連載小説
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ヴァンパイア、ラスト・グラウンドフォールの幼少の記憶(if)
「貴様の祖父の名前は、『二荒実』ではないか?」

その一言で、妾は一瞬殺気を目の前の人間に向けた。

その殺気は本気で相手を殺す為に出す殺気と遜色ない。普通の人間でも感じる程の殺気だ。

そう、普通なら感じるだけ。感じるだけでそのあとの行動は立ち止まる事だ。


先程感じたものはなんなのか、それを考える為に立ち止まる。そこを妾たちは狙うのだが、

「−−−−−−っ!!」

目の前の人間は即座に妾との間をとった。
先程まで一緒にお茶を飲んでいたのだから、殺気を発したのはこの人では無い。という常識、先入観を全て置き去りにしてこいつが殺気を発した、と言う事実だけを確認し距離をとった。

これはおよそ普通の反応では無い。殺気を感じた瞬間バックステップで距離をとろうなど歴戦の猛者でもあるまいし。

……やはり、

「やはり、面白いな。二荒の血は」

心の中でかっかっか、と笑う。最初に二荒の血にあったのは、あの若造だった。

あの若造、二荒実は実に奇妙な人間だった。雲の様に気ままで、霧の様に掴み所のなく、そして、泥水の様に濁りきった奴だった。

『もしも、僕の息子とか孫とかが君と出会うことがあったらよくしてくれるかい?』

『きっと何か面白いことをしてくれるよ。ああ、必ず』

そう、言っていたが成る程面白い。面白いほど面白く育った。

一体このご時世どんな教育を受けたらこんな人間になってしまうのか。

「………こんなことに、なるとはな」

ポツリと呟く。

だが、気持ちを切り替える。今は目の前の人間と遊ぶ時間だ。
あんな反応ができるならまだ力を出しても大丈夫だろう。

第一話し合おうにもこの状況では相手は警戒を解いてはくれないだろうし。

スッ、と右脚を後ろに下げる。そして

「ッッ!」

思いっきりの水平飛び。低空飛行で人間の腹を殴ろうかと思ったが上手く避けられた。

実に上手く避けられた。

そのまま人間は一目散に逃げ出す。あの方向は……グラウンドか。

成る程、出来るだけ広い場所に出て避ける確率をあげようとしているのか。

「いいだろう。乗ってやる」

妾はそのまま人間よりも早いスピードでグラウンドを目指した。

−−−−−−−−−−
ヴァンパイアというのはかなり長生きをする。それは人間よりも細胞の成長が遅いからで、その上今の魔力の影響で老けにくくなっていることもある。

まあ、細胞の成長が遅いということは幼少期がかなり長いということだ。
ヴァンパイアの中で三十歳など赤子も同然なのだ。

そう、二荒葉に初めてあった時の六十八歳なんて、幼女以外の何物でもなかった。

「……どこ?ここ……」

あの時、私は人間界に一人で来ていた。
理由はただ一つ。二荒実に会うためだった。

今思い返せば無謀すぎた。知っているのは名前だけ。一応人間界に出てくる場所は調整できていたらしく場所は問題なかったが。

いかに六十八年生きてても外見は七歳八歳児だ。大人はまともに取り合ってはくれないだろう。

「え?ここ?」

だから、私は近くの公園にいた少年に声をかけた。そこに意味はなかった。ただ近くにいたから声をかけた、それだけだ。

それだけが、私の運命を変えた。

「ちょっと、人を探していて……」

「人探し?うーーん、僕はあんまり力になれないかもしれないけど……。なんて名前?」

「二荒実……」

そう言った時、少年の目が輝いた。

「え!?君お祖父ちゃんの知り合いなの?」

「お、お祖父ちゃん……?」

どうやらもう孫までいるらしかった。やはり、人間の成長は早い。

「君、名前は何でいうの?」

「ラスト・グラウンドフォール……。あなたは?」

そして、少年は言う。

「僕の名前は葉!二荒葉、葉っぱの葉って書くんだよ」
13/04/27 11:12更新 / アルバス
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■作者メッセージ
ラストの幼少の記憶。
出会っていた二人。

しかし、そこには葉の隠された過去があった。



長く間が空いてしまいました。

本当長文かけないなぁ。

暇つぶしにでも、どうぞ。

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