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俺の若様が素直になった理由

 もう夜も更けて部屋に戻ってきた時。屋台で買った白くて甘いお菓子の食べきれない分を紙袋一杯に詰め込んで、テーブルに置く。
 散々買い物に走らされた分、荷物は多い。それでも、自分を縛る因果から解き放たれた若様の素直で天真爛漫な満喫振りを目に出来ただけでもその分の苦労の報酬はもらった様なものだった。
「ねぇねぇ、この服なんかどう思う? 可愛いだろ♪ 可愛くないとかほざいたら死刑だから」
 購入したフリフリの桃色ドレスをシルエットに押し当て、笑顔で脅迫してくる若様を背に苦笑しながらお望みの台詞を返す。
 それだけで若様は満足そうに鼻唄を歌うのだ。
「こういうの、ボク、ずっと着てみたかったんだ。今はもう女の子だし全然着ちゃってもいいんだよね」
「でも翼とか尻尾とかありますし、綺麗に着られるんでしょうか」
「其処はまた後でハルに切って貰う」
 自分では断固として雑用は行わない。其れを他人がやってくれるのを当然と思ってしまっている所は、やっぱり淫魔になっても若様は若様だ。
 そんな彼女は購入した女の子らしい服をクローゼットに一通り仕舞い込んでから、向こう側が殆んど透けて見える様なベビードールを手にした。
「うん、今日はコレを着て寝よう。最初から羽とか尻尾とかに通すのに丁度いい穴もあるし。じゃあハル、着替えさせて」
「畏まりました」
 これを着た若様の姿を想像する。桃色のフリルを通して、下半身には女の子らしいV字のパンティが、上半身には殆んど隠せていない乳頭の姿が透けて見えるのだろう。
 俺の男の部分が僅かに面を上げる。
「今日は特別エロい脱がせ方で頼むよ。濡れちゃうくらいに。くすくす」
 小悪魔的な笑みを浮かべてベッドに腰掛ける若様に、俺は息を荒くしながら手を伸ばした。
「……ん、ふぁ」
 指先が触れた瞬間溜まらず息を漏らした彼女に構わず、スパッツ生地の中に両腕を滑り込ませ、腰から腋下まで撫で上げた。
 服の穴から翼を抜き取る序でに付け根を擦ってやると、気持ちいいのか苦しいのか、よく判らない声を出す。
 服を取り去る段階を察知した若様が自分から腕を伸び上げる。俺がその二の腕を掴み、差し込んだ肘を持ち上げて服を脱がそうとした時に、一番若様と顔が近くなった。
 腋窩に触れる腕から若様の高鳴る心臓の鼓動を感じる。間近に見える彼女の瞳も濡れて輝いている。平静を装っているつもりだろうが、上気して色付いたその頬は隠せてはいなかった。
「……あふぅ」
 じっと見詰められるのが恥ずかしいのか、視線を逸らされる。
 彼女の肌に吸い付くスパッツ生地を撫で擦り、剥がして行く。掌がつるつるな体の上を滑る度、若様は鼻から息を漏らし始める。
「んっ……ん、ん……」
 うんと上に伸ばした若様の腕を、包み込む様に更に上へと撫で上げた。ずっと指を滑らせて、若様の指の先へ絡ませる。俺の肘で押し上げられた衣服は自然に若様の頭を抜け、二人の腕に引っ掛かったまま、まどろむ。
 一際近くなった互いの唇に、熱い吐息が掛かった瞬間、壮絶に重ね合わせたいという衝動に駆られた。
 それをぐっと堪え、今は若様の下僕である自身の身分を見返して、腕に絡まる服をそっと取り去った。
「はぁ、はぁ……っ」
 若様は既に息荒く、男だった頃と然程変わりのない胸とそのぷっくりと膨らんだ乳頭を上下させて、腕を支えに気だるく体を傾け、此方を見詰めていた。

 その姿が   堪らなく、俺の理性をめちゃくちゃにして、劣情だけの化け物にしてしまいそうな程欲心的で。

 顔が近付いた瞬間、吐息が掛かった瞬間、理性が欲望を堰き止めたあの時を後悔する様に、気が付けば俺は若様の体を押し倒していた。
「んぁっ。……ハル?」
 どうしたの、と少し心配そうに小首を傾げた若様の、普段とはギャップのある反応。きっと押し倒される事を想定はしていなかったのだろう。若様は相手をこうしてからかう時に反撃を受けた事がない。からかおうと考える小悪魔的な思考を巡らせる余裕もなかったのだ。
 俺は堪らなく、この人の天使の様な素の振る舞いに欲情してしまい、歯をぶつける勢いで甘く濡れる唇に吸い付いた。
「んぷっ!? ちゅぶっ、ぺろ、ハル……!? んんっ、ふぅ……っ」
 目を見開いて驚く若様だったが、歯を舐めて舌を絡まそうと誘うと素直に前門を開き、呼吸の出来ない口の代わりに鼻で息を漏らしながら、熱く滑り気を塗した舌を伸ばして唾液を交換し合った。
「ハル……ん、ちゅ、ぱぁ……ダメ、ちゃんと……はむっ、ちゅう……今日は、可愛いお洋服着て……ちゅ、ちゅ……するって、決めてたのに……じゅるる」
 俺が唇を貪る合間、漏れた息で必至に訴える若様。
 返答を言葉にする為、僅かばかり唇を離す。
「大丈夫ですよ、若様。着飾らなくたって、若様は可愛いです」
「あ……う、うん……」
 何か言い換えそうかと口を開いた様子だったが、不意に俯いてしまった。その実、耳まで真っ赤にして目線を合わせようとしてくれない。
   ひゃあっ!?」
 若様が飛び上がる。俺の指が下に履くスパッツ生地の中に潜り込んだのだ。そして残った手は若様の小ぶりな胸を丁寧に愛撫する。
「バカ……ッ、急に触るなんて、卑怯だぞ……ッ、きゃうぅ……っ! ……ッ、ハルの、癖にぃ……ッ」
 頭上に放り出した両腕をもどかしげに動かし、必至な表情で愛撫を受け入れる若様。小さくてマシュマロの様に柔らかな尻肉を鷲掴みにしたり、指をのたうち回したりしている間中落ち着かない様に股を擦り合わせていたのを、俺は見逃さなかった。
「若様の命令じゃないですか……濡れるくらいにしてくれって」
「そ、それは……」
 自分の発言を少し後悔したのだろう。耳元でそっと囁いた瞬間、目に涙を溜めて言葉を失う若様。
 何時もはからかわれたりしている立場だった俺だが、今はまるっきり逆。今度は若様をからかう側に立っている事に言い知れよう無い優越感を覚えていた。
「若様が感じられているのが良く判ります。もっと可愛い声、聞かせてくださいよ」
「はっ、其処ッ、ちょっと待って……!?」
 首筋に口付けをしながら、胸を愛撫する指で若様の豆粒に似た大きさの乳首をコリコリと擦り潰す。
「ひ、んああああ……ッ!?」
 手足を折り畳み、目をキュッと閉じて歓喜の産声を上げる若様の姿。
 俺は続いて、乳首を引き伸ばして乳腺を穿(ほじ)る様に乳首の先を小指で柔らかく引っ掻いた。
「ひっ、んんっ! んにゃぁぁ……ッ、ああっ」
 頭を振り乱して刺激を感受する若様の姿に確かなものを覚えながら、次はもう片方の乳首を口に含み、舌の上で転がす。吸い上げながら、舌先をうねらせ、乳首の先端を優しく掘り進めた。
 若様は自分の乳首を吸う俺の頭を二度と離さないかと思う位、自身の体が浮き上がる程の力でギュッと抱いて、愛撫を続ける様に催促した。
「あ、ふぁっ。こ、このボクがぁ……ハルに、触られてるだけで……そんな……こんな、事ぉ……っ。ヘンだよっ。パパや彼奴等に舐められた時とは全然違う……これ、こんな、気持ち良かったの……っ?」
「……俺だから、じゃないですか?」
 そう顔を見上げると、若様は涙を一筋落して、また、天使の様な笑顔で「……うんっ」と力強く頷いた。
「ああッ、ハル、ハル……好き……大好き、だよ……ッ! もっと、触って? もっと、イジって? もっと、お前を感じさせて……ッ!」
「判りました」
   ひゃあああぁぁッ!?」
 指で、舌で、もっと乳首を深く穿(ほじ)る。尻を愛撫する手も形が変わってしまうくらい力強く刺激した。
 若様は先程とは打って変わって両足をピンと伸ばし、暫くの間悲鳴を押し殺した様な呻きを上げながらビクビクと体を震わせた後、急に力が抜けた様にだらっとベッドに沈んだ。
 虚脱した表情で荒い息を吐く若様。汗ばんだ体はしっとりと俺の肌に吸い付いて、また別の姿になった様にも感じられた。
「若様……最高ですよ、そのお姿」
 耳元でそう囁くと、暫くはとろんとした眼差しで俺を見詰めていた若様だったが、その目に段々と怒気が帯びていくのが判った。
「ちょ、調子に乗りやがって……っ。お前、ボクが誰だか判ってんのか……っ!」
「そうですね。俺が大好きで仕方ない、俺のご主人様です」
「ッ!! お、おま……」
 若様の羞恥心が頂点に達した瞬間、彼女は傍にあったクッションで俺の頭をばすばす叩き始めた。
「忘れろっ、今すぐ忘れろっ! 忘れなきゃ……その、ひ、ひどいんだからなっ!」
 死刑とかではない所を見ると、それ程忘れて欲しい訳ではない様だ。
 俺は随分若様の事が判る様になっていたんだなと笑ってしまいながら、涙目で喚き続ける彼女の頭を撫でてやった。
「忘れる訳ないじゃないですか。あのお言葉、俺の宝物にするんですから」
「……ッ!?!?」
 目を白黒させて俺の言葉を呂律の回らない舌で反芻し始める若様。
 その視線が、ある時何かに釘付けになった。
 視線を辿るまでもない。衣服を引き裂かんという勢いで押し上げ屹立する俺の逸物は若様の視線を感じると更にその大きさを増した。
 俺は自然な振る舞いで逸物を表に曝した。押さえつける物も無くなった肉棒は更に唸りを上げた様に膨らんだのだった。
「あ……」
 若様が真っ赤な顔でそれから視線を外せないでいる様子を見て手応えを感じた俺は、恐ろしい勢いで血を送り続ける心臓の鼓動を耳に聞きながら言葉を掛けた。
「それより、若様。俺のもお願いします」
 俺の腰を両足で挟んだ形で寝転がる若様の肉裂はスパッツによって明らかではなかったが、其処は既に汗ではない何らかの液体によって黒味を増してぶっくりした形を露にしていた。
「なんだよ、これ……朝よりおっきくなってるじゃないか……っ。こ、こんなの詐欺だ!」
 急に恐怖心が湧き上がってのだろう。若様が縋り付く勢いでそんな事を告げてくる。
「詐欺じゃないです。若様が可愛いお姿を曝すから、俺、もう我慢出来なくなってるんです」
「やっ、ちょ、ちょっと待って……ハル、目が怖い……っ」
 声を小さく震わせた若様の腰を掴んで、汁が染み出すほどに濡れた彼女の肉裂の位置に陰茎を置いた。肌触りのよい生地の上で生温い汁が潤滑剤の役割を果たす。
 俺は腰を引き、亀頭をちこりと膨らんだ部分に宛がってから陰茎の根元までを擦らせた。
 腰を突き出し、秘密の園の感触をスパッツの上から確かめる。何度も何度も、陰茎で舐め、カリ首をクリトリスに引っ掛け、何度も何度も。
「あっ、んぁッ。いいっ、其処、ビリビリするぅ……!」
「若様……くぅっ」

    ビュルッ、ドプゥッ、ビュクッ、ビュルゥッ。

 擦り始めて一分も経っていないのに、射精感は最高潮に達した。若様の体を堪能している間は殆んど生殺しだった。逸物も血気盛んの極みだったのだ。
 欲望の塊の勢いは凄まじく、スパッツに微かに黄色掛かった白い雨を染み込ませる以上に、若様の全身に、特に発射口が向いていた若様の顔にはべっとりと其れが張り付いているのだった。
「ん……イったの……? くすっ、スパッツに擦り付けて、こんなあっさりとか、お前……♪」
 俺が絶頂に達したのを見て余裕を取り戻したのか、若様は妖しい光を帯びた瞳で笑い、そっと顔周りの精液を口に運んだ。
「あーあ、もうこのスパッツ履けないよ♪ お前のザーメン臭がこってり染み付いちゃって……。ちゃ、ちゃんとこれは、お前が自分のやった事を思い出せる様に一度も洗濯せずにずっと取っておいてやる……っ♪」
 嬉しさを隠し切れないと言った風に、若様の尻尾はビクビクと打ち震えながらハート型を形作ってみせた。
「……スパッツの中が気持ち悪くて仕方ない♪ お前が汚したんだから、ちゃんと替えの……さっき選んだ可愛いパンツに履き替えさせなよ、ハル」
 股をさりげなく隠しながら発した若様の言葉に従い、俺は若様の秘裂を唯一画していたスパッツに手を掛け、粘液で肌に張り付く生地を丁寧に剥がしながら足に通していった。
「このスパッツ、ホントはどうするつもりなんですか?」
 俺が尋ねると、若様は「そんな事も判らないのか」と言う様に鼻を鳴らした。
「そりゃ当然、お前が居ない時に一人でする為の……」
 其処まで言い掛けてから、若様はキッと涙目を俺に向ける。
「な、ななな……んな訳ないだろっ! ははーん、騙されただろー! ハルのバーカ、バーカ」
「バカ以外に語彙は無いんですか……」
 そして言い訳が苦しい。
 若様は股間を手で隠し、もじもじと恥ずかしそうにしながら話を変えた。
「もう! そんな事どうだっていいだろっ、マヌケ! 早く着替えさせろよ、何時まで主人を裸で待たせる気?」
 そうだ。さっさと替えの下着を用意して若様に履かせてあげなければ色々と何を言われるのか判ったものではない。後で仕返しなどがくると思うと背筋が凍る。
 しかし、目の前で若様が全裸であると再認識した途端、先程射精したばかりだというのに俺の逸物は再び唸りを上げて立ち上がったのだ。
 そうなると、一度崩れた理性が男の本能に今更逆らう事など無駄な道理でしかないのだった。
「……若様、申し訳ありません」
「な、何が?」
   もう、我慢出来ません!」
 そう宣言し、俺は若様の自らの園を隠す手を奪った。
 隠されていた若様の、まだ男を知らないほんのり赤み掛かった綺麗な縦筋からは未だに蜜が垂れ落ちてシーツを濡らしている。
 其れを目の当たりにした途端、先ず何をしようなどという考えは吹き飛んで、一心不乱に縦筋にむしゃぶりついた。
「え、わぁっ!? ん、ん、んんんッッ♪」
 若様から溢れ出す蜜は信じられない程美味だった。芳醇で味わい豊かで、喉越しもまるで絡みつく様だ。喉を通して若様が体の奥を広がっていく感覚は何とも言えず光栄な気分になった。
 若様が状態を反り上げて必至な声を上げる。俺の頭を押さえ付けているのはその柔らかな肉裂から突き離そうとしているのか若しくはその逆なのかも区別がついていない様子だ。
 指で中を拡げてみる。奥からは溢れる様に蜜が染み出しており、光に照らされて蠢くサーモンピンクの膣壁がきゅっきゅっと、触れた舌の動きに反応している。
 こんな絶景を見てしまってはどうする事も出来ない。俺は舌に絡みつく若様の愛のジュースをずずっと飲み干し、息を弾ませる若様の腰元に猛り吼える自らの分身を見せつけた。
「ま、待って……ねぇ、ハル、目が怖いってば……。もしかして、怒ってる……?」
「怒ってたら、どうします?」
 不安気に尋ねてきた若様にこう返すと、まるで借りてきた猫の様に萎縮し始める。
「ヤダ……ハルには、嫌われたくない……他の奴からはどう思われてもいいけど、ハルだけには……」
 ふるふると震えながら、恐れの瞳で縋り付いてくる若様。
 俺はか弱い彼女の頭を撫でて、そっとキスをしてみせた。
「怒ってませんよ。若様がイジワルなのは、何時もの事ですから」
「……うっ、ど、どういう意味だよっ」
「イジワルな若様も好きって事です」
   ッ」
 途端に顔を手で隠す若様。足をばたばたと動かして数発俺の腰に蹴りを入れる。
「……もう死んでもいい、かも」
 ぽつりと漏れた台詞に噴出してしまいそうになりながら、俺は今だ何者をも進入を許した事のない割れ目の入り口に先端を口付けた。
「あ……う」
 若様が何事か口にしようとしていたので、じっと待機する。彼女は俺が待っているのを察し、震えと区別がつかない程小刻みに頷いた。
「だ、大丈夫……覚悟は、出来てる、から……」
 その言葉を聞いた俺は、ゆっくりと花びらを押し広げ、その身を埋めていった……。
「ん、んんん……っ」
「若様、力まないで下さい」
 小陰唇を押し広げた辺りで、若様は下腹部に力を入れ始めたのが丸判りだった。俺が促すと、若様は深く息を吐いて其処から力を抜いた。
 入り口の時点で若様の小さなその部分はいやらしく亀頭に絡み付いて締め付けようとしていた。
    この先に進むと、一体どうなってしまうのだろうか。一抹の不安を覚えた頃には、大きな期待が俺の中の欲望を染め上げていくのが判った。
 若様が虚ろな目でどこぞかを見ていた。最初は痛いものだと知っている様子だった事から、その時に備えて意識をどうにかして別の場所においておこうとしているのだろう。その姿が健気で儚い。
 俺は肉洞窟を掘り進める。処女の締まりと若様自身の体が小さい事から、腰を押し付けた時の抵抗力は厳しいものだと踏んでいたが、予想外にすんなりと進んでいく。
 これも淫魔の力か。感謝をすべきなのかどうかは迷ったが、少なくとも若様が痛がるような事はなく済みそうで良かった。
「あ、あ、あ……入っ、て……る」
 カリ首を中に迎え入れた頃、何か伸縮性の良い紐の様な感じの物体が亀頭の背に引っ掛かった。その紐の様な物体から膣壁に向かって膜が張られている。
 その正体が何であるのか考え付いた瞬間、そのままこの一線を突き破ってしまいたい程昂りを憶えたが、それをぐっとこらえ、自身の中に俺を受け入れる感覚にじっと震えている若様の頬を撫でて、キス出来る程近くで囁く。
「若様、判りますか? 若様の処女に、触れてるのが」
「あ、あ、あ……」
 そんな事を言われて恥ずかしいやら頭に来るやら。パニック気味に声を震わせる若様の姿。
「奪っちゃいますね……」
「あっ!? まっ……あぁっ」
 一気に行ってしまった方が痛みの最高潮は一瞬。
 俺は腰を深く降ろした。陰茎の先で、若様の下腹部の中で、パチンッ、というゴムが切れた様な手応えがあった。
   ッ!」
 若様が目を見開いて、睫毛に溜まった涙を数滴宙に撒いた。何事か訴える様に口をパクパクと動かし、上体を仰け反らせて何度も波が来る様に打ち震えた。
「若様? い、痛かったでしょうか……?」
 痛いに決まっている。今まで実の父親に弄ばれていたのを例外的に耐えていたとは言え、生来堪え性のないのが若様だ。僅かな痛みでも大袈裟に糾弾したいに違いない。その所為か、膣内は俺の陰茎を食い千切りそうな程キツく締め上げていた。
    だが、実際は違った。若様は目に涙を溜めてはいるが、その表情は息を忘れてしまう程の恍惚を訴えていた。
 一体どういう事だろうか。
「〜〜〜ッ♪ へ、えへへ……♪」
 暫くして呼吸も整い始めた若様が虚ろな眼でへらへらと笑い始めた。
「な、なんだ、よ……ハジメテは、痛いって聞いてたけど……大した事ないじゃん」
 若様の表情も急速に落ち着きを見せていく。不意に俺を見付けたみたいに、頭を抱き捕まえて口付された。
「ん……ちぅ。待ってって、言ったのに……♪ 知ってる? 合意のないセックスは、立派な強姦なんだよ……? じゃあこれって、レイプって事になるよね。ハルは主人であるこのボクのハジメテを同意なしに奪った……くすくす♪ 犯罪臭たっぷりだね♪」
 若様はさらさら本気とは思えない口調で語った後、俺の頬を犬の様に舐め、首筋に唇を寄せた。
「でも、いいよ……ちゃんとボクの事、心配してくれたもの……。それに、ハルに奪ってもらったって感じた瞬間……イっちゃった……♪ 淫魔の体って、便利だね」
 悪魔的に微笑む若様。つい先程まで嫌われたくないと涙した表情とは違って見る見る余裕を取り戻していく様だった。
「ほら、何ぼさっとしてるんだよ。折角このボクをレイプ出来てるんだから、もっと乱暴にしてくれてもいいんだよ? 精々、みっともなく腰振って呆気なく果てちゃいなよ。何せ、このボクの膣内(なか)なんだ。気持ちよくない訳がない……♪」
 実際若様の処女膜の先は異世界の如く揺らぎ蠢いていた。処女を奪った直後こそ、窮屈だった其処は今や俺の存在に手馴れた様子で襞を震わせ絡みつく。それでいて決して緩まった訳ではなく、居心地の良い締まりで陰茎を歓迎するのだ。
 俺も、無性にこの中で果てたいと思っていた。若様の膣内(なか)で一際空っぽになるまで放ちたいと願った。
 俺は黙って注送を始めた。陰茎を引き抜く際、絡み付く襞が追い縋るかの様に纏わり付く感触は最高の一言だった。挿し入れる際も嬉々として受け入れ、優しく愛液を塗して肉襞が舐めてくる。
「あ、んっ♪ ハルっ、ハルに、レイプされちゃってるっ。ハルのちんぽでぇっ♪」
 飛び切り蕩けた顔を見せる若様の嬌声には強がりも混じりながら結局俺に対する親愛の念ばかりが込められていた。
「んっ、ふやぁぁっ♪ 腰が、勝手に……勝手に、動いちゃう……♪ はぁ、はぁ」
 耳に届く若様の台詞が俺の欲望を加速させる。
 処女を奪ったばかりの其処が赤く腫れていようが、先走りや愛液に混じって破瓜の血が流れ出ようが、今の俺にそれを判断する思考力はなくなっていた。
 抜き挿ししていて擦れ合う肉同士といやらしい液体がぶつかりあって音を響かせる。俺の睾丸が若様の尻を打つ感触に射精感が募っていく。
「じんじんする……っ♪ あそこがじんじんするよぉ……♪ 処女奪われたばかりのこのボクが、ハルみたいなパッとしない盗賊なんかにイかされちゃう♪ 新品同然のマンコが、大好きなハルのちんぽでイかされちゃうっ♪」
 激しく快楽を貪るだけ若様は歓喜の声を上げた。何時の間にかあれだけ恥ずかしがっていた愛の言葉まで憚らなくなっていた程に若様は乱れた。
 募り募った興奮が俺の体の奥で練り上げられ、一気に射精感となって尻の奥から陰茎まで流れ込んできた。
 俺はこのまま若様を   最初に穢す者に成りたいと、切に願った。
「若様、もうっ、俺……!」
 若様は息をするのも精一杯と言った表情だったが、俺が何を言いたいのか察した途端嬉しそうに唇を噛んだ。鼻から息を吐き「一緒にイこ……?」と手を伸ばしてきた。
 俺はその手を取り、自分の頬に当てて感触を楽しんだ。すべすべとしていて柔らかく、細いしなやかな手だった。
「ほら、膣内(なか)に……これは、命令だからな……、ハル……♪ 膣外(そと)に出したら……オシオキ……♪」
「若様……くぅ   ッ!!」

    ビュルルルッ、ビュクッ、ビュゥッ。

 ……頭が真っ白に染まる。
 止まらない。若様の中に流れ込む俺の欲望が止まらないのだ。
「う、若様……」
「あ、あ、あ……しゅごっ、まだ……出て……ん、ぁぁ……ッ♪」
 愛しげな眼差しで俺の精を受け止める若様。下腹部をそっと撫でて、子宮を叩く精液の感触を深く確かめる。
「若様……っ。すい、吸い取られ……若様の、膣内(なか)に、全部……!」

    ビュルルルッ、ビュゥッ、ビュッ、ビュルルルッ。

 なんと、射精が更に射精感を募らせ、一気に絶頂にまで達してしまったのだ。射精が終わらない内に、次の射精。このままでは本当に精巣の中が空っぽになってしまう。
「あは♪ 射精してるのに、またイったの? そんなみっともない顔して……♪」
 若様が俺をからかう。
 しかし、今だ嘗て味わった事のない快楽を叩き付けられていて正気を保っていられるだけ誉められるべきだと俺は思った。少なくとも射精の間にもう一度絶頂するなんて事を実際経験していても死んでいないのだから。
「う、まだ出てる……♪ ……そ、そんなに孕ませたいの? ……♪」
 今だに経験した事のない快楽と、射精時間。俺は次第に脈動を止めない陰茎に困惑を覚えていた。もうすでに頭の中の霧は晴れ、物事を冷静に見られる程には理性を取り戻していたからだ。それに反して、自らの分身の身勝手にはほとほと呆れるばかりだった。


 やっと止まった頃には、若様との結合部からは精液が逆流して溢れ返り、シーツを水溜りが出来る程汚していた。
「はぁ、はぁ……っ♪ ハルに、レイプされちゃった……♪ もう孕んじゃったかも……♪」
 疲労が身体に圧し掛かる。男として一仕事終えた気分だ。
 大量の精を注がれた若様の膣に今だ締め付けられ続ける陰茎を引き抜くと、ごぽっと栓の抜かれる音と一緒に精液が泡を立てて漏れ出した。
「うわ、こんなに……ボクでもこんなに出た事ないよ」
 大陰唇を押し広げるだけで再び溢れ出る白濁液を見て若様が目を丸くする。
 しかし直後、何かに気付いた様に大陰唇を閉じて漏れ出す精を押し留めた。
「あっ、ダメ。勿体無い。……あーあ、大分漏れちゃったかな」
 膣内に注がれた精液が幾分か漏れ出てしまった事に不満な様子の若様。俺の方を見て、可愛い子振って小首を傾げてみせた。
「ねぇ、ハル……なくなっちゃったから、もう一回しよ? 今日買った服ちゃんと着てさ」
「ま、まだやるんですか……?」
 一生分の精を捧げた気分だったが、若様は当然だといわんばかりに憤然とした。
「元々ボクはそのつもりだったのに、ハルってば、そんなのお構いナシに襲ってくるから……今度は和姦だよ♪ 和姦って知ってる? 主人とその下僕が同意の上で子作りする事だよ♪」
「下僕、ですか……」
 今更何をか言うつもりもない。というか、今の俺には指摘する体力も残っていない、みたいな状態だった。
「ハルに着させてもらうと、また襲われちゃうから……もう、仕方ない。自分で着るね」
 獣の如く堪え性のない男だと言われた気がする。若様は俺の方を横目で見ながら、着替えの途中だからと傍に置いてあった薄桃色のベビードールとピンクレースのパンティを手に取り、肌に通していった。
 余計な事だが、若様が自分で着替えているのを見るのはこれが初めてである。
「うへー。ハルので服が身体に引っ付いて気持ち悪い。……けど、これはこれで……くすっ♪」
 確かに精液に塗された身体にベビードールの薄い生地が張り付いてしまって、なんとも見た目にウェットの飛んだ姿となってしまっていた。下着に至っては秘裂から漏れ出す精液が既にゼリー状に染み出して色を濃く変え切っている。
「買ったばかりの服がもうハルの臭いで一杯になっちゃった。ね、ね、今度は後ろからしてみようよ」
 若様がベッドの上で四つん這いになり、尻を向けて突き出してきた。小振りで柔らかい若様の尻には例に依ってパンティが張り付いて、僅かに肌色が透けて見えていた。
 其処から臭う臭いは確かに噎せ返る様な栗の花の臭い。だが微かに若様の雌臭を鼻に捉えた時、俺の陰茎はあれ程の労務を果たしたというのに再び怒張した姿を取り戻すのだった。
「ほら、何してるんだよ。さっさと犬みたいに種付けしなよ♪」
 股下から手を伸ばし、汗と汁でねちゃっと張り付くクロッチを剥がす若様。異物の進入した其処は精液で濡れた襞が僅かに顔を覗かせ、純潔を奪われたばかりの所為か周りが赤味を増して腫れていた。
 俺は亀頭を襞に埋め、溢れ返る精液を押し戻しつつ奥へと自らを挿し入れていった。
「ん、ん……♪ ハルのって、おっきいよね。ボクのより、一回りも二回りも……そんなにしてると、すぐお腹一杯になっちゃうよ」
 若様の尻尾が俺の胸元をつつっと摩る。ベビードールに通された背中の翼が若様の呼吸に合わせて上下しているのが見えた。
「若様、動きますよ」
「うん。ちゃんとイく時は子宮内(なか)に出せよ」
 若様の滑る様な背中を眼下に臨み、腰を掴んで陰茎を挿抜する。
「あ、あんっ、あぁっ」
 若様の尻を睾丸で叩きながら激しく一定のリズムで膣穴を味わう度若様は艶のある声を上げた。直ぐに体を支える両腕に力が入らなくなったらしく、上体だけをベッドに這い蹲らせて堪らなそうに吐息を漏らす。
「あ、あ、あ……今、ボク……ハルと、子作り、してるんだ……♪」
 正面からとは違い、後ろからだと膣襞の感触はまた違った。肉襞がねっとりと絡み付いてくるのは同じ様に思えるが、膣穴の形を歪めているのか摩擦が強い。特に奥ばったカーブの部分が強く亀頭の窪みに擦れるのだ。
「其処、ばっかり……あぅっ♪ イジメんなってばぁ……♪」
 どうやらこの部分を若様も気に入られたようだ。角度の所為で子宮には届かないが、暫くこのまま若様を善がらせてやりたいと思う。
「んぁ、んん、ふにゅ、んむぅっ♪ ……おかしくなるっ♪ そんなトコばっかり……ハルのバカぁ♪」 
「若様、イきますよ」
「うん♪ キて……?」

    ドクッ、ビュクッ、ドプッ。

 ずらしたパンティの脇で欲望のままに絶頂に達する。放たれた精液は膣肉のカーブで行き場をなくし、一回転する様に逆流して結合部から噴出した。
 これでもう出すものは出し切った。今の一回なんて限界を突破して捻り出した様なものだ。そう思いつつ、汚れた陰茎を抜き出す。此方の方もすっかり勢いを失っていた。
 しかしながら止める口実をそのまま口にしては若様の口撃が待っているのは見え透いている。適当に言い訳を考え、俺は窓から見える夜の帳を見定めた。
「若様、もう夜も遅いです。地下市街の消灯はとっくに過ぎていますよ。もう寝ましょうか」
 すると若様は気だるそうに仰向けに転がり、荒く息を吐きながら俺を嗤った。
「……お前、それで言い訳してるつもり? ボクを馬鹿にしてるだろ」
「そ、そんな事は」
 パッと考え付いた言い訳では若様に揚げ足を取られるだけだというのはいつもの事。完全に油断していた。
「ボクはお前の事なら……なんでも、判るんだからな……♪」
 若様は俺の胸倉を掴み、顔を近付けて脅す様に囁くと、そっとキスをした。
 俺が唖然としている隙にベッドに引き擦り倒される。そして、そのまま若様に馬乗りされてしまった。
「例えば、お前がイジメられて喜ぶドマゾだって事とか」
「は? い、いや、そんな事は」
 口答えするのと同じタイミングで、睾丸に押し潰される感覚が走った。
 その後、詫びる様にさわさわと揉み解され、またきゅっきゅっと軽く弄ばれる。
「くすくす。キンタマ弄られてるハルの顔、凄く気持ち良さそうだよ。此処って、男の弱点だよね。ボクも知ってるけど、打ったら痛いよね。そんな所他人に触られて気持ちいいモンなのかな……きっと、そんな変態、ハルだけだと思うけど♪」
 弱点を手中に収められて全身が硬直する。
 けれど、若様に触れられ罵られる内に、睾丸の中身が充填されていく様な気がした。結果、俺の陰茎は失っていた勢いを見る見る内に取り戻し、若様の股下で立派に屹立するのだった。
「ほら、おちんちん、勃ってきた……♪ ハルはもう空っぽだって思っていたんだろうけど、残念だったね♪ ……今日はボク達の初夜なんだから……トコトンやるからね……♪」
 そう言って、若様は俺の体の上で折角履いたパンティを太股までずらし、体勢を変えて足から抜き去った。その姿は俺の腹の上でストリップショーを演じている様で、若様の表情は終始手馴れた娼婦の笑みを俺に向けていた。
「ハルは疲れちゃったみたいだから、今度はボクがレイプしたげる」
 若様は俺の陰茎を掴み、自らの中へと誘うと、ゆっくりと腰を下ろしていく。しかし、奥まで届かせた所でも全てを受け入れる事は出来なかった。
「ハル……手、握ろ?」
 腰の上で背筋を伸ばす若様に手を差し出す。若様はそれに指を絡ませ、支えにしながら腰を上下させ始めた。
 ぬちゅ、ぬちゅ、と音を立てて擦れ合う結合部から泡立った互いの結晶が流れ落ちるのが見える。若様は涙を浮かべながら其れを見詰め、嬉しそうに笑っていた。
「あ、あ……ハル、見て……これ、凄くやらしぃよ……」
 それは確かにやらしく煌めき、飛沫を飛ばしていた。
「ええ、若様も……若様に注いだものも、やらしいです」
「子供が出来たら、子供もハルのお嫁さんにしてやるんだ……♪ それで、親子で仲良く……一緒に、幸せに……暮らそうね……♪」
 若様の言葉が喘ぎの合間に途切れ途切れ聞こえる。娘が出来る事が確定しているのは些か不思議だったが、きっと淫魔の本能から予見出来る事なんじゃないかと思う。
 若様は今、家族仲良く暮らす事を夢に見ているのだ。
「はい」

    ビュルルル、ドクッ、ドクッ。

 返事と共に、子種が打ち込まれる。若様は膣を締め上げて一滴も残さない気概でそれら全てを子宮に飲み込んでいった。
「ん、ん……元気な子だと、いいね。きっと、ボクに似て可愛い筈だよ。お前に似てるトコなんて……一つも、残してやらないからな」
「勘弁してください、若様」


 お互いの手を引き合って、口付けする。
 長い長い、これからを暗示する様な、甘ったるいキス。深く繋がり合うキス。
「ちゅ、んっ……れろ。……ねぇ、こっちには……興味ないの?」
 若様が徐に陰茎を離して身体を寄せる。俺の手をそっと尻に持って行き、その穴に触れさせた。
「え、と。そっちじゃ子供は出来ませんよ?」
 俺が言うと、若様は顔を真っ赤にして俺の胸に拳を叩き付けた。
「わっ、判ってるよ! 只、お前にはこっちも知ってもらいたいっていうか、若しボクが男でもそういう関係になれたって証明が欲しいっていうか   ! いや、なんでもないっ、バカッ、なんでもないからなっ!」
 むきになって前言を取り消そうとする若様。
 そうか。男のままから若様は俺に好意を寄せていただけに、俺とこうしていられるのは只女になったからだ、という結果に不安を覚えていても仕方ない。
 女の若様を愛しているなら、男だった頃も愛していると証明が欲しい。それに悖る程度の想いなんて、都合が良いだけで信用出来ない。それだけに若様は子作りとは別に必至になっているのだ。
 羞恥心に喚きたてる若様を黙らせる時は、決まって口付けをする様になっている気がする。
「判りました。若様の後ろも謹んで頂きます」
「……えっ!? ホントにいいの?」
 不安げな若様に頷いてみせる。若様が喜ぶかと思いきや、再度神妙な表情を傾けた。
「あの、さ……実は、後ろは……ハジメテじゃないんだけど」
「ええ、だからこそ、俺に……でしょう?」
 若様は其処で初めて無邪気に笑った。件の父親に陵辱を受けているのだから想像に難しくない。それを含めて、愛してくれるかどうか   その証明が、必要なのだ。
「それに、興味もありますしね」
「もう、ハルってばホントに変態だったんだね。……いいよ、ハルだけにサービスしてあげる」
 若様は俺の上で尻を持ち上げ、そのままそそり立つ陰茎を菊門に通したのだ。
「ボクが動いてあげるね。今日だけは、ボクが御奉仕してあげる……♪」
 菊門の奥に咥えられた陰茎はその中の熱さに驚いた。そして直腸が蠕動して織り成す、膣とは違った刺激。薄ましい粘液が絡み付く。
「どう、ハル。これでも、名器だって言われてたんだよ……」
 と、言われても今まで菊門を味わった事などない。しかし、この陰茎を刺激するうねりは挿入と同時に果ててしまってもおかしくないものだった。
「気持ちいい……? 出したかったら何時でも出していいよ。ハルのだったら、何処にでも出していいから……今日は、これでお終いにしようね?」
 アナルで陵辱しながら優しい言葉を掛けて来る若様の様々な角度からのギャップに、俺は心を奪われるままに射精欲が募ってくる。
「ハル、大好きだよ」

    ブピュッ、ドクッ、ピュクッ。

 いい加減出しまくった手前、射精の勢いなど微々たるものだった。若様が最後だと宣言しないでも、もう俺は俺で最期を迎えていた事だろう。
 体力も尽き果て、このまま陰茎を拭う気力すらない。若様も淫魔でありながら同じ様で、俺の身体に寄りかかり、汚れた身体を拭う事も着替えをする事も忘れ、そのままぐったりとしてしまった。
「ハル……」
 最期の力を振り絞って、甘えたキスをねだる若様。
 今日何度目とも知れない口付けを交わした後、俺達は同じ夢を見るのだ。





――――――――――





    あれから若様は戦士と魔術師の二大ギルドから担ぎ上げられ、様々な闘争を経た後、この国を治める王になった。
 淫魔になってからは王位などに関心もなかった様に見えた若様が権力闘争に参じる際に二つ返事で応じたのは意外だったが、後から聞かされた話によると、俺が元々国内格差に憂いを抱いていた事に対して若様なりに力になろうとしてくれた結果だという事が判った。本人に確認しても殴られるのが目に見えているので改めて確認はしないが。
 確かにギルドを動かして国に働きかけるより直接的であり、特権を得る最たるものこそ自らが国を治める立場になる事だろう。普段は意地の悪い子供の様な振る舞いの若様だが、いざという時の思い切りの良さは見習いたい所だった。


 だが俺達がまともに国を動かす前に、魔王軍が国に攻め込んできた。
 明らかに内部闘争に疲弊している所を狙い済ました侵略だった。おまけに軍備も兵隊も今だまともに整えられた事などなかったタイミングだ。当然、成す術もなくこの国は蹂躙され  性的なニュアンスも含め  、魔物の軍勢の前に屈服を余儀なくされた。
    その指揮官に見覚えがあった事は言うまでもない。
 若様が魔物、いや淫魔である事を考慮し、全面降伏という形で何者も犠牲にする事無く俺と若様の国は統治者を変えぬまま魔界の一部となった。


 けれど   これで良かったのだ。


 俺の身体もインキュバスとなり果てながらも、ずっと若様の傍に居ていられる。
 誰も盗みなんてやらなくても餓える事のない国を望んだ俺だったが、魔界となったこの土地は、想像とは違えども、間違いなく俺が望んでいた姿だった。
 誰もが笑って暮らせている土地。此処ではもう子供が餓えた姿なんて見る事などないだろう。
 そんな魔界の一領主として君臨する若様の傍で、俺は彼女と甘い日々を過ごすのだ。


「どうしたの、ハル。黄昏ちゃって」
 禍々しい形をとる王城の窓辺に挿す陽射しを眩しく遮る俺の後ろから、大きく張ったお腹を愛おしそうに撫でる最愛の人の声を聞く。
「いや、この半年色々あったなと思いまして」
 彼女はおかしそうに笑った。
「もう、敬語なんて止めてよ。お前はボクの旦那様なんだぞ」
「すみません。どうも、俺の中ではこれが定着しちゃってまして」
「全く、もうすぐパパになるっていうのに。そんなんじゃ、ボクの娘の事だからハルの事下僕みたいに扱っちゃうよ?」
 実の娘に下僕扱いなんて冗談ではないが、若様の娘だとしたらそれも現実にありえそうである。
 身重の若様が「ん」と腕を伸ばしてくる。生意気な彼女が何を要求しているのかはすぐに判った。
 指を絡め、そっと唇を近付ける。


「ハル。ボク、幸せだよ   


 思えば落とし穴に何度も落されたあの日から、若様は変わった。種族や性別の事ではなく、その取り巻く環境の事ではなく   


    いや、変わったのは、俺か。


 口付けの直前、俺が囁いた言葉に若様が頬を紅潮させ瞳を潤ませる。
 そうしてから、今日何度目か知らぬ愛の証明をしてみせるのだ。

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(ものがたりのだいじぇすと)

チャッチャラ〜ン♪

わかさまは
いんらんショタから 
いんらんロリへと 
しんかし

さらに
いんらんロリにんぷへと
しんかした

めでたしめでたし

【メモ-人物】
“若様”

スパッツが大層似合う若様。自信過剰な癖に寂しがりやで独占欲が強い。根はガキそのものであり後先考えず悪戯をする事が多く、その報いを考えない。
家庭の事情や母親からの陵辱により性癖が曲がり男色に傾倒している。
その為部下を性的にからかい一線を越えられないでいる部下達の姿を見て喜ぶという崇高な性癖があったが、結局この悪戯の所為で後に「男の娘でもいい。いや、男の娘がいい」「スパッツは性器」などと開き直った男達にアレさせる寸前までいった。

元々女装が趣味だがプライドの所為か普段はボーイッシュな格好をしている。スパッツは何故だか判らないけれど男性の視線を釘付けにするから好んでいたもの。

家庭の不和から家族愛に餓え、自分ならきっと子供を大事にすると誓っていた所でハルが現れ愛情を分け与える姿勢に好意を抱いていった。
魔界の薬を飲んでからは一層心が彼に向く様になった為、悪戯が彼に集中する事となったのは一幕の背景である。
猶一人称が途中から僕→ボクになっているのは心が女の子になりつつあった時点での変化の一つである。

アルプになった時からチャームが使えるのは元々淫乱な性質だったからだという事にしておこうと今思いついたのでそういう事にしておきますね。

11/10/23 20:39 Vutur

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