84 堕ちた天使と姉妹喧嘩
〜〜〜モンスターラグーンサイドから、スタートします!〜〜〜
ヴァーノたちがローレライをジュンコのいるテントにつれてきてから、早10分が経過したんだけど…まさか、こんなにも早く彼女も脱落するなんて…
正直、第3勢力をなめていたようね…私は…
しかも、ローレライの体につけられているやけどのようなキズ…他の怪我している箇所に比べると、明らかに治りが遅いのよね…
つまり、普通の技を使ってつけられた怪我ではないって事だから…第3勢力のメンバーには、厄介な能力を持っている奴がいるって…ことになるわね?
とにかく…さっきのローレライたちの戦闘で、捕虜にした彼女達に話を聞くことになりそうよ?
それにしても…
「まさか、あなた達が第3勢力にいるなんて…ねぇ?リ子?タ子?プ子?」
「略するな!!あたしにはリランって名前があるんだ!!くそっ…あたしとしたことが、まさか捕まってしまうなんて…しかも、こいつらなんかに…」
「まぁまぁ…なるようになるんですから、いちいちメリィさんに噛み付かなくてもいいじゃないですかぁ?ねぇ?メリィさん?」
「……久しぶりねぇ?キセノンは相変わらず、変わらないわね…」
「そうですかぁ?結構変わったと思いますけど…ねぇ?少なくとも、子供の頃に一緒に遊んでいた時と比べたら、心境は大きく変わっていますよ?」
「………ふん…今日は昔話をするために、あなた達をここに連れてきたわけでは無いの…わかるかしら?」
私はキセノンにそういうと、すぐに本題に入ることにしたのよね…
まぁ…回りくどい聞き方をしてもいいんだけど、そんな時間が無さそうな気もしたし…ね?
「単刀直入に聞くわ…彼女の体についたやけどの痕…普通のやけどじゃないみたいなのよ…誰があのやけどの原因となった技を発動したの?」
「えっ?それはおそらくう…うぐぅっ!?」
「ストーップ!プレアミセル!!言おうとしてどうするんだよ!!ここは、命にかえても沈黙を貫きとおす…その場面だろ!?あたしだって…言いたいのをぐっと我慢したんだから…あんたも耐えなよ!」
「もがっひゃからはやくはにゃしてひゅだしゃいよ!(わかったから、早く離してくださいよ!)」
「あぁ…悪かったね…」
……むっ?あれは…何か、心当たりがあるようね…
あと何回か質問を繰り返したら、正直に答えてくれるようになるかしら…?
わたしはちょっとだけ、そう考えたりもしたんだけど…時間はかかると思うわ…
だって、彼女達は私達と何回か、敵対したことがあるわけだしね?
「…キセノンも、当然話してはくれないんでしょ?」
「え?誰も話さないとは言っていませんよ?まぁ…話すとも言っていませんけど」
「……結局の所、どうなのよ?」
「話したくはないけど、話してあげてもいいですよ〜?まぁ、昔の付き合いのこともあるし…ね?そのかわり、話したら開放してくれますよねぇ?メリィさん?」
「…わかったわ、その条件で話をして頂戴…」
私はそういうと、キセノンと話し始めたのよ…
思えば、こうやって話し合うのも今から4年前が最後だったっけ…
そう思うと、凄くやりきれない気分になるんだけど…ね?
「あのやけどのキズは…おそらく梅さんがやったと思うんですよねぇ…?まぁ、私たち三人はその場面を見ていたわけではないんですけど…気絶してましたし?」
「梅…?もしかして、ヴァーノが報告してきたジパングスタイルの女性…かしら?」
「そうですよ?あぁ…なるほど…梅さん、彼女にダメージは与えたけど、その後、何らかの理由でやられちゃったんですねぇ〜?じゃあ、すぐにあの方々の出番…ってわけですかねぇ…まぁ、頑張ってくださいねぇ〜?」
「…待ちなさいよ!あの方々って…誰なの?」
「それは言えませんよ〜?それに、私はあのやけどのキズを負わせた人物を聞かれたわけですし…その質問にも答えてあげる義務はないですから?」
…た、確かにそうなんだけど…それでも、あんなふうに何かある…みたいなことをほのめかしたら気になるじゃないの!!
確かに、キセノンは昔とは大きく変わったわね…昔は、あんなふうに言って私を困らせることは無かったのに…
「まぁ、私もガデッドさんの意見に同意してここに来たわけですし、仲間の情報は売ることができませんよ〜?まぁ、一つだけ情報を差し上げたわけですから、それ以上聞くのはダメですよぉ〜?」
「……わかったわ…彼女達の縄をほどいてあげなさい…で、監禁用テントに連れて行きなさい?」
「それは、ルール違反なんじゃないですか?私はちゃんと情報を差し上げたのですから、開放するのがルールでしょう?その条件で私はメリィさまに話して差し上げたのですから…?それとも、モンスターラグーンのリーダーで、なおかつ、かつての友達が好きだった人と結婚した奥さんには、私との条件を守る義務はないと…そういうことですかねぇ?」
「ちょっと待ちなさいよ…?その話は、双方の同意で話がついたはずだけど…それに、私は彼のことをあなたが好きだったとは知らなかったし…」
「そりゃあ、言わなかったんですから、知らないでしょうねぇ?かつては、モンスターラグーンを一緒に立ち上げたというのに…結婚しちゃうんですから…しかも、私より先に?裏切られた気分にはなりましたよぉ〜?それに、結婚しているはずなのに、どうしてモンスターラグーンのリーダーをしているんですかぁ?確か…モンスターラグーンは…」
「未婚の魔物娘が集まる組織って、そういいたいんでしょう?」
確かに、私と彼女とでその規則を作ったから、彼女が言いたいこともよくわかるわ…
でも、私はもう彼とは…会えないから、既婚者とは言い切れないのよ…
私は心の中でそうつぶやくと、またキセノンの方を向いたのよ…
思えば、彼女が私と喧嘩して二度とフェルス興国に戻ってこなかったのは…私のせいって気もするし…ね?
「そういえば、私が好きだった彼は今…元気なんですかぁ〜?もし元気なら、会わせてくださいよぉ?」
「もう…二度と会えないわよ…彼には…」
「あら?そうだったんですかぁ?それはそれは…ご愁傷さまですねぇ?じゃあ、まさかまたモンスターラグーンに入っているのは新しい夫を見つけるためですかぁ?可愛そうな彼ですねぇ〜?」
「違うわ…私はもう、結婚なんてするつもりはないんだから…今、モンスターラグーンを再び結成しているのは、彼女達と妹のためよ…」
「妹…妹…あぁ〜…サリィちゃんのことですかぁ〜?いやはや、いいお姉さんでありますねぇ…?でも、余り妹さんの恋愛には手を出さないであげてくださいよぉ?じゃないと、私のようにメリィさんを嫌いになるかも知れませんし」
……サリィのことを気にするな…ですって?
さすがに、それは出来ない…出来ないけど…
私は頭の中で、キセノンがさっき言った台詞を考えつつ、サリィのことも考え始めたのよ…
私が…サリィの恋愛を邪魔している…?この、私が?
私はサリィが誰が好きなのかを把握していたから、デメトリオを旅に連れ出して…サリィにふさわしい男にしようとしてあげているのに、その行為が…邪魔だというの…?
実際、デメトリオは私達を裏切った…そのことに間違いはないし…
でも、デメトリオは臆病者だから、少し厳しくしてあげないとダメだって思ったから…
私がそう思っていると、キセノンが少し笑いながら言ってきたのよ…
「…あら?どうやら、第2波…来たみたいですよぉ?早く相手しないと、取り返しのつかないことになるかも知れませんねぇ…?」
「くっ…今、私から全員にすぐ、応戦指示を出すことは出来ないわね…」
私はそう判断すると、リーネに指示をだし、走ってもらったのよ…
指示は簡単なことで…各自、もし近くに敵が来た場合、応戦しろって奴なんだけど…
で、リーネに指示を出した私は、すぐにまた…キセノンと話し始めたのよね…
キセノンに、サリィの恋愛の邪魔をしているかも知れないって話の真意を確かめるために…ね?
〜〜〜リンケに視点を変更します!!〜〜〜
「姉さんは…姉さんは分かってない!!」
「あら?分かってないのはリンケ…あなたじゃない!!」
私は珍しく、レヒテ姉さんと口喧嘩をしていた…
喧嘩の理由…?そんなの、決まっているじゃないか…?
そう、今晩のおかずの話だよ!!
……下ネタじゃないからな?
と、とにかく…私は姉さんの意見には…納得できない!!
「姉さんの言い方を肯定すると、世の中のおかず全てにはケチャップをつけることになるじゃないですか!!オムライスには絶対、ソースですよ!!オイスターソース一択です!!大体、焼き魚にもケチャップをつける姉さんの味覚や考え方が…私には理解できません!!」
「黙りなさい!!あなただって…色々な食べ物にソースをかけるじゃないの!それのどこが私と違うっていうの?それに、あなたは妹なんだから、将来私が国を立ち上げた時のためのサポートをしていればいいの!!私の意見には背かないように!!」
「誰が国を立ち上げるんですか!?姉さんよりも先に国を建てるのは、この私です!!姉さんの政治には、弱者を思いやる心がありません!!そんな政治では、国民の不満は溜まり、革命を起こされてしまうかも知れないじゃないですか!!」
「リンケの言っている事は、甘すぎるのよ!!弱者は弱者…強者は強者のいるべき場所で燻っていればいいのよ!!だって、弱者に不満がたまるとしても、それは弱者になってしまったその人が悪いんだから…何をされたり、どんなことを言われても意見する権利も無いわ!!悔しかったら、強者を落すしかないのよ!!」
「姉さんの…姉さんの…ばかやろぉぉっ!!」
私は、レヒテ姉さんにそういうと、夜のメガロス平原を南に走り始めたんだ…
しばらく…一人になりたい気分だからさ…
私がそう思いながら、夜の冷たい風に吹かれていると、後ろの方からナナさんが歩いてきたんだ…
まさか、私の後を追いかけて…来たのだろうか?
「…どうしたんですか?ナナさん…?」
「さっきの話、聞かせてもらったよ?私は…レヒテさんの考え方も凄く、いいものだと思うけどなぁ…?」
「…でも、姉さんが言ったとおり、私の考えは甘いんだ…誰もが平等に暮らすことが出来る、平和に満ちた世界…そんなもの、作ることはできないってのは、自分でもよく分かっている…でも、自分でそれを認めたくないんだ…」
「じゃあ、認めなかったらいいじゃないですか?たとえ甘い考えでも、自分の夢…未来に向けて歩いていけばいいんじゃないですか?私は…そう思います」
「追いかけさせて、更には私に説教までしてくれるか…いい人だな、ナナは…」
「違いますって!!私はですね…って、あれ?リンケさん…あの光って…」
「あ、あれは!?敵だ…敵じゃないか!!早く姉さんに報告しないと…」
「待ってください!!」
な、なんだ…?なんで敵が近くに迫っているのに、ナナは私を止めようとするんだ?
「なんだ…?早く姉さんに伝えないと…挟み撃ちにあってしまうかも知れないのに…」
「だったら、ここで食い止めればいいのよ…リンケさんはお姉さんに頼りすぎなんです!!ここで、一度お姉さんから離れてみるのもいいと思いますよ!」
「そうか…そうだな…私の目指す夢の為に…一度姉の力を借りずに…わかった!やってみるよ…」
「まぁ、私も手伝ってあげますよ…!!お姉さんの方は、恐らく一人でも大丈夫だと思いますし…」
「まぁ…レヒテ姉さんは強いし…大丈夫なんだろうなぁ…さぁて…私もここで、敵が来るのを待っておくとする!!」
私はそういうと、すぐに戦闘の準備を始めたのだった…
今回の戦いで…相手が誰であろうと私は…ナナと協力して、二人で敵を倒してみせる!!
〜〜〜レヒテ視点に変更します!!〜〜〜
リンケったら…メリィたちがデモンスタワーを訪れてから、何かと私に反発するのよねぇ…
リンケは妹なんだから、私の言うことをただ…聞いていればいいって言うのに、困ったものだわ…
それに…私の理想とする国家の建設方針が間違っているですって?
私の理想とする国家こそが、この世の中…そして、世界の真の姿なのよ?
結局、世の中…どんなきれいごとを言っても、勝者は勝者で、弱者は弱者なんだからね?
もしも勝てないというのなら、弱者は強者の言うことをただ、無価値に聞いていればいいじゃないの…違う?
そりゃあ、人間だって…魔物娘だって綺麗事を言いたくなる時もあるわよ?
でも、世の中は理屈で動いているの…綺麗事で動いているわけじゃないのよ?
夢を見ている暇があるのなら、強者の機嫌を損ねないことを考えるべきなのよ
人生を価値あるものにしたいと思うことが出来るのは、そもそも…生まれながらにして能力が優れているものなんだからね?
なんて私が思いながら、リンケが走って行った方をのんびりと見ていると、少し遠くの方から、私に向かってくる影があったのよ…
……敵かしら?強者であり勝者のこの私に戦いを挑むなんて…
いいわ…後に一つの国を立ち上げる女王となるものとして、私が相手をしてあげようじゃないの…
そして…しばらく時間が経過した後、面白い形の鎧を着込んでいるエンジェルが私の前にやってきたのよ…
エンジェル…ねぇ…?まぁ、私の強さを証明するにはちょうどいい機会だわ…
片付けてあげるから、覚悟しなさいよ!!
「…ん?危ないですよ?今からここは戦場になるんですから、早く自分の住処に戻ってください!!」
「…どういうことですか?」
「僕達が今から、モンスターラグーンという集団を倒しに行くからです!戦場にいると、いつ…戦渦が訪れるか分かったものじゃありません!!」
「なるほどぉ…そんなんですかぁ…わざわざすみません…ところで…」
「どうしたんですか…?」
私は、あのエンジェルの女性が近づいてくるまで、じっと待っていたのよ…
そう…右手に自分の剣を隠し持ちつつ…ね?
だって、普通は単純に、敵の陣地の近くに誰かいたら、それは敵だって思うでしょ?それを彼女…自分が天使だからって調子にのっているのか…私のことを一般人と同じように扱ったのよ!!
その行為…わたしのプライドを傷つけたその行為は…万死に値する!!
そして私は…彼女の気配が近づいた次の瞬間、一気に振り向きながら剣で切りつけたのよ!!
「えっ!?ちょ…な、何するんですかぁ!?」
「あなた、将来、一国の女王となるべき女性に対しての態度…、気にいらなかったのよ!!私があなたに、礼儀を教えてあげる…いい機会よねぇ?」
「ま…まさか…あなたも実は僕達の仲間ではなく、敵の手下だと!?」
「よく分かったわね…?さぁ、今から私に頭を下げて土下座するというのなら、少しは許してあげてもいいわよ…?」
私はそう思いながら、そっと彼女に近づいたのよ…
さぁて……彼女が、手早くわたしに土下座するのを待つとしましょうか?
私はそう思いながら、彼女が私に対して、謝るのをずっと待っていたんだけど…
……どういうことかしら?私に対して…彼女が土下座しないのよ…!
まさか彼女…最後の最後まで私を…怒らせるつもりかしら?
……いいわ…この私を怒らせた罪…その体で償わしてあげる!!
エンジェルだろうと…私の怒りに触れたということは、どんなに酷い目にあっても文句を言わないという合図にもなる…
……王女になるこの私に倒されるのだから…後悔なんてないでしょう?
私はそう思うと、少しだけ持っている武器に対する力を抜いて自分の名前を伝えてあげたのよ!!
将来、一国の女王となるべきこの私の名前を、冥途の土産に持っていくのもありだと思うからね?
「私の名前はヴォン・レヒテ…あなたはここで倒されるけど、せめてこの私の名前を冥途の土産に覚えておきなさい!!」
「ヴォン・レヒテ…?そういえば、天界責務会でその名前を聞いたことがあったような…はっ!?ヴォン・レヒテって、未来1級犯罪者の名前じゃないですか!!僕の聞いた話だと…彼女は今から18年後に、独自の暴政と理論で国民を痛めつけたとかどうとか…少なくとも彼女は王女という立場でありながら、暴君だったって…そんな話だったはず…」
「暴君…この私が?それは、第三者の意見であり…私を確実に暴君だということは出来ないと思うけど…?あなたは私を…何度怒らせれば気が済むの?」
「そういえば、彼女…改心手配がかかっていて…心のそこから今の性格について改心させ、未来でそのような出来事を起こさないようにすれば、お金がもらえる!!僕の計算が正しければ…金貨20枚だよ!!へへ…へへへへ…」
「…ねぇ?私の話を聞いてるの?」
「うーん…どうやって改心させようかなぁ…?はっ!?ここで彼女を私が倒せば…彼女は敗因に自分の性格が原因していたと気付く…そして、彼女は改心してくれるはず…そうすれば、私は金貨を20枚手に入れることが出来る…そして、その後、ジャルジィさんに敵を倒したからお金下さいって頼み込んだら…また金貨500枚手に入るかも…いや、もっとかもしれない…そうすれば、単純に考えて僕の懐には金貨が山のように…うはぁ…いいねぇ…それ…」
くっ…完全に…私の話を無視してる…
生意気な…生意気なエンジェル風情のくせに!!
この私を前にして…無視するなんて…死んで後悔しても…遅いわよ!!
私は心の中で強くそう思うと、考え事に夢中になっている彼女に向かって、無言で剣を振り下ろしたのよ…
「うひゃぁっ!?い、いきなり不意打ちとか卑怯ですよ!?」
「黙りなさい!!この金に囚われた堕天使が…この私の話も完全に無視するなんて、図々しいにも程がある!!」
「誰が堕天使ですかっ!!僕にはこのプリティーで清い純白の羽が…」
「へぇ…凄く黒いけど…?その羽…」
「えっ…?あぁっーーー!?ぼ、僕の羽が…黒い色に…でも僕は、欲望には負けていないはず…なのに、どうして…?」
「おかしなことを言ってないで…ここで私のことを無視したことを後悔しながら倒れなさい!!」
「む、むぅっ…と、とにかく、今は羽のことも大事だけど、彼女を改心させるために気絶させ、お金をもらうことが先決だよね…よしっ…やるぞぉーっ!!私の懐をもっと充実させるため…絶対に勝つ!!」
こうして、天使(?)と私との勝負が始まったのよ…
ヴァーノたちがローレライをジュンコのいるテントにつれてきてから、早10分が経過したんだけど…まさか、こんなにも早く彼女も脱落するなんて…
正直、第3勢力をなめていたようね…私は…
しかも、ローレライの体につけられているやけどのようなキズ…他の怪我している箇所に比べると、明らかに治りが遅いのよね…
つまり、普通の技を使ってつけられた怪我ではないって事だから…第3勢力のメンバーには、厄介な能力を持っている奴がいるって…ことになるわね?
とにかく…さっきのローレライたちの戦闘で、捕虜にした彼女達に話を聞くことになりそうよ?
それにしても…
「まさか、あなた達が第3勢力にいるなんて…ねぇ?リ子?タ子?プ子?」
「略するな!!あたしにはリランって名前があるんだ!!くそっ…あたしとしたことが、まさか捕まってしまうなんて…しかも、こいつらなんかに…」
「まぁまぁ…なるようになるんですから、いちいちメリィさんに噛み付かなくてもいいじゃないですかぁ?ねぇ?メリィさん?」
「……久しぶりねぇ?キセノンは相変わらず、変わらないわね…」
「そうですかぁ?結構変わったと思いますけど…ねぇ?少なくとも、子供の頃に一緒に遊んでいた時と比べたら、心境は大きく変わっていますよ?」
「………ふん…今日は昔話をするために、あなた達をここに連れてきたわけでは無いの…わかるかしら?」
私はキセノンにそういうと、すぐに本題に入ることにしたのよね…
まぁ…回りくどい聞き方をしてもいいんだけど、そんな時間が無さそうな気もしたし…ね?
「単刀直入に聞くわ…彼女の体についたやけどの痕…普通のやけどじゃないみたいなのよ…誰があのやけどの原因となった技を発動したの?」
「えっ?それはおそらくう…うぐぅっ!?」
「ストーップ!プレアミセル!!言おうとしてどうするんだよ!!ここは、命にかえても沈黙を貫きとおす…その場面だろ!?あたしだって…言いたいのをぐっと我慢したんだから…あんたも耐えなよ!」
「もがっひゃからはやくはにゃしてひゅだしゃいよ!(わかったから、早く離してくださいよ!)」
「あぁ…悪かったね…」
……むっ?あれは…何か、心当たりがあるようね…
あと何回か質問を繰り返したら、正直に答えてくれるようになるかしら…?
わたしはちょっとだけ、そう考えたりもしたんだけど…時間はかかると思うわ…
だって、彼女達は私達と何回か、敵対したことがあるわけだしね?
「…キセノンも、当然話してはくれないんでしょ?」
「え?誰も話さないとは言っていませんよ?まぁ…話すとも言っていませんけど」
「……結局の所、どうなのよ?」
「話したくはないけど、話してあげてもいいですよ〜?まぁ、昔の付き合いのこともあるし…ね?そのかわり、話したら開放してくれますよねぇ?メリィさん?」
「…わかったわ、その条件で話をして頂戴…」
私はそういうと、キセノンと話し始めたのよ…
思えば、こうやって話し合うのも今から4年前が最後だったっけ…
そう思うと、凄くやりきれない気分になるんだけど…ね?
「あのやけどのキズは…おそらく梅さんがやったと思うんですよねぇ…?まぁ、私たち三人はその場面を見ていたわけではないんですけど…気絶してましたし?」
「梅…?もしかして、ヴァーノが報告してきたジパングスタイルの女性…かしら?」
「そうですよ?あぁ…なるほど…梅さん、彼女にダメージは与えたけど、その後、何らかの理由でやられちゃったんですねぇ〜?じゃあ、すぐにあの方々の出番…ってわけですかねぇ…まぁ、頑張ってくださいねぇ〜?」
「…待ちなさいよ!あの方々って…誰なの?」
「それは言えませんよ〜?それに、私はあのやけどのキズを負わせた人物を聞かれたわけですし…その質問にも答えてあげる義務はないですから?」
…た、確かにそうなんだけど…それでも、あんなふうに何かある…みたいなことをほのめかしたら気になるじゃないの!!
確かに、キセノンは昔とは大きく変わったわね…昔は、あんなふうに言って私を困らせることは無かったのに…
「まぁ、私もガデッドさんの意見に同意してここに来たわけですし、仲間の情報は売ることができませんよ〜?まぁ、一つだけ情報を差し上げたわけですから、それ以上聞くのはダメですよぉ〜?」
「……わかったわ…彼女達の縄をほどいてあげなさい…で、監禁用テントに連れて行きなさい?」
「それは、ルール違反なんじゃないですか?私はちゃんと情報を差し上げたのですから、開放するのがルールでしょう?その条件で私はメリィさまに話して差し上げたのですから…?それとも、モンスターラグーンのリーダーで、なおかつ、かつての友達が好きだった人と結婚した奥さんには、私との条件を守る義務はないと…そういうことですかねぇ?」
「ちょっと待ちなさいよ…?その話は、双方の同意で話がついたはずだけど…それに、私は彼のことをあなたが好きだったとは知らなかったし…」
「そりゃあ、言わなかったんですから、知らないでしょうねぇ?かつては、モンスターラグーンを一緒に立ち上げたというのに…結婚しちゃうんですから…しかも、私より先に?裏切られた気分にはなりましたよぉ〜?それに、結婚しているはずなのに、どうしてモンスターラグーンのリーダーをしているんですかぁ?確か…モンスターラグーンは…」
「未婚の魔物娘が集まる組織って、そういいたいんでしょう?」
確かに、私と彼女とでその規則を作ったから、彼女が言いたいこともよくわかるわ…
でも、私はもう彼とは…会えないから、既婚者とは言い切れないのよ…
私は心の中でそうつぶやくと、またキセノンの方を向いたのよ…
思えば、彼女が私と喧嘩して二度とフェルス興国に戻ってこなかったのは…私のせいって気もするし…ね?
「そういえば、私が好きだった彼は今…元気なんですかぁ〜?もし元気なら、会わせてくださいよぉ?」
「もう…二度と会えないわよ…彼には…」
「あら?そうだったんですかぁ?それはそれは…ご愁傷さまですねぇ?じゃあ、まさかまたモンスターラグーンに入っているのは新しい夫を見つけるためですかぁ?可愛そうな彼ですねぇ〜?」
「違うわ…私はもう、結婚なんてするつもりはないんだから…今、モンスターラグーンを再び結成しているのは、彼女達と妹のためよ…」
「妹…妹…あぁ〜…サリィちゃんのことですかぁ〜?いやはや、いいお姉さんでありますねぇ…?でも、余り妹さんの恋愛には手を出さないであげてくださいよぉ?じゃないと、私のようにメリィさんを嫌いになるかも知れませんし」
……サリィのことを気にするな…ですって?
さすがに、それは出来ない…出来ないけど…
私は頭の中で、キセノンがさっき言った台詞を考えつつ、サリィのことも考え始めたのよ…
私が…サリィの恋愛を邪魔している…?この、私が?
私はサリィが誰が好きなのかを把握していたから、デメトリオを旅に連れ出して…サリィにふさわしい男にしようとしてあげているのに、その行為が…邪魔だというの…?
実際、デメトリオは私達を裏切った…そのことに間違いはないし…
でも、デメトリオは臆病者だから、少し厳しくしてあげないとダメだって思ったから…
私がそう思っていると、キセノンが少し笑いながら言ってきたのよ…
「…あら?どうやら、第2波…来たみたいですよぉ?早く相手しないと、取り返しのつかないことになるかも知れませんねぇ…?」
「くっ…今、私から全員にすぐ、応戦指示を出すことは出来ないわね…」
私はそう判断すると、リーネに指示をだし、走ってもらったのよ…
指示は簡単なことで…各自、もし近くに敵が来た場合、応戦しろって奴なんだけど…
で、リーネに指示を出した私は、すぐにまた…キセノンと話し始めたのよね…
キセノンに、サリィの恋愛の邪魔をしているかも知れないって話の真意を確かめるために…ね?
〜〜〜リンケに視点を変更します!!〜〜〜
「姉さんは…姉さんは分かってない!!」
「あら?分かってないのはリンケ…あなたじゃない!!」
私は珍しく、レヒテ姉さんと口喧嘩をしていた…
喧嘩の理由…?そんなの、決まっているじゃないか…?
そう、今晩のおかずの話だよ!!
……下ネタじゃないからな?
と、とにかく…私は姉さんの意見には…納得できない!!
「姉さんの言い方を肯定すると、世の中のおかず全てにはケチャップをつけることになるじゃないですか!!オムライスには絶対、ソースですよ!!オイスターソース一択です!!大体、焼き魚にもケチャップをつける姉さんの味覚や考え方が…私には理解できません!!」
「黙りなさい!!あなただって…色々な食べ物にソースをかけるじゃないの!それのどこが私と違うっていうの?それに、あなたは妹なんだから、将来私が国を立ち上げた時のためのサポートをしていればいいの!!私の意見には背かないように!!」
「誰が国を立ち上げるんですか!?姉さんよりも先に国を建てるのは、この私です!!姉さんの政治には、弱者を思いやる心がありません!!そんな政治では、国民の不満は溜まり、革命を起こされてしまうかも知れないじゃないですか!!」
「リンケの言っている事は、甘すぎるのよ!!弱者は弱者…強者は強者のいるべき場所で燻っていればいいのよ!!だって、弱者に不満がたまるとしても、それは弱者になってしまったその人が悪いんだから…何をされたり、どんなことを言われても意見する権利も無いわ!!悔しかったら、強者を落すしかないのよ!!」
「姉さんの…姉さんの…ばかやろぉぉっ!!」
私は、レヒテ姉さんにそういうと、夜のメガロス平原を南に走り始めたんだ…
しばらく…一人になりたい気分だからさ…
私がそう思いながら、夜の冷たい風に吹かれていると、後ろの方からナナさんが歩いてきたんだ…
まさか、私の後を追いかけて…来たのだろうか?
「…どうしたんですか?ナナさん…?」
「さっきの話、聞かせてもらったよ?私は…レヒテさんの考え方も凄く、いいものだと思うけどなぁ…?」
「…でも、姉さんが言ったとおり、私の考えは甘いんだ…誰もが平等に暮らすことが出来る、平和に満ちた世界…そんなもの、作ることはできないってのは、自分でもよく分かっている…でも、自分でそれを認めたくないんだ…」
「じゃあ、認めなかったらいいじゃないですか?たとえ甘い考えでも、自分の夢…未来に向けて歩いていけばいいんじゃないですか?私は…そう思います」
「追いかけさせて、更には私に説教までしてくれるか…いい人だな、ナナは…」
「違いますって!!私はですね…って、あれ?リンケさん…あの光って…」
「あ、あれは!?敵だ…敵じゃないか!!早く姉さんに報告しないと…」
「待ってください!!」
な、なんだ…?なんで敵が近くに迫っているのに、ナナは私を止めようとするんだ?
「なんだ…?早く姉さんに伝えないと…挟み撃ちにあってしまうかも知れないのに…」
「だったら、ここで食い止めればいいのよ…リンケさんはお姉さんに頼りすぎなんです!!ここで、一度お姉さんから離れてみるのもいいと思いますよ!」
「そうか…そうだな…私の目指す夢の為に…一度姉の力を借りずに…わかった!やってみるよ…」
「まぁ、私も手伝ってあげますよ…!!お姉さんの方は、恐らく一人でも大丈夫だと思いますし…」
「まぁ…レヒテ姉さんは強いし…大丈夫なんだろうなぁ…さぁて…私もここで、敵が来るのを待っておくとする!!」
私はそういうと、すぐに戦闘の準備を始めたのだった…
今回の戦いで…相手が誰であろうと私は…ナナと協力して、二人で敵を倒してみせる!!
〜〜〜レヒテ視点に変更します!!〜〜〜
リンケったら…メリィたちがデモンスタワーを訪れてから、何かと私に反発するのよねぇ…
リンケは妹なんだから、私の言うことをただ…聞いていればいいって言うのに、困ったものだわ…
それに…私の理想とする国家の建設方針が間違っているですって?
私の理想とする国家こそが、この世の中…そして、世界の真の姿なのよ?
結局、世の中…どんなきれいごとを言っても、勝者は勝者で、弱者は弱者なんだからね?
もしも勝てないというのなら、弱者は強者の言うことをただ、無価値に聞いていればいいじゃないの…違う?
そりゃあ、人間だって…魔物娘だって綺麗事を言いたくなる時もあるわよ?
でも、世の中は理屈で動いているの…綺麗事で動いているわけじゃないのよ?
夢を見ている暇があるのなら、強者の機嫌を損ねないことを考えるべきなのよ
人生を価値あるものにしたいと思うことが出来るのは、そもそも…生まれながらにして能力が優れているものなんだからね?
なんて私が思いながら、リンケが走って行った方をのんびりと見ていると、少し遠くの方から、私に向かってくる影があったのよ…
……敵かしら?強者であり勝者のこの私に戦いを挑むなんて…
いいわ…後に一つの国を立ち上げる女王となるものとして、私が相手をしてあげようじゃないの…
そして…しばらく時間が経過した後、面白い形の鎧を着込んでいるエンジェルが私の前にやってきたのよ…
エンジェル…ねぇ…?まぁ、私の強さを証明するにはちょうどいい機会だわ…
片付けてあげるから、覚悟しなさいよ!!
「…ん?危ないですよ?今からここは戦場になるんですから、早く自分の住処に戻ってください!!」
「…どういうことですか?」
「僕達が今から、モンスターラグーンという集団を倒しに行くからです!戦場にいると、いつ…戦渦が訪れるか分かったものじゃありません!!」
「なるほどぉ…そんなんですかぁ…わざわざすみません…ところで…」
「どうしたんですか…?」
私は、あのエンジェルの女性が近づいてくるまで、じっと待っていたのよ…
そう…右手に自分の剣を隠し持ちつつ…ね?
だって、普通は単純に、敵の陣地の近くに誰かいたら、それは敵だって思うでしょ?それを彼女…自分が天使だからって調子にのっているのか…私のことを一般人と同じように扱ったのよ!!
その行為…わたしのプライドを傷つけたその行為は…万死に値する!!
そして私は…彼女の気配が近づいた次の瞬間、一気に振り向きながら剣で切りつけたのよ!!
「えっ!?ちょ…な、何するんですかぁ!?」
「あなた、将来、一国の女王となるべき女性に対しての態度…、気にいらなかったのよ!!私があなたに、礼儀を教えてあげる…いい機会よねぇ?」
「ま…まさか…あなたも実は僕達の仲間ではなく、敵の手下だと!?」
「よく分かったわね…?さぁ、今から私に頭を下げて土下座するというのなら、少しは許してあげてもいいわよ…?」
私はそう思いながら、そっと彼女に近づいたのよ…
さぁて……彼女が、手早くわたしに土下座するのを待つとしましょうか?
私はそう思いながら、彼女が私に対して、謝るのをずっと待っていたんだけど…
……どういうことかしら?私に対して…彼女が土下座しないのよ…!
まさか彼女…最後の最後まで私を…怒らせるつもりかしら?
……いいわ…この私を怒らせた罪…その体で償わしてあげる!!
エンジェルだろうと…私の怒りに触れたということは、どんなに酷い目にあっても文句を言わないという合図にもなる…
……王女になるこの私に倒されるのだから…後悔なんてないでしょう?
私はそう思うと、少しだけ持っている武器に対する力を抜いて自分の名前を伝えてあげたのよ!!
将来、一国の女王となるべきこの私の名前を、冥途の土産に持っていくのもありだと思うからね?
「私の名前はヴォン・レヒテ…あなたはここで倒されるけど、せめてこの私の名前を冥途の土産に覚えておきなさい!!」
「ヴォン・レヒテ…?そういえば、天界責務会でその名前を聞いたことがあったような…はっ!?ヴォン・レヒテって、未来1級犯罪者の名前じゃないですか!!僕の聞いた話だと…彼女は今から18年後に、独自の暴政と理論で国民を痛めつけたとかどうとか…少なくとも彼女は王女という立場でありながら、暴君だったって…そんな話だったはず…」
「暴君…この私が?それは、第三者の意見であり…私を確実に暴君だということは出来ないと思うけど…?あなたは私を…何度怒らせれば気が済むの?」
「そういえば、彼女…改心手配がかかっていて…心のそこから今の性格について改心させ、未来でそのような出来事を起こさないようにすれば、お金がもらえる!!僕の計算が正しければ…金貨20枚だよ!!へへ…へへへへ…」
「…ねぇ?私の話を聞いてるの?」
「うーん…どうやって改心させようかなぁ…?はっ!?ここで彼女を私が倒せば…彼女は敗因に自分の性格が原因していたと気付く…そして、彼女は改心してくれるはず…そうすれば、私は金貨を20枚手に入れることが出来る…そして、その後、ジャルジィさんに敵を倒したからお金下さいって頼み込んだら…また金貨500枚手に入るかも…いや、もっとかもしれない…そうすれば、単純に考えて僕の懐には金貨が山のように…うはぁ…いいねぇ…それ…」
くっ…完全に…私の話を無視してる…
生意気な…生意気なエンジェル風情のくせに!!
この私を前にして…無視するなんて…死んで後悔しても…遅いわよ!!
私は心の中で強くそう思うと、考え事に夢中になっている彼女に向かって、無言で剣を振り下ろしたのよ…
「うひゃぁっ!?い、いきなり不意打ちとか卑怯ですよ!?」
「黙りなさい!!この金に囚われた堕天使が…この私の話も完全に無視するなんて、図々しいにも程がある!!」
「誰が堕天使ですかっ!!僕にはこのプリティーで清い純白の羽が…」
「へぇ…凄く黒いけど…?その羽…」
「えっ…?あぁっーーー!?ぼ、僕の羽が…黒い色に…でも僕は、欲望には負けていないはず…なのに、どうして…?」
「おかしなことを言ってないで…ここで私のことを無視したことを後悔しながら倒れなさい!!」
「む、むぅっ…と、とにかく、今は羽のことも大事だけど、彼女を改心させるために気絶させ、お金をもらうことが先決だよね…よしっ…やるぞぉーっ!!私の懐をもっと充実させるため…絶対に勝つ!!」
こうして、天使(?)と私との勝負が始まったのよ…
12/09/07 06:15更新 / デメトリオン
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