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一話 俺の一日の決定過程について

「兄さん、起きてください。ご飯、出来てますよ?」

耳に心地よい声が掛けられ、俺は目が覚めた。

薄っすら目を開けると、目の前に頭から触覚を生やした我が妹、ハニービーのネンスがいた。

「んあ・・・・もちっと寝かせてくれ。昨日は徹夜で寝れてないんだ」

俺は取り敢えず起こしにきた妹、ネンスに起きない事を告げて布団の中に頭を突っ込んで寝るという事をアピールする。うん、これでネンスなら諦めてくれる。

「おい、起きろ。クソ兄貴」

そう期待したのが間違いだった。

とんでもなく汚い言葉を吐く奴が現れたかと思ったら俺はベッドから引き剥がされ、宙に浮いていた。

もう成人してる俺をこうも簡単に持ち上げられる娘なんて、魔物娘である俺の妹達の中でも結構限られているが取り敢えず確認しないとな。アイツ等名前間違えられるの極端に嫌うし。

そう思って俺を持ち上げてる馬鹿妹を見てみれば、予想通り。ミノタウロスのセピアだった。

「セピア、すまんがもう少しネンスみたいに優しく起こすって事を覚えてくれないか?」

俺の文句にセピアはむっとした顔をして俺を降ろした。

「ああそうですよ。どうせオレはネンスみたいに可愛く起こせねぇよ」

「あ、セピアちゃん待ってよ〜」

セピアはドアを叩き潰し、ネンスはセピアをオロオロしながら追って出て行ってしまった。我が妹よ、頼むからドア潰すのは止めてくれ。そのドア、今ので35代目だったんだぞ・・・。

「兄様の部屋のドア、またセピアに壊されたんじゃな」

俺がお亡くなりになったドアに手を合わせていると、バフォメットの妹・クルルがひょいと顔を出した。

「そうさ、これで35代目もお陀仏さ。今回は芯に鉄を混ぜてたし、蝶番もキーリに作ってもらった最高傑作だったのに・・。アイツ、これ知ったら落ち込むんだろうな」

キーリってのは俺の家の隣で鍛冶屋をしてるつぶらな瞳が大変チャーミングなサイクロプスで、俺の幼馴染でもある。キーリは昔から家を破壊して回るがさつなセピアのために持てる技術の全てを使って修理してくれている。うう、有り難い。キーリがただで修理してくれるから我が家の家計は破産せずにいられるようなもんだしな。

「兄様、もっとセピアにしっかり怒ってもいいと思うぞい? 儂なら地獄の業火でたっぷり炙って牛の丸焼きになる寸前まで拷も・・・・ごほん、折檻して二度とせんようにするがの」

クルルよ。お兄ちゃんなんかクルルが怖くなってきたよ。最近炎系の魔法覚えて使いたいの分かるけどさ、なんでも燃やそうとしちゃ駄目だ。よし、二度とこんな物騒な事言わないように釘刺しとくか。

「クルル。それしたら兄ちゃん、クルルの事嫌いになるからな」

「ひぐぅっ!?」

俺のこの一言でクルルは一瞬で泣き顔になってしまった。

「にいさまぁ・・クルルを嫌いにならないでぇ。クルルいい子にするから、お願いじゃぁ」

うっ、いかん。クルルは身長が低いから俺を下から見上げる構図になる。その状態で俺にしがみついて来て涙目上目遣いかつ甘えた砂糖菓子みたいな声のコンボ・・だと!? 

いかん、俺の理性が崩れそうだ。

全国の妹が大好きなお兄ちゃんの気持ちが今なら理解できる。

コイツは例えて言うならジパングのサシミにショーユがなけりゃサシミって言えないっていうか、黒髪ロングな女の子に白のワンピースと麦藁帽子が絶妙に合うのと同じって言うか、癖になるっていうか・・一旦味わうと引き摺り込まれる可愛さっていうか、例えると煎り豆食べ始めたら大して好きでもないってのに気づけば全部食っちまってるっていう感じ・・・

何言ってんだ? 俺。正気度が下がっているようだ。窓にヘンなものなんて見えてないよな?

「あぁ、分かった。分かったから、取り敢えず離れてくれ。もう言わないって約束出来るなら嫌いにならないから。な?」

俺は取り敢えず妹と禁断の関係を持つ気はない。

うん、俺は正常なお兄ちゃんだ。クルルの兄だ。俺はコイツのお兄ちゃんでクルルは俺の妹。うん、そうだそうだよ。俺はクルルに変な気なんて起こしてない。イエスロリコンノータッチ。

・・・いや、俺ロリコンじゃないけどさ。



とにかく俺はぐずるクルルを宥めながら食卓へ向かった。

「あ、おはよう。やっと起きたんだね。今日は兄さんの好きなクロワッサンにしたよ〜」

ネンスが何とも嬉しい事をしてくれていた。ひゃっほい、朝からクロワッサンだと!? 今日は仕事の効率バカ上がりは確定だね。明日の分まで終わらせてしまえるかもね。

俺はそそくさと席に着き、クロワッサンをバスケットから10個取って自分の皿の上に置き、コップにミルクを並々と注ぐ。

素晴らしい。素晴らし過ぎる朝食だ。クロワッサンはこう、ゆっくりと剥がして食べるのが乙なんだよね。

「そうだ、兄さん。今日は仕事、いつ頃終わりそうですか?」

「んあ? ほうだは。とりはへふいふほほーひかは?(そうだな。取り敢えずいつも通りかな?)」

「兄様。口に物が無くなってから喋るのじゃ。何を言っておるか分からぬわ」

クルルめ。さっきまでぐずってたのに癖に飯となるともういつもの調子を取り戻してやがる。まぁ、こんなところを見せられるとやっぱりまだまだクルルも子供なんだな、と思ってしまうな。

「んん? 兄様、今失礼な事を考えんかったかの?」

「いやぁ? 何のことやら。それはそうとネンス、今日なんか用でもあるのか?」

クルルがまた不機嫌になりそうだったので俺は早々にクルルとの会話を切り上げてネンスとの話に戻る。

これ以上クルルを泣かすと後で機嫌取るために俺の財布がすっからかんになるからな。

「うん。今日はね? その・・・学校の参観日なの。だから来て欲しいな〜、なんて」

いや、あのネンスさん? 確かに貴方が通ってるホリティア州立学校には参観日なんて制度がありますよ? でも貴方、もう高等部でしょうが。それも栽培科の専門生でしょうが。小等部の子が言うなら分かりますがね? 貴方はもう18歳ですよ? 勿論人間年齢で計算しましたがね。

「あのな? ネンス。参観日ってのは小等部の子がしっかり学校で勉強してるかを親が確認するための行事であってだな、お前みたいに高等部の子には必要無い行事だぞ?」

「兄さん。兄さんはもう大人だよね?」

「そりゃそうだが・・」

「じゃあ兄さん参観来れるよね。三年前までは兄さんも学生だったけど今はもう大人だもんね」

そうだった。確かに三年前まで俺は学生だったな。ああ、あの頃に戻りたい。

まぁ参観に関しては実は俺が働き出してから言われてるんだが、今年になるまで俺が生活パターンを確立出来なかったから断ってたんだよなぁ〜。

まぁ所詮炭焼き師だから客の必要量計算して部下に雇ったゴブリン達に指示出すだけなんだけどね。

「兄さん。私、参観日ってどんな感じなのか知りたいなぁ〜」

ネンスはいつの間にか俺の背後に回りこんで後ろから抱きついて来ていた。

うっ、ネンスの絶賛発育中のお手頃サイズのえらく柔らかい胸が背中に押付けられて・・・これは例えるならジパングの餅、もしくは作りたてのパンだ。

実に絶妙な柔らかさだ。これ以上柔らか過ぎるとくどく感じてしまうし、これ以上硬かったら物足りなく感じてしまう。これが世にいう美乳か。

「ネンスの参観日に行くなら儂の参観にも来るのじゃ。兄様にはその義務があるのじゃ」

「ネンス達を参観するならオレも参観しろよな。不公平なんて許さねぇぜ」

ネンスがお願いを始めた所為でクルルもセピアも俺の両腕に抱きついてくる。

おおぅ、右から感じるこの弾力・・セピアめ。また胸大きくなったな? ミノタウロスの癖にホルスタウロス並みの大きさになるなんて。

しかし、セピアの魅力は胸にあらず。腹筋にあるのだ!! 

男顔負けの割れた腹筋は岩のような硬さを誇ると共に女の子らしいスベスベな手触りでついついずっと撫でていたくなる手触りなのだ。

そして左から感じるまだまだ発展途上でふにふにした感触しかない胸・・クルルは将来きっと胸が大きくなるさ。だから行商人からヘンな豊胸器具なんか買わなくったって良いんだよ。

でもお兄ちゃん思うんだ。クルルはツルペタなのが一番いいって。

この発展途上だからこそ産み出すふにふにぷにぷに感はその身体でないと産み出せないんだよ?

是非ともこのままを維持しておくれ。



はっ!? いかん、今俺は何を考えていた?  妹に性的な評価を下していただと!? 俺はお兄ちゃんなんだ。自分の妹に手を出す馬鹿が何処にいる!? ヒートダウンしろ、俺。

「分かったよ。参観、行くから退いてくれ」

俺はこれ以上抱きつかれているとおかしくなりそうだったので三人を無理矢理引き剥がした。

今日は仕事休みだな。というか朝から俺の大好きなクロワッサンだったのはこのためか。策士め。

「やったー。じゃあ兄さん。お昼過ぎに学園に来てください」

「楽しみにしておるぞ。兄様」

「来るんならくればいいぜ? 別に期待なんかしてないけどな」

三者一様に喜んでるな。これは行かなかったら・・酷い目に会うんだろうなぁ〜。


こうして俺の一日は嫌でも決定されたのだった。

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二作目です。前回はシリアス路線で行って堅苦しい物になってしまったので今回はドタバタラブコメディを意識して作り始めてみました。以前として文章は拙いものですが、楽しんでいただければと思います。ご感想お待ちしております

11/10/17 21:13 没落教団兵A

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