読切小説
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ショタも歩けば触手に当たる
 魔王が代替わりしてしばらくは、随分と腹を空かせた魔物が多かった。それは何も人間達の努力によるものではなく、単純に魔物達が新しい自分の武器を知らなかったからに過ぎない。力任せに壁門を叩くのみだった彼女らが少し科を作ってやるだけで門番を籠絡できることに気付いてからは、魔界領は各地であっという間に増えだした。真っ先に犠牲となったのは情報も兵力も無い小さな村々である。そこで力を蓄え徒党を組んだ魔物達は中程度の都市に狙いをつけ、それらを難なく陥落させた。街を守るのは、異形を追い払うことはあっても人を斬ったことなどない兵士達である。妖しく微笑みながら近づいてくる女達に対して発した警告の声は悲鳴に変わり、最後には情けない喘ぎ声となった。
ここアレンスブルクにおいてもそれは例外ではなく、門番が一人目の魔物の侵入を許して僅か数分で街全体を悲劇──もとい喜劇が襲っている。裏路地から、ベランダから、そこかしこから水音と嬌声が漏れ聞こえてくる。もはや衆人環視の中で犯される男さえいた。人々は逃げ惑い、街の出口に殺到した。街の未婚男性のほとんどが逃げる間もなく捕まってしまい、逃げおおせた多くは女性であった。
街の外、息の上がった住民達の中で一人、10歳になるかならないかの栗毛の少年がいた。ちょうど独りで昼飯の買い物に出ていた彼は、親切な肉屋のおかみに半ば抱えられるようにしてここへたどり着いたのである。両親は役場で同僚として共働きをしているが、その二人が妖気に当てられて今この瞬間弟を作りそうになっていることを彼はまだ知らない。自分を運んでくれた大柄な女性に礼を言おうとしたその瞬間、人だかりの中で悲鳴が上がった。声の方を見やれば一人の男性が魔物にのしかかられている。人混みに紛れて男を探していたのだろうか。だが少年が事態を確認する間もなく人の波が押し寄せてきた。肉屋のでっぷりとした腕が少年を抱き寄せようと伸びてきたが、恐怖に飲まれた群衆がそれを弾いてしまう。
「坊や、にげ──」
彼女の声は人々の悲鳴に飲まれてしまった。それと同時に少年の小さな躰はぐいぐいと人の濁流に押し流されていく。足を止めれば転んで踏みつけられ、ぼろ雑巾のようになってしまうだろう。少年は必死で走った。何処へ向かっているのかもわからずにがむしゃらに足を動かした。


大勢いた人々は方々に散り、門の前には二人の魔物と一組のつがいが残るのみになった。
豚の魔物と狼の魔物、まぐわっているのは筋骨隆々の牛の魔物である。
 「いいなーミノちゃん。もうちょいであたしも捕まえられたのに…ニンゲンの服着て紛れ込むアイデア出したのもあたしだしぃ…」
 「街にっ、戻ればっ、誰かっ、いるだろがっ、あっ!?おいもう出したのかよっ!情けねえやつだなぁ!ほれ、まだ出るだろ!?おら出せよっおらおらっ」
 「ていうかなんかかわいい子いたじゃん、あの子狙えばよかったのに」
 「あたし、ウルフちゃんと違ってショタコンじゃないもーん」
 「わ、わたしもショタコンじゃないしっ」
 やがて二人の魔物もすごすごと街に引き返し、後に残ったのは暴力的に腰を振り続けるミノタウロスと、情けない悲鳴を上げ続ける幸せ者だけになった。



無我夢中で走り続けた少年がたどり着いたのは森の中であった。先の一件で女性に対して疑心暗鬼になってしまい、周りの女性から逃げるように走っていたせいで独りになってしまったのだ。体力も底を突き、膝に手を突いて息を整える。数分して頭を上げた彼は、自分がどこにいるのかさっぱりわからないことに気付いた。後ろを振り向けば似たような木々がたくさん立ち並んでいる。もう一度前を向くと、前後が良くわからなくなってしまった。パニックで再び慌て始める心臓を落ち着かせながら、元来た道を探す。少し地面を眺めていると、自分のものらしい足跡が見つかった。彼は安堵した。これをたどれば街に帰れる筈だ。その先にある街がどうなっているのかはあまり考えないようにした。それでも自分たちを守るはずだった兵士があげた悲鳴が嫌でも蘇る。彼らはどうなったんだろうか。みんな襲いかかられて、顔にかみつかれている人もいた。学校で教わるとおり食べられてしまうんだろう。痛くて苦しいんだろうな。少年は暗い顔で次の足跡を探す。胃袋を冷たい手で鷲掴みにされたような気分だ。何も考えないように、足跡探しに集中する。森の中は日光が遮られて薄暗い。足跡探しはそれなりの集中力を要した。見つけた、次。見つけた、次。足下を見るのに夢中になっていた彼は、目の前にぶら下がる物体に気がつかなかった。
不意に、頭が柔らかい何かにぶつかった。
「うわっ…」
急にのけぞったせいで体のバランスをうしない、少年は尻餅をついてしまう。なんだか変な感じがして頭に手をやると、ぬるりとした感覚が伝わった。まさか血だろうか。ひやりとして右手を見やると、付着しているのは透明な粘液だった。親指と人差し指をすりあわせると粘液がぬちゃぬちゃと音を立てる。次いで顔を上げると、ツタの塊が木々の間にぶら下がっていた。
「うわっ…に、にんげんのこ…」
ツタの塊が喋った。真ん中辺りで目玉のようなものがぎょろりとこちらを向いた。
「う、うわああああああああ!!」
魔物だ。思わず大声を上げ元来た方向へ走り出そうとする。しかし急に立ち上がろうとしたせいで足がもつれ、顔から地面に突っ伏してしまった。
「あの…だいじょぶですか…?」
「く、来るな!!」
なるべく素早く体を反転させて、魔物の方を向く。近くにあった木の棒を掴んで魔物の方につきだした。尻餅をついた体勢なのでいまいち締まらないが当人にとっては必死の行動である。だがこちらに投げかけられたのは不気味な鳴き声でも耳を聾する咆哮でもなく、困惑気味の声だった。
「その…だ、誰ですか…?」
瞬間、ぽかんとしてしまった。目の前に魔物がいない。だが小さな声がした方をよく見ると、太い幹の陰から何かがこちらを見ていた。緑色の何かだ。
「お、お前は……まも…魔物!………ですか…?」
なぜか敬語がでてしまった。木の棒は前に突き出したままだ。
「そ、そう、だと思いますけど…」
「……」
よくわからない沈黙が流れる。自称魔物の緑のヌルヌルはおどおどとした感じで樹の向こうに隠れている。
「ぼ、僕を…その、た、食べないの…?」
「食べませんけど…」
「魔物は人を襲って、こ、殺すって…」
「殺しませんよ……」
そう言うとヌルヌルはおずおずと樹の向こうから姿を現した。少年は咄嗟に木の棒をしっかりと突き出す。だが魔物はそれを意に介さず、ツタを器用に操ってこちらにふよふよと近づいてきた。1メートルあるかないかの距離だ。
「ひっ…!」
「や、あの、ちがくて…財布…おとしましたよ…」
逃げようとする彼にツタが伸びてくる。ツタで器用につままれた黒い袋を見ると、確かに少年の財布だった。先ほど転んだときに落としたようだ。ただし粘液まみれでぬるぬるになっている。
少年は逡巡した。これは罠かもしれない。財布を取った瞬間ツタが伸びて絡め取られてしまうかもしれない。
「そうやって僕を捕まえて、た、食べるんだろう」
魔物は少々うんざりした顔で、口を大きく開けた。
「肉食じゃないですし…そんなお肉とか噛みきる牙、ないですよ」
そういって口の中を見せてくる。確かにその口内には牙は無く、人間と同じような歯が生えていた。舌は奥から先にかけて緑と紫のグラデーションになっていて、唾液でてらてらと光っている。少しして魔物はぱくんと口を閉じた。改めて見ると人間と変わらない顔立ちをしている。先ほど動いた目玉が胴体で4つほどきょろきょろ動いているのが不気味だが、上半身は人の形だった──緑色だが。腕から先は房状になっていて、その中で紫色の触手がぐちゅぐちゅと音を立てながら大量に蠢いている。時折そこから粘液が糸を引いて垂れた。
「そのぬるぬるで、溶かしたり、とか…」
魔物はまた呆れた顔でこちらを見てきた。
「さっきから結構私の粘液触ってるじゃないですか…指、溶けてます?」
右手を見ると、5本しっかりそろっていた。
 「じゃあ、えっと…その触手で…」
 「もう、いい加減にしてください」
 ぴしゃりと言い放たれ、少年は思わず首を縮める。
 「誰に教わったのか知らないですけど、私は人を食べたりしないですよ。君は名前なんて言うの?」
 「ふ、フリッツ…フリッツ、アルデンホフ…」
 「フリッツくんは人なんか食べないよね?」
 「うん」
 「なのに、あいつは人を食べるっていわれたらどう思う?」
 「…いやだと思う」
なんだか母親に叱られているようで恥ずかしくなってきた。しかも言われてみれば確かに失礼なことをしたような気がして、顔を上げることができない。
「わかればいいんですよ。ほら落ち込まないで、顔上げて」
促されるままに前を向くと、すぐ目の前に魔物の顔があった。フリッツはどきりとしてしまう。魔物が近くにいることへの恐怖とは違うような動揺だった。
「あら、顔汚れてますね…拭いてあげます」
そう言った彼女の腕から紫色の触手が伸びてきて、止める間もなく泥のついたフリッツの頬やおでこを撫でる。ぬるりとした不思議な感覚が顔を這うが、それよりも彼の意識は彼女の口元に向いた。柔らかそうな唇が粘液でつやつやと光っており、その奥では先ほども見た紫色の舌がなまめかしく動いている。それがもっと見たくて、フリッツは彼女に話しかけた。最初の恐がりようは何処へ行ってしまったのだろうか。
「その…な、名前は…」
彼女はにっこりと笑って言う。
「ふふ、ヒトには発音しづらいかもしれないです…リーヴィロァネン、長いのでリヴィでいいですよ」
破裂音と同時に舌が跳ね上がり、ぬらりとした光の反射にまたも少年はどきりとした。送れてやってきた吐息は青リンゴのような香りがして、それを嗅ぐと頭が少しぼうっとした。
「じゃあ仲直りの握手でもしましょうか」
そういってリヴィは房を差し出す。瞳の奥がぎらりと光ったような気がする。心なしか房の中の触手の動きが激しくなった。ぬちゅ、ぐちゅりと粘っこい水音を立てて幾本もの触手が絡み合っている。
「えっと…」
フリッツは右手を少し浮かせて躊躇した。このまま握手をしようとすればこの触手の沼の中に手を沈めることになる。それには常識から来るためらいがあった。しかし一方でこの中に手を突っ込んでかき回してみたいという未知の欲望が首をもたげてきているのも事実だった。
「はい♪」
「あっ…」
彼が躊躇っている内に、リヴィが半ば強引に彼の手を房に引き込んでしまった。
「あっ、あうぅ…」
沈んだ右手は房の中で熱烈な歓迎を受けていた。指の一本一本に生温かい触手が絡みつき、にゅるにゅると上下にしごき立てている。掌も触手の先でくすぐるように撫で回され、びりびりとしたくすぐったさが肩まで響いた。
「はあ…フリッツくんの手、ちっちゃくて温かくてすべすべでかわいい……」
リヴィはうわごとのようにぶつぶつ呟いている。フリッツはといえば右手を襲う未知の快楽に理解が追いつかず、口を半開きにして荒い息を吐いていた。手にはたっぷりと媚毒粘液が塗り込まれ、じんじんとして熱い。毒は急速に全身に回って、温感とは別の本来の効果を発揮し始めていた。徐々に現れだした魔物の本性に、快楽の虜となりつつある彼はもはや危険を感じることすらできない。地面に投げ出されたままの左手が目に入り、思わず口を開いた。
「そ、その…左手も…」
リヴィは一瞬驚いた顔をして、すぐに笑みを浮かべた。心なしか頬が紅潮していて、紫色の舌がぺろりと下唇を舐める。それを見るだけでフリッツの心臓は跳ね上がった。
持ち上げた左手は吸い込まれるように房に包まれた。ぬぷぷ、と粘液が音を立てる。左手の方は触手全体が収縮と弛緩を繰り返していて、まるで手が大きな口で咀嚼されているようだった。柔らかくぬめぬめとした触手で左手を揉みくちゃにされる感覚に喘ぎ声が漏れる。
両手を触手房に飲み込まれてしまったので、二人の腕で輪を作るような形になった。無抵抗の少年を魔物が一方的にいたぶる様はまさしく捕食そのものだ。
「気持ちいいですか?ふふ、お返事もできないかな…?じゃあもっと気持ちよくしてあげましょうか…?」
リヴィが目を細めてこちらを見つめてくる。深緑の瞳がゆらゆらと光った。
「お、お願い…します…」
少年は上手く回らない頭で即答してしまった。瞬間、両手を舐め回す大量の触手がぴたりと動きを止める。少年が訝しむ間もなく異変は起きた。紫色の触手達が一斉に身を伸ばし始めたのだ。彼の白い柔肌を撫で回し粘液を塗り込みながら、幾本もの触手が手首から上腕へと侵略をすすめていく。触手は次々と七分袖の下に潜り込み、粘液で少年の服を濡らした。麻の生地が触手にぴったりと張り付き、服の上からその蠢きを見せつけている。触手はほっそりとした腕のなけなしの筋肉に沿って腕を這い回り、ぬめるその体を彼の肌に擦りつけた。まるで腕が何かの生き物に飲み込まれていくような感覚は少年に強烈な快楽を与える。
「あっ…すごい…っ」
フリッツのうわずった声に、リヴィはうっとりとした様子で目を細める。興奮から粘液の分泌量が増えているのか、だらしなく緩んだ口からよだれがとろりと零れた。
触手はぐちゅぐちゅといやらしい音をたてながら少年を蹂躙していく。服の盛り上がりはあっという間に肩まで達してしまった。毛の一本も生えていない柔らかい腋窩に触手がにゅるりと潜り込むと、少年の喉からは悲鳴のような喘ぎが漏れる。声変わりの済んでいない声はまるで幼い女子のそれで、リヴィの顔は嗜虐心にゆがんだ。彼の弱点を見つけた触手は容赦なくそこを責め立てる。本来ならばまだくすぐったさしか感じないはずの腋は媚毒漬けにされて性感帯に変貌しており、触手に這われるだけで狂おしいほどの快楽を伝えた。ぬめぬめとした触手が腋の隙間を何度も出入りし、まるで本物の交わりのような水音をたてている。不意に少年の腋を犯していた一本の触手がとくとくと脈動し、先端の小さな開口部から白濁した粘液塊を吐きだした。テンタクルが分泌する粘液の原液だ。原液を吐き出しながらも触手はフリッツの腋をなぶり続け、強力な媚薬効果をもつそれを塗り広げている。
「えへへ…あんまり気持ちよくてちょっとイっちゃいました…あら?」
リヴィが達したのとほぼ同時にフリッツも躰をびくびくとのけぞらせ、脚を突っ張った。テントを張っていた股間にはじんわりとした染みができ、やがて精液の青臭い匂いが辺りに漂い始める。
「あらあらあら…触られてもいないのに……うふふ……」
リヴィは心底たまらないという表情をうかべ、器用にツタを使って下着ごとフリッツのズボンを脱がせる。下着の中でこもっていた熱気が外に広がり、強烈な性臭が立ちのぼる。下着の内側には濃く濁った精液と大量のカウパー液がべったりと張り付いていた。リヴィは鼻息も荒く体をかがめ、下着に直接口をつけて体液をしゃぶり取っていく。人外特有の少し長い舌が濡れた布地を這い回った。その鼻先では媚毒のせいか全く衰えない少年の小ぶりな肉棒が脈打っている。先ほどからずっと魅了されていた緑と紫のつややかな舌が蠢くのを目の前で見せつけられ、フリッツはどうしようもなく興奮する。肉棒からは新たなカウパーがとろりと垂れた。
「ふふ、さっきから私の口見てるの気付いてるんですからね?」
「え…あ…その」
気づかれていないと思っていた心の中を言い当てられフリッツは動揺した。リヴィは顔を上げ、赤面する彼をにやにやと見つめながら口を開いてみせる。その中では舌がゆっくりと動き、精液とカウパーと唾液をぐちゅぐちゅとかき混ぜている。
「どうれすか?ちゃんとみてくださいね」
言われなくてもフリッツはその卑猥な光景から目を離すことができない。自分の精液がリヴィの舌を汚しているという事実が彼を興奮させた。やがてリヴィは口を閉じて精液を嚥下し、もう一度口を開いてみせる。紫がかった粘膜と、綺麗になった舌がぬらぬらと光沢を放った。目の前数センチの距離でリヴィの舌がいやらしくうねる。そこからは少し精液の匂いがしたが、興奮と欲望が抵抗を上回った。フリッツは火に誘われる虫のようにリヴィに近づき、その唇に貪りつく。リヴィは少し驚いたようだったがすぐに舌を伸ばして少年の欲望に応えた。口先に差し出されたリヴィの舌にフリッツが夢中で吸い付くと、その長い舌は吸い付かれるがままにぬるりと彼の口内に侵入する。リヴィの舌はなめらかで柔らかく、舐めるとほんのりと甘い味がした。自分の舌を懸命に動かして魔性の舌を味わい尽くそうとするフリッツだが、初めてなせいもあって舌が思ったように動かない。最初はフリッツの拙い舌技を受け入れていたリヴィだったが、やがて我慢できなくなったのか本格的に少年の口内を犯し始めた。最初は彼の舌先をぐるぐると舐め回すだけだったリヴィは次第に吸い付きを強め、あっという間に形勢が逆転してフリッツの舌がリヴィの口内に導かれる形になってしまう。リヴィは再びぐるぐると彼の小さな舌を舐め回しながら、今度は徐々に舌を伸ばしていく。やがてフリッツの舌はリヴィのそれにみっちりと巻き付かれ、まるで舌を膣に犯されたようになってしまった。だがそれで終わりではない。とぐろを巻いた紫の舌はゆっくりと前後に動き始め、じゅぷじゅぷと少年の舌をしごき始めた。
「んんん…っ!」
肌より敏感な粘膜に媚毒をすり込まれ、フリッツの口内はもはや快楽を伝える性器でしかなかった。まるで肉棒をしごかれているかのような快感が彼を襲う。無意識に顔を背けて逃れようとしたが首が動かない。いつの間にか腕を這っていた触手が肩をこえて襟から顔を出し、首回りや耳にまで絡みついていた。腋を犯していた触手はさらに伸び、まだ薄桃色の乳首を舐め回し始めている。腕は相変わらずみっちりと巻き付かれ、脚にはリヴィがのしかかり、もはやフリッツは一切の身動きがとれない状態だった。
耳の細かい凹凸にまで触手が這い回り、耳元でぬちゃぬちゃといやらしい音が響く。やがて耳穴にまで出入りを始め、未知の感覚にフリッツの背筋はぞわぞわと震えた。
「ん、ふうっ…んん…っ」
そうしている内にまた狂おしい脈動が始まった。これだけ全身を犯されてなお触れられていない肉棒はびくびくと苦しそうに震え、吐精の準備をしている。すると手持ちぶさたそうにしていた一本の触手が自身と肉棒の先端をくっつけ合わせる。そのまま先端をぐりぐりと亀頭に押しつけると、なんと次の瞬間開口部が大きく開き亀頭を飲み込んでしまった。
「んん!?んっ!んんん!!」
フリッツの脚が突っ張り、腰が激しく震える。体全体もびくびくと動こうとしているが、リヴィによって無理矢理押さえつけられていた。
ひときわ腰ががくがくと震えたのをきっかけに、フリッツの射精が始まった。触手は細く、亀頭を飲み込んだ部分が亀頭の形に膨らんでいる。リズミカルに収縮と弛緩を繰り返し、より激しい射精を促しているようだ。竿の部分だけ露出した肉棒は大量のカウパーで全体がてらてらしていて、見てわかるほどにどくどくと脈打ちながら触手の中に大量の精液を送り込んでいく。数秒で射精の勢いが落ち着くと、触手に異変が表れた。正確に言えばリヴィ自身の異変である。腰回りの肉がぴくぴくと動き始め、それに伴って全身の触手も脈動を始めた。それは亀頭を包む触手についても例外ではなく、射精後すぐの亀頭を咀嚼するように動いてフリッツを悶絶させる。
「んう…っ!んむ、ん……」
 リヴィは執拗にフリッツの舌を虐めている。テンタクルはその吐息さえも媚毒であり、かれこれ数分間は舌に吸い付かれているフリッツはその吐息ほとんど全てを鼻で吸いこむしかない。次第に頭はぼんやりとしてきて、気持ちいいことしか考えられなくなってくる。声を上げるのも億劫になってきた。だが次の瞬間フリッツを襲ったのは無意識に悲鳴を上げてしまうような強烈な快感だった。
 亀頭だけを咀嚼していた触手が突如にゅるりと竿全体まで覆い、激しく収縮を始めたのだ。余りの快感に肉棒は再び震えだし、幼子のお漏らしのようにとろとろと精を吐きだしてしまう。それだけでなく全身の触手がびくりと大きく震え、一斉に白濁を吐きだしながらぎゅうぎゅうとフリッツを締め上げる。彼の服の隙間という隙間から白い粘液が漏れ出し、たちまち全身を白濁まみれにしてしまった。テンタクルの絶頂は触手単体でのものと本体でのものがあるが、後者の場合操る触手全てが本体に引き摺られて絶頂してしまうのだ。粘度の高い粘液が腋や耳にぶちまけられ、即座に肌に塗り込まれる。フリッツはもはや全身が性感帯になってしまい、少し触手が動いただけで軽く絶頂してしまうほどだった。リヴィはびくびくと体を揺らしながらひときわ強く少年の舌に吸い付いている。その据わった瞳からは理性は感じられず、快楽を貪る魔物の本性をさらけ出していた。
 やがて肉棒がじんじんと熱くなってくる。肉棒を包む触手からは白濁粘液は漏れ出しておらず、それは即ちその媚毒が彼の肉棒の中に流し込まれたことを意味していた。リヴィがようやくフリッツの口から長い舌を引き抜くと、二人の口の間に粘っこい唾液の橋が架かった。フリッツの息は荒いが、それはキスの間呼吸を抑えていたからではないだろう。
 「えへへ…ごめんねぇ…わたしの粘液、元気になるから…気絶もできないかも…」
 とても嬉しそうな顔でリヴィは囁き、ゆっくりと肉棒から触手を引き離していく。触手の内側は細かい凹凸が隙間無く備わっていて、それらが肉棒全体をにゅるにゅると刺激する。経尿道で流し込まれた媚毒原液は早くも効能を発揮し始め、触手から引き抜かれる前に肉棒がふるえ、精液を吐き出し始めた。射精の最中も凹凸は肉棒を擦り上げ、激しすぎる快感にフリッツの目尻からは涙がこぼれ落ちる。終わり際に開口部がカリ首にひっかかり、その刺激で肉棒は激しく脈打ち勢いよく精液が飛び出した。息も絶え絶えなはずなのに射精はなかなか収まらず、フリッツのおなかの辺りをひどく汚す。もっとも彼の周りはリヴィの粘液で池のようになっていて、もはやどれが精液でどれが媚薬なのかはわからなかった。
 「一週間くらいはこのままだと思うから…覚悟してね?」
 精管と睾丸がかあっと熱くなっていく。射精したい、それしか考えられなくなって、耳元で囁かれただけでまた吐精が始まってしまった。じきに全身にまとわりついた触手がまたもや蠢き始め、射精したいと思う間もなく射精してしまうようになった。まるで放尿のように途切れることなく精液が押し上がってきて、小さな肉棒からは考えられないような量がはき出される。精液の間にカウパーも射精のように飛び出してきた。十数秒間休み無く射精が続き、その間気が狂いそうな快感が続いた。胸の辺りの触手は乳首に吸い付き、時折媚毒を乳首に流し込んでくる。媚毒が入ったところをつままれるとじんじんとした快感が全身に走って、射精中にまた連続で射精してしまった。リヴィは遂に肉棒に直接舌を這わせ、はき出された精液を舐め取ったり、飛び出す精液を舌で受け止めたりしている。受け止めきれずに顔にかかってしまった精液を舌で舐め取る様子がたまらなく扇情的で、その光景だけでまた射精してしまった。
 射精が終わるとリヴィの舌が肉棒にぐるりと巻き付いて、上下にしごいて尿道に残った精液を絞りだそうとしてくる。だが案の定ぬめぬめとした感触と官能的なてかりに興奮して射精してしまう。リヴィは呆れたようでいて嬉しそうな顔でまた精液を舐め取っていく。


 リヴィの言ったとおり、そんな射精地獄はまる一週間続いたらしい。途中からは日付感覚が麻痺してわからなくなってしまった。アレンスブルクは街総出の復旧作業の結果4日間ほどで元の姿に戻ったそうだ。一番大変だったのはそこら中にまき散らかされた精液やら愛液やらの掃除で、掃除中に盛り出すカップルが多いため最終的には恋人や伴侶のいる同性同士で掃除のペアを組むはめになったという。いろいろ終わって二人で家に戻ったらサキュバスとインキュバスになった両親は5回戦目に入るところだった。リヴィと事に及ぼうにも壁が薄すぎて聴きたくないものまで聞こえてきてしまい、結局彼女のすみかで暮らすことにした。白濁の池ができた出会いの場所には今、得体の知れない花が咲いている。
18/08/05 03:17更新 / キルシュ

■作者メッセージ
テンタクルさんがエッチすぎて書き切るのが大変でした。

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