1時限目『魔物概論』特別講師:ラタトスク 上編
木々の合間からキラキラと木漏れ日が降り注ぐ。ここは、小さな宗教国家「リーテン」の管轄地である森林地帯。訪れる者といえば狩人や薬草を探す薬師くらいしかいない人の手がほとんど入っていないそのままの森である。そんなある種の神聖さすら感じられるその森に不釣り合いな不満声が1つ。リーテンの職人の手によって綺麗に磨き上げられたヒノキの棒で持ち草むらをつつきながら歩く騎士見習いのクラルテである。
「そもそも、魔物に関する知識を有する者って魔物そのものやその夫、それとか異教の教えを信じる愚かな親魔物国家の連中しかいないじゃないっすか……だれだよ、魔物の事をしっかり調べようとかいったアホは…」
そのアホは、クラルテ自身である。
「あー、魔物見つけても捕縛できる気がしねぇっす。そもそも、小さくても一応は宗教国家であるリーテンの管轄領地内に魔物なんているんすかねぇ…」
がさがさ、がさがさ……草むらをつつくリーテンは一人呟く。
「スライムくらいならオレでも倒せる……いや、実際に魔物と戦ったこともないからスライムでも倒せるか分からねぇっすね……てか、オレが倒せるような魔物ってちゃんと知性があって会話できるんすかね。なんかスライムとか『ぷるぷる』とかしか発音しなさそうだし」
「でもこのままミッション失敗したら、またあのロート先輩からどやされそうっすね。ネーロ執政官も嬉々として給料の減給してきそうっすし……もしかして、ネーロ執政官魔物に関する勉強ができなくても、だれかの給料を減給して国庫を潤わすために今回の策に賛成したんすかね……。うわぁー今頃、俺の減給された分の給料をどこの予算に当てるか考えてそうっすね…」
がさがさ、がさがさ……1人草むらをつつく。
「あーもう!スライムでもドラゴンでもなんでもいいっす!オレの給料を守る為に出てくるっす!」
クラルテは乱暴に近くのひと際大きな茂みにヒノキの棒を突っ込む。
「いたいっ!」
「おっ?」
ヒノキの棒を突っ込んだ茂みから声がする。
クラルテは、ヒノキの棒を引っ込めその茂みをかき分けてみる。
「あっ……どうも。今日もいい天気ですね」
そこには、小さな体に大きく柔らかい栗色の尻尾を持つ獣人がいた。狩人が回収を忘れたのだろうか……さび付いたトラばさみの罠に片足を挟まれているようだ。
「あっ、そうっすね。今日もいい天気っすね。てか、何やってるんすか?」
「いやぁー、何か面白い情報でも転がってないかなぁーと思ってこの森をうろついていたんだけど罠に気が付かなくてさ。錆びてるせいかなかなか外せないし」
「あー、このタイプ錆びると扱いにくいんすよね。そうやって、脚を挟む板の部分を無理やり開けようとするんじゃなくてこっちの部分をこうすると……ほら案外簡単に開くんすよ」
「おー流石、キミは狩人かなにかかい?」
「いや、親が狩人っすから子供のころから狩猟道具に触れてただけっす」
「へー、まぁありがとう! このお礼はいつか必ず!」
「いやいや、回収し忘れた罠への対応とかは狩人やその関係者にとっては当たり前のことっすから。お気持ちだけで結構っすよ」
2人は手を振って別れを告げる。
「……ん?」
ここでふとクラルテは考える。
「あっ!?」
そして思い出したようだ。
「魔物めっ!ここで会ったが100年目っす! あまりにも普通に会話してくるから気が付かなかったっすけど、お前どう見ても魔物じゃないっすか! 神妙にお縄にかかるっす!」
「あちゃー、普通に会話することで相手に魔物だと認識させないようにする作戦は失敗しちゃったかー。いや、まぁ、さっきまで普通に誤魔化せていたのにボク自身かなり驚いていたけど」
ヒノキの棒を獣人に突き付け近づくクラルテ
クラルテと相対し罠にかかっていた方の足をかばいながら後ずさる獣人。
2人の距離は少しずつ縮まる。
「ふっ、主神様に感謝っす。戦闘力が無さそうで、かつ手負いの魔物をオレに恵んでくれるとは……おまけになんか賢そうだし完璧っすね」
「あぁ、ここでボクは教団の兵士に殺されて、短い魔物生に幕を閉じるのかぁ……もっとたくさんの人や魔物に情報を伝えてあげたかったなぁ…」
「いや、殺さないっすよ。殺したら特別講師になってもらえないじゃないっすか」
「えっ」
「えっ」
見つめ合う2人。
「実はこうこう、こういうことがあってっすね……」
……クラルテ、ことのあらましを説明中……
「なるほどね……レスカティエの様に魔物に攻め込まれて負けてしまわないように敵、すなわち魔物について知りたい…そのために魔物から話を聞きたい…っていう認識であってるかな?」
「完璧っすね」
「別にボクとしては、特別講師として魔物についてお話するのは嫌じゃない…いや、むしろ進んでやりたいくらいだけど……キミは本当にそれでいいのかい?」
「?、別にいいっすけど」
「いや、その、ボクたちの種族…あぁ『ラタトスク』って言うんだけどね。ラタトスクには情報を使って個人や集団を煽り、その行動をある程度誘導する能力があってね……キミは今、もっともお願いしてはいけない種族にお願いしてはいけないことをお願いしようとしてるんじゃないかなって思ってさ」
「んー、問題ないっす! 俺としてはミッションコンプリートして給料の減給を逃れることが重要っすから!」
「えぇーー」
「それに……」
呆れるラタトスクに向かって自身満々にクラルテは答える。
「たとえ情報を扱う能力に長けたラトタスク?でも、あのリーテン主神教会のメンバーを説得すことは無理っすから」
「ラタトスクです。しかし…ふーん……腕が鳴るね」
「それじゃぁ善は急げ!さっそくリーテン主神教会にレッツゴー…の前に、そういえばまだ名前を名乗ってなかったっすね…オレの名前はクラルテ、見習い騎士のクラルテっす」
「ご丁寧にどうも。ボクはラタトスクのラスクだよ」
「それじゃぁ、ラスク、行くっすよ!」
そういうとクラルテはしゃがみ込む。
「どうしたのさ?」
「いや、ラスク片足ケガしてるしおぶって行くっすよ」
「……ありがと」
「そもそも、魔物に関する知識を有する者って魔物そのものやその夫、それとか異教の教えを信じる愚かな親魔物国家の連中しかいないじゃないっすか……だれだよ、魔物の事をしっかり調べようとかいったアホは…」
そのアホは、クラルテ自身である。
「あー、魔物見つけても捕縛できる気がしねぇっす。そもそも、小さくても一応は宗教国家であるリーテンの管轄領地内に魔物なんているんすかねぇ…」
がさがさ、がさがさ……草むらをつつくリーテンは一人呟く。
「スライムくらいならオレでも倒せる……いや、実際に魔物と戦ったこともないからスライムでも倒せるか分からねぇっすね……てか、オレが倒せるような魔物ってちゃんと知性があって会話できるんすかね。なんかスライムとか『ぷるぷる』とかしか発音しなさそうだし」
「でもこのままミッション失敗したら、またあのロート先輩からどやされそうっすね。ネーロ執政官も嬉々として給料の減給してきそうっすし……もしかして、ネーロ執政官魔物に関する勉強ができなくても、だれかの給料を減給して国庫を潤わすために今回の策に賛成したんすかね……。うわぁー今頃、俺の減給された分の給料をどこの予算に当てるか考えてそうっすね…」
がさがさ、がさがさ……1人草むらをつつく。
「あーもう!スライムでもドラゴンでもなんでもいいっす!オレの給料を守る為に出てくるっす!」
クラルテは乱暴に近くのひと際大きな茂みにヒノキの棒を突っ込む。
「いたいっ!」
「おっ?」
ヒノキの棒を突っ込んだ茂みから声がする。
クラルテは、ヒノキの棒を引っ込めその茂みをかき分けてみる。
「あっ……どうも。今日もいい天気ですね」
そこには、小さな体に大きく柔らかい栗色の尻尾を持つ獣人がいた。狩人が回収を忘れたのだろうか……さび付いたトラばさみの罠に片足を挟まれているようだ。
「あっ、そうっすね。今日もいい天気っすね。てか、何やってるんすか?」
「いやぁー、何か面白い情報でも転がってないかなぁーと思ってこの森をうろついていたんだけど罠に気が付かなくてさ。錆びてるせいかなかなか外せないし」
「あー、このタイプ錆びると扱いにくいんすよね。そうやって、脚を挟む板の部分を無理やり開けようとするんじゃなくてこっちの部分をこうすると……ほら案外簡単に開くんすよ」
「おー流石、キミは狩人かなにかかい?」
「いや、親が狩人っすから子供のころから狩猟道具に触れてただけっす」
「へー、まぁありがとう! このお礼はいつか必ず!」
「いやいや、回収し忘れた罠への対応とかは狩人やその関係者にとっては当たり前のことっすから。お気持ちだけで結構っすよ」
2人は手を振って別れを告げる。
「……ん?」
ここでふとクラルテは考える。
「あっ!?」
そして思い出したようだ。
「魔物めっ!ここで会ったが100年目っす! あまりにも普通に会話してくるから気が付かなかったっすけど、お前どう見ても魔物じゃないっすか! 神妙にお縄にかかるっす!」
「あちゃー、普通に会話することで相手に魔物だと認識させないようにする作戦は失敗しちゃったかー。いや、まぁ、さっきまで普通に誤魔化せていたのにボク自身かなり驚いていたけど」
ヒノキの棒を獣人に突き付け近づくクラルテ
クラルテと相対し罠にかかっていた方の足をかばいながら後ずさる獣人。
2人の距離は少しずつ縮まる。
「ふっ、主神様に感謝っす。戦闘力が無さそうで、かつ手負いの魔物をオレに恵んでくれるとは……おまけになんか賢そうだし完璧っすね」
「あぁ、ここでボクは教団の兵士に殺されて、短い魔物生に幕を閉じるのかぁ……もっとたくさんの人や魔物に情報を伝えてあげたかったなぁ…」
「いや、殺さないっすよ。殺したら特別講師になってもらえないじゃないっすか」
「えっ」
「えっ」
見つめ合う2人。
「実はこうこう、こういうことがあってっすね……」
……クラルテ、ことのあらましを説明中……
「なるほどね……レスカティエの様に魔物に攻め込まれて負けてしまわないように敵、すなわち魔物について知りたい…そのために魔物から話を聞きたい…っていう認識であってるかな?」
「完璧っすね」
「別にボクとしては、特別講師として魔物についてお話するのは嫌じゃない…いや、むしろ進んでやりたいくらいだけど……キミは本当にそれでいいのかい?」
「?、別にいいっすけど」
「いや、その、ボクたちの種族…あぁ『ラタトスク』って言うんだけどね。ラタトスクには情報を使って個人や集団を煽り、その行動をある程度誘導する能力があってね……キミは今、もっともお願いしてはいけない種族にお願いしてはいけないことをお願いしようとしてるんじゃないかなって思ってさ」
「んー、問題ないっす! 俺としてはミッションコンプリートして給料の減給を逃れることが重要っすから!」
「えぇーー」
「それに……」
呆れるラタトスクに向かって自身満々にクラルテは答える。
「たとえ情報を扱う能力に長けたラトタスク?でも、あのリーテン主神教会のメンバーを説得すことは無理っすから」
「ラタトスクです。しかし…ふーん……腕が鳴るね」
「それじゃぁ善は急げ!さっそくリーテン主神教会にレッツゴー…の前に、そういえばまだ名前を名乗ってなかったっすね…オレの名前はクラルテ、見習い騎士のクラルテっす」
「ご丁寧にどうも。ボクはラタトスクのラスクだよ」
「それじゃぁ、ラスク、行くっすよ!」
そういうとクラルテはしゃがみ込む。
「どうしたのさ?」
「いや、ラスク片足ケガしてるしおぶって行くっすよ」
「……ありがと」
18/09/07 21:20更新 / みかん畑
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