だってそうする。」
まったく困った王女様である。
バフォメット
「そういえば初めて出会った時もこんな感じで言い争ってたのう。」
アミチエ
「……そうね、ちゃんとリエルを見てくれるか心配だったもの。」
バフォメット
「懐かしいのう………」
アミチエは過去の出来事を思い出していた。
色々あったのだろう、その顔には懐かしいという感情が現れていた。
アミチエ
「そう、確かあれは360000…いえ、14000年前だったかしら?」
バフォメット
「そんなに長生きしとらんじゃろ。」
アミチエ
「それでも人間で言う婚期を逃した歳なのよ?これでもね。」
アミチエは哀しみを含んだ声で返答したが…。
バフォメット
「お主それ実年齢1000超えのワシの前でも同じこと言えるのかのう?」
アミチエ
「む、イヤミで言ったんじゃないからね?」
バフォメット
「ワシにデレられても困るんじゃが…」
アミチエ
「ふふふ……♪」
それでは皆様、お待たせしましたね…。
アミチエ
(本当に……過去のリエラにも色々なことがあったわねぇ……)
プロローグはこれでおしまい。
これから本編である過去編が始まります…。
ちなみに過去編ではアミチエ視点になるのでご了承ください。
アミチエ
(そう、私とリエラが初めて出会ったのは…私が15歳の時だった……)
アミチエ
「マズイわ!5年も遅刻よ!!これじゃあ姉としてダメダメだわ!!」
ああ、なんということかしら!
私ともあろう者が、新しく誕生した妹に会う為の里帰りに5年も遅刻してしまうなんて!
手紙がすぐに届かなかったこと、私が忙しかったこと、タイミングが最悪すぎるとはいえここまで遅れてしまうだなんて!!
魔法を駆使して移動スピードを早めているけれど…遅刻した時間は取り戻せないわ!
早く急がないと……。
魔物娘A
「大変だ!早く探し出さないと!」
魔物娘B
「まったくあの娘は元気がありすぎです!!」
あら?何やら騒がしいわね?
何かあったのかしら?
アミチエ
「どうしたの?そんなに慌てて。落ち着いて話してごらんなさい?」
魔物娘B
「へ?あ、アミチエ様!それが…」
魔物娘C
「お世話をしていたリリム様の一人がお部屋を抜け出したんです!!」
アミチエ
「な…なんですって!?」
それは一大事だわ!
これを放っておくなんてこと、私には出来ない!!
アミチエ
「その娘の名前はなんていうの!?」
魔物娘C
「はい!名前はリエラ・エルテージ様です!!」
リエラ・エルテージ……私が今から会いに行く愛しの妹じゃない!
これは手伝わざるを得ないわね!
アミチエ
「わかったわ!私は外部を探すから貴方達は内部をお願い!!」
魔物娘B&C
「サー!イエッサー!」
城の内部は彼女達に任せて、私は城の外を探すことにしたのよ。
……今思えばこの判断は正しかったのね。
アミチエ
「どこにいるのかしら…?」
私は今、空を飛んで行方不明の妹を探している。
だけどいくら探してみても見つからないわ…。
これはちょっとおかしいわね。
アミチエ
(もしかしてどこかへ遊びに行ったの?)
それならありえる話ね。
この近くで子供が遊びに行きそうな場所と言えば……。
アミチエ
「あのお花畑!!」
魔王城の近くには不思議な花園がある。
そこには魔の植物などは一切生えないというミステリースポットなのよ。
安心して遊べる場所でもあるからほぼ子供の遊び場と化しているわ。
そこにいる可能性が高い……!!
アミチエ
「待っててね!リエラ・エルテージちゃん!もうすぐお姉ちゃんが迎えに来てあげるから!」
私は空を飛ぶスピードを上げてその場所を目指した。
そこにいる…根拠のない自信を持ちながらそこに向かう。
アミチエ
「ついた…!!」
私はなるべく花弁が飛ばないように静かに足を地面に着いた。
アミチエ
「やっぱりいつ来ても不思議な場所ね…」
噂の花園、私でも何度か来たことはある。
ここに来ると決まって思うことは…懐かしい。
それと何故かここへ来ると魔物娘特有の邪な感情すら消え、清々しい気分になるのだ。
なんとも不思議な場所である。
アミチエ
「……でも、あんまり浸ってはいられないわ。」
そう、自分はここへ癒されに来たのではない。
あくまで我が愛しの妹を見つける為に来たのだ。
……まだ出会ってすらいないが。
アミチエ
「…あら?」
そんな事を考えながら歩いていると人影が見えたような気がした。
今の時間は夕方、そんな時間に出歩いている子供はあまりいないだろう。
なら、ここにいる可能性のある子供は一人だけ。
アミチエ
「見つけたわよ…!」
私は走りたい衝動を抑えつつ、一歩一歩確実に近づいてゆく。
???
「わあ〜…このお花…綺麗……」
ふと、声が聞こえた。
意識すると更に声が聞こえてきた。
???
「あ!蝶々!待て〜!!」
聞いているこっちまでほのぼのしてしまいそうな声が聞こえてくる。
まるで平和そのもののような雰囲気が私の心を和ませる。
???
「待ってってば……きゃあ!?」
頬が緩んでしまいそうなのを我慢して近づこうとした瞬間、倒れる音と共に悲鳴が聞こえた。
アミチエ
「………!!」
私はその叫びを聞いた途端、走っていた。
しかし、花弁が散ってしまうので足を止めようとしたが、止める頃には目的地へと到着していた。
そこで私は、やっとその姿をハッキリと目に捉えたのだ。
アミチエ
「こ、これは…」
そこにいたのは、まるで天使のような存在の子供だった。
もちろんただの子供ではない。魔王の娘リリムの子供である。
その子は花畑に座り込んでいて、恥ずかしそうに自分の頭を撫ででいた。
???
「転んじゃった…えへへ。」
すると、その子の身を案じるかのように数々の動物達が集まりだしていた。
中にはその場でお昼寝してしまう小鳥もいたのだ。
???
「心配してくれてるの?ありがとー!!」
その幻想的な光景に思わず動きを今まで止めていた。
彼女は……あのリリムは、本当に私達と同じ魔物なのだろうか?
性欲や淫欲(一緒とか言わないで)を全く感じない……。
けれど、このままボーっとしているわけにもいかないので意を決して近づいた。
アミチエ
「……………」
???
「あ、動物さん達が……あれれ?」
私が近づいた影響からか、動物達は一目散に逃げていた。
悪いことをしてしまった気もするが、今はこの子がリエラか確かめなくてはいけない。
動物達が全員逃げ出した後にやっと子供は私の存在に気がついた。
アミチエ
「貴方が、リエラ・エルテージっていう新しく産まれたリリムかしら?」
リエラ
「うん!そうだよ!それで、お姉ちゃんは誰なの?」
やはりこの子が例のリエラ・エルテージという子供だったのだ。
そして、この子との出会いがこれからの劇場の幕開けとなる。
しかし当たり前ながらこの頃の私はそれを知る術はなかった…。
〜つづく〜
15/04/08 15:15更新 / 6(`ロ)9
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