連載小説
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夜のお茶会、ラスト・グラウンドフォールと共に
お茶会、として俺が連れてこられたのはラスト先輩の寮室だった。
その寮室は全体的に黒で統一されており、照明がしっかりと部屋を照らしてくれていた。

「ほら、ここに掛けろ。遠慮はいらん」

「……それじゃあ、失礼します」

恐る恐る、と言った感じで部屋の中心にあったお茶会用だと思われる椅子に座る。

椅子は二つしかなく、丸テーブルの上にはティーセットが並べられていた。

「妾はヴァンパイアの中でも特に上の階級に位置するからな。お茶会に誘っても誰もやってこんのじゃ」

だから、来てくれたからには歓迎するぞ?と言ってラスト先輩は笑った。

「ほら、飲め飲め。菓子もいっぱいあるぞ?」

「では、一口……」

ティーカップを口につけ、淡い青の紅茶を(少し変な表現だが)口に含んだ。

「……美味しい」

「かっかっか。それはマロウブルーと言ってな?まあ、それ自体には味はないんじゃが幾つかのハーブを加えると、非常に美味になる」

ラスト先輩もマロウブルー茶を口に含み、満足そうに頷いた。

……ん?マロウブルー……、何処かで聞いたような………、

「ラスト先輩。ここにレモンってありますか?」

「?レモンか?」

不意にレモンを注文した俺にラスト先輩は怪訝な顔をしながらも、暫し待て、と言ってキッチンから輪切りになったレモンを持ってきた。

「レモンをどうするつもりじゃ?まさか紅茶の中にいれるわけではあるまい?」

「いや、そのまさかですよ」

レモンを少し搾り、二、三滴スプーンの上に垂らす。

「ラスト先輩。これでかき混ぜてみてください」

「……ふむ。味がおかしくはならんだろうな」

「……まあ、少量ですから」

その言葉を聞いてラスト先輩はスプーンを紅茶の中にいれかき混ぜる。と、

「……ほう!」

さっきまで淡い青の紅茶が淡い赤色に変わる。
マロウブルーは紫陽花から作られる為、酸性であるレモンの搾り汁を入れると赤くなる。

昔読んでいた本の知識がこんな所で役に立つとは思ってもみなかった。

「味も多少さっぱりとして特に変わっておらん。面白いものを見た。褒めるぞ、二荒葉」

「あはは、有難うございます」

そう言って俺も再び紅茶を啜った。

−−−−−−−−−
「今夜は有難うございました」

時計の針はもう既に十二時を越えていた。
なんだかんだでまだ明日も学校がある。あまり夜更かしも出来ないので、お茶会もお開きとなった。

「いや、構わん。妾も久しぶりじゃったからな、楽しめた」

そう言ってラスト先輩はかっかっか、と笑った。

「ああ……、それと二荒葉。貴様に聞きたいことがある」

「聞きたいこと……ですか?」

なんだろう。別に俺はラスト先輩に興味をもたれるような人間じゃ無いはずだが。

「いや、そう構えるな。妾が聞きたいことは一つだけ。それも簡単なことじゃ」

そして、美しい吸血鬼は俺に問う。



「貴様の祖父の名前は、『二荒実』ではないか?」

13/04/13 01:17更新 / アルバス
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■作者メッセージ
二人での優雅なお茶会。

しかし、最後の問いかけはこの物語を動かす鍵だった−−−−−−−



どうも、アルバスです。

執筆が遅いくせに文が短くてすみません。

頑張ろう、うん。頑張ろう。

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