連載小説
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転校初日B
昼。

結局あの後、教室には戻らずに早退した。

教室に戻っていれば厄介事は多かっただろうし、早退すれば少しは体調不良にも信憑性が出るだろう。

教室に戻ったあいつがどうなったかは知らない…が、カバンを取りに一瞬だけ教室に戻った時は平然と授業を受けていたので大丈夫だろう。

さて、帰宅したはいいものの・・・暇だ。

学校をサボることは基本的にはしてこなかったので、こういった時間は使い慣れない。

一人暮らしなので特に心配する親もおらず、とりあえずの問題は昼飯だろうか。

材料はまだあったはずだが、作るのが面倒くさい。

買い置きのカップ麺はまだ残ってたっけか・・・。

ふと、ここで股間が熱を持っていることに気づいた。

というか、保健室でのアレからずっとこの調子だ。

教室でストリーの姿が見えた時とか普通にヤバかった。

…昼飯の前に処理しとくか。

自室に向かい、制服を着替える。

本・・・いや、動画だな。

パソコンを起動し、キーボードに両手を乗せたところで、左手に結ばれた糸が目に入った。

糸はちょうど学校の方を向いている。

ドクン

その瞬間、思い出すのは保健室でのキスのこと。

ドクンー

唇がうずく。もう一度あの柔らかい感触を得たいと必死に彼女の唇を思い出す。

ドクンーー

舌がうずく。もう一度あの舌で蹂躙されたいとしきりに口腔内を舐め回す。

ドクンーーー

口の中がうずく。もう一度彼女のだ液を飲みたいと口の中にだ液を溢れさす。

ドクンーーーー

気がつけば、果てていた。

射精後特有のアレになった頭で状況を整理すると、とんでもないことをしでかしたことに気づく。

エロ本やら動画でなんかじゃない。
自分は同級生で…。

『はぁ…』

盛大にため息をついて立ち上がる。
出したものなんかの処理をすると、もう一度ため息をついてキッチンへと向かった。

〜〜〜〜〜

『遅かったのね。もう出来るわよ』

キッチン。
他のどこでもない自分の家のキッチン。
だというのに彼女が、ストリーが料理を作っていた。

なんでここにいるか、どうやって入ってきたのか。

ぶっちゃけそんなのがどうでもよくなるほど、最高に気まずかった。

『なに、してるんだ?』

『ナニしてたのはあなたじゃない』

『!?』

『まぁ、いいから座って。あとは盛り付けるだけだから』

…そう言って手早く器に料理を移していく様は、やけに板についていた。



『…で?あなたはなんでここにいるんですか?』

食卓を挟んで向かい合ったストリーに質問する。
自分の手元にはまだ湯気の立つ料理が並んでいた。

…なんで敬語なのかは秘密☆
別に弱味がアレとかじゃないよ!


『まだ、あなたに話しておきたいことがあったからよ』

『…保健室での続きなら勘弁してほしいんだけど…』

『いいえ、あなたにも関わりのあることよ。…その糸の効果を説明しておこうと思って』

…そういえば、保健室で気絶する前、イロイロできるとか言ってた気がする。

『そう。…結構強力な魔法だから、知っておいた方がいいかと思って』

『そんな危険物をなに勝手に』

『機密保持のためよ。どうせ外せやしないのだから、諦めなさい』

『理不尽だ…』

『・・・まず一つ、私はいつでもあなたの居場所がわかります』

『まぁ、糸で繋がっていればな…。で、自分のプライバシーはどこに?』

『・・・もう一つ』

無視された。

心まで読めるんだったら、言葉の方もちゃんと読み取ってください。

『…あれ?』

『…これがもう一つ、情報共有。有り体に行ってテレパスね。私の思念を伝えたり、あなたの考えを読み取ったりするわ』

『なにその一方通行…。もうちょっと相互的でインタラクティブにだな』

『・・・それ意味かぶってるじゃない。あと、乙女の頭を覗きたいだなんてやめてくれる?』

『理不尽すぎる!』

『まだあるけど、聞く?』

『もういいです・・・ちなみに、あとどれくらいあるの?』

『さぁ・・・常時追加されてるから・・・』

『その追加今すぐやめろ!』

『冗談よ・・・っと、もうこんな時間ね』

『…今更だが、ここにいて良かったのか?転校初日だろう』

『学校の方なら大丈夫よ。分身を置いて来たから』

『分身!?すげえそんなこと出来んの!?』

『そんなに目を輝かせないでよ…。分身と言ってもなんでもは出来ないし、そろそろ戻るわ』

『そうなのか…』

『全力で落ち込まないでよ、こっちまで伝わってくるじゃない…。あ、そうだ。私お昼ご飯まだなのよね』

『いや、なんでだよ…。作ってくれた分もう食べちゃったぞ』

『あら、私あなたが食べていいなんて言ってないけれど?』

『!?待てそれは今更すぎるしそもそも材料や器具はうちの』

『冗談よ。ちゃんとあなたのために作ったわ。…ところでお腹を空かせてあなたに料理を作った私になにかご馳走する気はないかしら?』

『いや、それはいいけど、もう時間が…』

『魔物娘にとって、一番のご馳走って何か覚えてる?』

『人間の精…ってまさか…』

『そういうこと。ご馳走になっていいんでしょう?すぐに済むから、じっとしてなさい…』

パチン
彼女が指を鳴らすと、視界が黒い煙のようなものに包まれる。
とっさに払いのけようとすると、手が固定されていた。…足もだ。

『椅子に座ってるなら、好都合だわ…』

食卓の下から潜り込んで来たのか、足元から彼女の声がする。

『今朝ぶりね…さっき出してるのに、もう元気じゃない』

抗議の声をあげようとしても黒い煙のせいかモゴモゴと音がするだけになる。
…これ万能すぎるでしょう。


そうこうする間に下半身が涼しくなる。
どうでもいいけどこの絵面、多分ものすごく危険である。

『キミのオカズはなにかしら?赤い糸に聞いてみましょう』

…待て、それはまずい。非常にまずい。あと、ソレに話しかけるな。
必死の抵抗も意味無く、心が覗かれるのが分かる。

『…へぇ♡』

果たしてその呟きにはどういう意味が込められていたのか

パチン

再び彼女が指を鳴らすと、視界が晴れた。
見ると、手や足の拘束も無くなっている。

『…スト、リ!?』

彼女の名前を呼ぼうとした瞬間、また口がなにか、いやストリーの口で塞がれる。

ガッターン!

どれだけ勢いをつけて飛んで来たのか、椅子ごと二人で後ろに倒れるこむ。

痛みを感じる暇も無く、口の中の感覚が頭を支配する。

今朝とは比べものにならない、口どころか人格までも支配するようなキス。…いや、最早キスと呼んでいいものかもわからないような何かが行われていた。

『んむぅ…ちぅ…むっ…』

顔と体を完全に固定され、逃げ場などない。
自分に許されるのは、ただただ暴力的な快感に身を震わせることだけだった。

〜〜〜〜〜

気がつくと、彼女はいなかった。

またこのオチか…。

そうはいっても快感による気絶など防ぎ様がない。
痛む頭をさすりつつ立ち上がると、食卓の上に書き置きがあった。

(ごちそうさまでした♡)

『…お粗末様』

紙を置くと、裏側にもなにか書いてあった。

(追伸
出した分は美味しくいただきましたので、今回は下着を替えておりません)

『余計なお世話だ!』

紙を床に叩きつける。

ストリーがクスリと笑っているような気がした。













16/03/19 23:02更新 / 島眠
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