06 俺の運命を変える日 (前編)
……なんだろうか、この音…
いや、たぶん間違いなくゾーネが俺に何かしようとしているに違いないな…
俺は昨日の経験を思い出し、寝ぼけていた頭を無理やり起こすとベッドから起き上がった。
「ひゃぅ!?」
やはりゾーネ…こいつ、また今日も何かしようとしていたな?
「おい、今日は何を俺にしようと思っていたんだ?」
「な、何も?わしは別に何もしようとは思っていなかったぞ?」
「本当だな?」
「ほ、本当じゃ!」
じゃあ、一体ゾーネの後ろでうねっているアレは何なんだ!?
しかも、隣には明らかに怪しいカプセル状の何かが立てかけてあるし…
「嘘つくな!絶対おまえ今日も俺を実験体にしようとしてただろ!」
「ちっ…ばれてしもうたか…」
当たり前だ!昨日もやってきたくせに、二日続けて通用すると思うなよ!
「で…その装置は一体どんな変な効果を持っているんだ?」
どうせろくでもない効果なのはわかっていたが、俺はあえて聞く。
そのほうが、装置を破壊しやすいからな…
「ふん…聞いて驚け?この装置はなんと、中に人を入れてその後、この触手を上から入れると中にいる人の意思を自由に操れるという、いわゆるマインドコントロールということが出来るのじゃ!名前は【触手カプセル夢の催眠生活(男版)】じゃ!」
すごいやばい装置じゃねぇかよ!?
昨日の車のおもちゃの二倍は性質が悪いぞおい!
「お前、俺をこの装置に入れてどうするつもりだったんだ!?」
「ふっふっふ…いつでもわしの言うことを聞く奴隷にして、研究費用が尽きた時にこの装置もセットで誰かに売ろうかと…」
とんでもないことを考えてやがった!
俺は思いっきりカプセルを蹴り飛ばすと、触手もろとも焼却処分にした。
少し計算を間違えていたらしく、危うく部屋まで燃えそうになったが、触手が水分をある程度含んでくれていて良かった。
「はぁ…はぁ…頼むから、もう俺で実験するのはやめてくれ…」
「嫌じゃ!やめてしまったらつまらぬではないか!」
「そういう問題じゃないだろう!?」
「ふんっ、大体、わしの研究成果を毎回破壊してくれおって…貴様にはやさしさというものがないのか!」
「だから!俺で実験をしなくても…」
「この分からず屋め!」
そう言って、ゾーネは何かを俺のほうに投げてきた。
あんなへなへなな軌道で俺に当たると…
この俺の油断が命取りだった。
飛んできているものは不意にふたが開くと、中から青色の液体が拡散して飛んできた。
まさか、中に何か入っていたなんて気づくわけがない!
俺はその青い何かに顔を包まれてしまった!
「!!かは!?ごぼっ…」
やばい!不意に顔を包み込んできたこれのせいで息が出来ない!
俺は命の危険を感じ、両手でなんとか少しづつ引き剥がしていく…
確実に引き剥がした後、部屋を見回すとゾーネの姿はどこにもなかった。
まったくゾーネのやつ…おかげで死に掛けたぞ…
そしてお客さんを見送り、ボーっとしていたときだった。
扉をノックする音がして、俺は扉を開けてみる。
そこには、サリィが新聞を持って立っていた。
変にニコニコしている。
「あれ?新聞がこんなにも頻繁に来るのは珍しいな…」
「いいから、受け取って読んでみてよ。あ、そろそろ次の配達があるから…配達が終わったら久しぶりに二人で飲みに行かない?」
「えぇ!?でも、俺は夕方から仕事があるし…」
「少しなら大丈夫だよ!じゃあ、噴水広場で待ち合わせね?」
そういって、サリィは飛び去ってしまった。
これは…まさか、デートってやつか?
まさかなぁ…そんなわかりやすいフラグで成功するはずがないし…
そう思いながら、俺は新聞に目を通す。
・フェルス興国での未結婚男子がついに一人に!?
前回の新聞では、モンスターラグーンという謎の集団のことが取り上げられていたが、その集団が最近急激に増加、未結婚男子を襲うという事件が急増し、昨日の夜12:00に残り一人を残すまでになった。
この集団の詳しいところはまだわからないが、この町の未結婚の女の子たちの過半数が加入していると考えたほうがいいだろう。
そもそも、フェルス興国は全体的に男が少ないため、残されている女の子たちは男1に対し300程、さらに他の国から噂を聞きつけどんどん増加傾向にあるという情報もある。
フェルス女王は近いうちに各国から男を移住させるという大きなプロジェクトを考えており、大きなイベントとなりそうだ。
なお、現在いまだに結婚せずに未結婚男子として存在しているのはデメトリオという青年で、前回の新聞でも取り上げていたが、いまだに出会いがないというのはいかんせん不思議である。
青年にも早めに春が来ることを祈っておくと共に、ここに写真を貼っておくことにする。
「えぇ!?この町で結婚してない男ってもう俺だけ!?」
俺はあまりの衝撃的事実に思わず新聞を落としてしまった。
まさか、俺がこの町で最後の未結婚男子になろうとは…
不意に扉をノックしてくる音が聞こえてきた。
なんだろうか?物凄く不吉な感じがする…
そう思いながら俺は扉を開けた。
「!!」
俺は外の風景を見た瞬間に、反射的に扉を閉める。
そして、一気に鍵を閉めると裏庭の鍵も閉めにかかった。
まさか…ついに俺がモンスターラグーンの標的に!?
俺は思わずそう思った。
だって、外に異常な人数の女の子たちが立っていたんだ。
さらに、俺が扉を開けた瞬間のあの目…
標的を狩る動物の目みたいだった。
そしてしばらくして、俺は心のそこで迷っていた。
たぶん、今日が俺の人生で最高のモテ期…だが、あの扉を開ける前に一回はサリィとデートしないといけない気がする。
変な考えだが、俺にはそんな予感がしてならなかった。
「ここにいても埒が明かない…仕方がない!噴水広場に行こう…」
俺は、だんだん強い力で扉が攻撃されている音を聞きながら噴水広場に行こうと決意した。
といっても、裏庭にも大勢いるだろうし、安全にこの宿から逃げて噴水広場に行くには…
そう思いながら、俺は煙突のほうをちらちら横目で見る。
「やっぱり、アレしかないか?」
本音は行きたくなかったが、他に無事に脱出する方法はない…
俺は今、煙突の中のはしごを上っていた。今頃は顔、真っ黒になってるだろうな…
煙突を上り終えると、俺はそっと宿の裏側の影に隠れながら屋根伝いに逃げていった。
屋根の上に一人もいなかったのが良かった…
もしいたら終わりだったよ…
そして俺は今、噴水広場で空き箱の中に身を隠しながらサリィが来るのを待っているところだ。
どうやら俺の宿の扉は蹴破られたらしく、町中のいたるところにモンスターラグーンのメンバーがいて、いつ見つかってしまうのかひやひやしている。
そのときだった、俺の頭上から風を裂く音が聞こえてきて、あたりが影に覆われる。
それと同時に、すぐ後ろの噴水が突如謎の爆発!
「え!?嘘だろおおお!!」
俺は爆風にあおられ、空き箱ごと吹き飛ばされた。
異常な浮遊感を味わいながら、噴水が爆発した原因を考える。
そして、不意に昨日の晩に見た悪夢のことを思い出した。
その直後、おもいっきり地面に叩きつけられ、空き箱は粉々になった。
「……はっ!?俺は…生きているのか!?」
空き箱がなければ、俺は確実に死んでいただろうな…
ありがとう空き箱…
俺は、近くにあった空き箱の破片を集めて俺の命を救った空き箱に黙祷した。
なんだか、町が騒がしい…
俺はどうやら、町の噴水広場から間逆の、墓地まで飛ばされてしまっていたらしい。
「ここ…ミステリーサークルか何かか?」
俺は自分が立っている場所を見下ろして疑問に思っていた。
周りの墓がある場所とは打って変わり、この場所だけ地面からごっそりと柵やら墓標やらが消えていた。
まぁ、このやわらかい地面のおかげで俺は助かったんだが…
俺は、そこまで深くは考えずに町へと走っていった。
この騒がしさの原因を知りたい俺は、町の前に行くと唖然とした。
第1通りは、倒れている女性たちの姿で埋め尽くされていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
俺は必死に呼びかけ、揺さぶってみると小さなうめき声が聞こえてきた。
他の人たちも呼びかけると返事をしてくれる。
どうやら強い衝撃を受けて地面に倒れていただけのようだ。
第2通りに行くと、俺の目には驚くべき光景が移ってきた。
夢で見た鎧の集団が道端の人たちを剣の背で殴り、次々と気絶させていく。
そして、男を背に背負いながら女性たちはその場にそっと置かれて、その集団は引き返していく。
「……一体あいつらは?なんで俺の見た夢の集団がこんなところに?」
そうぼやきながら、俺は第3通りの自分の宿があるところまで来た。
「……残りの男は後一人です」
第3通りの入り口付近で、鎧の男(声で判断)が、小さな機械に向かって話し込んでいる。
そして、その機械から声が返ってきた。
「なんだあの機械…?」
俺がそう口にすると、思った以上に声が大きかったのだろう、その鎧の兵士が気づいてしまったようだ。
って、こんなに落ち着いていられる状況じゃないぞ!?
「いたぞ!男だ!あいつが最後だ!」
そういいながらこっちに走ってくる鎧の兵士…
「う…うわあぁぁああ!」
「ま、待て!」
俺は即座に来た道を引き返すが、明らかに重そうな鎧を着ている兵士のほうが足が速い!
ついに、俺は第2通りの袋小路に追い詰められてしまった。
「はぁ…はぁ…手間かけさせやがって…安心しろ、殺しはしないからよ」
「いったい、俺たちを気絶させてどこに連れて行く気なんだ?」
「メガロス帝国だ。そこに男たちを連れて行って働かせる」
「なんでいきなり!?」
「ふん…俺たちが知るか、俺達は国の誓いを守り王子の命令を守っているだけだからな…」
まさか…国がらみの事件だと!?
いや、もしかするとこいつが勝手に仕向けただけかも…
あぁ…わからねぇ!!
「俺たちを働かせてその後、仕事が終わった後に俺達はここに戻ってこれるのか!?」
「ふん…そんなわけないだろう?俺たちの国はあくまでも帝国だぞ?国の秘密を知ったものが国に戻れるものか!その後のお前たちは我が国の一員として過ごす」
「そんな!?じゃあ、他の男たちの奥さんはどうするんだ!?この町は俺以外は全員結婚したんだぞ!?」
「知ったことか!俺たちの町では誰も男は結婚していないぞ!女など国内には一人もいないしな」
「な…んだと!?」
そんな馬鹿なことが!?
だとしたら、目の前にいるこいつはどうやって生まれたんだ!?
そもそも、国として成り立たないんじゃないか?
「それなら、お前は一体どうやって生まれたんだ!?」
「ふっ…俺たちの国の国民は全員、孤児だよ!いわゆるもらわれものだ!後悔はしていないがな?」
「な…に…?」
「誰一人結婚していない国で、俺たちのために一緒に働き、残りの人生を過ごしていればそんな奥さんのことなどすぐに忘れるに決まっているさ」
「違うだろ!俺は奥さんがたがどれほどの悲しみを抱くことになるかを心配して…」
「俺たちには関係ねぇ!寝てろ!」
どうやら、目の前の兵士は我慢が出来なくなったようで、俺に剣の背を向け、腹に攻撃を加えようとしてくる。
そのときだった…
いきなりその兵士の後ろから声がした。
「暴力はよくないことだよ?」
「だ、誰だ!?」
その兵士が慌てて後ろを振り向く。
俺もつられてそっちを見ると、そこには墓石と柵で造られた巨大な人形?がしゃべっていた。
兵士はその巨大な人形に攻撃の矛先を変え、攻撃を仕掛けようとする。
それでも、この巨大な人形に対しても剣の背で攻撃を仕掛けようとしている分、こいつはそんなに悪人なのではないのかもしれない。
「ど〜んっ!」
「うぐぅ!?なんという攻撃力なんだ…このままだとやばいかも知れない…」
どうやら、一方的に兵士のほうが押されているようで、対する巨大な人形は攻撃されても分離と再生を繰り返しているため、ダメージが与えられている様子はない。
どうでもいいが、あの人形のちょうど真ん中にある墓石に、時々小さな女の子が見える気がする…俺の気のせいだろうか?
そしてしばらくして、ついに戦いに終止符が打たれる瞬間がやってきた。
「し、しまった!」
兵士の剣が柵に当たりポキリと折れてしまった。
兵士は思わずしりもちをついてしまい、あとずさった。
俺はその後にどんな出来事が起こるのかを見たくなくて、その袋小路から逃げようとしていた。
それに、町がどうなっているのかもいまだに心配だ…
そして、二人を見ながら後ずさっているときだった。
背中に、やけにやわらかい物があたり、俺は不思議に思いながら振り向く。
「……なんだ?誰…」
後ろには、サリィの姉さんのメリィが立っていた。
「なんだ…メリィさんか…」
俺は、知っている人物だったので落ち着き、安心していた。
だが、今日のメリィさんは少し…いや、かなり目が怖かった。
「どこに行こうとしているの?デメトリオ…」
「え?あ…少しここから離れておこうと…」
「駄目よ…絶対に」
…なぜだ?
なんで俺はここにいないといけないんだ?
あぁ…俺はサリィとも噴水広場で待ち合わせするっていうのに、こんなところでのんびり時間を過ごすわけにはいかないのに…
「すいません、でも俺はサリィとも約束があって…」
「だから余計にここにいてもらうわよ?込み入った話があるのよ、あなたにも…あそこで倒れているあいつにもね」
そしてしばらくして、俺は噴水広場でその兵士の話を聞いていた。
「……もうある程度の話はそこの男に話しているんだ。そいつから聞けばいいじゃないか!」
その兵士がそういうと、他の女性たちが一気にこっちを見てくる。
特に、すでに結婚している奥さん方の目が怖いし、メリィさんの後ろにいる女性たちは俺のことを残念なものを見るような目で見てくる。
やめろ!俺は関係ないぞ!
いや、本当に関係がないんだからそんな目で俺を見るのはやめてくれ。
「デメトリオ?話してくれる?」
「あ…はい」
そして、俺が知っていることをすべて話し終わると、非難の目は俺じゃなくて、またもやその兵士に向けられていた。
一気に視線を感じることがなくなり、今俺は非常に解放された気分になって仕方がない。
今ではその兵士が非難の目にさらされている。
さらにしばらくして、俺は生まれて初めてフェルス女王を目にした。
フェルス女王のすぐ後ろにはなんと、見たことのない黒い衣装に身を包んだエルフの女性が控えていた。
どうでもいいことだが…
フェルス女王も魔物娘らしい…のだが…
ずっと前に親父から聞いたリリムという魔物娘に物凄い似ている。
まぁ、主に特徴がだが…うん、高貴な感じだ。
「ふむ…貴様が我が国を脅かそうとしている敵国のものか…では、頼んだぞ」
「はい女王様…しっかり情報を引きずり出して見せますよ。で…その後は?」
「好きにするがよい、こやつの処分は貴様らにゆだねる」
…女王様って、やけに無愛想なんだな?
まぁ、予想していた雰囲気だしなぁ…
やっぱり、付き合うならサリィみたいな話しやすい子かな〜
そういえば、サリィの姿が見えないが…どこにいるんだろうな?
俺は、女王様がその場を去った後、メリィにサリィの居場所を聞こうと詰め寄った。
「メリィさん、サリィのやつは今どこに?」
だが、メリィから帰ってきた返事は俺が考えていたものとはぜんぜん違うものだった。
「サリィなら…帝国に連れて行かれたわ…」
「え!?」
そんな馬鹿な!?たしかあの兵士は男を連れて行くと…
「ありえないじゃないですか!あいつらは男を労働力として…連れて行くといっていたのに…」
「戦闘兵器に改造するって科学者風の男が連れて行ったのよ…」
……敵にもいたんだな、ゾーネみたいな思考のやつが…
でも、戦闘兵器に改造…か…
俺は少しいやらしいことを考えてしまった…
久しぶりに顔が真っ赤になり、俺は慌てて顔を横に振りながら雑念を振り払った。
「……デメトリオ?」
「はい?」
俺はメリィさんに話かけられたときにはもう元に戻っていた。
伊達に今まで宿屋で嫉妬心を抱いていたわけではない…
今ではいやらしい妄想をするのは一日に一回あるかないかのLVのはずだ。
とにかく、サリィは町にいないのか…
「そうなんですか…じゃあ、俺は今から店があるんで…」
あたりはだんだん日が暮れてきており、俺はいつも通り店を開くことにした。
「デメトリオ…今晩、大勢で少しよらせてもらうわよ?」
「はぁ…一応待っておきますね」
そして宿のカウンターで一人、靴下を編んでいた俺は、サリィのことを考えていた。
一体、どうしたんだ俺は…
サリィなんて…ただの幼馴染のはずだったのに…
「すいませ〜ん…」
ん?お客か?
「あ、はい!少々お待ちください!」
そして俺が扉を開けると、やけにナイスバディな女性が立っていた。
「すいません、この宿って…シェフ雇っていませんか?」
「はぁ…?一体どのような料理が作れるのですか?」
俺は嫌な予感がしたので、少し怪訝な顔をしながら聞いてみる。
確かにシェフはいたほうが楽になるが…
どうも俺の宿に長期間居座るやつってろくなやつがいないんだよなぁ…
「まぁ、どんな料理でも材料さえあれば作れるけど?まぁ、材料も何でもいいからまれにすごいのが出来たりしちゃうけど…」
「すごいの?すごいって、味が?」
「いや…前に雇ってもらっていた宿で媚薬を材料に使ってケーキ作っちゃって…パーティで物凄いことになっちゃったのよ…まさか、出席者全員ができ婚するなんて普通思わないでしょ?おかげで首になっちゃったし…」
……なるほどな、なら俺が出せる決断は一つだ!
「すまないが、別の宿屋を探してくれますか?私の宿屋では少々…」
「どの宿屋でもそういわれてしまうのよね〜」
当然だろう、だってそんな話聞いたら、絶対にどの宿屋も雇いたくなくなるに決まってる。
「とにかく、私の宿屋では結構なので…では、今晩限りのお泊りとさせていただきますので、ご了承ください」
「そうだ、ちょっと私の作った料理を食べてみてくださいよ」
「え?ちょ…」
否定しようとする俺に無理やり饅頭というものを食べさせて来た。
饅頭とはこんなに頭がぼやけるようになる食べ物なのか?
俺はある程度時間が立っても頭がぼやけたままだった。
というか、どれほどの時間がたったのかが良くわからない…
「どう?この私の料理のすごさ…わかりました?」
「わか…る…わけ、ないだろう…?」
当然、俺は何を言われても良くわからなかった…
いまだに思考が定まらない…
一体俺に何を食べさせたんだ?
そして、俺の意識がはっきりしたときには、俺は自分の手で書類に名前を書いていた。
「え!?なっ…これ、俺が!?」
「ありがとうございま〜す!私はレベッカっていいます!どうかよろしくお願いしますね?」
「なっ!?はめやがったな!?」
俺は慌てて書類を取り上げて裂こうとするが、運悪く手が届かない!
そして、レベッカは胸元に書類をしまいこんだ。
そして、その直後にまた扉をノックする音が聞こえてくる…
今度は何なんだ!?
そう思い扉を開けると、外にはメリィの姿と、大勢のモンスターラグーンのメンバーの姿があった。
「うわぁ!」
慌てて俺は扉を閉めようとしたが、今度は締め切る前に手をねじ込まれ侵入を許してしまった。
そして俺は、モンスターラグーンのメンバーに地面に押さえつけられてしまった。
いや、たぶん間違いなくゾーネが俺に何かしようとしているに違いないな…
俺は昨日の経験を思い出し、寝ぼけていた頭を無理やり起こすとベッドから起き上がった。
「ひゃぅ!?」
やはりゾーネ…こいつ、また今日も何かしようとしていたな?
「おい、今日は何を俺にしようと思っていたんだ?」
「な、何も?わしは別に何もしようとは思っていなかったぞ?」
「本当だな?」
「ほ、本当じゃ!」
じゃあ、一体ゾーネの後ろでうねっているアレは何なんだ!?
しかも、隣には明らかに怪しいカプセル状の何かが立てかけてあるし…
「嘘つくな!絶対おまえ今日も俺を実験体にしようとしてただろ!」
「ちっ…ばれてしもうたか…」
当たり前だ!昨日もやってきたくせに、二日続けて通用すると思うなよ!
「で…その装置は一体どんな変な効果を持っているんだ?」
どうせろくでもない効果なのはわかっていたが、俺はあえて聞く。
そのほうが、装置を破壊しやすいからな…
「ふん…聞いて驚け?この装置はなんと、中に人を入れてその後、この触手を上から入れると中にいる人の意思を自由に操れるという、いわゆるマインドコントロールということが出来るのじゃ!名前は【触手カプセル夢の催眠生活(男版)】じゃ!」
すごいやばい装置じゃねぇかよ!?
昨日の車のおもちゃの二倍は性質が悪いぞおい!
「お前、俺をこの装置に入れてどうするつもりだったんだ!?」
「ふっふっふ…いつでもわしの言うことを聞く奴隷にして、研究費用が尽きた時にこの装置もセットで誰かに売ろうかと…」
とんでもないことを考えてやがった!
俺は思いっきりカプセルを蹴り飛ばすと、触手もろとも焼却処分にした。
少し計算を間違えていたらしく、危うく部屋まで燃えそうになったが、触手が水分をある程度含んでくれていて良かった。
「はぁ…はぁ…頼むから、もう俺で実験するのはやめてくれ…」
「嫌じゃ!やめてしまったらつまらぬではないか!」
「そういう問題じゃないだろう!?」
「ふんっ、大体、わしの研究成果を毎回破壊してくれおって…貴様にはやさしさというものがないのか!」
「だから!俺で実験をしなくても…」
「この分からず屋め!」
そう言って、ゾーネは何かを俺のほうに投げてきた。
あんなへなへなな軌道で俺に当たると…
この俺の油断が命取りだった。
飛んできているものは不意にふたが開くと、中から青色の液体が拡散して飛んできた。
まさか、中に何か入っていたなんて気づくわけがない!
俺はその青い何かに顔を包まれてしまった!
「!!かは!?ごぼっ…」
やばい!不意に顔を包み込んできたこれのせいで息が出来ない!
俺は命の危険を感じ、両手でなんとか少しづつ引き剥がしていく…
確実に引き剥がした後、部屋を見回すとゾーネの姿はどこにもなかった。
まったくゾーネのやつ…おかげで死に掛けたぞ…
そしてお客さんを見送り、ボーっとしていたときだった。
扉をノックする音がして、俺は扉を開けてみる。
そこには、サリィが新聞を持って立っていた。
変にニコニコしている。
「あれ?新聞がこんなにも頻繁に来るのは珍しいな…」
「いいから、受け取って読んでみてよ。あ、そろそろ次の配達があるから…配達が終わったら久しぶりに二人で飲みに行かない?」
「えぇ!?でも、俺は夕方から仕事があるし…」
「少しなら大丈夫だよ!じゃあ、噴水広場で待ち合わせね?」
そういって、サリィは飛び去ってしまった。
これは…まさか、デートってやつか?
まさかなぁ…そんなわかりやすいフラグで成功するはずがないし…
そう思いながら、俺は新聞に目を通す。
・フェルス興国での未結婚男子がついに一人に!?
前回の新聞では、モンスターラグーンという謎の集団のことが取り上げられていたが、その集団が最近急激に増加、未結婚男子を襲うという事件が急増し、昨日の夜12:00に残り一人を残すまでになった。
この集団の詳しいところはまだわからないが、この町の未結婚の女の子たちの過半数が加入していると考えたほうがいいだろう。
そもそも、フェルス興国は全体的に男が少ないため、残されている女の子たちは男1に対し300程、さらに他の国から噂を聞きつけどんどん増加傾向にあるという情報もある。
フェルス女王は近いうちに各国から男を移住させるという大きなプロジェクトを考えており、大きなイベントとなりそうだ。
なお、現在いまだに結婚せずに未結婚男子として存在しているのはデメトリオという青年で、前回の新聞でも取り上げていたが、いまだに出会いがないというのはいかんせん不思議である。
青年にも早めに春が来ることを祈っておくと共に、ここに写真を貼っておくことにする。
「えぇ!?この町で結婚してない男ってもう俺だけ!?」
俺はあまりの衝撃的事実に思わず新聞を落としてしまった。
まさか、俺がこの町で最後の未結婚男子になろうとは…
不意に扉をノックしてくる音が聞こえてきた。
なんだろうか?物凄く不吉な感じがする…
そう思いながら俺は扉を開けた。
「!!」
俺は外の風景を見た瞬間に、反射的に扉を閉める。
そして、一気に鍵を閉めると裏庭の鍵も閉めにかかった。
まさか…ついに俺がモンスターラグーンの標的に!?
俺は思わずそう思った。
だって、外に異常な人数の女の子たちが立っていたんだ。
さらに、俺が扉を開けた瞬間のあの目…
標的を狩る動物の目みたいだった。
そしてしばらくして、俺は心のそこで迷っていた。
たぶん、今日が俺の人生で最高のモテ期…だが、あの扉を開ける前に一回はサリィとデートしないといけない気がする。
変な考えだが、俺にはそんな予感がしてならなかった。
「ここにいても埒が明かない…仕方がない!噴水広場に行こう…」
俺は、だんだん強い力で扉が攻撃されている音を聞きながら噴水広場に行こうと決意した。
といっても、裏庭にも大勢いるだろうし、安全にこの宿から逃げて噴水広場に行くには…
そう思いながら、俺は煙突のほうをちらちら横目で見る。
「やっぱり、アレしかないか?」
本音は行きたくなかったが、他に無事に脱出する方法はない…
俺は今、煙突の中のはしごを上っていた。今頃は顔、真っ黒になってるだろうな…
煙突を上り終えると、俺はそっと宿の裏側の影に隠れながら屋根伝いに逃げていった。
屋根の上に一人もいなかったのが良かった…
もしいたら終わりだったよ…
そして俺は今、噴水広場で空き箱の中に身を隠しながらサリィが来るのを待っているところだ。
どうやら俺の宿の扉は蹴破られたらしく、町中のいたるところにモンスターラグーンのメンバーがいて、いつ見つかってしまうのかひやひやしている。
そのときだった、俺の頭上から風を裂く音が聞こえてきて、あたりが影に覆われる。
それと同時に、すぐ後ろの噴水が突如謎の爆発!
「え!?嘘だろおおお!!」
俺は爆風にあおられ、空き箱ごと吹き飛ばされた。
異常な浮遊感を味わいながら、噴水が爆発した原因を考える。
そして、不意に昨日の晩に見た悪夢のことを思い出した。
その直後、おもいっきり地面に叩きつけられ、空き箱は粉々になった。
「……はっ!?俺は…生きているのか!?」
空き箱がなければ、俺は確実に死んでいただろうな…
ありがとう空き箱…
俺は、近くにあった空き箱の破片を集めて俺の命を救った空き箱に黙祷した。
なんだか、町が騒がしい…
俺はどうやら、町の噴水広場から間逆の、墓地まで飛ばされてしまっていたらしい。
「ここ…ミステリーサークルか何かか?」
俺は自分が立っている場所を見下ろして疑問に思っていた。
周りの墓がある場所とは打って変わり、この場所だけ地面からごっそりと柵やら墓標やらが消えていた。
まぁ、このやわらかい地面のおかげで俺は助かったんだが…
俺は、そこまで深くは考えずに町へと走っていった。
この騒がしさの原因を知りたい俺は、町の前に行くと唖然とした。
第1通りは、倒れている女性たちの姿で埋め尽くされていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
俺は必死に呼びかけ、揺さぶってみると小さなうめき声が聞こえてきた。
他の人たちも呼びかけると返事をしてくれる。
どうやら強い衝撃を受けて地面に倒れていただけのようだ。
第2通りに行くと、俺の目には驚くべき光景が移ってきた。
夢で見た鎧の集団が道端の人たちを剣の背で殴り、次々と気絶させていく。
そして、男を背に背負いながら女性たちはその場にそっと置かれて、その集団は引き返していく。
「……一体あいつらは?なんで俺の見た夢の集団がこんなところに?」
そうぼやきながら、俺は第3通りの自分の宿があるところまで来た。
「……残りの男は後一人です」
第3通りの入り口付近で、鎧の男(声で判断)が、小さな機械に向かって話し込んでいる。
そして、その機械から声が返ってきた。
「なんだあの機械…?」
俺がそう口にすると、思った以上に声が大きかったのだろう、その鎧の兵士が気づいてしまったようだ。
って、こんなに落ち着いていられる状況じゃないぞ!?
「いたぞ!男だ!あいつが最後だ!」
そういいながらこっちに走ってくる鎧の兵士…
「う…うわあぁぁああ!」
「ま、待て!」
俺は即座に来た道を引き返すが、明らかに重そうな鎧を着ている兵士のほうが足が速い!
ついに、俺は第2通りの袋小路に追い詰められてしまった。
「はぁ…はぁ…手間かけさせやがって…安心しろ、殺しはしないからよ」
「いったい、俺たちを気絶させてどこに連れて行く気なんだ?」
「メガロス帝国だ。そこに男たちを連れて行って働かせる」
「なんでいきなり!?」
「ふん…俺たちが知るか、俺達は国の誓いを守り王子の命令を守っているだけだからな…」
まさか…国がらみの事件だと!?
いや、もしかするとこいつが勝手に仕向けただけかも…
あぁ…わからねぇ!!
「俺たちを働かせてその後、仕事が終わった後に俺達はここに戻ってこれるのか!?」
「ふん…そんなわけないだろう?俺たちの国はあくまでも帝国だぞ?国の秘密を知ったものが国に戻れるものか!その後のお前たちは我が国の一員として過ごす」
「そんな!?じゃあ、他の男たちの奥さんはどうするんだ!?この町は俺以外は全員結婚したんだぞ!?」
「知ったことか!俺たちの町では誰も男は結婚していないぞ!女など国内には一人もいないしな」
「な…んだと!?」
そんな馬鹿なことが!?
だとしたら、目の前にいるこいつはどうやって生まれたんだ!?
そもそも、国として成り立たないんじゃないか?
「それなら、お前は一体どうやって生まれたんだ!?」
「ふっ…俺たちの国の国民は全員、孤児だよ!いわゆるもらわれものだ!後悔はしていないがな?」
「な…に…?」
「誰一人結婚していない国で、俺たちのために一緒に働き、残りの人生を過ごしていればそんな奥さんのことなどすぐに忘れるに決まっているさ」
「違うだろ!俺は奥さんがたがどれほどの悲しみを抱くことになるかを心配して…」
「俺たちには関係ねぇ!寝てろ!」
どうやら、目の前の兵士は我慢が出来なくなったようで、俺に剣の背を向け、腹に攻撃を加えようとしてくる。
そのときだった…
いきなりその兵士の後ろから声がした。
「暴力はよくないことだよ?」
「だ、誰だ!?」
その兵士が慌てて後ろを振り向く。
俺もつられてそっちを見ると、そこには墓石と柵で造られた巨大な人形?がしゃべっていた。
兵士はその巨大な人形に攻撃の矛先を変え、攻撃を仕掛けようとする。
それでも、この巨大な人形に対しても剣の背で攻撃を仕掛けようとしている分、こいつはそんなに悪人なのではないのかもしれない。
「ど〜んっ!」
「うぐぅ!?なんという攻撃力なんだ…このままだとやばいかも知れない…」
どうやら、一方的に兵士のほうが押されているようで、対する巨大な人形は攻撃されても分離と再生を繰り返しているため、ダメージが与えられている様子はない。
どうでもいいが、あの人形のちょうど真ん中にある墓石に、時々小さな女の子が見える気がする…俺の気のせいだろうか?
そしてしばらくして、ついに戦いに終止符が打たれる瞬間がやってきた。
「し、しまった!」
兵士の剣が柵に当たりポキリと折れてしまった。
兵士は思わずしりもちをついてしまい、あとずさった。
俺はその後にどんな出来事が起こるのかを見たくなくて、その袋小路から逃げようとしていた。
それに、町がどうなっているのかもいまだに心配だ…
そして、二人を見ながら後ずさっているときだった。
背中に、やけにやわらかい物があたり、俺は不思議に思いながら振り向く。
「……なんだ?誰…」
後ろには、サリィの姉さんのメリィが立っていた。
「なんだ…メリィさんか…」
俺は、知っている人物だったので落ち着き、安心していた。
だが、今日のメリィさんは少し…いや、かなり目が怖かった。
「どこに行こうとしているの?デメトリオ…」
「え?あ…少しここから離れておこうと…」
「駄目よ…絶対に」
…なぜだ?
なんで俺はここにいないといけないんだ?
あぁ…俺はサリィとも噴水広場で待ち合わせするっていうのに、こんなところでのんびり時間を過ごすわけにはいかないのに…
「すいません、でも俺はサリィとも約束があって…」
「だから余計にここにいてもらうわよ?込み入った話があるのよ、あなたにも…あそこで倒れているあいつにもね」
そしてしばらくして、俺は噴水広場でその兵士の話を聞いていた。
「……もうある程度の話はそこの男に話しているんだ。そいつから聞けばいいじゃないか!」
その兵士がそういうと、他の女性たちが一気にこっちを見てくる。
特に、すでに結婚している奥さん方の目が怖いし、メリィさんの後ろにいる女性たちは俺のことを残念なものを見るような目で見てくる。
やめろ!俺は関係ないぞ!
いや、本当に関係がないんだからそんな目で俺を見るのはやめてくれ。
「デメトリオ?話してくれる?」
「あ…はい」
そして、俺が知っていることをすべて話し終わると、非難の目は俺じゃなくて、またもやその兵士に向けられていた。
一気に視線を感じることがなくなり、今俺は非常に解放された気分になって仕方がない。
今ではその兵士が非難の目にさらされている。
さらにしばらくして、俺は生まれて初めてフェルス女王を目にした。
フェルス女王のすぐ後ろにはなんと、見たことのない黒い衣装に身を包んだエルフの女性が控えていた。
どうでもいいことだが…
フェルス女王も魔物娘らしい…のだが…
ずっと前に親父から聞いたリリムという魔物娘に物凄い似ている。
まぁ、主に特徴がだが…うん、高貴な感じだ。
「ふむ…貴様が我が国を脅かそうとしている敵国のものか…では、頼んだぞ」
「はい女王様…しっかり情報を引きずり出して見せますよ。で…その後は?」
「好きにするがよい、こやつの処分は貴様らにゆだねる」
…女王様って、やけに無愛想なんだな?
まぁ、予想していた雰囲気だしなぁ…
やっぱり、付き合うならサリィみたいな話しやすい子かな〜
そういえば、サリィの姿が見えないが…どこにいるんだろうな?
俺は、女王様がその場を去った後、メリィにサリィの居場所を聞こうと詰め寄った。
「メリィさん、サリィのやつは今どこに?」
だが、メリィから帰ってきた返事は俺が考えていたものとはぜんぜん違うものだった。
「サリィなら…帝国に連れて行かれたわ…」
「え!?」
そんな馬鹿な!?たしかあの兵士は男を連れて行くと…
「ありえないじゃないですか!あいつらは男を労働力として…連れて行くといっていたのに…」
「戦闘兵器に改造するって科学者風の男が連れて行ったのよ…」
……敵にもいたんだな、ゾーネみたいな思考のやつが…
でも、戦闘兵器に改造…か…
俺は少しいやらしいことを考えてしまった…
久しぶりに顔が真っ赤になり、俺は慌てて顔を横に振りながら雑念を振り払った。
「……デメトリオ?」
「はい?」
俺はメリィさんに話かけられたときにはもう元に戻っていた。
伊達に今まで宿屋で嫉妬心を抱いていたわけではない…
今ではいやらしい妄想をするのは一日に一回あるかないかのLVのはずだ。
とにかく、サリィは町にいないのか…
「そうなんですか…じゃあ、俺は今から店があるんで…」
あたりはだんだん日が暮れてきており、俺はいつも通り店を開くことにした。
「デメトリオ…今晩、大勢で少しよらせてもらうわよ?」
「はぁ…一応待っておきますね」
そして宿のカウンターで一人、靴下を編んでいた俺は、サリィのことを考えていた。
一体、どうしたんだ俺は…
サリィなんて…ただの幼馴染のはずだったのに…
「すいませ〜ん…」
ん?お客か?
「あ、はい!少々お待ちください!」
そして俺が扉を開けると、やけにナイスバディな女性が立っていた。
「すいません、この宿って…シェフ雇っていませんか?」
「はぁ…?一体どのような料理が作れるのですか?」
俺は嫌な予感がしたので、少し怪訝な顔をしながら聞いてみる。
確かにシェフはいたほうが楽になるが…
どうも俺の宿に長期間居座るやつってろくなやつがいないんだよなぁ…
「まぁ、どんな料理でも材料さえあれば作れるけど?まぁ、材料も何でもいいからまれにすごいのが出来たりしちゃうけど…」
「すごいの?すごいって、味が?」
「いや…前に雇ってもらっていた宿で媚薬を材料に使ってケーキ作っちゃって…パーティで物凄いことになっちゃったのよ…まさか、出席者全員ができ婚するなんて普通思わないでしょ?おかげで首になっちゃったし…」
……なるほどな、なら俺が出せる決断は一つだ!
「すまないが、別の宿屋を探してくれますか?私の宿屋では少々…」
「どの宿屋でもそういわれてしまうのよね〜」
当然だろう、だってそんな話聞いたら、絶対にどの宿屋も雇いたくなくなるに決まってる。
「とにかく、私の宿屋では結構なので…では、今晩限りのお泊りとさせていただきますので、ご了承ください」
「そうだ、ちょっと私の作った料理を食べてみてくださいよ」
「え?ちょ…」
否定しようとする俺に無理やり饅頭というものを食べさせて来た。
饅頭とはこんなに頭がぼやけるようになる食べ物なのか?
俺はある程度時間が立っても頭がぼやけたままだった。
というか、どれほどの時間がたったのかが良くわからない…
「どう?この私の料理のすごさ…わかりました?」
「わか…る…わけ、ないだろう…?」
当然、俺は何を言われても良くわからなかった…
いまだに思考が定まらない…
一体俺に何を食べさせたんだ?
そして、俺の意識がはっきりしたときには、俺は自分の手で書類に名前を書いていた。
「え!?なっ…これ、俺が!?」
「ありがとうございま〜す!私はレベッカっていいます!どうかよろしくお願いしますね?」
「なっ!?はめやがったな!?」
俺は慌てて書類を取り上げて裂こうとするが、運悪く手が届かない!
そして、レベッカは胸元に書類をしまいこんだ。
そして、その直後にまた扉をノックする音が聞こえてくる…
今度は何なんだ!?
そう思い扉を開けると、外にはメリィの姿と、大勢のモンスターラグーンのメンバーの姿があった。
「うわぁ!」
慌てて俺は扉を閉めようとしたが、今度は締め切る前に手をねじ込まれ侵入を許してしまった。
そして俺は、モンスターラグーンのメンバーに地面に押さえつけられてしまった。
12/01/09 22:44更新 / デメトリオン
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