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後編 |
「此処が越後城…」
現在、俺とクノ一部隊は越後城の裏門付近の林で待機中だ。 また此処へ来る途中、俺が乗っていた馬は小川のほとりで待機させている。 「情報では城の地下牢に蒼緋様が幽閉されている筈です」 「よしっ、蒼緋さんを助け出すぞ」 俺は号令をかけ、城に潜入するべく行動を起こす。 と、今にも林から飛び出しそうな俺を四人のクノ一部隊は制止した。 「お待ちください、その格好で行く気ですか?」 「そうだけど?」 「目立ち過ぎます」 「問題無いだろ」 「この作戦は絶対に失敗が許されないのですよ?」 「それは充分に理解しているが…」 「でしたらもう少し目立たない服装をしてください」 「んなこと言われても他に着替えが無いし…」 クノ一部隊に服装の事を注意された俺はどうする事も出来ない。 確かに今の服装はワイシャツにズボンと、この世界で言えば面妖な格好だ。 しかし、地下牢まで何も無いと言う事はまずあり得ないだろう。 必ず教団の連中が幾人か城の中で待機してる筈だ。 「それに…この格好の方が動きやすいし」 「ですが」 「着慣れない格好をする方がよっぽど作戦に支障がでるだろ?」 「……わかりました」 此処で言い合っても埒が明かないと悟ったクノ一部隊。 「そんな顔するなよ、綺麗な顔が台無しだぞ」 俺の言葉にクノ一部隊が覆面の奥で頬を赤らめた様な気がした。 まぁ何はともあれ若干不服の彼女達もどうにか納得してくれたようだ。 再び俺は越後城の裏門で待機している教団に視線を移す。 現在、教団の殆どの勢力が遠征に出ている為、城の中は手薄だ。 「この機会を逃してはなりません」 「私達は地下牢に幽閉されている蒼緋様を助けます」 「救世主殿は本丸へ向かってください」 「私達もすぐに向かいます」 「了解だ…これより越後城と蒼緋さんを奪取する、行くぞ」 俺達は林の中から素早く躍り出た。 「なっ!?」 「こいつ等、何処から!?」 「悪いな」 反撃の隙を与えず俺は教団の後ろに回り込み後頭部を手刀で強打する。 此処は人間の急所の一つであり最悪の場合、死に至る。 「お?」 「如何しましたか?」 気絶させた教団を縛っている途中、ある事に気付いた。 「この白いローブ…使えないか?」 言うや否や俺は教団の着てたローブを手に取る。 そしてワイシャツの上からそのままローブを羽織った。 俺の姿は何処からどう見ても教団にしか見えない。 「なんと…」 「んじゃ、本丸で落ち合おう」 俺は裏門から堂々と、クノ一部隊は気付かれないように潜入する。 元々彼女達は隠密行動を得意とする為、こんな事しなくてもいいんだけどな。 まぁ念には念を入れる…仮に見つかった場合、俺は対処できない。 潜入した越後城の中は意外と広く非常に複雑な造りになっている。 あの後、クノ一部隊と別れた俺は本丸に向かう為、城の廊下を歩いている。 歩きながら城の所々を見れば今も天に昇りそうな龍の絵が描かれている。 そう言えば、この城…何処となく東洋の龍をモチーフにしている気がする。 だが全てが同じと言うわけではない…平たく言えば鍾乳洞の様な造りだ。 まぁ実際の鍾乳洞内部と全く形状が違うけどな。 俺はクノ一部隊が調べ上げた城の見取り図を頭に思い浮かべながら歩く。 「(何かおかしいな)」 俺は妙な違和感を覚えながら城の廊下を歩き続ける。 先程、裏門から城へ潜入した際、俺は一度も警護の教団に逢ってない。 別に鉢合わせをしたいわけじゃないが何か引っかかる。 幾ら城の内部が手薄とは言え、これほど警護に逢わないものなのか? 「(まるで気配が感じられない…)」 千代姫さんやクノ一部隊の話を聞く限り、彼等は海を渡った大陸で最も主流の西洋魔法を扱う西洋魔術師というものらしい。彼等の使う西洋魔法は基本的に万物を司る四大元素…風・火・水・土を操り、それに加えて白魔法や黒魔法等を使う。そしてその中でも厳しい修行を積んだ者が失われた超古代魔法を扱えると言う。 「(何の苦もなく本丸に到着するが、かえって気味が悪いな)」 奏功してる内に本丸に到着したが辺りに気配が感じられない。 もしかしたら隠ぺい魔法か何かで気配を隠しているのだろうか? 俺は此処の世界の住人ではない為、"魔力の流れ"が分からない。 もしこれが腕の立つ武術家や武芸者なら"気の流れ"で分かる。 だが今此処で考えても仕方ない…俺は意を決して本丸の障子戸を開く。 「何者だ!」 そこに居たのは大きな十字架の刺繍を入れた白いローブを着た人物。 彼は樫の木で作った杖を持ち、突然の来訪者に驚愕している。 「お前が首領だな」 「そうだ…見慣れぬ格好をした奴が来たな」 「ちょっと故あってな…」 「まぁ良い…貴様も青き清浄なる世界を邪魔する親魔物派の勢力か?」 初対面にも拘らずローブを着た男は俺に敵意をむき出しにしている。 こいつが大陸の向こうからこの地へやって来たと言う教団の統率者か。 「それはどうかわからないがお前はどうなんだ?」 「我等は魔物を排斥・駆逐し、青き清浄なる世界を実現する"光の教団"だ」 俺の居た世界にも様々な宗教団体はあるが排斥なんて言葉は殆ど使わない。 排斥とは受け入れ難いものを拒んで退ける言葉で余り良い意味じゃない。 しかし"光の教団"…俺達の世界で言う一種の宗教団体は躊躇なく口にした。 なるほど…こいつらが千代姫さんの言ってた親魔物派と対になる存在…反魔物派の勢力か。 「世界の変革を邪魔するのなら例え貴様が異界人でも容赦しない」 「どうして俺が異界人と言う事が分かった?」 「この世界は剣や魔法等に支配された世界だからな」 「ああ…そうか」 「だから魔力等の流れが貴様から感じられない」 言うや否や白いローブを被った教団の統率者に不思議で膨大な力が流れる。 これが森羅万象…この世界に存在する万物に宿るエネルギーを自分に従えて発動し、魔法を使う為に必要な"魔力の流れ"と言うものか。千代姫さんからこの世界の知識として話には聞いたが不思議だ。魔力や魔法等はファンタジーやゲームでしか知らないから実際に自分の目で見れば嫌と言うほど理解できた。 やっぱり此処は…いや、この世界は夢では無く異界と言う名の現実なんだ。 この世界では生か死のどちらか一つの選択に迫られる事の方が多いと思う。 その為、俺の持つ常識は、この世界では全く通用しないと言っても良い。 「我等"光の教団"の覇道を邪魔する者は誰であろうと消す!」 「それが"魔物は全て悪である"と言うお前達の身勝手な定義か!」 「我等では無い、古来より崇拝してきた我等…神の定義だ!」 刹那、統率者の魔力の渦が一気に収束する。 千代姫さんの知識として大陸の魔術は非常に強力で派手なものが多数ある。 中でも失われた古代魔法は国の一つくらい簡単に滅ぼす事が出来ると聞いた。 だが実際、この目で失われた古代魔法を見たわけじゃない。 「燃え尽きてしまえ!」 煉獄とまではいかない高熱の火炎弾が容赦なく俺に迫る。 この炎を見れば嫌でも古代魔法の恐ろしさは想像できる。 これとは比べ物にならないほど危険な魔法が古代魔法なのだろう。 「おっと!」 寸前の所で回避した高熱の火炎弾は見事、障子戸に直撃して爆散する。 俺は素早く態勢を立て直すが統率者は次々と高熱の火炎弾を放ってくる。 此処でこの火炎弾を一撃でも喰らったら俺に訪れるのは間違いなく死。 これはゲームなんかじゃない…常に死と隣り合わせの命を賭けた戦いだ。 その後も統率者は休みなく俺に高熱の火炎弾をお見舞いして来る。 「どうしたどうした!」 「くっ!」 「回避するだけでは勝てんぞ!異界人!」 確かにコイツの言う通りだ、護りに徹してるだけでは勝てない。 武道等の試合もそうだ…相手の攻撃を回避するばかりでは一本も取れない。 しかし、だからと言って下手に攻めて返り討ちにあっても意味がない。 試合なら死ぬ事はない…だが今は一撃でも喰らえば即あの世へ直行だ。 「(どうすればいい?)」 数少ない動作で火炎弾を回避しながら俺は思案を浮かべる。 と、そんな時、神霊刀『神威』の鞘に手が添えられる。 この神霊刀は千代姫さんが丸腰の俺に手渡してくれた大太刀。 「(これを使うしかないか…)」 俺は鍔に親指を添えると腰を深く落として抜刀術の構えを取る。 抜刀術とは刀を鞘に収めた状態のまま帯刀し、鞘から刀を抜き放つ動作で相手に一撃を与えるか攻撃を受け流す。技術を中心にして作られた武術の一つだ。 「消し炭になる覚悟は出来たか?」 俺は心を落ち着かせて神経を集中させる。 既に俺の耳には統率者の声は聞こえない、ただ眼前の敵を倒す事のみ。 「ならば我も苦しませないように一瞬で消す、せめてもの慈悲だ」 統率者は魔道書を手に取ると何やら複雑怪奇な詠唱を唱え始める。 数秒後…統率者の手にあった魔道書が徐々にその姿を変える。 それは瞬く間に巨大な炎のロングボウとなり、俺を射抜く構えを取る。 「安心しろ…一瞬で貴様は炎に焼かれる」 放たれる炎の矢…それを間一髪の所で回避し、一呼吸入れた俺は素早く間合いを詰めて神威を抜く。煌めく白銀の刃は反応の遅れた統率者に、見事に命中する。そして鈍い音と呻き声と共に巨大な炎のクロスボウは消滅し、教団の統率者も倒れる。 「任務完了」 その時、事の一部始終を見護っていたクノ一部隊が現れた。 「やりますね、救世主殿」 「非常に洗練された動きでした」 「見事な腕前です」 「最初は少し心配でしたけど…」 次々と感想を述べるクノ一部隊の傍には品格や風格等が備わった越後城の若き領主が居た。 「でもね…」 「死ね!」 気絶させたはずの統率者が起き上がると同時に若き領主は自分の刀を抜き、斬り伏せた。 「詰めが甘いよ、救世主くん」 動かなくなった統率者を尻目に若き領主は再び俺を見据える。 「な、何も、そこまで…」 「君の居た世界ではどうか知らないけど此処は戦場だよ」 「…」 「今、君が見逃した相手が今の様に君を狙う事もあるんだ」 「だが!」 「戦場で敵に遭遇したら確実に殺す事、そうでなければ君が殺される」 「…」 「迷いは捨てる事…此処は戦場だ、勝てば生き、負ければ死だ」 この若き領主は俺と同い年に見えるのに人を殺めるのに何も感じないのか? そりゃ俺の居た世界にも戦争はあるし、報道とかでもよく目にする。 その度に同じ人類同士が何故、争うのか理解できなかった。 この世界の現状もそうだ、魔物娘は俺達と殆ど姿形は変わらないと聞く。 どうして彼女達は排斥されるのか…産まれる子供が皆、魔物だからか? 「私も最初、人を殺めるのに何も感じなかったわけがない」 若き領主は昔を懐かしむ様に話した。 「だが救世主くん…そうでもしなければ民を護る事が出来ないんだ」 「民の幸せは国の幸せだからか?」 「そうだ、君もいずれ護るべき何かができれば自然と分かるようになる」 領主は俺にこの世界で生き抜くための厳しさを教えてくれる。 俺だって領主の言いたい事は充分に理解してる。 今日、見逃した相手が明日には心を入れ替えて現れるとは限らない。 「分かったかい?救世主くん」 「ああ…此処はもう俺の居た平和な日常じゃないんだな」 「そう言う事だ」 若き領主は俺の肩に手を添えて軽く叩いてきた。 「それでは蒼緋様」 「話もまとまった事です」 「この後の方針をお決めください」 「龍神ヶ丘に布陣する教団の背後に強襲をかけますか?」 「そうだな…兵を直ちに龍神ヶ丘に向かわせよう」 蒼緋さんは言うや龍神ヶ丘に籠城する千代姫さんに伝令を出す。 その後、龍神ヶ丘に向かった蒼緋勢力は獅子奮迅の勢いで背後から教団を強襲し、不意打ち受けた彼等もある程度、抵抗したが敢え無く壊滅状態となった。 「ただいま、千代姫」 「無事じゃったか、蒼緋」 あの後、教団を壊滅させた俺達は越後城には戻らず龍神ヶ丘に戻った。 そして再会を果たした千代姫さんと蒼緋さんは辺り構わず抱き合う。 教団が大陸から渡ってきてからというもの蒼緋さんは幽閉され、千代姫さんは魔物娘達と一緒に逃亡し、最後の砦である龍神ヶ丘に辿り着いて身を潜めながら籠城生活を送っていたと聞く。 後から聞いた話によると龍神ヶ丘にある幾つかの倉庫には"もしもの時"に備えて約一年分の水や食糧等の他にも生活の必需品等が保管されており、尚且つ不思議な術式が組み込まれている為、十年でも二十年でも続くと言われる。 改めて考えてみると不思議だな…俺の世界じゃ考えられない事が多数ある。 「そうだ…美由姫」 「お兄ちゃん」 俺の声を聞いたからか、呼ばれるまで黙っていたのか分からないが今、俺が一番逢いたかった妹の名前を呼ぶと再会を果たした多くの人々の間から懐かしい声が聞こえた。ほんの数日しか逢わなかっただけなのに数年の出来事の様だ。 「美由姫!無事だったか」 「うん、ほら、この通り元気だよ」 膝まで長い黒髪を綺麗に束ねた美由姫が人々の間を縫ってやって来た。 「お兄ちゃんこそ怪我とかしてない?」 「ああ、大丈夫だ」 「よかった、凄く心配したんだよ…」 「(はて…美由姫が今まで以上に献身的に見えるのは気のせいだろうか?)」 美由姫は考えに耽る俺の顔を美由姫は琥珀色の瞳で覗き込む。 すると美由姫から何とも言えない不思議な香りが俺を包み込む。 妙に美由姫が、この数日間で大人びた様な気がする。 「(は!?もしや男か…美由姫も年頃だもんな)」 妙に寂しい気分になったが美由姫に男が出来たとなれば兄として嬉しい。 我がままで乱暴者な妹だけど、どうか俺の知らない彼氏よ…美由姫を頼む。 「誰が粗暴で乱暴者で我がままな妹よ!」 「へ?ぐふぅ」 美由姫には読心術の心得があるのだろうか? 刹那、腹部に鈍い痛みが走ると大きく俺は吹き飛ばされた。 「ひ、久しぶりの良い蹴りだったぞ…」 俺が起き上ると、すぐそこには怒気を放つ美由姫の姿があった。 な、何か知らないが怒ってらっしゃる…? 「どうせ私は我がままで乱暴者な嫉妬深いお兄ちゃんの妹よ!」 理解の追いつかない俺は腹部をさすりながら上半身を起こす。 「でも…それでも、私は…私は、お兄ちゃんが好き」 「お、俺だって美由姫は大事な妹だから好きだぞ」 「そうじゃない!一人の男として女として私はお兄ちゃんが好きなの!」 衝撃的な美由姫の愛の告白に俺は言葉が詰まった。 美由姫が俺の事を…?いやいや、それはないだろ…俺達は兄妹だ。 そういう感情を持ってはいけない事くらい美由姫だって分かってる筈だ。 だが美由姫の真剣な眼差しを見れば、これが遊びでは無い事くらい分かる。 「救世主殿、美由姫の言ってる事は本当じゃ」 「千代姫さん…」 いつ美由姫の傍に来たのか千代姫さんは事実を教えてくれた。 幼い頃から美由姫は兄妹ではなく異性として俺を意識し始めてた。 しかし血縁関係の為、美由姫はずっと心の奥底に叶わぬ想いを秘めてた。 だから由希姉さんや他の女性と話してると美由姫の機嫌が悪くなったのか。 「お兄ちゃんに近づく女の人はみんな許さない…例え千代姫さんでも」 「美由姫…」 いつの間にか美由姫の目には涙が浮かび上がっていた。 「私だけを見てよ…他の女の人なんか見ないで…お兄ちゃん」 「ごめん…美由姫の気持ちは凄く嬉しいけど俺達は兄妹だ」 「……もう私とお兄ちゃんは兄妹じゃないよ」 「えっ?」 今まで隠していたのか美由姫の背後に銀色の尻尾が見えた。 え…尻尾?いやいや普通、有り得ないだろ…人に尻尾が生えてるなんて…。 だが何処からどう見ても、それは自分の"意思"で動いている。 更に美由姫の顔より上…頭の頂には同じく獣の耳が二つ見える。 「私はもう人じゃないの…」 再び鈍器で頭を殴られた様な感覚。 「人じゃないって…」 「お兄ちゃんと添い遂げる為、千代姫さんと同じ種族になったの」 「えっと魔物になった…のか?美由姫」 「魔物とは少し違うぞ、お主…稲荷というのを知っておるか?」 稲荷と言えば確か俺の居た世界における神様の一つだよな…。 稲荷神と言われて朱色の鳥居と白い狐がシンボルで神社に祀られている。 「人じゃない私は嫌い?」 「そ、そんな事は無いが…」 「嬉しい、お兄ちゃん大好き」 「ふむぅ!?」 満面の笑みを浮かべた美由姫は血縁の壁が無くなった今、深い奥底に眠らせてた自分の感情を爆発させ、俺の唇に何の躊躇もなく吸いついてきた。そして充分に俺の唇を堪能した美由姫は次に自分の舌を侵入させてくる。 「ちょっと待て、さすがにそれは…」 「もう嫌と言うほど待ったよ、お兄ちゃん」 一旦は唇を離したが人だった頃の美由姫の方が力はある。 その為、俺の唇は再び美由姫によって塞がれて舌の侵入を許す。 「ずっと、お兄ちゃんとこうしたかった」 美由姫は器用に舌を動かし、本能に従って舌を絡め合わせる。 それに釣られて俺も本能のまま舌を動かして美由姫の舌を味わう。 俺達は此処が外だと言う事も忘れ、餓えた獣の如く激しく、そして貪欲に互いを求め合う。 「(や、やばい……これ以上は……本当に……)」 「んっ……んん……っ……ちゅっ……ん……っ」 「そこまでじゃ」 千代姫さんの制止の言葉を聞き、俺の理性は覚醒する。 「美由姫、妾の霊力を分け与えて発情したとは言え此処は外じゃぞ」 「でも……ハァ……私の……ハァ……力じゃ……抑え……られない」 「ふむ…妾の霊力が丁度、お主の内と外に馴染む頃じゃからの」 「千代姫さん……身体中が熱い……ココもじんじんする……」 「閨まで持つか?」 「分からない……持たせたいけど……身体がもうお兄ちゃんを求めてる」 「何とか持たせるのじゃ、閨に入ったら遠慮なく、まぐあうのじゃ!」 私は残った理性を総動員させて本能と一進一退の攻防を続ける。 あの晩から私は身体のうずきを何とか押さえ続けていた。 「(うぅ…身体中が火照る…でも寝室まで我慢よ)」 お兄ちゃんと寝室に向かうと理性が持ちそうにない為、私は千代姫さんに寄り添いながら歩く。 時折、千代姫さんから良い香りがするけど大丈夫…不思議とこの香りは心が落ち着く。 私はお兄ちゃんが遠征に出掛けた時、千代姫さんや他の娘達と話をした。 彼女達はそれぞれ幸せな顔で自分の夫や恋人の話をしてくれた。 あのように彼女達と一緒に話していると殆ど私達と変わらなく見える。 ただ種族が違うだけで、後の他は私達と全く変わらない。 「ち、千代姫さん……身体の……制御が……」 「もう少しの辛抱じゃ、我慢せい」 歩いてそれほど掛からない距離なのに今の私には遠くに感じる。 それに身体の隅々がエッチな気分…これが彼女達の言う発情期…。 「(早く身も心も一つになってお兄ちゃんに、このうずきを止めてほしい)」 これは本能なのか…そして漸く私とお兄ちゃんに提供された寝室に到着する。 そこには既に布団が敷かれ、防音の術式が周囲に組み込まれてる。 でもどうしてこれが防音の術式だって分かるの…これも千代姫さんの影響? 兎も角、これでどちらかが大声を出しても周囲には何も聞こえない。 「ほれ、美由姫」 「ありがとう、千代姫さん」 「気にするでない、妾とお主はもう同種族…家族も同然じゃ」 続いて寝室に入ってきたお兄ちゃんに千代姫さんは伝言を残す。 「激しい夜をな」 もう我慢する必要が無くなった私はお兄ちゃんを布団の上に組み敷く。 そのまま両手を抑え込んだ私は唇を重ね、舌をねじ込み、口内を掻きまわす。 事態の把握に追いつけない俺は美由姫の情熱的な口づけにされるがままだ。 それ以前に美由姫の舌遣いは恐ろしく巧妙で俺の精神を甘美に蹂躙してくる。 最後に濃厚な口づけの仕上げとして美由姫は自分の唾液を俺に嚥下させる。 美由姫が唇を離すと白く透明な唾液の糸が二人の間から引く。 「お兄ちゃん……」 「美由姫……」 「お兄ちゃん……んっ……」 押さえ付けられた両腕に構わず、今度は俺から唇を重ねた。 そのまま舌を挿入し、美由姫の舌と何度も絡め合わせる。 美由姫は先導する様に舌を動かし、俺はそれに応えて口づけを交わす。 すると腕の拘束が緩み、俺は美由姫と両手を重ね、指を絡ませ合う。 「んっ……ぷは……お兄ちゃん……」 着物を無造作に脱ぎ捨てた美由姫は一糸纏わぬ姿となる。 スラリとした肢体、透き通る様な瑞々しい肌、細く括れた腰回り、今も成長を続ける胸の膨らみを惜しみなく晒す。そして美由姫は細く滑らかな指を濡れた女陰に挿入すると幾度かクチュクチュ、と淫らな音をさせながら掻きまわす。その後、美由姫は愛液で濡れそぼった自ら割れ目を中指と薬指で広げた。そこから漂う何とも言えない甘い甘美な香りが俺の脳を刺激する。 既に寝室は桃色の空間に支配され、脳内は大量の媚薬を投与された様に霞が掛かってる。 「美由姫……」 「お兄ちゃん……」 美由姫は膨らんだ下腹部に手を掛けるとズボンから逸物を取りだす。 反り立つ逸物は媚薬の影響により、更に熱を帯びて硬くなってる。 「すぐに本番が無理なら、まずこうするね……あむ」 躊躇なく美由姫は逸物を咥え込むと欲望の貯蓄された剛直を舌で舐めまわす。 美由姫の舌や口内は火傷をしてしまいそうなほど熱く非常に熱が籠ってる。 俺は数秒も持たずして腰が砕けたが美由姫は尚も刺激を与え続けている。 どくんっ、と俺の中で何かが起こり始め、その脈動を本能で感じ取った美由姫が更に激しく咥え込んだ逸物をしごき始める。 「ぐっ……美由姫……」 「んふっ、んむっ……ちゅぱ、ちゅぽっ、くちゅくちゅ……」 「やばっ、美由姫……放せ、これじゃ……お前の……」 上目遣いをしながら俺の意図をくみ取った美由姫は微笑んだ。 それが合図だったかのように咥え込んだ逸物を思いっきり吸い上げる。 限界を超えた逸物から白い欲望が迸り、美由姫の口内に放出される。 「んぶっ、んぐ、んぐ、ゴクッ、ゴクッ、ずちゅるるるっ」 「くっ、はぁ……はぁ……」 「お兄ちゃん、ゴクッ、一杯出たね、んくっ、ふふっ」 「ぜぇ、ぜぇ……すまん」 「どうして謝るの?」 「い、いや……」 「私はお兄ちゃんの精液…凄く美味しかったよ」 「お、おまっ!本人を目の前にして幸せな顔で言うな!」 「幸せにもなるよ、ずっとこの時を待ちわびていたんだから」 美由姫は一滴も残さず最後まで精液を飲み干した。 「結構これ美味しい……お兄ちゃんのだからかな」 俺はまともに美由姫の顔が見れない。 「次はココに一杯ちょうだい、お兄ちゃん」 見れば先程よりも美由姫の女陰は愛液によって濡れそぼっていた。 俺は布団の上に仰向けに寝ている美由姫の閉じた脚を両側に広げた。 女陰は既にびちょびちょの大洪水になり、完全に受け入れ態勢が整っていた。 美由姫は頬を朱に染め、いつでもどうぞ、と言わんばかりに微笑んでいる。 「早く来てお兄ちゃん……」 「美由姫…本当にいいのか?」 「お兄ちゃんじゃなきゃ駄目なの」 「分かった…俺も覚悟を決める」 俺は再び媚薬の影響で、そそり立った逸物を今度は女陰に宛がう。 そしてゆっくりゆっくり、と腰を沈めて美由姫の女陰に挿入する。 痛みを伴うのはいつでも常に女性である、と保健体育の時に習った。 ましてや美由姫には経験がないし、俺も全くの未経験者だ。 この先、どうなるのかすら俺達二人すら想像できない。 「美由姫…行くよ」 お兄ちゃんの存在を私は膣内(なか)に感じる。 「んっ……入って……きたよ……お兄ちゃん」 「痛いか?」 「ちょっとだけ……でも大丈夫」 「痛かったら言えよ?」 「うん、ありがとう…お兄ちゃん」 先程、処女膜の破れた感覚があったけど気にならなかった。 私にとって、お兄ちゃんと一つになった事が何よりも嬉しい。 以前、由希先生の授業の際、痛みを伴うのは常に女性だと習った。 でも互いを思いやる事で痛みを分かち合う事が出来た。 「身体の奥深くでお兄ちゃんの存在を感じるよ」 「俺も美由姫の存在を中に感じる」 その後、身体に収まりきらない私の膨大な霊力や魔力は性欲となって高まり、お兄ちゃんと一晩中交わり続けた。時には激しく時には優しく何度も何度も契りを結ぶ私達は互いを思い遣りながら互いを愛し、互いに何度もオーガズムを迎える。その度に私は火傷してしまいそうなほど熱くて濃厚な精液を子宮内で受け取り、お兄ちゃんと一緒に絶頂を迎えている。 また私は子宮内で精液を受け取っているけど、私はそれを魔力や霊力に変換する術式を用いてる為、妊娠の心配はない。でもいつか愛の結晶を産んで一緒に暮らしたいな、と思ってる。 人じゃなくなったけど幼き頃から秘めてた想いが成就し、今の私は凄く幸せ。 お兄ちゃんと一緒ならこの先、どんな困難があっても立ち向かえる。 「(そうだよね、この世で唯一無二の存在…私の愛しいお兄ちゃん)」 |