遊びに来た幼馴染
「……ということで!今回はオススメな避暑地をご紹介!まずは―――」
プツン……
テレビの電源が切られ辺りに虫の鳴き声だけが響き渡る。
太陽は真上に登っており外をじりじりと照らす。
クーラーのおかげか外の熱さは感じない。
自分は机に向き直りノートパソコンを開き起動する。
「やっぱテレビよりパソコンだな……」
独り言を呟きながらパスワードを入れ動画サイトを開く。
適当に動画を見ながら時間をつぶしていると。
「おーい!遊びに来たぜー!」
がらがらと玄関が開かれる音、それと同時に聞こえてきた元気な声。
ノートパソコンを閉じ玄関に向かう。
玄関にいたのは日焼けした健康的な肌にタンクトップとホットパンツという露出の多い恰好、髪はショートカットで涼し気。そして胸は僅かだが膨らんでいる。
幼馴染である水木だった。
「……いらっしゃい。」
「お邪魔するぜ!」
自分の姿を確認すると同時に靴を脱ぎ散らかし、ずかずかと上がり込んでくる。
脱ぎ散らかされた靴を綺麗に揃えながらため息をつく。
まるで女とは思えないぐらい乱雑だ、呆れてもう一度ため息をつく。
「なあー翔、麦茶ないのかよー」
そういって水木はテレビをつけて胡坐をかきながら机に肘をつく。
その様はまるでおっさんのようで女らしさは微塵も感じられなかった。
幼馴染の水木は小学校の頃からこうだった。女子と遊ぶよりも男子と遊ぶことが多く口調も男勝り。それに加えて身長も高い。小学校卒業まで常に身長はトップで中学校に上がってからも背が伸び、二年生にして三年生の男子の身長トップの164cmと並ぶ程だ。
対して自分はというと、最近やっと150cmを超えてきたがこれでも男子の中では下から数えた方が早いくらいだった。
そんな水木だが部活には入らなかった、なんでも夏休みに自由に遊べる時間が無くなるかららしい。
水木らしい理由だ。
そのせいか夏休み中は親しい奴は全員部活で遊べず。同じく部活に所属していない自分の家に毎日遊びに来るようになった。
「はい、麦茶とサラダ煎餅」
「さんきゅー ……っはー!冷えた麦茶うまー!」
自分は人見知りなこともあってか友達といえば水木ぐらいしかおらず、クラスの奴らとは知り合い程度の関係だ。
運動は嫌いで外にも遊びに行かず動画サイトだけを見る毎日に刺激が入った。
そのこともあって水木には感謝しているのだが……
「ふぃー眠くなってきたぁ……」
一緒にテレビを見つつしばらくするとそういいながら縁側で横になる。
ごろーんと転がったせいかタンクトップがずれて片方の胸が丸出しになっている。
これが普通の女子ならば自分もドキドキしていただろう。
しかし見えている胸が言動も行動も男勝りな水木の物なせいか全く興奮しない。
男友達の裸でも見ている気分だった。
「なんでここで寝るんだよ、自分の家で寝ろよ。」
「はぁー?ここで寝た方がきもちいからに決まってんだろ。」
「お前の家にも縁側はあるだろ、そっちで寝たらいいだろ。」
「人の家の縁側と自分の家の縁側は違うんだよ。」
一体どう違うというのか、とにかく邪魔になるので起こすことにした。
「なんだよ、せっかく親がいないお前を思ってあたしがお姉ちゃんみたいに家にいてやろうと思ったのに。」
「余計なお世話。」
自分の両親は夏休み中長期出張で家にいない。
家事に関しては一通りできる、問題の食料も水木の両親が分けてくれる。
しかしどうしても寂しさというのはある。
そんな中で水木の存在は本当に心の支えになっていた。
「んー…… あ!じゃあさ、山いこうぜ山!」
「山って……もしかして蒼龍山かよ?」
「そうそう、そこに古い神社があるって聞いたからさ。」
「……まさか、行くつもりじゃないよな。」
「何言ってんだよ、そこに行くんだよ。」
「マジかよ……」
蒼龍山(そうりゅうやま) この村の近くにある山で龍神様がいると言われる山だ。
村ではあまり登るものがいない、強いて言えば健康な近所のおじいさんが月一で登っているくらいだ。
けれどそこに神社があるなんて聞いたことが無かった。
誰に聞いたのかと質問したらその健康的なおじいさんから聞いたらしい。
なんでも恋愛成就の神様でそこにお参りすれば恋人に恵まれるらしい。
「な?面白そうだろ!」
「恋愛成就って……俺たちには無縁の物じゃないか。」
「バカ、こういうのは行くこと自体に価値があるんだよ。 ……もしかしてお前ってあたしのこと彼女だと思ってるのか?」
「お前みたいな男女なんか嫌だよ。」
「だよなー」
にししと笑う水木、一度も異性として意識したことがないのだから当然だろう。
「じゃあすぐにいこうぜ!」
そういうと水木は飛び起きて走って玄関に向かう。
自分は使ったコップと麦茶を片付けてリュックと帽子を二つ持っていく。
リュックには冷えたお茶のペットボトルを入れ玄関に向かう。
「ほい、帽子。」
「さんきゅー」
玄関から出た自分達は真っ先に蒼龍山に向かっていった。
蒼龍山は自分達の家からは少し遠いが歩いていけない程ではなかった。
山にはハイキングコースがあり、それに沿って登っていった。
しばらくして山の中腹に差し掛かろうとしたとき、水木が足を止めた。
「どうした?」
「こっちこっち、この獣道を通っていくんだってさ。」
そういって水木の指差したのはハイキングコースから外れた木々の間。
よく見るとうっすら道のような物があり注意深く見ていないと気が付かない程だった。
道は奥に続いており、先は木に隠れて見えなかった。
「こんなところ通って大丈夫なのか?もし道に迷ったら……」
「だいじょーぶだって!じいさんに地図もらってるからさ!」
そういって水木は誇らしげに地図を広げる、そこには確かにこの獣道のことが描かれていた。
「じゃあ大丈夫か。」
「おう!あたしが先にいくぜ!」
そういってずんずんと獣道を進んでいく水木、自分も慌てて後を追った。
獣道に入ってから少し経って、水木は「おっ」といい駆けていく。
後を追うとそこには……
「ほ、本当にあった……」
少し小さめの神社が立っていた。
「すっげー!ほんとにあったー!」
水木は大はしゃぎで神社の賽銭箱に近づく。
古い神社というわりには手入れがされていて所々に苔が生えているものの、パッと見は綺麗な神社だった。
……それに何かは分からないが神秘的な雰囲気も感じる。
「翔!お参りしようぜー!」
そういって水木は五円玉を渡してくる。
しかし、こういったよく分からない神社でお参りなんて危険なのではないか。
そう考えている内に水木は五円玉を賽銭箱に投げ入れ鈴を鳴らす。
自分も慌てて五円玉を投げ入れ鈴を鳴らす。
お互いに手を合わせお参りを済ませる。
……水木の勢いに押されてお参りしてしまった。
どうか悪い神様じゃありませんように、と願いながら顔を上げる。
水木は満足そうな顔をして。
「あんま古いって感じしないし、怖くもねえな。」
そういって元来た道を戻ろうとする。
しかし、自分はじっと神社の扉を見つめる。
先程から神社の扉から視線を感じるのだ。
ホラー映画でよくあることだが、何もないと油断しきった所で後ろから……ということがある。
扉を見ていると、突然突風が吹いた。
強い風に目一瞬だけつぶってしまう。
目を開けると……
「あっ……」
扉が少しだけ開いていた。
「おーい!何してんだー!」
水木の声が聞こえる、しかし自分は扉から目が離せない。
「水木……と、扉が……勝手に……」
「さっきの風で開いたんだろ、いこうぜ。」
水木は自分の手を引っ張り、無理矢理連れていく。
やがて神社が見えなくなりそうになった時。
キィッと扉が閉まった。
「…………」
「はぁ……なんて……なんて素晴らしいのでしょう……」
「あの二人、とてもいい信頼関係を気づいているのですね……!」
「あまりにもよかったものですからつい戸を開けてしまいましたわ……」
「けれど……」
「二人ともまだ本当の気持ちには気が付いていないのですね……」
「……いいでしょう、この蒼龍、必ずやあの二人をくっつけて差し上げますわ!」
プツン……
テレビの電源が切られ辺りに虫の鳴き声だけが響き渡る。
太陽は真上に登っており外をじりじりと照らす。
クーラーのおかげか外の熱さは感じない。
自分は机に向き直りノートパソコンを開き起動する。
「やっぱテレビよりパソコンだな……」
独り言を呟きながらパスワードを入れ動画サイトを開く。
適当に動画を見ながら時間をつぶしていると。
「おーい!遊びに来たぜー!」
がらがらと玄関が開かれる音、それと同時に聞こえてきた元気な声。
ノートパソコンを閉じ玄関に向かう。
玄関にいたのは日焼けした健康的な肌にタンクトップとホットパンツという露出の多い恰好、髪はショートカットで涼し気。そして胸は僅かだが膨らんでいる。
幼馴染である水木だった。
「……いらっしゃい。」
「お邪魔するぜ!」
自分の姿を確認すると同時に靴を脱ぎ散らかし、ずかずかと上がり込んでくる。
脱ぎ散らかされた靴を綺麗に揃えながらため息をつく。
まるで女とは思えないぐらい乱雑だ、呆れてもう一度ため息をつく。
「なあー翔、麦茶ないのかよー」
そういって水木はテレビをつけて胡坐をかきながら机に肘をつく。
その様はまるでおっさんのようで女らしさは微塵も感じられなかった。
幼馴染の水木は小学校の頃からこうだった。女子と遊ぶよりも男子と遊ぶことが多く口調も男勝り。それに加えて身長も高い。小学校卒業まで常に身長はトップで中学校に上がってからも背が伸び、二年生にして三年生の男子の身長トップの164cmと並ぶ程だ。
対して自分はというと、最近やっと150cmを超えてきたがこれでも男子の中では下から数えた方が早いくらいだった。
そんな水木だが部活には入らなかった、なんでも夏休みに自由に遊べる時間が無くなるかららしい。
水木らしい理由だ。
そのせいか夏休み中は親しい奴は全員部活で遊べず。同じく部活に所属していない自分の家に毎日遊びに来るようになった。
「はい、麦茶とサラダ煎餅」
「さんきゅー ……っはー!冷えた麦茶うまー!」
自分は人見知りなこともあってか友達といえば水木ぐらいしかおらず、クラスの奴らとは知り合い程度の関係だ。
運動は嫌いで外にも遊びに行かず動画サイトだけを見る毎日に刺激が入った。
そのこともあって水木には感謝しているのだが……
「ふぃー眠くなってきたぁ……」
一緒にテレビを見つつしばらくするとそういいながら縁側で横になる。
ごろーんと転がったせいかタンクトップがずれて片方の胸が丸出しになっている。
これが普通の女子ならば自分もドキドキしていただろう。
しかし見えている胸が言動も行動も男勝りな水木の物なせいか全く興奮しない。
男友達の裸でも見ている気分だった。
「なんでここで寝るんだよ、自分の家で寝ろよ。」
「はぁー?ここで寝た方がきもちいからに決まってんだろ。」
「お前の家にも縁側はあるだろ、そっちで寝たらいいだろ。」
「人の家の縁側と自分の家の縁側は違うんだよ。」
一体どう違うというのか、とにかく邪魔になるので起こすことにした。
「なんだよ、せっかく親がいないお前を思ってあたしがお姉ちゃんみたいに家にいてやろうと思ったのに。」
「余計なお世話。」
自分の両親は夏休み中長期出張で家にいない。
家事に関しては一通りできる、問題の食料も水木の両親が分けてくれる。
しかしどうしても寂しさというのはある。
そんな中で水木の存在は本当に心の支えになっていた。
「んー…… あ!じゃあさ、山いこうぜ山!」
「山って……もしかして蒼龍山かよ?」
「そうそう、そこに古い神社があるって聞いたからさ。」
「……まさか、行くつもりじゃないよな。」
「何言ってんだよ、そこに行くんだよ。」
「マジかよ……」
蒼龍山(そうりゅうやま) この村の近くにある山で龍神様がいると言われる山だ。
村ではあまり登るものがいない、強いて言えば健康な近所のおじいさんが月一で登っているくらいだ。
けれどそこに神社があるなんて聞いたことが無かった。
誰に聞いたのかと質問したらその健康的なおじいさんから聞いたらしい。
なんでも恋愛成就の神様でそこにお参りすれば恋人に恵まれるらしい。
「な?面白そうだろ!」
「恋愛成就って……俺たちには無縁の物じゃないか。」
「バカ、こういうのは行くこと自体に価値があるんだよ。 ……もしかしてお前ってあたしのこと彼女だと思ってるのか?」
「お前みたいな男女なんか嫌だよ。」
「だよなー」
にししと笑う水木、一度も異性として意識したことがないのだから当然だろう。
「じゃあすぐにいこうぜ!」
そういうと水木は飛び起きて走って玄関に向かう。
自分は使ったコップと麦茶を片付けてリュックと帽子を二つ持っていく。
リュックには冷えたお茶のペットボトルを入れ玄関に向かう。
「ほい、帽子。」
「さんきゅー」
玄関から出た自分達は真っ先に蒼龍山に向かっていった。
蒼龍山は自分達の家からは少し遠いが歩いていけない程ではなかった。
山にはハイキングコースがあり、それに沿って登っていった。
しばらくして山の中腹に差し掛かろうとしたとき、水木が足を止めた。
「どうした?」
「こっちこっち、この獣道を通っていくんだってさ。」
そういって水木の指差したのはハイキングコースから外れた木々の間。
よく見るとうっすら道のような物があり注意深く見ていないと気が付かない程だった。
道は奥に続いており、先は木に隠れて見えなかった。
「こんなところ通って大丈夫なのか?もし道に迷ったら……」
「だいじょーぶだって!じいさんに地図もらってるからさ!」
そういって水木は誇らしげに地図を広げる、そこには確かにこの獣道のことが描かれていた。
「じゃあ大丈夫か。」
「おう!あたしが先にいくぜ!」
そういってずんずんと獣道を進んでいく水木、自分も慌てて後を追った。
獣道に入ってから少し経って、水木は「おっ」といい駆けていく。
後を追うとそこには……
「ほ、本当にあった……」
少し小さめの神社が立っていた。
「すっげー!ほんとにあったー!」
水木は大はしゃぎで神社の賽銭箱に近づく。
古い神社というわりには手入れがされていて所々に苔が生えているものの、パッと見は綺麗な神社だった。
……それに何かは分からないが神秘的な雰囲気も感じる。
「翔!お参りしようぜー!」
そういって水木は五円玉を渡してくる。
しかし、こういったよく分からない神社でお参りなんて危険なのではないか。
そう考えている内に水木は五円玉を賽銭箱に投げ入れ鈴を鳴らす。
自分も慌てて五円玉を投げ入れ鈴を鳴らす。
お互いに手を合わせお参りを済ませる。
……水木の勢いに押されてお参りしてしまった。
どうか悪い神様じゃありませんように、と願いながら顔を上げる。
水木は満足そうな顔をして。
「あんま古いって感じしないし、怖くもねえな。」
そういって元来た道を戻ろうとする。
しかし、自分はじっと神社の扉を見つめる。
先程から神社の扉から視線を感じるのだ。
ホラー映画でよくあることだが、何もないと油断しきった所で後ろから……ということがある。
扉を見ていると、突然突風が吹いた。
強い風に目一瞬だけつぶってしまう。
目を開けると……
「あっ……」
扉が少しだけ開いていた。
「おーい!何してんだー!」
水木の声が聞こえる、しかし自分は扉から目が離せない。
「水木……と、扉が……勝手に……」
「さっきの風で開いたんだろ、いこうぜ。」
水木は自分の手を引っ張り、無理矢理連れていく。
やがて神社が見えなくなりそうになった時。
キィッと扉が閉まった。
「…………」
「はぁ……なんて……なんて素晴らしいのでしょう……」
「あの二人、とてもいい信頼関係を気づいているのですね……!」
「あまりにもよかったものですからつい戸を開けてしまいましたわ……」
「けれど……」
「二人ともまだ本当の気持ちには気が付いていないのですね……」
「……いいでしょう、この蒼龍、必ずやあの二人をくっつけて差し上げますわ!」
21/02/27 13:43更新 / リーン
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