第4話「その店主、不審につき」
ゴソゴソと衣擦れの音、
ばさばさと紙をめくる音。
「えー?‥えー‥、あれ、本当だ。
確かにそういうルールは規約にあるが‥、
店主よ、ギルドとしてはそれでも別に構わんが
そっちはそれでもいいのかよ?
期日に関する依頼者側の金額はこんなんだぞ?」
多分、ボスの顔色は蒼白なんじゃあないだろうか。
それを見れた状況じゃあない私は
何とも勿体無いことをしている。
「ん、それでいい。
3日の遅延をこっちに振り替えるわけだから、
ギルドに支払う額は‥こんなもんか?」
パチパチと算盤を弾く音。
ややしばらく置いてボスの
「お、おう‥」
と、何とも締まらない肯定。
「よし、決まり」
そして店主の声。
数日後、ギルドの酒場。
朝食を摂っていた私にボスが寄ってくる。
こういう時はあまり良い事ではない。
「結果オーライなんだがよぅ。
アレク‥、おめぇさんは少しの間
ギルドには顔を出すんじゃねぇぞ」
依頼達成ということで規定額の報酬を貰ったが、
やはり私にもそれなりにペナルティはあった。
そして、この顛末を伝えにとあの店へ
重い足取りで向かう。
結局リンの店に着いたのは日がすっかり高くなってしまって
もう昼は完全に過ぎてしまっていた。
「いらっしゃ‥ 何だ、居眠りの姉ちゃんか」
店主は私を見ると、さも当たり前かのように
サラリと言ってのける。
本当の事だしそれで迷惑を掛けたのだから文句は言えないのだけど、
やっぱり腹が立ってくる。
「何だ、言い返さんのか?」
そして挑発。
「あのねぇ!私だって好きでそうなったんじゃあないんd」
「知ってるよ」
──へ?
「この季節、まだ春先とはいえ
リザード種族を向かわせたのはオレの選択ミスだ。
それでギルドから大目玉を食ったのも何となく察しはつく。
どうせギルドから当分出入り禁止でも言われたんじゃないのか?」
全くその通りなだけに反論もできない。
「ま、座んな」
促されるままにカウンター手前の椅子に腰掛ける。
どこから仕入れたのか不思議な品々がカウンターに並んでいて、
見ていると飽きない。
「ほれ、紅茶と茶菓子」
出された物はまるで見たことが無い、赤い飲み物と何かの食べ物。
飲み物は湯気が立っていて、どうやら暖かいようだ。
食べ物の方はなんというか、三角形でフォークが添えられている。
「ん?紅茶は好かんか?」
これは紅茶というのか。なるほど、紅い。
一口啜ってみると、何ともいえない渋みがする。
「うぇ〜‥渋い‥」
「そりゃあストレートで一気飲みすれば渋かろうよ」
そう言うなり白い壷から白い立方体──角砂糖を取り出し、
ひとつふたつと紅茶の入った器の中へ落としてゆく。
ばさばさと紙をめくる音。
「えー?‥えー‥、あれ、本当だ。
確かにそういうルールは規約にあるが‥、
店主よ、ギルドとしてはそれでも別に構わんが
そっちはそれでもいいのかよ?
期日に関する依頼者側の金額はこんなんだぞ?」
多分、ボスの顔色は蒼白なんじゃあないだろうか。
それを見れた状況じゃあない私は
何とも勿体無いことをしている。
「ん、それでいい。
3日の遅延をこっちに振り替えるわけだから、
ギルドに支払う額は‥こんなもんか?」
パチパチと算盤を弾く音。
ややしばらく置いてボスの
「お、おう‥」
と、何とも締まらない肯定。
「よし、決まり」
そして店主の声。
数日後、ギルドの酒場。
朝食を摂っていた私にボスが寄ってくる。
こういう時はあまり良い事ではない。
「結果オーライなんだがよぅ。
アレク‥、おめぇさんは少しの間
ギルドには顔を出すんじゃねぇぞ」
依頼達成ということで規定額の報酬を貰ったが、
やはり私にもそれなりにペナルティはあった。
そして、この顛末を伝えにとあの店へ
重い足取りで向かう。
結局リンの店に着いたのは日がすっかり高くなってしまって
もう昼は完全に過ぎてしまっていた。
「いらっしゃ‥ 何だ、居眠りの姉ちゃんか」
店主は私を見ると、さも当たり前かのように
サラリと言ってのける。
本当の事だしそれで迷惑を掛けたのだから文句は言えないのだけど、
やっぱり腹が立ってくる。
「何だ、言い返さんのか?」
そして挑発。
「あのねぇ!私だって好きでそうなったんじゃあないんd」
「知ってるよ」
──へ?
「この季節、まだ春先とはいえ
リザード種族を向かわせたのはオレの選択ミスだ。
それでギルドから大目玉を食ったのも何となく察しはつく。
どうせギルドから当分出入り禁止でも言われたんじゃないのか?」
全くその通りなだけに反論もできない。
「ま、座んな」
促されるままにカウンター手前の椅子に腰掛ける。
どこから仕入れたのか不思議な品々がカウンターに並んでいて、
見ていると飽きない。
「ほれ、紅茶と茶菓子」
出された物はまるで見たことが無い、赤い飲み物と何かの食べ物。
飲み物は湯気が立っていて、どうやら暖かいようだ。
食べ物の方はなんというか、三角形でフォークが添えられている。
「ん?紅茶は好かんか?」
これは紅茶というのか。なるほど、紅い。
一口啜ってみると、何ともいえない渋みがする。
「うぇ〜‥渋い‥」
「そりゃあストレートで一気飲みすれば渋かろうよ」
そう言うなり白い壷から白い立方体──角砂糖を取り出し、
ひとつふたつと紅茶の入った器の中へ落としてゆく。
12/01/04 02:25更新 / 市川 真夜
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