連載小説
[TOP][目次]
Deta6:ファーティマ(アヌビス)
やぁ、よく来てくれた。
ご指名、ありがとう。

ん? 他の子より指名料が少し高かった理由か?

よくぞ聞いてくれた!
私の耳掃除メニューは、耳のマッサージから耳かき後のケアまで一通り揃っている。
メニューが多いと言うことは、時間も長く、その分指名料も多く頂くというわけさ。

指名して頂いたからには、全身全霊で完璧にこなさせてもらう。


では早速、私の膝の上に横になってくれ。
ほら、遠慮せず。

…今日は寒い日だからな。
耳たぶ等の外耳は身体の中でも特に冷えやすい。さぞかし冷えたろう?

だからまずは、温かい濡れタオルで耳を暖めるぞ。
耳が冷えていると耳垢も少々取りづらくなるからな。

…どうだ? 熱くないか?
そうか、それならよかった。

耳が充分に温まったところで、次に耳のマッサージをしよう。
身体の力を充分に抜いてリラックスすれば、耳掃除もより気持ちよく感じるぞ。

まずは、外耳を軽く揉みほぐしていくからな。
これでも、肉球の柔らかさには定評があるぞ?


<フニフニフニフニ>


ふふ、どうだ?
…あっ、こらっ、涎をあんまり垂らすな!
膝がズルズルになっちゃうじゃないか!

き、気持ちいいから仕方ないって…………言われても…
あぁっ、ほら! ティッシュあるから涎は拭ってくれ!


<プニプニプニプニ>


さぁて、マッサージはこれくらいでいいかな。
今度はこれで外耳を軽く掃除するぞ。

…ん?
ああ、これは消毒液で湿らせたウェットティッシュだ。
ちょっとヒヤッとするかもしれないが、我慢してくれ。


<シュッシュッシュッ>


外耳は耳かきや綿棒だと掃除が行き届かなかったり、傷を付けてしまったりするからな。
例えばこの内側のとこなんて、耳垢が結構溜まりやすい。


<シュッシュッシュッ>


さて、と…ここはこんなものでいいかな。
じゃぁいよいよ、お待ちかねの梵天付きの竹耳かきだ。

ちょっと耳の中を見せてもらうぞ。
んー…うわっ、かなり溜まってるじゃないか。相当サボッてたな?

ここで耳かきしてもらう為に溜めてきた?
…確かにこっちとしてもやりがいはあるけど、あんまり溜めてもそっちが困るだろ?

ただまぁ、あまり頻繁にしすぎても耳にあまり良くないというが…
おっといけない、早速始めよう。


<カリカリッ>


どうだ? …そうか、良かった。
自分で言うのも難だが、技術には自信があるからな。


<カリカリカリッ>


どうしてこの仕事をしてるかって?
まぁ…一つには、部下のマミー達を養う費用を稼ぐためだな。

で、もう一つは花嫁修業の一環だ。
いつか私の夫になってくれる人に全身全霊で耳かきをしてあげるために…


<カリカリカリッカリカリッ>


マミー達もここで働かせようとしたんだが…あれじゃダメだ。
膝枕で発情するし、耳かきの技術も危なっかしくてとても店には出せない。
やるとしたら技術を磨いた上で、包帯で太股をグルグル巻きにでもしないとな。


<カリッカリカリッカリリッ>



さて、随分綺麗になったところで…綿棒の出番だ。
耳かきだとあまり強く出来ないからな。
ほら、もうしばらくじっとしててくれ。


<シュリシュリシュリシュリ>


うーむ。これはかなりの量があったみたいだな。
さっきも言ったが、溜めすぎはよくないぞ?


<シュリシュリッシュリッ>


ん…よし、だいぶ綺麗になったな。
これで…終わりだぞっ、と。


<シュリシュリ…ッ>


じゃぁ仕上げに、梵天入れるぞ。
ちょっとくすぐったいかもしれないが、動かないでくれ。

入るぞ。


<モフモフモフッ>


お、気持ちいいのか?
私の指とはまた違った感覚だろう?
…え? 私の指も…あっこら、そ…そんな事言われたら手元が狂うじゃないか!

<モフモフ…ッ>


それじゃ、最後の仕上げだ。
動くなよ?

ふぅぅぅぅ…ッ♪

…ふふっ、どうだ?
びっくりしたか?



よし、じゃあ反対側だ。向こう側を向いてくれ。
何? 私の身体が見えなくて残念? …か、からかわないでくれ!

…ふぅ、ではこちらも耳のマッサージから始めるぞ。


<フニフニフニフニ>


こっちはどうだ?
…それなら良かった。

ああ、眠かったら寝ても良いぞ。
終わったら起こそう。


<フニフニフニフニ>


マッサージは終わったぞ…っと。
んー…眠ってる、ようだな。

寝ても良いと言ったのは私だからな…このまま外耳を掃除しよう。


<シュッシュッシュッシュッ>


…ふむ、やはり結構溜まってるな。
この分だと、中も結構溜まってるだろうな。
まぁ、耳かき師としては喜ぶべきなんだろうか…


<シュッシュッシュッシュッ>


よしよし、次は耳かきだ。どれどれ…
うわっ、溜まってるなぁ…
これはまた…やりがいがありそうだ…


<カリカリッ>


…………これが終わったら…会員登録の説明をして…
それで、次は…、次から…この人は私を指名してくれるんだろうか…
してくれたら…嬉しい…な。


<カリカリカリッ…>


さて、そろそろ…

あ、まて、寝返…うわっ!


<ガバッ!>


ど、どうしたんだ!? 耳を押さえて…
ま…ま、まさか…寝返りのときに…や…やってしまったのか…!?

ああ…そんな…!
あれだけ言っておいて…耳を傷付けてしまうなんて…!

店長…店長呼ばないと…!
も…申し訳ありません…ッ!

どうしよう…どうしよう…ッ!?



…あれ?

どうしてそんな平気そうに…そんなニヤニヤして…

…………演技? 寝てたとこから…?


……………………






馬鹿ぁぁぁぁっ!


<ポカポカポカポカ>


ばかばかばかばかっ!

心配したんだぞっ、もう取り返しがつかないことになったと思ったんだぞっ!


<ポカポカポカポカ>


ばかばかばかばかっ!
ばかばかばかばかぁっ!


…………ふぅ。
あ、叩きすぎた…? す、すまない…

…だ、だがそっちも! そっちも…洒落にならない事をしたんだからなっ…!
それに、その…起きてたってことは…私の独り言も…全部…

…ぅええい、もう! 続きだ、続き! ほら、私の膝の上に寝転んで!
今度はもうあんな真似はよしてくれ、いいな!?


<カリカリカリカリッ>


まさかこんなことになるなんて…
店を辞めてマミー達と共に贖罪のために死出の旅に出ようとまで思ったんだぞ!

…ん、そろそろ綺麗になったかな。


<カリカリッカリカリカリ…ッ>


よーし、綿棒で仕上げだ。
動くなよー…?


<シュリシュリシュリシュリ>


な、何? さっきの会員登録がどうとかって話?
…ああ…この際だ、もう今の内に伝えてしまおう。

当店では、二回目以降は会員制になってるんだ。
年会費…決して高くはないぞ、それさえ払えば優先的に指名できる。
しかも会員になってから指名された魔物は、次から独占的に指名できるようになる。

で…10回指名してくれたら、その…奥の座敷で…
最後まで、していいっていう…ことになってるんだけど…


<シュリッシュリシュリッ>


あ、ああ、終わるまでに考えておいてくれ。

連続で指名しないで、毎回違う奴に耳かきさせてる男もいるけど…
その、なんだ…指名したい人がいるなら…その娘を指名できるようになるし…

…さ、仕上げ仕上げ!


<シュリシュリシュリ…ッ>


よし、梵天入れるからな。
登録がどうとかって話はまあ…じっくり考えてくれて構わないからな。


<モフモフモフッ>


…………会員になってからでも、別の子を指名してもいいんだ。
だけど、二回以上指名した子を変えることは出来ない決まりで…その…だから…

ああもう、自分で何が言いたいか分からなくなってきた!
さっきの悪戯で心を乱れたからだッ!


<モフモフモフ…ッ>


さ、いくぞ。動くなよ…?


ふぅぅぅぅーッ♪


…まだまだ。


ふぅぅぅぅぅー…ッ♪


さっきの悪戯のお返しだ。
涎垂らしたってやめないからな!


ふぅぅぅぅーっ、ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅー…ッ♪


…さて、これで全メニューは終了だ。お疲れさま。

それで、なんだが…その、会員登録の件は…

あ、ああ。登録してくれるんだな。


…………。


<ポムッ>


!?
な、なにを…頭なんか…撫でて…

…………え?
私を…ずっと指名して…くれる…って…?

本当か!?
本当の本当なんだな!?


あ…ありがとう、ありがとう!
そうだ…お望みなら、マミー達も呼ぶから!


ま…またのご来店、お待ちしております!
16/08/25 18:24更新 / 第四アルカ騎士団
戻る 次へ

■作者メッセージ
随分と更新を停滞させてしまい申し訳ありませんでした。

アヌビス、やはり難しい…
これで読者の皆様方のニーズに応えられたかどうか。


余談になりますが、次回の読切はショタ受の甘々エロになりそうです。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33