連載小説
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新たな旅路へ
ライブラ解放作戦から三年の月日が経過した。
あの戦いの後、前王からライブラを治めてほしいと頼まれた。
だけど俺は、その申し出を断った。俺は一国を治める程の器ではない。
しかし、前王は何度も俺に国の王になってもらえないかと頼んで来た。
最終的に前王の熱意がライブラの民たち全員に伝わり、代表者や王の臣下、騎士団長達等が、こぞって俺に国を治めてくれと頼んで来た。
本来であれば王家の血筋や直系の者達が国を治めるのが普通だ。
そうしなければ国自体が崩壊する。俺は何度も断り続けたが、それでも皆の意思は固く、やがて前王が直々に頭を下げて言った。

―「先の大戦で重傷を負ってしまってな…彼女から魔力を得ているとは言え、身体の組織や細胞等が未だ完全に機能してない…だから私に代わって国を治めてくれないか?」―

彼女とは勿論、王妃様の事だ。王妃様の正体はサキュバス。
俺がその事に気付いたのは、あの作戦が終わった後のことだ。
リエス=エリオン率いる『悠久の翼』の駐屯地で王妃様から聞いた。

―「それに君の事は此処に居る時、皆から聞いた…町での活躍や人柄は、かなり有名だよ、だから君がライブラを治めてくれたら私も嬉しい」―

俺の答えは未だ見つからない。
その姿に再び国王は考案を出す。

―「ならば君が遠征に出ている時や長期に渡って不在の時などは私が王を務める、言わば私は君の影…影武者だ。国の実権は、あくまでもソウキ、君だ…それで納得してもらえるかな?」―

少し考えた後

―「分かりました、ライブラの国王に就任します」―
―「ありがとう」―
―「ただし、一つ約束してほしい」―
―「何かな」―
―「完全に身体機能が回復したら再び国王の座についてほしい」―
―「なぜだい?」―
―「皆が承認とは言え、ライブラの未来を考えると国の混乱は招きたくないし、跡継ぎ問題等で国が分かれてしまったら、それこそ本末転倒になる」―
―「その事なら問題ない」―
―「それはどういう…」―
―「私には跡継ぎも養子もいない…何より“彼女”と私の間に子供は出来ても魔王様の世代交代により男児は誕生しないのだよ」―
―「そうなんですか?」―

俺はこの世界の理(ことわり)に再び驚かされた。

―「仮に男児が生まれても、その確率は極めて低くゼロに等しい」―
―「そうだったのですか?」―
―「そうだよ、この世界の住人なら誰でも知っている…というか、それが当たり前の事で常識の範囲内だよ…ソウキ、君はおかしな事を言うね」―
―「俺は元々、この世界の住人じゃない」―
―「それは一体…」―

俺は自分の事を話した。
その事に国王様や王妃様、城の騎士や大臣・民など多くの者が驚いた。

―「そうか…君は私達と違う異なる世界、言わば異界から来たんだね?」―
―「ああ」―
―「分かった…深く追求しない」―
―「その方が俺も助かる」―
―「そうなると君には色々と、この世界について教えなければならない事が山ほどあるな…ソフィ、隠居はまだ先になるけどいいかな?」―
―「はい、構いません…ソラと一緒に居られるだけで私は幸せです」―
―「ありがとう…愛しのソフィ」―
―「ソラ…んっ」―

二人は人目もはばからず互いの唇を重ね合わせた。
その行為に俺と美代と雪桜は目を丸くし、それ以外は二人の抱擁を温かく見守っていた。
その後、俺はライブラの国王の座に就いた。










そして今に至ると言うわけだ。
現在、これまで交流の途絶えた西門を除く東・北・南の先にある集落や部族達との交流も回復し、以前よりも活気づいてきた…というよりも、これがライブラ本来の姿なのかもしれない。

その理由として最も考えられるのが、あの大臣の影響だと思う。
今は亡き大臣…元々彼は光の教団と言う武装宗教団体から派遣されたメンバーの一人で、この国を掌握しようとしていた。その為、まず手始めにライブラと交流のある西門以外の三つの門を封鎖し、その先にある集落へライブラに不信を思わせる内容の手紙を書き記して交流を断ったのかもしれない。あとは交流の途絶えた事を疑問に思った前王に何らかの形で安心させたのだろう。…と此処までの見解は俺の憶測や推測にすぎない。実際、大臣がどのような方法で活動を行なっていたのかは本人しか知りえない事だ。

今は、その不信や疑惑を解消する為、王の俺が直々に現地へ赴き、誠心誠意で彼等に接して友好的である事を示している。その甲斐もあって三年間で大半の集落や部族達との交流が多くなった。その為、ライブラの治安維持の他に、そこへ騎士を派遣したり、直々に足を運び、色々な活動を行なっている。その為か内政のほとんどは美代や前王ソラ、前王妃ソフィなど信頼のおける者達に任せっきりだ。俺は直々に城下町の視察や治安維持の役割を務めている。その事で当初、色々と周りから反対されたのは、ある意味良い思い出だ。

「陛下、そろそろです」
「分かった」

ここは王城ライブラの一室。今日は戴冠式だ。
本来、この催しは俺が新国王に即位した後、行なう儀式。
しかし、あの戦いでライブラは城だけでなく城下町も大きな被害を受けた。
その為、城や町等の復興を最優先し、次いで東・北・南の集落や部族達の交流を深めながら治安維持活動を行なった。その結果、現在まで戴冠式が延長された。勿論、戴冠式を最初に行なえばよかったが、それでは東・北・南の先の集落や部族達の不信疑惑が解けないままだ。それでは意味が無い為、信頼関係を回復させて交流を進めた。
復興には港町アクエリウスの建築関係や『悠久の翼』の助力もあり、スムーズに進んだ。

「なぁ、夜音」
「どうしましたか?陛下」
「今は名前で構わない」
「滅相もございません」

片膝を地につけて恭しくかしこまっているのは以前、ジパングで世話になったクノ一四姉妹の長女、十六夜夜音(いざよいよね)だ。彼女は桜の花の刺繍が施された丈の短い袖なしの着物に身を包み、手足には籠手と具足を付け、腰に小太刀を携えている。

「あの時から俺達は家族だ」
「ですが…」
「家族に他人行儀はいらない」

クスリッ、と夜音は笑うと家族と接する様に話し始めた。

「本当に変わらないわね…蒼輝、あの時から」
「そうか?」
「ええ、あの時、蒼輝の事を救世主様って私達が言った時もそうだったわ」

―「他人行儀は止めてくれよ、俺は救世主じゃない…一人の人間だ、それに君たちも俺の部下や護衛じゃない…家族だ」―

「あれからだったわね…家族として私達姉妹と接してくれた」
「それは千代姫(ちよめ)さんも同じだろ?」
「そうね、千代姫様も身寄りのない私達姉妹を実の娘の様に可愛がってくれて凄く嬉しかったわ…だからかな?」

スッ、と夜音は俺の傍に近付いてきた。
夜音は俺の“元居た”世界の年齢で表すなら同級生に当たる。

「蒼輝、貴方に惹かれた」
「どういうことだ?」
「鈍感ね…」

夜音は整った美しい顔を近づけてくる。
その様子を、じ〜っと遠くから見ている気配に夜音が気付く。

「真夜、夜美!」

その気配は四姉妹の双子、三女の真夜(まや)と末っ子の夜美(やみ)。
二人は俺より二歳ほど年が離れており、こちらも夜音と同じく美少女だ。
もう一人、真夜と夜美の姉であり、夜音の妹である夜雅(やえ)と言う美少女が居る。しかし、彼女は美代の護衛の為、ここにいない。

「夜音姉さんが義兄様を誘惑してる」
「義姉さんにいいつけますよ」

夜雅、真夜と夜美の服装は夜音と同じく袖の無い丈の短い着物。
ただ違うとすれば夜音の忍び装束は桜の花をモチーフにした刺繍と模様が入っているのに対し、夜雅は日輪草、真夜は紅葉、夜美は雪の結晶をモチーフにした刺繍と模様をそれぞれ施している事くらいだ。

「よぉ〜真夜、夜美」
「義兄さん」
「義兄様」

一目散に双子の姉妹は俺と夜音の間に割って入り、右側には真夜、左側には夜美という俺は両手に花という状況になった。二人は両腕を掴んだまま、身体を半回転させると俺と夜音の間に立ちふさがる様に立つ。

「危なかったね、義兄様」
「私達双子が来たからにはもう安心です、義兄さん」
「ち、ちょっと…真夜、夜美!誤解を招く言い方はやめなさい!」
「違うの?」
「違います!」
「ならどうして義兄さんに顔を近づけたの?」
「そ、それは…そう!今日は戴冠式でしょ?だからよ」

あたふたしながら夜音は双子の真夜と夜美に弁明する。
その姿が微笑ましく見えた俺は思わず笑う。

「君達は本当に仲の良い姉妹だな、見てても飽きないよ」





その優しい微笑みに私は胸がキュンッとなり、真夜と夜美に視線を移すと同じく二人も蒼輝の笑みに頬を朱に染めて顔をぽ〜、とさせている。確かに私達は蒼輝の家族だけど、それ以上に蒼輝の事が好き。例えそれが叶わぬ想いだとしても一人の男性として意識している。それは今、ここに居ないもう一人の姉妹も同じ想いを彼に抱いている。

「三人ともどうした?」
「な、なんでもないわ」
「なんでもないです」
「なんでもないよ」
「そうか」
「それより真夜、夜美どうしたの?」

私は四姉妹の長女らしく振る舞う。

「義兄さんと夜音姉さんが遅いので迎えに来ました」
「義兄様と夜音姉様以外、みんな集まってるよ」
「民の殆どの方々が、この日を待ちわびていたようです」
「ジパングからも千代姫様や蒼緋様も来てるよ」
「どれだけ来てるんだ?」
「分かりません、この三年間で義兄さんが訪れた場所等を含めると、かなりの大人数が集まってます」
「みんな義兄様の晴れ姿を一目見ようと訪れてるよ」
「なら早く行かないとね、蒼輝」
「そうだな、待たせるのも悪い」

私達は部屋を出る蒼輝に言った。

「私達忍びは公の場に出られないので、これで失礼します」
「警備は万全を期しています義兄さん」
「何かあったらすぐに駆けつけるからね、義兄様」
「まぁ仮に何かあっても返り討ちにするけどな」

―その心構えは立派だが油断するなよ、蒼輝―

蒼輝の腰に携えられた神霊刀『神威』から古風な女性の声が響く。
彼女は先の大戦後、白銀の精霊姫『雪桜(ユキサクラ)』と改名した。

「分かってる」

―なら良い、戴冠式とやらに向かうぞ―

「雪桜…戦いに行くわけじゃないからな」

―わかっておる!―

そんな会話を聞いた後、私達は『穏行術』で姿を消した。





ここは王城の中でも一際広い大広間。先の大戦で多大な被害を受けた城の内部構造を見直して立て直す時、城の内部に特殊な術式を展開した。その術式の御蔭で外見からは想像できないほど内部は広く創られ、様々な施設や整備等を設ける事が出来た。この大広間も、その影響を受けた内の一つだ。現在は戴冠式の為、多くの“人達”が、この記念すべき日を迎える為、王城に訪れている。その中にはジパングから代表として蒼緋さんや千代姫さんと二人の護衛、東・北・南門の先の部族や集落の代表者、ライブラの城下町からも民等が出席している。また解放作戦で世話になった『悠久の翼』のリエス=エリオン総帥やレナス=アイリス参謀の顔も見える。

「これより、ライブラの新たな王になるソウキの戴冠式を行なう」

拡声器魔法で出席者全員の耳に聞こえるように話すのはライブラの王『碧の賢帝』の異名を持つソラ。彼は『勇者』としての素質があり、天賦の才を持つ選ばれた人間だった。聞いた話によると彼は元々“彼女達”即ち“魔物娘”を破滅の道へといざなう存在で反魔物派勢力にとって期待の星とされていた。しかし、ある時を境に光の教団に疑問を抱く様になった。

―「なぜ“彼女達”を、この世から抹消させる必要があるのか」―

そんな時、一人の魔物娘と出会った。それが『艶麗の魔姫』の二つ名を持ち、のちにソラさんの生涯の伴侶となる今のソフィさんとの出会いだ。これについては、いつか語ろう。

「ソウキ」

ソラさんに名前を呼ばれた俺は白銀の精霊姫『雪桜』を腰から外し、右手に持ち替えると彼の前でひざまずく。これは相手に敵意が無い事を示す一番の方法だ。もっとも、その必要性が全く無い事は明白で皆が分かっている。

「東国の遥か彼方より導かれし、若き青年ソウキ」

東国の遥か彼方とは勿論、この世界のジパングではない。
俺の“元居た世界”言うなれば“異界”の事だ。

「国王ソラの名の下、ソウキにライブラの国王の座を渡す」

するとソラさんは自分の蒼いマントを肩から外し、俺の肩にかける。

「ここに新たなライブラの王、蒼輝(ソウキ)が誕生した」

俺は立ち上がり『雪桜』を腰に携え、蒼いマントを翻す。
すると大広間は盛大な賑わいを見せた。

「これより新国王ソウキ殿から一言」

前王ソラさんは俺に向き直る。

「陛下、どうぞ」
「あ、ああ…(ソラさんが敬語…)」

―(馬鹿者!しゃきっとせんか!!お前は既に一国の王だぞ)―

「(分かってるよ)」

雪桜に促された俺は一息つくと皆に向かって口を開く。

「こんにちより、王の位を授かった蒼輝(ソウキ)だ…皆、宜しく頼む」

たった一言にも拘らず、皆が祝福してくれた。

「それと確かに俺は王になった…だが俺が城下町を訪れる時等は普段通りで構わない、俺達ライブラの民は種族も関係ない皆が家族だ、絆を大事にしたい…だが、その絆を脅かす者が現れた時は全力で対処する、それが俺の…いや、ライブラの…この国のビジョンだ」

俺の言葉に今度は逆に皆から驚きの声が上がった。

「そしてもう一つ、国王ソウキから皆に報告がある」

前王ソラさんの言葉に再び、ぴたりっと皆が口を閉じる。表向きソラさんは俺の補佐を務めるが、俺が不在の時等は彼が王を務める。また余計な混乱を招かない為にも、その事はライブラの民全員に最初から伝えてあり、皆の承諾も得ている。

「ソウキ殿」
「ああ、そうだな」

俺は着物姿の美しい容姿の少女に声をかける。少女は琥珀色の瞳をしており、腰まで長い黒髪をストレートに伸ばす。また少女の頭頂には空に向かってピンッと立つ二つの獣の耳があり、尾てい骨辺りからは九本の尻尾が見える。それもそのはず彼女は人間ではない、稲荷という東国に生息する狐の妖(あやかし)であり、俺の伴侶の美代だ。彼女も俺と同じ“異界”から来た。今、彼女の腕の中に一人の赤ん坊がスヤスヤと安らかな寝息を立てて寝ている。

「昨夜、産まれた俺と美代の娘…名前は『桜華(オウカ)』だ」

再び大歓声が大広間に響き渡り、祝福の声が上がった。
その後、大広間で盛大な祝賀会が開かれ、その賑わいは夕方まで続いた。

その夜…深夜、静寂に包まれた王の一室。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……美代……」
「あっ、あぁっ……あっ……蒼輝……」

ベッドの上では一糸まとわぬ姿の男女二人が肌を重ねている。

「あっ、あっ、あっ……ああっ」
「うっく……くぅ」

交わり合う水音、腰を打つ乾いた音、甘い嬌声、汗ばむ身体。

「はぅっ、あぅ、う……ふぁっ、あ、は、う……うぅっ!!」

少女は身体を弓なりにしならせ、青年の愛を身体全体で感じる。
青年は深く、少女の子宮口に自分の分身を届ける為に突き込む。

「い、いくよ?」
「うん……来て……私の中に……蒼輝を……感じさせて」

青年はグッ、と深く腰を落とすと少女の最深部に白濁を注ぐ。
ドクドクと脈打つ飛沫を受け止めた少女は青年に口づけを求める。

「んっ、んんっ……んっ」

舌を舐められる度に少女はヒクヒクと腰を震わせ、何度目かの絶頂の余韻と精液を子宮内で受け止める。

「蒼輝の……たくさん出るね」
「もう少し出る」
「ふふっ……もっとたくさん出して良いからね」

とろけた声色で囁いた少女は繋がったままの状態で腰を揺する。
その動きに促され、奥に溜まった精液の残滓がトロトロと溢れる。
彼等のベッドの近くには木で周りを囲んだ小さなベッドがあり、その上では二人の愛娘オウカ(桜華)が静かな寝息を立てて寝ている。

「起きないね」
「起きた方がいいのか?」
「ううん…桜華も大事だけど蒼輝との、この時間も大事だからね」

繋がったまま再び口づけを交わした二人は両手を絡ませ合う。

「明日…ライブラを発つのよね」
「ああ、“彼女”との約束を果たさないと…」
「私も行きたい」
「俺も連れて行きたい…けど、そうすると桜華が一人だ」
「分かってる…私だって桜華を一人に出来ない」

青年は仰向けに横たわる少女と繋がったまま話す。
少女は、それに応える様に指を絡ませ、口づけを貪る。

「だから、もっともっと私の膣内(なか)に蒼輝の精液を注いで…離れていても、ずっとずっと蒼輝の存在を私が感じられるように…蒼輝が返って来るその日まで…」
「美代、美代……っ!!」

青年は更に激しく腰を振り、それに呼応するようにベッドも激しく揺れる。

「あっ、ああっ、あっ!!」
「はっ、はっ……くぅっ」

青年はさっきよりも深く腰を落とすと少女の最深部の割れ目に到達した。
少女は膣内を強く締め上げ、青年を逃がさないように固定する。
それが合図だったかのように少女の最奥部に青年は精液を解放した。
ドクドクと先程よりも激しく脈動する白濁を少女は、しっかりと受け止める。

「さっきよりも凄い量ね…ふふ、お腹が膨れちゃった」

少女は膨れたお腹を愛おしく撫ぜ、今も注がれている青年の精液を味わう。
二人の夜は、これから始まる…まだ終わらない。










その後、蒼輝は約束を果たす為、白銀の精霊姫『雪桜』と共に旅に出た。
クノ一四姉妹に美代と桜華の護衛を任せ、信頼のおける前王ソラと前王妃ソフィに国を任せて…。
14/09/01 17:48更新 / 蒼穹の翼
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