転校初日A
『あなた…名前は?』
ドアを封鎖したまま、転校生が質問してくる。
…ここ、進研ゼミでやったところだ!
『人に名前を尋ねる時はまず自分か』
『私、ついさっき自己紹介したのだけれど?』
……そういえば、してましたね…。
コスプレが気になりすぎて耳に入って来なかった。
『はぁ…まぁ、いいわ。私の名前は、リンク・ストリー』
最早とぼけられる立場でもないので、素直に答える。
『…自分は赤井縁』
『そう…縁…縁くん、ね』
なぜに名前呼び…。
まだ母親にしか呼ばれたことしかないのに!
『それで縁くん、単刀直入に聞くけれど、あなた…見えてるわね?』
『いや、見えてない。転校初日に全力でコスプレしてくる電波系少女とか、全然見えてない』
『……』
『……』
反射的に答えてしまった。
…沈黙が気まずい。
『コスプレじゃないわよ…』
怒気を孕んだ声でそうつぶやくと、彼女の周りから黒い煙のようなものが立ち上った。
『特別サービスよ?』
そして、黒い煙に彼女が覆われたと思った瞬間、現れたのはまさに人外と言っていい出で立ちをした美少女だった。
白い髪、紅い目、角、羽、尻尾……それらの異形を備えた肉体を扇情的な黒い服で包み込んだ少女は、空中で球状になった黒い煙の塊に座っていた。
言葉が、出なかった。
どんなトリックかなどと考えるのも馬鹿らしい。
彼女は本物だ。
最も際立つのは、その美しさ。
先程まででも、十二分に美しかった。しかし、どこか美しさのピントが定まらないような感じだった。
その原因が今わかった。
人間という枷だ。
今、その枷を外した彼女は遺憾無く人ならざる美しさを振りまく、人智を超えた存在だった。
そして、
『あら?その手は何かしら?』
無意識の内に、自分は手を伸ばしていた。
『…!』
慌てて、手を引っ込める。
伸ばした手で得ようとしたものは何だったのか。
そんなのは分かり切っている。
…彼女だ。
『ふぅん?まだ自制は効くようね…』
パチン
彼女が指を鳴らすと、黒い塊は霧散し、彼女は元の制服姿に戻っていた。
『何なんだ?お前…』
『ストリー』
『え?』
『お前じゃなくて、ストリーよ。そう呼ばないと、返事しないわ』
『…ストリーは、何者なんだ?』
『さあ?何者かしら』
こいつキライ。
『そんなに苦い顔しないでもいいじゃない…。ミステリアスな女の子は嫌い?』
『ミステリアスだろうとマステリオンだろうとお前はキライだ』
『誰が魔王よ…惜しいけれどね』
惜しいのかよ。
『そう…正確には魔王の娘。そこの椅子に座りなさい?話があるわ。イロイロとね』
『…別にこのままでも大丈夫だよ』
いつでも逃げられるようn
『勃起したままじゃ辛いでしょう?』
…仰る通りです。
それから彼女は様々なことを自分に話した。
…彼女が魔物娘であり、魔界からの使者であること。
…人間界を魔物と共存させようとしていること。
…他にも多くの魔物が人間界に来ていること。
…まだ事は公に出来ず、ゆえに魔法で姿を誤魔化していたこと。
…なぜか自分が見破れたこと。
『ねぇあなた、かなり高度な幻影魔法の使い手とか知り合いにいない?』
『いてたまるか!』
『そう…じゃあ、愛ね!』
『えぇ…』
『あら?忘れたとは言わせないわよ?キライだなんて言っていたけれど、さっき欲情し切った目をして私に迫ったこと』
『あ、あれは…!』
『あれは…何かしら?』
『っ…』
『まぁ、実を言うと、大概の男は私の姿を見るだけで襲い掛かっちゃうわ。それも私が姿を誤魔化す理由の一つよ。・・・自制できただけでも大したものだわ』
『そんなんで、よく生きて来られたな・・・』
『平気よ。私、強いもの』
『・・・さいですか』
『あと、私は処女よ』
『聞いてねえよ!』
『あ、そうだ。もう一つ、大事なことを言い忘れてたわ・・・私が人間界に来た理由だけれど、婿探しも含まれているのよね』
『そうか。色々とやることがあって大変だな』
『・・・根性なし』
うるさい。
キーンコーンカーンコーン
これは、1限の終りのチャイムだろうか。
『あら、もうこんな時間』
『・・・教室に戻った方がいいんじゃないのか?』
『そうね・・・あ、最後にもう一つ』
『まだ何かあるのか・・・正直、脳がもうパンク寸前なんだが』
『大したことじゃないわ・・・耳を寄せなさい』
『・・・?』
『実はね・・・えいっ、んっ』
耳を寄せたところで首を90度回され、唇にキスされる。
『!?』
『ちゅ・・・ちゅぷ・・・レロ・・・』
逃がさないとばかりに顔を固定され、唇を堪能されたと思ったら、たっぷりと唾液がまぶされた舌が侵入してきた。
『〜っ』
『ぢゅぷ・・・ちゅる・・・』
ストリーの舌が自分の舌を這い回る。口腔内で時間をかけて唾液同士を混ぜ合わせると、顔を固定していた手が自分の顎を傾け、混ざり切った唾液を飲み込ませた。
『〜〜っ』
『れる・・・んふ・・・れろぉ・・・』
唾液を飲み込んだことに満足したらしく、次の目標と言わんばかりに、よく動く舌が歯の一本一本、歯茎の一部分一部分を蹂躙し始めた。
『〜〜〜っ』
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
『・・・んむっ』
どれくらい時間がたっただろうか。最後に一際強く唇を押し付けると、ストリーの顔は離れていった。
『・・・ふうっ。できたわ・・・って、息も絶え絶えみたいね。まぁいいわ、左手を見てみなさい』
酸欠でぼんやりした頭を動かしてみると、薬指に赤い、糸のようなものが結び付けられていた。
『どう?きれいに結べているでしょう?・・・それはアナタと私を繋ぐ魔法の糸。魔法でできているから、あなたには外せないし、大体の物理的な問題は大丈夫よ』
『あと、今話したことなんかを他の人に漏らそうとしたら、すぐに私に伝わるわ』
『まぁ、そのほか色々とできることもあるけれど・・・今はいいわ』
『私は教室に戻るけれど、あなたは少し休みなさい。ベッドに連れていってあげるわ』
『あ、射精したパンツは変えといてあげるから、安心してね♡』
安心できるか。最低か。
どうにもしまらない最後を迎えて、自分の意識は眠りについた。
ドアを封鎖したまま、転校生が質問してくる。
…ここ、進研ゼミでやったところだ!
『人に名前を尋ねる時はまず自分か』
『私、ついさっき自己紹介したのだけれど?』
……そういえば、してましたね…。
コスプレが気になりすぎて耳に入って来なかった。
『はぁ…まぁ、いいわ。私の名前は、リンク・ストリー』
最早とぼけられる立場でもないので、素直に答える。
『…自分は赤井縁』
『そう…縁…縁くん、ね』
なぜに名前呼び…。
まだ母親にしか呼ばれたことしかないのに!
『それで縁くん、単刀直入に聞くけれど、あなた…見えてるわね?』
『いや、見えてない。転校初日に全力でコスプレしてくる電波系少女とか、全然見えてない』
『……』
『……』
反射的に答えてしまった。
…沈黙が気まずい。
『コスプレじゃないわよ…』
怒気を孕んだ声でそうつぶやくと、彼女の周りから黒い煙のようなものが立ち上った。
『特別サービスよ?』
そして、黒い煙に彼女が覆われたと思った瞬間、現れたのはまさに人外と言っていい出で立ちをした美少女だった。
白い髪、紅い目、角、羽、尻尾……それらの異形を備えた肉体を扇情的な黒い服で包み込んだ少女は、空中で球状になった黒い煙の塊に座っていた。
言葉が、出なかった。
どんなトリックかなどと考えるのも馬鹿らしい。
彼女は本物だ。
最も際立つのは、その美しさ。
先程まででも、十二分に美しかった。しかし、どこか美しさのピントが定まらないような感じだった。
その原因が今わかった。
人間という枷だ。
今、その枷を外した彼女は遺憾無く人ならざる美しさを振りまく、人智を超えた存在だった。
そして、
『あら?その手は何かしら?』
無意識の内に、自分は手を伸ばしていた。
『…!』
慌てて、手を引っ込める。
伸ばした手で得ようとしたものは何だったのか。
そんなのは分かり切っている。
…彼女だ。
『ふぅん?まだ自制は効くようね…』
パチン
彼女が指を鳴らすと、黒い塊は霧散し、彼女は元の制服姿に戻っていた。
『何なんだ?お前…』
『ストリー』
『え?』
『お前じゃなくて、ストリーよ。そう呼ばないと、返事しないわ』
『…ストリーは、何者なんだ?』
『さあ?何者かしら』
こいつキライ。
『そんなに苦い顔しないでもいいじゃない…。ミステリアスな女の子は嫌い?』
『ミステリアスだろうとマステリオンだろうとお前はキライだ』
『誰が魔王よ…惜しいけれどね』
惜しいのかよ。
『そう…正確には魔王の娘。そこの椅子に座りなさい?話があるわ。イロイロとね』
『…別にこのままでも大丈夫だよ』
いつでも逃げられるようn
『勃起したままじゃ辛いでしょう?』
…仰る通りです。
それから彼女は様々なことを自分に話した。
…彼女が魔物娘であり、魔界からの使者であること。
…人間界を魔物と共存させようとしていること。
…他にも多くの魔物が人間界に来ていること。
…まだ事は公に出来ず、ゆえに魔法で姿を誤魔化していたこと。
…なぜか自分が見破れたこと。
『ねぇあなた、かなり高度な幻影魔法の使い手とか知り合いにいない?』
『いてたまるか!』
『そう…じゃあ、愛ね!』
『えぇ…』
『あら?忘れたとは言わせないわよ?キライだなんて言っていたけれど、さっき欲情し切った目をして私に迫ったこと』
『あ、あれは…!』
『あれは…何かしら?』
『っ…』
『まぁ、実を言うと、大概の男は私の姿を見るだけで襲い掛かっちゃうわ。それも私が姿を誤魔化す理由の一つよ。・・・自制できただけでも大したものだわ』
『そんなんで、よく生きて来られたな・・・』
『平気よ。私、強いもの』
『・・・さいですか』
『あと、私は処女よ』
『聞いてねえよ!』
『あ、そうだ。もう一つ、大事なことを言い忘れてたわ・・・私が人間界に来た理由だけれど、婿探しも含まれているのよね』
『そうか。色々とやることがあって大変だな』
『・・・根性なし』
うるさい。
キーンコーンカーンコーン
これは、1限の終りのチャイムだろうか。
『あら、もうこんな時間』
『・・・教室に戻った方がいいんじゃないのか?』
『そうね・・・あ、最後にもう一つ』
『まだ何かあるのか・・・正直、脳がもうパンク寸前なんだが』
『大したことじゃないわ・・・耳を寄せなさい』
『・・・?』
『実はね・・・えいっ、んっ』
耳を寄せたところで首を90度回され、唇にキスされる。
『!?』
『ちゅ・・・ちゅぷ・・・レロ・・・』
逃がさないとばかりに顔を固定され、唇を堪能されたと思ったら、たっぷりと唾液がまぶされた舌が侵入してきた。
『〜っ』
『ぢゅぷ・・・ちゅる・・・』
ストリーの舌が自分の舌を這い回る。口腔内で時間をかけて唾液同士を混ぜ合わせると、顔を固定していた手が自分の顎を傾け、混ざり切った唾液を飲み込ませた。
『〜〜っ』
『れる・・・んふ・・・れろぉ・・・』
唾液を飲み込んだことに満足したらしく、次の目標と言わんばかりに、よく動く舌が歯の一本一本、歯茎の一部分一部分を蹂躙し始めた。
『〜〜〜っ』
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
『・・・んむっ』
どれくらい時間がたっただろうか。最後に一際強く唇を押し付けると、ストリーの顔は離れていった。
『・・・ふうっ。できたわ・・・って、息も絶え絶えみたいね。まぁいいわ、左手を見てみなさい』
酸欠でぼんやりした頭を動かしてみると、薬指に赤い、糸のようなものが結び付けられていた。
『どう?きれいに結べているでしょう?・・・それはアナタと私を繋ぐ魔法の糸。魔法でできているから、あなたには外せないし、大体の物理的な問題は大丈夫よ』
『あと、今話したことなんかを他の人に漏らそうとしたら、すぐに私に伝わるわ』
『まぁ、そのほか色々とできることもあるけれど・・・今はいいわ』
『私は教室に戻るけれど、あなたは少し休みなさい。ベッドに連れていってあげるわ』
『あ、射精したパンツは変えといてあげるから、安心してね♡』
安心できるか。最低か。
どうにもしまらない最後を迎えて、自分の意識は眠りについた。
16/03/17 07:30更新 / 島眠
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