復讐の代行者
「我が名はアグラト、偉大なるデーモンである。我を召喚せし者は汝か?」
カビっぽい石造りの古城の地下室にて、この日私は喚び出された。
「そうよ! このエリザベート様に喚ばれた事を光栄に思いなさい!!」
「………」
何だ、私を喚んだのは女だったか。それも年端も行かぬ小娘、いや少女と言うべきか。
儀式は辛うじて行えたようだ。しかし、それはこの小娘が魔道の才ある者なのでなく、脇に大事そうに抱えているあの魔導書の力だ。
「……いや違う」
それと、確かに喚んだの此奴のようだが、“契約者”ではない。
「我を欺くか? 汝には我を喚び出し、契約を望む正当なる理由が無いであろう」
「はぁ!? 話が違うじゃない! この本に書いてある通りに召喚儀式をやったのに!」
想定外の事態らしく、小娘がやかましく喚き散らす。どうやら、悪魔は喚び出せば好きなように使役出来るとでも思っていたのだろう。これほど無知ならば侮蔑よりもかえって憐れみが湧くというものだ。
「私の言うことを聞きなさい! ちゃんと生贄だって用意したのよ!」
そんな小娘の指示で後ろに控えていた従者どもが恐る恐る運んできたのは、ボロ雑巾のようになった少年だった。
「むごいことを……」
私は滅多なことでは動じないが、今度ばかりは怒りを覚えた。生贄と称する少年の身体には大小無数の傷が付いており、それも以前から痛めつけられていたようだからだ。
「この生贄を捧げるわ! だから私と契約しなさい!」
「良かろう」
「!」
今までは不満そうだった小娘の顔だが、私が承諾した途端に満面の笑みを浮かべた。なんと単純な奴だろうか。
「その小僧を私によこすのだ」
「お前達! 下がりなさい!」
少年を受け取りに私が前に進み出ると、手下どもも小娘も慌てて部屋の入り口まで下がった。
「……大丈夫か?」
「………ぅ……」
倒れた少年を抱き上げると、傷と痛みで意識が朦朧としているらしく、まともに受け答えさえ出来ない。
「ほん……と…ぅ…に……あく…ま……」
「そうだ」
首肯するも、少年には恐れは無い。いや、それどころか何故か安堵の感情さえ感じられた。
「こ………れ……で………よ……う…………やく……ボクは………」
「何だ?」
「お……ね………が……い………です………せめて……い…たく……ない……ように……く…る……しく……ない……よう……に…」
「………」
「ボ……クを………………こ……ろ………して……く……だ……さい……」
「!!!!」
少年がたどたどしい言葉で死を哀願するその姿に私は驚愕した。
「何故己の死を願う?」
それが気になり尋ねるも、少年は答えなかった。見れば気を失っている。恐らくは、この言葉も最後の体力を振り絞ったものだったのだろう。
「ちょっと! 生贄は渡したんだから早く契約を……」
「黙れ!!」
「ヒぃッ!!」
喚く糞餓鬼を一喝すると、私は両手に魔力を収束させ、探知魔術でこの少年の“過去”を探った。途端、あまりにも痛ましく、そしておぞましい光景が次々に私の脳裏に流れ込んできた。
「かわいそうに………」
この女はまだ十代半ばにも届かない若さでありながら、人を痛めつけ血が流れることに快感を得る真性の異常者だった。その悪意にさらされた少年は本来ならば色白で華奢な可愛らしい見た目でありながら、今では大きく変わり果てていた。小娘の気の赴くままに身体のあらゆる場所を毎日鞭や棒で殴られ、そこら中がどす黒い色へ変色し、さらには切創や火傷などの深い傷も数多くあった。
そうして、日常的に行われた陰湿な罵倒や凄惨な暴力、さらには女が気まぐれに行なったここ数日の拷問によって、少年はあらゆる希望を奪われ己の生と人の世に絶望してしまった。そして最後には、この地獄のような日々から解放されたいがために己の死を願うようになっていたのだ。
「!」
ここで私は気づいた。あの魔導書が私を喚び出したのはあの小娘でなく、この少年のためなのだと。
「泣いてる………なんで?」
小娘が呆気にとられているが関係ない。私はこの少年が悪魔に助けを求めるほどの苦しみを知って心が痛み、涙を流していた。
「いつまで泣いてるの? いい加減……」
涙を拭い、立ち上がった私を見て怯んだ小娘は後ずさり、また壁にぶつかった。
「待たせたな」
「え、えぇ、ホントよ。さっさと契約を済ませ…」
「いや、汝とは契約出来ぬ」
「はぁぁ!?」
よく表情が変わる奴だ。だが、事情を知らぬ先ほどはまだ可愛げがあったが、知った今では奴に怒りと憎しみしか湧かぬ。
「我が契約を結ぶは“相応しき”者。即ち、真に我を求め、その力を己の望みを叶えるために欲する者だ。
故に汝は我を喚んだ“召喚者”であれども、“契約者”ではない」
「何よそれ!? 私が魔方陣を描いて! 呪文を唱えて! 生贄を用意したんじゃない!」
小娘が口汚く喚き散らすが、手下どもが一気に不満げな顔になったな。大方、大体の準備は奴等がやったのだろう。あの女がやったことといえば、せいぜい魔導書を見ながら呪文を唱えたことと、後は儀式とは何の関係もないこの少年への拷問ぐらいであろうよ。
「だったら誰がアンタと契約するっていうのよッ!!!!」
「此奴だ」
私が倒れる少年を指差すと、女はまた呆気にとられる。
「汝と違い、この者は我の力を真に欲し、必要としている。故に我はこの者と契約し、その願いを叶えることとする」
「ふざけんじゃないわよ!!!!」
そう述べて残忍な笑みを浮かべた私を見て、取り巻き共は萎縮するが、女だけは愚かにも状況に気づいていない。
「私の言うことを聞かないなんて許さないんだから!!」
「だったらどうするというのだ?」
「アンタ達! あの女を殺しなさい!!」
「ハァ……」
溜息が出る……どれだけ愚かなのだ。そんな馬鹿に付き従わねばならぬ此奴等には悪魔の私でも同情してしまう。
「「「………………」」」
主君の娘だから此奴等はしぶしぶこの馬鹿女の悪趣味に従っているが、命を投げ売ってまで守るほど忠誠心があるわけでもない。ましてや、本物の悪魔相手に腰が引けている今、尚更命令など聞きやしない。
「汝は私がどういう存在なのかイマイチ分かっておらぬようだな。よろしい、ならば愚かな汝でも忘れぬよう、その魂に嫌というほど刻んでやるとしよう」
私は全身から魔力を激しく噴き出させた。その勢いは部屋に備えられていた灯りを吹き消し、石造りの部屋を激しく揺らすほどであったが、魔力で照らされるので視界はむしろ明るくなった。
「ただし、講義料は高いぞ? 汝らの命か、あるいは魂かーーその好きな方を選ぶがいい!!」
熱風に煽られ、高熱を帯びた激しい赤光に照らされた私を見た手下どもは悲鳴を上げた。魔術の心得は無くとも、生物としての最低限の生存本能によって格の差を悟ったのだ。
「うっ………うわああああああ!!」
やがて恐れをなした取り巻きの一人が悲鳴を上げると、娘を置いて皆我先に逃げ去った。
「所詮は雇われ者。命を賭してまで悪魔相手に抗する気概も忠誠も無かったか」
「ああああああ!!」
「おっと」
「あがっ!?」
私が力を収めたと同時に、狂乱した小娘が部屋に置いてあったナイフで突いてきたが、私は簡単に躱した。そしてお返しとばかりに足を引っ掛けて転ばせたので、小娘は頭を石壁にぶつけたのだった。
「うぅ〜!」
「馬鹿め。素直に逃げればよかったものを」
くだらんプライドだけは人一倍ある此奴は逃げなかったらしい。もっとも、それは勇気でなく、ただの無謀な愚か者だと自ら証明したにすぎん。
「もっとも、見逃すつもりはないが」
「アアアアアア!!!! 死ねぇ!!」
起き上がった小娘はナイフを滅茶苦茶に振り回してくるが、鍛錬すらしたこともない素人の刃が当たるはずもない。
「ぎゃあっ!!」
別に当たろうが刺さろうが何の問題もないが、これ以上暴れさせるつもりもない私は、今まで殴られたことも無いであろうその顔に右手で平手打ちを見舞った。女とはいえ悪魔の腕力ではたかれた小娘はそのまま何回転もして飛んでいき、壁に叩きつけられて倒れる。
「ふ、うぐぐぅぅぅぅ〜〜………………!」
口の中が切れたらしく血を流しながらも、少女は見下ろす私を睨みつける。ここまでされて折れぬ心というのも立派なのだろうが……正直今の私には嫌悪感しか湧かなかった。
「よくもっ……よくも私の顔を叩いたわねぇっ!!!! 貴族であるこの私に向かってこんなぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
「我は魔物娘だ。したがって人間の爵位だの地位だのは我には関係ない」
典型的な貴族のお嬢様らしい言い草だな。だが、悪魔の私にとって人間の爵位など知ったことではない。
「そして悪魔である我から見ても、これまでの汝は実に見苦しく、醜悪で腐り果てている。しかし、その振る舞いが貴族としての正しい有り様だというのなら、まことに狂った話だ」
「………………」
「けれども、汝にはそれを諭したところで解るまい」
この小娘の愚かさと残忍さは最早手の付けようのないものだ。
「だが、案ずるな小娘よ。悪魔、いや全ての魔物娘がその腐った性根を正すやり方を知っている。
汝が他者を傷つけず、血と痛みと悲鳴と絶望が無くとも生を実感し、心満たされる最良の方法がな」
いや、この小娘だけではない。少年が拷問され続けるのを放置したこの古城の者全てに私は責任を負わせるつもりだった。それは罰であり、また私が少年の代わりに行うささやかな復讐である。
「しかし断っておくが、これは汝のためではない。本来、我にとっては汝如きどうでもいい。
だが、汝のくだらぬ戯れのために傷つけ痛めつけられ、幸福なるはずの生涯を閉ざされ、絶望の内に死ぬ者が出ると知った」
少年の過去を読み取った時、私はその怒り、苦しみ、憎しみ、絶望を知った。だからこそ、その一瞬で決意した。
「故に、我が汝を裁こう。この子のような哀れな犠牲者を二度と生まぬためにもな」
「……っ!」
怒りに満ちた面差しで我を見上げていた小娘だが、ここでようやく己の危機に気づき、顔面が蒼白となった。慌てて立ち上がって入り口を目指し、脱兎の如く逃走するもーー
「!? ギャッ!」
辿り着く前に私が左手をかざし、魔術で扉を締めてしまったことで顔面を強打する。
「うぅぅ……」
鼻血を出して悶絶する娘の前に私は進み出る。
「命は奪わぬ。それは魔物娘としての掟に反するからだ。
しかし、今までこの少年を虐げ続けた報いとして相応の罰は受けてもらおう」
「い……イヤ………」
涙目になり、少女は後ずさる。だが、今更後悔しても遅い。
「イヤ? あの子もそう言い続けたではないか」
「ゆ……ゆるして……」
「ゆるして? あの子は何もしていないにもかかわらず、汝にそう言い続けたではないか。
だが、汝は笑いながらあの子を痛めつけたな。鞭で殴り、破けた皮膚に焼きごてを当てるのがそんなに楽しかったか? 蜂蜜を塗り、木に縛り付けて虫が集って苛まれるのを見るのはそんなに楽しかったか?」
「う……うぅ……」
詰められ、返答に窮する小娘の顔は相変わらず蒼白だった。あの子を拷問していた時の生き生きとした顔とはまるで大違い、完全に真逆であった。
「答えよ。我はこの子にしてきた汝の非道を全て知っている。だからこそ、その感想を聞きたいのだ」
「そ、そ……それを話したら、み、みのがしてくれる!?」
……何故それを話したら見逃すことになるのだ。
「汝が素直に話せば考えてやらんでもない」
「わ、わかったわ」
しかし慌てる様は面白いから、少しからかってやるとするか。すると小娘め、怯えた様子が嘘のように、流暢に語りだす。
奴が語るところによると、ようするに今までやってきたあらゆる暇潰し……虫をバラバラにしたり、家畜を虐待するのに飽き、人間に手を出したらしい。あの子を選んだのは農民の割には容姿が綺麗で、“好み”であったこと、さらには体躯も小さく気も弱く、従順で反撃の心配も無かったからだという。
初めは罵倒したり鞭で叩いたりする程度であったが、やがてそれにも飽き始めたために、数々の残忍な仕打ちに至った。その時の悲鳴や反応を非常に面白く感じ、また性的な興奮も感じていたことも自白した。そして、私が今ここに現れなければ、目をくり抜いたり、手足を切断したりといった、さらなる非人道的な拷問を死ぬまで行うつもりであったようだ。この女にとって彼は好みであるとはいえ、単なる“消耗品”でしかなく、死んだら死んだで代わりを探すつもりであったらしい。
しかし、つい昨日にこの地下室で魔導書を発見し、その予定は無くなった。早速、退屈しのぎに悪魔を喚ぶという馬鹿げた遊びを思いついたからだ。
そして「悪魔は助力と引き換えに生贄を求める」という知識を辛うじて知っていたので、壊すまで遊ぶつもりの玩具であった彼を急遽転用したというわけだ。
「そうか……」
全てを告白させ、私はーー
「やはり許せぬな」
当たり前だがやはり此奴を許さなかった。
「ちょっ、ちょっと! 話がちが」
「“考えてやらんでもない”と申したはず。考えた結果、汝は見逃すに能わぬという結論に至ったまでだ」
野放しにするつもりは毛頭ない。此奴が生きているだけで、それだけその悪意にさらされる犠牲者が増えるだけだ。だからこそ、今この場で私が裁こう。
「我は汝が許せぬ。己の残忍さの赴くままに他者を痛めつけるのを娯楽とする汝のその性根がな。
しかしだ、我にはそれ以上に許せぬのがーー」
だが、それ以上にーー
「汝がこの少年を害したことだ」
「え…」
私が何故この少年にそこまで肩入れするのか分からないらしい。成程、それも当然だな。所詮此奴にとってこの子は玩具、それも替えの利く消耗品でしかないものな。
「この少年は我の伴侶となるべき者なのだ」
同情から述べたのではない。私はこの子に出会った瞬間、直感したのだ。その人格も過去も知らぬ時から、魔物娘としての本能が、「この子は我が夫となるべき者」だと。
恐らく、今奴の手放している魔導書が私を喚び寄せたのも、私とこの子が結ばれると見越してのものだろう。そして、私にも異存は無かった。
「汝は我の夫を傷つけた。その罪深さを知れ」
意味は分からないが、それでも危機は感じたらしい。女は後ずさるが、扉は私の力で閉ざされたままだ。
「だが案ずるな、命までは取らぬ。ただ真人間……いやその言い方はおかしいな。“善良な魔物”となるだけだ」
「ま、魔物!? 何言ってるのよアンタ!?」
やはり私の言うことが理解出来ず、喚き散らす小娘。それも当然だろうが、運が悪かったな。よりによって、対面してるのが魔物娘の中でも過激派であるデーモンなのだから。
「当然であろう? 汝の性根は人間のままでは腐り落ちていくのみ。そして腐敗物は周りの物まで腐らせてしまう。それを防ぐための処置だ」
「……!」
いくら気が強かろうと、最早反抗する気もないか。逃げ場もない中、尻餅をついた少女は私を見上げることしか出来ない。
「そして汝は矜持というものに関しても完全に履き違えている。魔物娘にするにしても、我と同じデーモン、いやサキュバスでさえもったいない」
「!? な、何よそれは!?」
私の右掌に溢れ出る深緑色のゲル状の物体を見た少女は戦慄する。
「貴族らしからぬ腐った性根の汝に我が相応しいと思った種族の一部分だ。これを飲めば、汝も生まれ変われるだろう」
その狂った性根を矯正するため、私はこれを用意した。これを飲めば、残忍な性格も穏やかで平和的なものとなる。
……もっとも、無駄にプライドが高い此奴にはもっとも堪える種族の魔物娘に変化するということでもあるがな。だが、腐った性根の者にはもっとも相応しい末路よ。
「アガ!?ーーうぐぅっ!!」
女に反抗の機会を与えず、私は魔術で無理矢理口を開かせ、口にねじ込んで飲み込ませた。
「う、ウゲぇぇぇぇぇぇ!!!! な、何よこれはァ!!? ひどい味と臭いだわ!!!!」
おもいきりむせ、まるで汚泥か毒でも飲んだような反応を見せる小娘。だが嚥下したそれは吐き出そうにも食道に張り付き、そのまま胃に流れ込む。
「な、何!? 湿ってる…!?」
効果はすぐに現れた。小娘の服の袖が湿りだし、さらには滝のような汗が全身から流れ出す。
「えっ!? 何なのこれはぁぁぁぁッッ!?」
だが、汗は全身の水分を枯渇させん勢いで流れ出すと共に、女の体も液状化し、硬さを失い始める。やがて足は立つ力を失うと共に、蛸の足の如く関節も硬さも無くなり、さらには形まで失い始める。
「ややややめてよ!!!! わわ私をももとにもどしし……」
全身が段々と深緑色に染まり始めると共にブヨブヨに膨らみ始め、やがて皮膚も液体へと変化しつつあった。
「あ………あがが……」
そうして皮膚・肉・内蔵・骨は混ざり合い、区別が無くなっていく。そうして最後には娘が悪臭を放つ巨大な液状物へと変化してしまった。
「ナ……ナニコレ……ワタシ……ハ」
「バブルスライムだ。腐った性根の汝の末路に相応しい姿であろう?」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
発狂し、大声で叫ぶ小娘。ここまでくれば知能も徐々に溶解し、良くも悪くも穏やかになるはずなのだが、膨れ上がったプライドはまだ残っているようだ。もっとも、それもいつまで保つかは分からないがな。
「これでもう二度と悪さは出来ぬだろう」
本音を言うなら、これでも罰としては“大甘”だ。魔物娘にして魔王軍の戦士としての手前、人間を殺すことは出来ないが………本当はありとあらゆる苦痛を味わわせてから殺してやりたい。好いた男を嬲られた私の怒りはそれほど深かったのだ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「悔いても遅い………が、嘆くことはない。すぐにこの城の者も皆、汝の“同胞”となろう。
それに、その姿も悪くはなかろうよ。少なくとも、汝の生涯がこれ以上血と悪意に染まることはない。
何より、我が夫を得たように、悪臭に満ちたその姿でも好いてくれる者はおるだろう。その者と愛を交わせば、今までの己がどれだけ邪悪であったか分かるであろうよ」
此奴を魔物化させただけで終わりではない。私はデーモンーー主君デルエラとその母君の理想を実現させるためにも、今すぐこの地を魔界に変えよう。
初めこそ人々は戸惑うだろうが、何も恐れることはない。そこは苦痛も何もない、愛と快楽に満ちた理想郷なのだから。
「さて、陰鬱な古城は私も好きではない。それに同じ“血湧き肉躍る”といっても、やはり悪意と血に満ちたものより、魔物娘流の明るく、そして淫靡なものの方が良いというものだな」
それを確信した私は小娘にはもういらぬであろう魔導書と倒れた少年を拾うと、残った仕事を片付けるべく階段を上がっていった。
「う…」
気がついた時、ボクは何故かお風呂に入っていました。
「あら、気がついた?」
「!?」
お風呂に入っているので、当然ハダカです。そして、何故か青い肌でツノを生やしたキレイなおねえさんが、ボクの体を後ろで抱きしめながら一緒にお風呂に入っていたのです。
「!?!?!?!?」
「あらら、混乱しているみたいね」
混乱したボクですが、おねえさんは分かりやすく説明をしてくれました。
ボクはもうお嬢様に叩かれないこと、この城と土地は魔王軍の物になったこと、そしておねえさんとボクが“けいやく”をしなければいけないことです。でも聞いて一番うれしかったことは、ボクがもう痛めつけられることも、だから死ぬ必要もないということでした。
「傷も治しておいたから心配ないわ。元通りの綺麗な体よ」
「うっ、うっ、うぅっ………!」
「……良いのよ、好きなだけ泣きなさい。とても辛かったのだから、誰も責めやしないわ」
それを知った途端、ホッとしたボクは何故か涙が止まりませんでした。そんなボクにおねえさんは優しく微笑み、抱きしめてくれたのです。するとボクは我慢出来なくなり、大声で泣いてしまいました。
何十分も泣いていたボクをずっと抱きしめていてくれたおねえさん。そんなおねえさんがにっこりと微笑んでこう言ったのです。
「デーモンを喚んだ人間はそのデーモンに全てを捧げなければならないのよ」
そう言われてボクは怖くなり、色々とたずねました。
「貴方が私に全てを捧げることで、代わりに貴方は永遠の平穏と快楽を得るのよ」
結局よく分かりませんでした。
「ようするに、毎日好きなだけ私が貴方をキモチよくしてあげるってコト♥」
「わっ!?」
「こんな風にね♥」
首をかしげるボクでしたが、おねえさんはそれを教えるかのように、何故かボクのオチンチンを両手で触り、いじり始めたのです。
「〜〜っ……」
「フフ、キモチイイかしら?」
ちょっとイジワルに笑いながら、おねえさんはボクのオチンチンを優しく扱くことに驚いたボクですが、やめさせることは出来ませんでした。おねえさんの言うように気持ち良かったこともそうですが……何故かおねえさんにそうされることにイヤな気分がしなかったのです。
むしろ背中がゾクゾクするというか、イケないことをしているはずなのにそれを続けたいという気持ちがボクの中にその時生まれてしまったのです。
「はい………」
「そうでしょう? ウフフ♥ 私と契約すれば毎日愉しくて飽きないわよぉ♥」
耳元でそっと囁いたおねえさんは、ボクの左耳を甘噛みしながら指をくねくねと動かし、オチンチンを扱き続けました。
「ふっ…ふあっ……」
「あらあら、女の子みたいな声出しちゃって♥ 我慢しないで射精しちゃっていいのよ?」
段々と下半身も頭も何かビリビリとした、変な感じながらも物凄い気持ち良さ。そんな感覚にボクが戸惑う中、おねえさんは愉しそうに笑いながら、上下する手を速めます。
「あっ………ああああぁっ!!」
「アハッ♪」
そうして、その時はすぐに訪れました。ビリビリした快感がとても強くなり、目の前が真っ白になったかと思うと、大きくなっていたオチンチンの先から、何か白いものが勢い良く噴き出したのです。
あまりの勢いにそのヌルヌルしたものは水面から飛び出し、一部はおねえさんの顔にかかりました。
「ご、ごめんなさい……」
「……♥」
おねえさんの顔がボクの出した白い物で汚れてしまったので、後ろを向いたボクは謝りましたが、おねえさんは気にしていないようでした。
「いいのよ………だって、これはおねえさんの大好物だもの♥」
指で白いものを拭ってペロリと嘗めたおねえさんはむしろ嬉しそうというか、何故かさっき以上に頬を染めたエッチな表情をしていたのです。
「ん〜〜、匂いも味も甘い♥ それに味が濃くてまろやかなのに後味は爽やかだわ♥ 本当に私好みの味♥」
「………………」
両手で顔を挟んだおねえさんは嬉しそうに腰をくねらせています。悪いことをしたと思いましたが、喜んでくれたから良かったのかな?
「やっぱりそうだわ♥ 貴方は私と契約すべき者ね♥」
「わっ!」
喜んだのも束の間、おねえさんはいきなりボクを持ち上げて真正面を向かせました。
「問おう、汝の名は?」
「ナ……ナインです……」
「ではナインよ、この大悪魔アグラト・バト・マフラトの夫となり、永遠の愛を誓うか?」
「え……」
「我はいついかなる時も汝を支えよう。我が今後汝を餓えさせることは無く、その身と心を常に無垢なる愛と夢の如き幸福で満たし、さらにはあらゆる病魔・災厄・外敵から汝を護り通そう」
こんな時に急に言われても何が何やら………それにまるで結婚の誓いです。おねえさんは先ほどとうって変わって真剣な表情ですし、言葉も昔の人みたいで何かいかめしい感じです。
そもそもボク達は出会って一時間も経っていません。いきなり夫になってくれって言われても困りますし、そもそもボクはまだ子どもだし……
「………!」
おねえさんはボクが何も答えないのを見て、急に不機嫌そうな顔になりました。
「うっ!」
そしてボクの首をいきなり右手で掴んだのです。凄い力で、弱っちいボクにはとても振り払えませんでした。
「ボ ク は ア グら トさ ま…と ケイ や くを シ ま…す」
(ッ!?)
さらにはおねえさんがボクの声帯を親指でゴリゴリといじり、無理矢理声を出させられてしまったのです。
「では、契約書を作りましょうね♥」
おねえさんは勝手に話を進めていきます。でもこの時は不思議と悪い気もしなかったのです。
もうボクはこのお城にいることは出来ません。だったら、このおねえさんについていこうかと思ってしまったのです。
城の皆はボクが虐められている間、自分も同じ目にあうのを恐れて誰も庇ってくれませんでした。でも、このおねえさんだけはボクを助けて、この地獄のような日々から解放してくれました。だからそんな恩人の言葉をボクは信じる気になったのだと思います。
「でも、そのためにはペンとインクがいるのよ♥」
興奮のあまり息を荒げるおねえさんは、またボクのオチンチンを手で掴みました。
「まずは“貴方のペン”に“私のインク壺”でインクを付けないとね♥」
この時のおねえさんの顔はとてもいやらしく、それでいて凄く綺麗でした。そしてボクがそう思ったのが分かったのか、また嬉しそうに笑ったのです。
「“男の子”ならやり方は分かるでしょ? 早く挿れて…♥」
おねえさんはボクの首から手を放し、代わりに両手で腰を掴み、自分の腰にくっつけました。おねえさんは女の人なのでオチンチンはありません。
「………!」
そこにはただ割れ目というか、“穴”がありました。ボクも見るのは初めてでした。
ですが、何故かボクは『知って』いました。そして、今どうすれば良いのかも。
普段よりも何倍も大きく硬くなったボクの分身。物欲しそうに待ち構えるおねえさんの“穴”に、ボクはそれを突き挿れたのです。お湯の中だからか、それは思ったよりもすんなりと入りました。
「っ!!ーーんぅぅうッ!!!!」
おねえさんはその瞬間、嬉しそうにも苦しそうにも聞こえる声を上げました。ボクのオチンチンの先っぽがおねえさんの割れ目の中を進み、何かを突き破る感触がありましたが、それが痛かったのかもしれません。
「だ……大丈夫ですか……?」
おねえさんは痛いのか、体を小刻みに震わせているので、心配になったボクはおねえさんに尋ねました。
「えぇ、大丈夫よ…♥」
すると、ホッとしたような顔でおねえさんは応えました。見た感じ、痛みは収まってきているといった様子でした。
「私も初めてなの……でもね、とっても嬉しいわ。貴方が“大人”になったように、私も今日ようやく“一人前の女”になれたのだから…♥」
おねえさんはボクを優しく抱き締めると、お互いの腰を密着させました。すると中がまるで別の生き物のようにグネグネと動き、ボクは今まで感じたことも無いぐらいの気持ち良さを感じたのです。
「!? うっ、うぁ、ぁ、あ、あっ………」
おねえさんの中はボクのオチンチンに吸い付き、捻りあげ、扱き上げられます。そんな風に激しく動いていますが、それがたまらないぐらい気持ち良過ぎて、ボクは変な声が出てしまいました。
「んっ…! 上手よぉ、ナイン君♥」
その内いつの間にかボクは激しく腰を動かしていました。でも、動く度におねえさんも気持ち良さそうに声を漏らしています。
(こうした方がキモチイイのかな……)
そこで分かったのですが、どうやらおねえさんは小刻みに腰を動かすよりは乱暴に動かされる方が好きなようです。だからボクは風呂のお湯が激しく揺れるぐらい腰を動かし、おねえさんの股に叩きつけるようにしました。
「んぃぎッ……!!」
すると小声で気持ち良さそうに喘いでいたおねえさんは目を見開き、凄い声を出しました。そして腰がガクガク震えて体をのけ反らせたのです。
ボクはそれを見て、やっぱりこのやり方が一番良いと思い、またボクもこっちの方が気持ち良いので遠慮なくやりました。
「あっ、あっ、あっ、あっ♥」
「んっ、んっ、んぅぅう♥ ダメよ、ダメ! そんなに激しく突かないでぇっ!!」
さっきよりもずっとキモチイイです。オチンチンを突き挿れる度にまた変な声が出てしまいます。それはおねえさんも同じみたいで、激しくおっぱいを揺らしながら甘い声で叫んでいます。
じゃばじゃばとお湯をかき混ぜながら、ボク達は交わり続けました。頭がビリビリして焼ききれそうな快感が続くそれはとても長い時間に思えましたが、実際にはとても短かったようです。
「うぅぅっ……!」
オチンチンが爆発しそうな快感が最高になったところでボクはくぐもった声を出し、おねえさんの“インク壺”の中に“白いインク”を出しました。一度目よりもさらに勢いが強く、数倍以上の量でした。
「〜〜〜〜〜〜ッッ♥♥」
おねえさんはトロけた表情でボクを見つめながら、中を締め付けてきました。恐らく、インク壺からインクを漏らさないための蓋の代わりをしたのでしょう。それでもお湯の中にはボクのインク、そしておねえさんから出た透明な液と血が混ざって濁っていました。
「………これじゃダメよ……」
「……え?」
「契約書に書く内容は多いの………こんな量じゃ足りないわ……♥」
舌舐めずりするおねえさんの顔はとてもエッチでした。それに興奮したボクは再びオチンチンが硬くなってしまいました。
「まだインク壺には余裕があるわ………ねぇ、もっとシましょ♥」
ボクもまたシたいと思いました。おねえさんの中はグチョグチョで、ミミズみたいなヒダがオチンチンに絡んできてとってもキモチイイのです。
「私の心も身体ももう貴方の物……♥ だからおっぱいでもお尻の穴でも何でも好きに使ってイイのよ♥」
おねえさんはそう言ってボクにキスすると口の中に舌を入れて、ボクの舌に絡めてきました。
「♥♥」
下品な音をさせながらボク達はキスしつつ、空いた両手でおねえさんのとっても大きなおっぱいを揉みしだきました。
目の色が黒かろうが、肌の色が青かろうが、ツノとシッポが生えてようが関係ありません。おねえさんの体があまりにもエッチすぎて、何かをする度に気持ち良くなってしまいます。
おねえさんのおっぱいを吸う度、腰を動かす度におねえさんはエッチな大声を上げます。特に下っ腹でおねえさんの豆?が擦れるのがキモチイイようです。
お湯が跳ねて段々と量が減っていきますが、逆にボク達の交わりは激しくなるばかりです。ヒダで扱かれる度にボクのオチンチンに雷みたいなむず痒いビリビリした快感が走り、おねえさんの方もボクのチンチンに中を擦られてキモチイイみたいでした。
「うぅっ!!」
「アァン♥♥」
おっぱいを吸いながら三度目の汁がおねえさんの中に注がれます。でも、まだインク壺はいっぱいではありません。それを分かっているボク達は腰の動きを止めませんでした。
その後一体いつまで続けたのかは覚えていませんが、終わる頃にはお日様が昇っていたと思います。でも、おねえさんはお腹がパンパンになるまで注がれてとっても満足そうだったのはよく覚えています。
「あら、もう行くの?」
魔物娘とインキュバスの巣窟と化した古城の地下室で拾った魔導書は私とあの子が結ばれたのを見届け、自身の役目が済んだと見て、何処かへと姿を消した。
「そうね………もう私達には必要ない」
もうあの子を脅かす者は誰もいない。私が伴侶となり、彼の人生をこれから共に過ごし、共に支え合うからだ。だから、もうあの魔導書は必要ない。
救いを求める者は世界中に大勢いる。そして、あの魔導書はその手助けをするために存在している。今の私達のようにその者と魔物娘を引き合わせ、その苦しみから解き放つために。
「貴方が次に出会う者達にどうか幸あらんことを」
そう、あの子と出会えた今の私のように………
カビっぽい石造りの古城の地下室にて、この日私は喚び出された。
「そうよ! このエリザベート様に喚ばれた事を光栄に思いなさい!!」
「………」
何だ、私を喚んだのは女だったか。それも年端も行かぬ小娘、いや少女と言うべきか。
儀式は辛うじて行えたようだ。しかし、それはこの小娘が魔道の才ある者なのでなく、脇に大事そうに抱えているあの魔導書の力だ。
「……いや違う」
それと、確かに喚んだの此奴のようだが、“契約者”ではない。
「我を欺くか? 汝には我を喚び出し、契約を望む正当なる理由が無いであろう」
「はぁ!? 話が違うじゃない! この本に書いてある通りに召喚儀式をやったのに!」
想定外の事態らしく、小娘がやかましく喚き散らす。どうやら、悪魔は喚び出せば好きなように使役出来るとでも思っていたのだろう。これほど無知ならば侮蔑よりもかえって憐れみが湧くというものだ。
「私の言うことを聞きなさい! ちゃんと生贄だって用意したのよ!」
そんな小娘の指示で後ろに控えていた従者どもが恐る恐る運んできたのは、ボロ雑巾のようになった少年だった。
「むごいことを……」
私は滅多なことでは動じないが、今度ばかりは怒りを覚えた。生贄と称する少年の身体には大小無数の傷が付いており、それも以前から痛めつけられていたようだからだ。
「この生贄を捧げるわ! だから私と契約しなさい!」
「良かろう」
「!」
今までは不満そうだった小娘の顔だが、私が承諾した途端に満面の笑みを浮かべた。なんと単純な奴だろうか。
「その小僧を私によこすのだ」
「お前達! 下がりなさい!」
少年を受け取りに私が前に進み出ると、手下どもも小娘も慌てて部屋の入り口まで下がった。
「……大丈夫か?」
「………ぅ……」
倒れた少年を抱き上げると、傷と痛みで意識が朦朧としているらしく、まともに受け答えさえ出来ない。
「ほん……と…ぅ…に……あく…ま……」
「そうだ」
首肯するも、少年には恐れは無い。いや、それどころか何故か安堵の感情さえ感じられた。
「こ………れ……で………よ……う…………やく……ボクは………」
「何だ?」
「お……ね………が……い………です………せめて……い…たく……ない……ように……く…る……しく……ない……よう……に…」
「………」
「ボ……クを………………こ……ろ………して……く……だ……さい……」
「!!!!」
少年がたどたどしい言葉で死を哀願するその姿に私は驚愕した。
「何故己の死を願う?」
それが気になり尋ねるも、少年は答えなかった。見れば気を失っている。恐らくは、この言葉も最後の体力を振り絞ったものだったのだろう。
「ちょっと! 生贄は渡したんだから早く契約を……」
「黙れ!!」
「ヒぃッ!!」
喚く糞餓鬼を一喝すると、私は両手に魔力を収束させ、探知魔術でこの少年の“過去”を探った。途端、あまりにも痛ましく、そしておぞましい光景が次々に私の脳裏に流れ込んできた。
「かわいそうに………」
この女はまだ十代半ばにも届かない若さでありながら、人を痛めつけ血が流れることに快感を得る真性の異常者だった。その悪意にさらされた少年は本来ならば色白で華奢な可愛らしい見た目でありながら、今では大きく変わり果てていた。小娘の気の赴くままに身体のあらゆる場所を毎日鞭や棒で殴られ、そこら中がどす黒い色へ変色し、さらには切創や火傷などの深い傷も数多くあった。
そうして、日常的に行われた陰湿な罵倒や凄惨な暴力、さらには女が気まぐれに行なったここ数日の拷問によって、少年はあらゆる希望を奪われ己の生と人の世に絶望してしまった。そして最後には、この地獄のような日々から解放されたいがために己の死を願うようになっていたのだ。
「!」
ここで私は気づいた。あの魔導書が私を喚び出したのはあの小娘でなく、この少年のためなのだと。
「泣いてる………なんで?」
小娘が呆気にとられているが関係ない。私はこの少年が悪魔に助けを求めるほどの苦しみを知って心が痛み、涙を流していた。
「いつまで泣いてるの? いい加減……」
涙を拭い、立ち上がった私を見て怯んだ小娘は後ずさり、また壁にぶつかった。
「待たせたな」
「え、えぇ、ホントよ。さっさと契約を済ませ…」
「いや、汝とは契約出来ぬ」
「はぁぁ!?」
よく表情が変わる奴だ。だが、事情を知らぬ先ほどはまだ可愛げがあったが、知った今では奴に怒りと憎しみしか湧かぬ。
「我が契約を結ぶは“相応しき”者。即ち、真に我を求め、その力を己の望みを叶えるために欲する者だ。
故に汝は我を喚んだ“召喚者”であれども、“契約者”ではない」
「何よそれ!? 私が魔方陣を描いて! 呪文を唱えて! 生贄を用意したんじゃない!」
小娘が口汚く喚き散らすが、手下どもが一気に不満げな顔になったな。大方、大体の準備は奴等がやったのだろう。あの女がやったことといえば、せいぜい魔導書を見ながら呪文を唱えたことと、後は儀式とは何の関係もないこの少年への拷問ぐらいであろうよ。
「だったら誰がアンタと契約するっていうのよッ!!!!」
「此奴だ」
私が倒れる少年を指差すと、女はまた呆気にとられる。
「汝と違い、この者は我の力を真に欲し、必要としている。故に我はこの者と契約し、その願いを叶えることとする」
「ふざけんじゃないわよ!!!!」
そう述べて残忍な笑みを浮かべた私を見て、取り巻き共は萎縮するが、女だけは愚かにも状況に気づいていない。
「私の言うことを聞かないなんて許さないんだから!!」
「だったらどうするというのだ?」
「アンタ達! あの女を殺しなさい!!」
「ハァ……」
溜息が出る……どれだけ愚かなのだ。そんな馬鹿に付き従わねばならぬ此奴等には悪魔の私でも同情してしまう。
「「「………………」」」
主君の娘だから此奴等はしぶしぶこの馬鹿女の悪趣味に従っているが、命を投げ売ってまで守るほど忠誠心があるわけでもない。ましてや、本物の悪魔相手に腰が引けている今、尚更命令など聞きやしない。
「汝は私がどういう存在なのかイマイチ分かっておらぬようだな。よろしい、ならば愚かな汝でも忘れぬよう、その魂に嫌というほど刻んでやるとしよう」
私は全身から魔力を激しく噴き出させた。その勢いは部屋に備えられていた灯りを吹き消し、石造りの部屋を激しく揺らすほどであったが、魔力で照らされるので視界はむしろ明るくなった。
「ただし、講義料は高いぞ? 汝らの命か、あるいは魂かーーその好きな方を選ぶがいい!!」
熱風に煽られ、高熱を帯びた激しい赤光に照らされた私を見た手下どもは悲鳴を上げた。魔術の心得は無くとも、生物としての最低限の生存本能によって格の差を悟ったのだ。
「うっ………うわああああああ!!」
やがて恐れをなした取り巻きの一人が悲鳴を上げると、娘を置いて皆我先に逃げ去った。
「所詮は雇われ者。命を賭してまで悪魔相手に抗する気概も忠誠も無かったか」
「ああああああ!!」
「おっと」
「あがっ!?」
私が力を収めたと同時に、狂乱した小娘が部屋に置いてあったナイフで突いてきたが、私は簡単に躱した。そしてお返しとばかりに足を引っ掛けて転ばせたので、小娘は頭を石壁にぶつけたのだった。
「うぅ〜!」
「馬鹿め。素直に逃げればよかったものを」
くだらんプライドだけは人一倍ある此奴は逃げなかったらしい。もっとも、それは勇気でなく、ただの無謀な愚か者だと自ら証明したにすぎん。
「もっとも、見逃すつもりはないが」
「アアアアアア!!!! 死ねぇ!!」
起き上がった小娘はナイフを滅茶苦茶に振り回してくるが、鍛錬すらしたこともない素人の刃が当たるはずもない。
「ぎゃあっ!!」
別に当たろうが刺さろうが何の問題もないが、これ以上暴れさせるつもりもない私は、今まで殴られたことも無いであろうその顔に右手で平手打ちを見舞った。女とはいえ悪魔の腕力ではたかれた小娘はそのまま何回転もして飛んでいき、壁に叩きつけられて倒れる。
「ふ、うぐぐぅぅぅぅ〜〜………………!」
口の中が切れたらしく血を流しながらも、少女は見下ろす私を睨みつける。ここまでされて折れぬ心というのも立派なのだろうが……正直今の私には嫌悪感しか湧かなかった。
「よくもっ……よくも私の顔を叩いたわねぇっ!!!! 貴族であるこの私に向かってこんなぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
「我は魔物娘だ。したがって人間の爵位だの地位だのは我には関係ない」
典型的な貴族のお嬢様らしい言い草だな。だが、悪魔の私にとって人間の爵位など知ったことではない。
「そして悪魔である我から見ても、これまでの汝は実に見苦しく、醜悪で腐り果てている。しかし、その振る舞いが貴族としての正しい有り様だというのなら、まことに狂った話だ」
「………………」
「けれども、汝にはそれを諭したところで解るまい」
この小娘の愚かさと残忍さは最早手の付けようのないものだ。
「だが、案ずるな小娘よ。悪魔、いや全ての魔物娘がその腐った性根を正すやり方を知っている。
汝が他者を傷つけず、血と痛みと悲鳴と絶望が無くとも生を実感し、心満たされる最良の方法がな」
いや、この小娘だけではない。少年が拷問され続けるのを放置したこの古城の者全てに私は責任を負わせるつもりだった。それは罰であり、また私が少年の代わりに行うささやかな復讐である。
「しかし断っておくが、これは汝のためではない。本来、我にとっては汝如きどうでもいい。
だが、汝のくだらぬ戯れのために傷つけ痛めつけられ、幸福なるはずの生涯を閉ざされ、絶望の内に死ぬ者が出ると知った」
少年の過去を読み取った時、私はその怒り、苦しみ、憎しみ、絶望を知った。だからこそ、その一瞬で決意した。
「故に、我が汝を裁こう。この子のような哀れな犠牲者を二度と生まぬためにもな」
「……っ!」
怒りに満ちた面差しで我を見上げていた小娘だが、ここでようやく己の危機に気づき、顔面が蒼白となった。慌てて立ち上がって入り口を目指し、脱兎の如く逃走するもーー
「!? ギャッ!」
辿り着く前に私が左手をかざし、魔術で扉を締めてしまったことで顔面を強打する。
「うぅぅ……」
鼻血を出して悶絶する娘の前に私は進み出る。
「命は奪わぬ。それは魔物娘としての掟に反するからだ。
しかし、今までこの少年を虐げ続けた報いとして相応の罰は受けてもらおう」
「い……イヤ………」
涙目になり、少女は後ずさる。だが、今更後悔しても遅い。
「イヤ? あの子もそう言い続けたではないか」
「ゆ……ゆるして……」
「ゆるして? あの子は何もしていないにもかかわらず、汝にそう言い続けたではないか。
だが、汝は笑いながらあの子を痛めつけたな。鞭で殴り、破けた皮膚に焼きごてを当てるのがそんなに楽しかったか? 蜂蜜を塗り、木に縛り付けて虫が集って苛まれるのを見るのはそんなに楽しかったか?」
「う……うぅ……」
詰められ、返答に窮する小娘の顔は相変わらず蒼白だった。あの子を拷問していた時の生き生きとした顔とはまるで大違い、完全に真逆であった。
「答えよ。我はこの子にしてきた汝の非道を全て知っている。だからこそ、その感想を聞きたいのだ」
「そ、そ……それを話したら、み、みのがしてくれる!?」
……何故それを話したら見逃すことになるのだ。
「汝が素直に話せば考えてやらんでもない」
「わ、わかったわ」
しかし慌てる様は面白いから、少しからかってやるとするか。すると小娘め、怯えた様子が嘘のように、流暢に語りだす。
奴が語るところによると、ようするに今までやってきたあらゆる暇潰し……虫をバラバラにしたり、家畜を虐待するのに飽き、人間に手を出したらしい。あの子を選んだのは農民の割には容姿が綺麗で、“好み”であったこと、さらには体躯も小さく気も弱く、従順で反撃の心配も無かったからだという。
初めは罵倒したり鞭で叩いたりする程度であったが、やがてそれにも飽き始めたために、数々の残忍な仕打ちに至った。その時の悲鳴や反応を非常に面白く感じ、また性的な興奮も感じていたことも自白した。そして、私が今ここに現れなければ、目をくり抜いたり、手足を切断したりといった、さらなる非人道的な拷問を死ぬまで行うつもりであったようだ。この女にとって彼は好みであるとはいえ、単なる“消耗品”でしかなく、死んだら死んだで代わりを探すつもりであったらしい。
しかし、つい昨日にこの地下室で魔導書を発見し、その予定は無くなった。早速、退屈しのぎに悪魔を喚ぶという馬鹿げた遊びを思いついたからだ。
そして「悪魔は助力と引き換えに生贄を求める」という知識を辛うじて知っていたので、壊すまで遊ぶつもりの玩具であった彼を急遽転用したというわけだ。
「そうか……」
全てを告白させ、私はーー
「やはり許せぬな」
当たり前だがやはり此奴を許さなかった。
「ちょっ、ちょっと! 話がちが」
「“考えてやらんでもない”と申したはず。考えた結果、汝は見逃すに能わぬという結論に至ったまでだ」
野放しにするつもりは毛頭ない。此奴が生きているだけで、それだけその悪意にさらされる犠牲者が増えるだけだ。だからこそ、今この場で私が裁こう。
「我は汝が許せぬ。己の残忍さの赴くままに他者を痛めつけるのを娯楽とする汝のその性根がな。
しかしだ、我にはそれ以上に許せぬのがーー」
だが、それ以上にーー
「汝がこの少年を害したことだ」
「え…」
私が何故この少年にそこまで肩入れするのか分からないらしい。成程、それも当然だな。所詮此奴にとってこの子は玩具、それも替えの利く消耗品でしかないものな。
「この少年は我の伴侶となるべき者なのだ」
同情から述べたのではない。私はこの子に出会った瞬間、直感したのだ。その人格も過去も知らぬ時から、魔物娘としての本能が、「この子は我が夫となるべき者」だと。
恐らく、今奴の手放している魔導書が私を喚び寄せたのも、私とこの子が結ばれると見越してのものだろう。そして、私にも異存は無かった。
「汝は我の夫を傷つけた。その罪深さを知れ」
意味は分からないが、それでも危機は感じたらしい。女は後ずさるが、扉は私の力で閉ざされたままだ。
「だが案ずるな、命までは取らぬ。ただ真人間……いやその言い方はおかしいな。“善良な魔物”となるだけだ」
「ま、魔物!? 何言ってるのよアンタ!?」
やはり私の言うことが理解出来ず、喚き散らす小娘。それも当然だろうが、運が悪かったな。よりによって、対面してるのが魔物娘の中でも過激派であるデーモンなのだから。
「当然であろう? 汝の性根は人間のままでは腐り落ちていくのみ。そして腐敗物は周りの物まで腐らせてしまう。それを防ぐための処置だ」
「……!」
いくら気が強かろうと、最早反抗する気もないか。逃げ場もない中、尻餅をついた少女は私を見上げることしか出来ない。
「そして汝は矜持というものに関しても完全に履き違えている。魔物娘にするにしても、我と同じデーモン、いやサキュバスでさえもったいない」
「!? な、何よそれは!?」
私の右掌に溢れ出る深緑色のゲル状の物体を見た少女は戦慄する。
「貴族らしからぬ腐った性根の汝に我が相応しいと思った種族の一部分だ。これを飲めば、汝も生まれ変われるだろう」
その狂った性根を矯正するため、私はこれを用意した。これを飲めば、残忍な性格も穏やかで平和的なものとなる。
……もっとも、無駄にプライドが高い此奴にはもっとも堪える種族の魔物娘に変化するということでもあるがな。だが、腐った性根の者にはもっとも相応しい末路よ。
「アガ!?ーーうぐぅっ!!」
女に反抗の機会を与えず、私は魔術で無理矢理口を開かせ、口にねじ込んで飲み込ませた。
「う、ウゲぇぇぇぇぇぇ!!!! な、何よこれはァ!!? ひどい味と臭いだわ!!!!」
おもいきりむせ、まるで汚泥か毒でも飲んだような反応を見せる小娘。だが嚥下したそれは吐き出そうにも食道に張り付き、そのまま胃に流れ込む。
「な、何!? 湿ってる…!?」
効果はすぐに現れた。小娘の服の袖が湿りだし、さらには滝のような汗が全身から流れ出す。
「えっ!? 何なのこれはぁぁぁぁッッ!?」
だが、汗は全身の水分を枯渇させん勢いで流れ出すと共に、女の体も液状化し、硬さを失い始める。やがて足は立つ力を失うと共に、蛸の足の如く関節も硬さも無くなり、さらには形まで失い始める。
「ややややめてよ!!!! わわ私をももとにもどしし……」
全身が段々と深緑色に染まり始めると共にブヨブヨに膨らみ始め、やがて皮膚も液体へと変化しつつあった。
「あ………あがが……」
そうして皮膚・肉・内蔵・骨は混ざり合い、区別が無くなっていく。そうして最後には娘が悪臭を放つ巨大な液状物へと変化してしまった。
「ナ……ナニコレ……ワタシ……ハ」
「バブルスライムだ。腐った性根の汝の末路に相応しい姿であろう?」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
発狂し、大声で叫ぶ小娘。ここまでくれば知能も徐々に溶解し、良くも悪くも穏やかになるはずなのだが、膨れ上がったプライドはまだ残っているようだ。もっとも、それもいつまで保つかは分からないがな。
「これでもう二度と悪さは出来ぬだろう」
本音を言うなら、これでも罰としては“大甘”だ。魔物娘にして魔王軍の戦士としての手前、人間を殺すことは出来ないが………本当はありとあらゆる苦痛を味わわせてから殺してやりたい。好いた男を嬲られた私の怒りはそれほど深かったのだ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「悔いても遅い………が、嘆くことはない。すぐにこの城の者も皆、汝の“同胞”となろう。
それに、その姿も悪くはなかろうよ。少なくとも、汝の生涯がこれ以上血と悪意に染まることはない。
何より、我が夫を得たように、悪臭に満ちたその姿でも好いてくれる者はおるだろう。その者と愛を交わせば、今までの己がどれだけ邪悪であったか分かるであろうよ」
此奴を魔物化させただけで終わりではない。私はデーモンーー主君デルエラとその母君の理想を実現させるためにも、今すぐこの地を魔界に変えよう。
初めこそ人々は戸惑うだろうが、何も恐れることはない。そこは苦痛も何もない、愛と快楽に満ちた理想郷なのだから。
「さて、陰鬱な古城は私も好きではない。それに同じ“血湧き肉躍る”といっても、やはり悪意と血に満ちたものより、魔物娘流の明るく、そして淫靡なものの方が良いというものだな」
それを確信した私は小娘にはもういらぬであろう魔導書と倒れた少年を拾うと、残った仕事を片付けるべく階段を上がっていった。
「う…」
気がついた時、ボクは何故かお風呂に入っていました。
「あら、気がついた?」
「!?」
お風呂に入っているので、当然ハダカです。そして、何故か青い肌でツノを生やしたキレイなおねえさんが、ボクの体を後ろで抱きしめながら一緒にお風呂に入っていたのです。
「!?!?!?!?」
「あらら、混乱しているみたいね」
混乱したボクですが、おねえさんは分かりやすく説明をしてくれました。
ボクはもうお嬢様に叩かれないこと、この城と土地は魔王軍の物になったこと、そしておねえさんとボクが“けいやく”をしなければいけないことです。でも聞いて一番うれしかったことは、ボクがもう痛めつけられることも、だから死ぬ必要もないということでした。
「傷も治しておいたから心配ないわ。元通りの綺麗な体よ」
「うっ、うっ、うぅっ………!」
「……良いのよ、好きなだけ泣きなさい。とても辛かったのだから、誰も責めやしないわ」
それを知った途端、ホッとしたボクは何故か涙が止まりませんでした。そんなボクにおねえさんは優しく微笑み、抱きしめてくれたのです。するとボクは我慢出来なくなり、大声で泣いてしまいました。
何十分も泣いていたボクをずっと抱きしめていてくれたおねえさん。そんなおねえさんがにっこりと微笑んでこう言ったのです。
「デーモンを喚んだ人間はそのデーモンに全てを捧げなければならないのよ」
そう言われてボクは怖くなり、色々とたずねました。
「貴方が私に全てを捧げることで、代わりに貴方は永遠の平穏と快楽を得るのよ」
結局よく分かりませんでした。
「ようするに、毎日好きなだけ私が貴方をキモチよくしてあげるってコト♥」
「わっ!?」
「こんな風にね♥」
首をかしげるボクでしたが、おねえさんはそれを教えるかのように、何故かボクのオチンチンを両手で触り、いじり始めたのです。
「〜〜っ……」
「フフ、キモチイイかしら?」
ちょっとイジワルに笑いながら、おねえさんはボクのオチンチンを優しく扱くことに驚いたボクですが、やめさせることは出来ませんでした。おねえさんの言うように気持ち良かったこともそうですが……何故かおねえさんにそうされることにイヤな気分がしなかったのです。
むしろ背中がゾクゾクするというか、イケないことをしているはずなのにそれを続けたいという気持ちがボクの中にその時生まれてしまったのです。
「はい………」
「そうでしょう? ウフフ♥ 私と契約すれば毎日愉しくて飽きないわよぉ♥」
耳元でそっと囁いたおねえさんは、ボクの左耳を甘噛みしながら指をくねくねと動かし、オチンチンを扱き続けました。
「ふっ…ふあっ……」
「あらあら、女の子みたいな声出しちゃって♥ 我慢しないで射精しちゃっていいのよ?」
段々と下半身も頭も何かビリビリとした、変な感じながらも物凄い気持ち良さ。そんな感覚にボクが戸惑う中、おねえさんは愉しそうに笑いながら、上下する手を速めます。
「あっ………ああああぁっ!!」
「アハッ♪」
そうして、その時はすぐに訪れました。ビリビリした快感がとても強くなり、目の前が真っ白になったかと思うと、大きくなっていたオチンチンの先から、何か白いものが勢い良く噴き出したのです。
あまりの勢いにそのヌルヌルしたものは水面から飛び出し、一部はおねえさんの顔にかかりました。
「ご、ごめんなさい……」
「……♥」
おねえさんの顔がボクの出した白い物で汚れてしまったので、後ろを向いたボクは謝りましたが、おねえさんは気にしていないようでした。
「いいのよ………だって、これはおねえさんの大好物だもの♥」
指で白いものを拭ってペロリと嘗めたおねえさんはむしろ嬉しそうというか、何故かさっき以上に頬を染めたエッチな表情をしていたのです。
「ん〜〜、匂いも味も甘い♥ それに味が濃くてまろやかなのに後味は爽やかだわ♥ 本当に私好みの味♥」
「………………」
両手で顔を挟んだおねえさんは嬉しそうに腰をくねらせています。悪いことをしたと思いましたが、喜んでくれたから良かったのかな?
「やっぱりそうだわ♥ 貴方は私と契約すべき者ね♥」
「わっ!」
喜んだのも束の間、おねえさんはいきなりボクを持ち上げて真正面を向かせました。
「問おう、汝の名は?」
「ナ……ナインです……」
「ではナインよ、この大悪魔アグラト・バト・マフラトの夫となり、永遠の愛を誓うか?」
「え……」
「我はいついかなる時も汝を支えよう。我が今後汝を餓えさせることは無く、その身と心を常に無垢なる愛と夢の如き幸福で満たし、さらにはあらゆる病魔・災厄・外敵から汝を護り通そう」
こんな時に急に言われても何が何やら………それにまるで結婚の誓いです。おねえさんは先ほどとうって変わって真剣な表情ですし、言葉も昔の人みたいで何かいかめしい感じです。
そもそもボク達は出会って一時間も経っていません。いきなり夫になってくれって言われても困りますし、そもそもボクはまだ子どもだし……
「………!」
おねえさんはボクが何も答えないのを見て、急に不機嫌そうな顔になりました。
「うっ!」
そしてボクの首をいきなり右手で掴んだのです。凄い力で、弱っちいボクにはとても振り払えませんでした。
「ボ ク は ア グら トさ ま…と ケイ や くを シ ま…す」
(ッ!?)
さらにはおねえさんがボクの声帯を親指でゴリゴリといじり、無理矢理声を出させられてしまったのです。
「では、契約書を作りましょうね♥」
おねえさんは勝手に話を進めていきます。でもこの時は不思議と悪い気もしなかったのです。
もうボクはこのお城にいることは出来ません。だったら、このおねえさんについていこうかと思ってしまったのです。
城の皆はボクが虐められている間、自分も同じ目にあうのを恐れて誰も庇ってくれませんでした。でも、このおねえさんだけはボクを助けて、この地獄のような日々から解放してくれました。だからそんな恩人の言葉をボクは信じる気になったのだと思います。
「でも、そのためにはペンとインクがいるのよ♥」
興奮のあまり息を荒げるおねえさんは、またボクのオチンチンを手で掴みました。
「まずは“貴方のペン”に“私のインク壺”でインクを付けないとね♥」
この時のおねえさんの顔はとてもいやらしく、それでいて凄く綺麗でした。そしてボクがそう思ったのが分かったのか、また嬉しそうに笑ったのです。
「“男の子”ならやり方は分かるでしょ? 早く挿れて…♥」
おねえさんはボクの首から手を放し、代わりに両手で腰を掴み、自分の腰にくっつけました。おねえさんは女の人なのでオチンチンはありません。
「………!」
そこにはただ割れ目というか、“穴”がありました。ボクも見るのは初めてでした。
ですが、何故かボクは『知って』いました。そして、今どうすれば良いのかも。
普段よりも何倍も大きく硬くなったボクの分身。物欲しそうに待ち構えるおねえさんの“穴”に、ボクはそれを突き挿れたのです。お湯の中だからか、それは思ったよりもすんなりと入りました。
「っ!!ーーんぅぅうッ!!!!」
おねえさんはその瞬間、嬉しそうにも苦しそうにも聞こえる声を上げました。ボクのオチンチンの先っぽがおねえさんの割れ目の中を進み、何かを突き破る感触がありましたが、それが痛かったのかもしれません。
「だ……大丈夫ですか……?」
おねえさんは痛いのか、体を小刻みに震わせているので、心配になったボクはおねえさんに尋ねました。
「えぇ、大丈夫よ…♥」
すると、ホッとしたような顔でおねえさんは応えました。見た感じ、痛みは収まってきているといった様子でした。
「私も初めてなの……でもね、とっても嬉しいわ。貴方が“大人”になったように、私も今日ようやく“一人前の女”になれたのだから…♥」
おねえさんはボクを優しく抱き締めると、お互いの腰を密着させました。すると中がまるで別の生き物のようにグネグネと動き、ボクは今まで感じたことも無いぐらいの気持ち良さを感じたのです。
「!? うっ、うぁ、ぁ、あ、あっ………」
おねえさんの中はボクのオチンチンに吸い付き、捻りあげ、扱き上げられます。そんな風に激しく動いていますが、それがたまらないぐらい気持ち良過ぎて、ボクは変な声が出てしまいました。
「んっ…! 上手よぉ、ナイン君♥」
その内いつの間にかボクは激しく腰を動かしていました。でも、動く度におねえさんも気持ち良さそうに声を漏らしています。
(こうした方がキモチイイのかな……)
そこで分かったのですが、どうやらおねえさんは小刻みに腰を動かすよりは乱暴に動かされる方が好きなようです。だからボクは風呂のお湯が激しく揺れるぐらい腰を動かし、おねえさんの股に叩きつけるようにしました。
「んぃぎッ……!!」
すると小声で気持ち良さそうに喘いでいたおねえさんは目を見開き、凄い声を出しました。そして腰がガクガク震えて体をのけ反らせたのです。
ボクはそれを見て、やっぱりこのやり方が一番良いと思い、またボクもこっちの方が気持ち良いので遠慮なくやりました。
「あっ、あっ、あっ、あっ♥」
「んっ、んっ、んぅぅう♥ ダメよ、ダメ! そんなに激しく突かないでぇっ!!」
さっきよりもずっとキモチイイです。オチンチンを突き挿れる度にまた変な声が出てしまいます。それはおねえさんも同じみたいで、激しくおっぱいを揺らしながら甘い声で叫んでいます。
じゃばじゃばとお湯をかき混ぜながら、ボク達は交わり続けました。頭がビリビリして焼ききれそうな快感が続くそれはとても長い時間に思えましたが、実際にはとても短かったようです。
「うぅぅっ……!」
オチンチンが爆発しそうな快感が最高になったところでボクはくぐもった声を出し、おねえさんの“インク壺”の中に“白いインク”を出しました。一度目よりもさらに勢いが強く、数倍以上の量でした。
「〜〜〜〜〜〜ッッ♥♥」
おねえさんはトロけた表情でボクを見つめながら、中を締め付けてきました。恐らく、インク壺からインクを漏らさないための蓋の代わりをしたのでしょう。それでもお湯の中にはボクのインク、そしておねえさんから出た透明な液と血が混ざって濁っていました。
「………これじゃダメよ……」
「……え?」
「契約書に書く内容は多いの………こんな量じゃ足りないわ……♥」
舌舐めずりするおねえさんの顔はとてもエッチでした。それに興奮したボクは再びオチンチンが硬くなってしまいました。
「まだインク壺には余裕があるわ………ねぇ、もっとシましょ♥」
ボクもまたシたいと思いました。おねえさんの中はグチョグチョで、ミミズみたいなヒダがオチンチンに絡んできてとってもキモチイイのです。
「私の心も身体ももう貴方の物……♥ だからおっぱいでもお尻の穴でも何でも好きに使ってイイのよ♥」
おねえさんはそう言ってボクにキスすると口の中に舌を入れて、ボクの舌に絡めてきました。
「♥♥」
下品な音をさせながらボク達はキスしつつ、空いた両手でおねえさんのとっても大きなおっぱいを揉みしだきました。
目の色が黒かろうが、肌の色が青かろうが、ツノとシッポが生えてようが関係ありません。おねえさんの体があまりにもエッチすぎて、何かをする度に気持ち良くなってしまいます。
おねえさんのおっぱいを吸う度、腰を動かす度におねえさんはエッチな大声を上げます。特に下っ腹でおねえさんの豆?が擦れるのがキモチイイようです。
お湯が跳ねて段々と量が減っていきますが、逆にボク達の交わりは激しくなるばかりです。ヒダで扱かれる度にボクのオチンチンに雷みたいなむず痒いビリビリした快感が走り、おねえさんの方もボクのチンチンに中を擦られてキモチイイみたいでした。
「うぅっ!!」
「アァン♥♥」
おっぱいを吸いながら三度目の汁がおねえさんの中に注がれます。でも、まだインク壺はいっぱいではありません。それを分かっているボク達は腰の動きを止めませんでした。
その後一体いつまで続けたのかは覚えていませんが、終わる頃にはお日様が昇っていたと思います。でも、おねえさんはお腹がパンパンになるまで注がれてとっても満足そうだったのはよく覚えています。
「あら、もう行くの?」
魔物娘とインキュバスの巣窟と化した古城の地下室で拾った魔導書は私とあの子が結ばれたのを見届け、自身の役目が済んだと見て、何処かへと姿を消した。
「そうね………もう私達には必要ない」
もうあの子を脅かす者は誰もいない。私が伴侶となり、彼の人生をこれから共に過ごし、共に支え合うからだ。だから、もうあの魔導書は必要ない。
救いを求める者は世界中に大勢いる。そして、あの魔導書はその手助けをするために存在している。今の私達のようにその者と魔物娘を引き合わせ、その苦しみから解き放つために。
「貴方が次に出会う者達にどうか幸あらんことを」
そう、あの子と出会えた今の私のように………
18/10/01 20:03更新 / フルメタル・ミサイル
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