52 純然たる格差
さぁて…今現在俺たちは、この大きな町であるデクスの門の前で適正審査とやらを受けている最中なのだが……
変に警備が厳重な気がするんだよなぁ…
いや、まぁ…厳重であることは不審者を通さないって事だろうし、いいとは思うけどね？
で…他のモンスターラグーンのメンバーのみんなは審査も終わってデクス内に入ったから、俺も早く入ってのんびりしたいと思っていたときだった…
ピー！！ピー！！
な、なんだぁ！？ま、まさか…金属にも反応する装置なのか…？
って事は、このズボンのベルトもはずして置かないといけないじゃないか！！
そう思って俺は即座に金属をはずしてみるんだが…あれ？違ったかな…？
気がつくと俺は、物凄い武装された集団に囲まれていたんだよ！！
「えぇ！？な、なんですか一体！？」
「……国のしきたりにより、コレを着用していただきます」
で、いきなり集団に囲まれた俺は、犬の首輪…？を渡されたのだった…
な、なんだよこれは！？えぇっ！？
「ちょっと待ってくださいよ！！いきなりこれを着用しろって言われても…抵抗ありますって！！」
「これが規則でございますゆえ…お願いしました。後、この書類にサインをお願いします」
そう言って変な紙を渡して来るし…えっと…通行証？
ま、まぁ…通行証にはサインしないとダメだよなぁ…やっぱり…
こうして、俺は少し時間はかかったけど、ようやくデクス領域に入ることが出来たんだよ…
いやぁ…体力的にも疲れたぜ…
そして俺がメリィのところに行くと、メリィは少し何かを考えてから俺にこういってきたんだ。
「ちょっと私…今から用事あるから…先にあそこの【ナイト＝ファミリー】って宿屋で休んでて…デメトリオ、あなたは今日は絶対に寝ないこと…いいわね？」
「えぇ！？いきなり寝るなって言われても…正直困るんですけど！！」
いや…だって、人間に睡眠というものは必要不可欠な要素ですよ！？それをするなって…一体どういうつもりなんだよメリィは！？
はっ…ま、まさか…俺を睡眠不足に陥れて精神的にダメージを与える手段を行使しようとしているのでは…
ひ、ひえぇ…なんて恐ろしい…
俺はこの恐ろしい計画を知ったとたんにあることを決意した…
今日は絶対に快眠してやるってなぁ！！
た、たまには…俺にもメリィに対して反抗してもいいと思うんだって！！
「いっくよーールタちゃーん！！」
「ふっ…あたいの神速の速度は時間を止めて…あいたぁっ！！」
「あははーー！！当たったーー！！」
「むぅーー！！きーちゃんめーー！！くらぇーー！！」
「あわわ…み、皆さんやめましょうよ…夜ですよ？」
……どうして俺の隣の部屋に、子供メンバーが集まって枕投げして遊んでいるんだよおい！！
俺は数時間前に快眠するって宣言しているんだぞ！？もう夜の１１時なんだから子供は早く寝ろよ！！
今現在…予想以上に壁が薄いというこの宿屋内で内心、イライラをためている俺…
俺の宿屋は壁の防音対策は…普通なんだぞ！？さすがにここまでダイレクトに音が聞こえてくるって事は無い！！
やはり…壁の厚さも大切な要素だなって、再確認した瞬間だね…うん
……そういえば、旅に出てからフェルス興国にいたときみたいに酒場に飲みに行くことが無くなったよなぁ…
……行きたい…行きたいけどお金が無い…
まさに…今の俺からすればそれが問題だった…
いや、別に一番安い酒…シュミットでもいいんだ…
正直に言えば…飲みに行くときはいつもそれなんだが…今はそのお金を出すことが出来ないくらいにピンチなんだ！！
旅はまだ終わったわけじゃないから、今金庫にあるお金は使いたくない…
でも…ここにいて眠らずに無駄に時間を過ごすのも惜しい…
あぁーー！！どうすればいいんだよぉーー！！
そしてしばらく考えた結果俺が導き出した結論…それは！！
「よし…チョコレートと裂きイカチーズでも買って来よう…暇だし」
……あればいいけどなぁ…裂きイカチーズ…
そして、俺はほんのり街灯の灯りが照らす夜の道を、お菓子を求めて歩き始めたのだった…
……ふっふっふ、収穫を聞きたいか！？成功だよ！！
バッチリ両方お店においてあったぜ！！
いやぁ…お店まで結構曲がり角を歩いたけど、見つかったこともあって俺の機嫌は上機嫌だぜ！！
さぁて…後は宿に戻って食べるだけ……
「むきゅっ！？」
そして曲がり角を曲がったとき、俺はいきなり…本当にいきなり頭を殴られてその場に倒れこんだのであった…
あ、変な声を上げて倒れこんだわけだから…むきゅ！？についてはそこまで詮索しないでくれよ？
……うぅ…なんだよ一体…？
俺が意識を取り戻すと…俺は鉄の檻の中にいたんだよ！！
ど、どうして俺は鉄の檻の中に…！？俺…さっきまで裂きイカチーズとチョコレートを買って上機嫌で帰っていたはず…だよな…？
そして、俺が気持ちの整理が出来ずにいた時だった…
「ま、眩しい…な、なんだよ一体…」
いきなりスポットライト的なものが当てられ、俺の檻が照らされる…
そして、思わず辺りを見てみると…そこにはなんと！！
物凄い数のヴァンパイアやサキュバスの女性たちが丁寧に席に座って、俺の方を好奇の目で見ているのが見えたんだよ！！
「さぁーー！！淑女の皆様お待たせいたしました…久方ぶりの人間オークションでございます！！今回の商品はこちら…№９８０２番、デメトリオ＝スタンダート！！この商品の売りは何といっても将来の期待性の高さ！！童貞であり未だ夜の世界を知らない未改造のボディが魅力！！なおかつ…非力なため、絶対に逃亡する心配なし！！」
……へ、変に詳しいじゃないか…って、そんな事はいいんだ！！
これは…人身売買じゃないのか！？これは…絶対にしてはいけないことの一つだろ！？
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ！！人身売買は世界律で禁止されて…」
俺がこういったとたんに、思わず周りから含み笑いが聞こえてきたんだが…
俺はおかしいことを言ったか！？言ってないぜ！？
「あなたがここにいるって事は、通行証に書かれてあった禁則事項のうち、３つ以上破ったゆえ、仕方が無いということになっておりますので…通行証をよく読まなかったあなたのミスなんですよ」
な…んだと！？そ、そんな事どこにも書いていなかったぞ！？
俺は必死に通行証にサインしたときのことを思い出していたが…通行証にはこのデクス内に行くことを許可するとしか書いていなかったぜ！？
…わかったぞ！！この司会者は嘘をついているんだ！！きっとそうに違いないぜ！！
「ま、待ってくださいよ！！俺が通行証を見たときはそんな内容…書かれていませんでしたよ！？」
「…では、この通行証の裏をご覧下さい…」
裏？裏だと…？おいおい…裏があったなんて聞いてないぞ！？
俺はそう思いながら裏を見てみるんだけど…
【注意書き：以下の条件を３つ以上破った旅人の方は、どのような目に会っても一切責任を取ることが出来ません。自己責任になりますので、ご了承ください…
① 旅人の男性の方は必ず首輪を着用しておくこと
② 夜１１時以降は外出しないこと
③ マスターベーションは行わないこと
④ 外出の際は、必ず二人以上で行動すること
⑤ 寝ているときになにが起こったとしても、文句は言わないこと
以上の５つの条件をよくお読みして、通行証にはサインをお願いいたします】
……か、書いてたよ…しかも、綺麗に３つ破っているし…これは、自業自得だって事なのかよ！？
だから…今、つかまっていると…そういう事か！？
嘘だろぉ！？こ、こんな裏側まで通行証に目を通す奴っているのか！？
などと内心では言いながら、結局俺が違反していたから、こんな目にあっても仕方がないと…わかりやすく言えば、こういうことさ…
ん…待てよ…この場合、俺って確実に奴隷…だよなぁ？
一生…こき使われる存在って事だよなぁ？
……ふっ…
「嫌だぁーーー！！そんなの嫌だーー！！こ、こんなの間違ってるって！！今すぐ返してくださいよ！！」
そう…俺は半分なきそうな表情でこういったのだった…プライド？
ふっ…そんなものが俺に、あると思ったのかい？
プライドよりも…俺は今、生き延びたいんだよ！！
残りの人生をずっとこき使われて終わるなんて…冗談じゃないぞ！？
ま、まぁ…ここまで嫌がったら司会者のサキュバスの女性も俺に哀れみの心を向けてくれるだろう……だって、これだけ嫌がったんだし…な？
「さぁて…もういつも見慣れた光景ですし…皆様！！お手元のパネルをタッチして金額を入力してください！！レッツ…パーティーー！！」
……世の中は…
世の中は…無情…なんですね…
いや、こんな気はしていたよ……はぁ…
いやいや…レッツパーティーじゃねえよ…これだけ嫌がったんだから帰してくれてもいいじゃないかよぉ…
俺は内心、この無情な世の中に絶望感を感じていたのだった…
それに反して…彼女がたは俺にたいそうな値段をつけているし…
「おぉーーっと！！４０金貨でましたーー！！さぁ…このままでは№４００のお客様が落札するぞーー！？」
ちょ…４、４０金貨だって…！？ふ…ふはははっ！！
「やめておいた方がいいですよ！！俺にそんな価値ないですからねーー！！」
思わず俺はこう言ってしまったぜ…いや、俺なんか、銅貨４枚でも十分だって！
……自分で言うのもなんだけどな…はぁ…
「…！？えっ！？」
ん！？何だ！？なにがあったんだ！？俺に関係あることか！？
ふぅ…のちの自分の人生がかかっていると思うと…敏感になってしまうから困るよな…
「…エヴァリン様の使用人の方ですよね！？いいんですか！？金貨４００枚も…」
「……ご主人様の命令なので…即決で」
「落札ですーー！！ありがとうございましたーー！！」
……で、俺はそんな価値ないのに金貨４００枚で落札されたのだった…
「な、なんで俺なんか…そ、そうだ！！今から俺を逃がしてくださいよ！」
俺は、俺を落札した眼光が鋭いリザードマンの女性…（メイド服）の女性に話しかけてみたんだが…
「…ご主人様が早々に帰宅しろとの事なので…急ぎます」
……これは、逃がしてくれそうにないなぁ…はぁ…
そうしてしばらくすると…俺は物凄い豪邸の前に立っていたんだぜ…
す、すげぇ…ここ、豪邸が多いって思ってたけど…これは既に規模が違うんじゃないのか！？
……だが、ここに入ってしまうと、俺はこれから先の人生をずっと奴隷として過ごすのか…
ふっ…せめて、俺の最後の足掻きを見ててくれ！！
「うぉおおお！！激烈逃亡劇！！」
この洗練されたフォームはまるで流れる水と非常口の緑のお兄さんのポーズを併せ持った完璧なフォーム！！
これで…俺は逃げ切って見せるぜ！！
俺の計算では…逃亡速度マッハ１０は確実か…
……まぁ、こんな妄想を抱いていても、現実はもっと厳しいんですけどね…
俺は逃げるポーズをとった瞬間、体にチェーンを巻きつけられて無理やり連れていかれたのだった…
俺も男だし…いつまでもそのことを引っ張ったりはしないぜ？
うん…ここで、残りの一生を終えるのもいいじゃないか…三食でるし…
いや…でも…でもなぁ…労働とかさせられるのは嫌だなぁ…はぁ…
結局、頭では無理やり納得しようとしても…この現実は俺には重すぎたんだ…
これは…しばらくは続きそうだな…
なんて思っていると、物凄い大きな扉からそれに似合わない背が小さいヴァンパイアの女性がてくてくと歩いてきたんだ…
「ふん…ペロルが連れてきたから中々の上玉と思ったら…見た目からして屑ではないか！！」
……な、生意気だなこの人…背が小さいくせに…
なんて思いながら俺はじっと黙り込んでいたわけだ…
いや、口は災いを呼ぶんだって！！な？今までだってそうだったし…
今は…耐える時間だ！！
「はっ！！エヴァリン様がこれ以上無いほどのゴミ屑のような生き物を一度見てみたいといっておりましたので、連れてきたしだいでございます！」
ぐはぁっ！？け、敬語で結構酷いこと言ったぞ…
俺は相変わらず無言だったが…心に物凄いダメージを食らったのだった…
ご、ゴミ屑っておい……酷い…
「まぁいい！！そこの下等な物！！これから私の為に全力を尽くすのだぞ！では…私は今からディナーの時間だ…お前はそこのお菓子の詰め合わせでも食しているがいい！！」
「では…ディナーの用意をいたします」
「あぁ…早くしてくれ」
……行ったか…
なんだよ！！あの態度！！物凄くえらそうじゃないか！！
やっぱり…金持ちってあんなのばっかりなのかよ！！生意気だ…
誰が下等な物だっての！！こっちはちゃんと人間の負け組で通ってるんだ！！バカにするなって！！
だいたい…いきなりゴミ屑とか礼儀がだな…
……お？こ、このお菓子、おいしいじゃないか…
あっ！！生産中止になったチーズから揚げスナックがあるじゃないか！！
ラッキー！！ひゃっほーい！！
そして無我夢中でお菓子を食べる俺…って、ちょっと待て！！
なんで俺はお菓子に釣られているんだよ！！今の瞬間から逃げるためのことを考えないといけないんじゃないのかって！！
危ない…もうすぐ罠に引っかかるところだったぜ…
あっ！！そこ！！既に釣られているじゃねえかとか言わない！！
よし…気を取り直して逃亡計画を考えるとしよう…
えっと、ここは一階だから窓から逃げるのが一番だが…
そう思いながら窓に近づいてみる…こ、これは…！？
普通に鍵を開けることが出来るじゃないか…
あの二人は今…食事中だし…ラッキーー！！
そうして俺はカッコよく窓をまたいで外に出たんだが…
その瞬間、ビーって大きな音が屋敷内に鳴り響いたんだよ！！
まったく…真夜中だってのに迷惑なことだぜ…
だが、こんなことを気にしている場合じゃないからな…確実に…逃げさせてもらうぜ！！
「ふぅ…この調子だったら無事に逃げれそうだな…」
そう言いながら、草むらの中に隠れながら移動している俺…
あんなに大きな音なのに追っ手が来ないってのもラッキーだぜ！！
そう思っていたとき、俺は肩を誰かに叩かれたわけだが…
「悪いな…今は逃げている最中だから無視してください」
俺はこう答えてさらにそっと出口に向かって草むらをすすんでいった…んだが…
まったく…何回も肩を叩かないでくれないか…？無視してくれって…
「……どこに行くつもりですか？」
この瞬間…俺の周りの時間は一瞬で止まったぜ…
な、なんと…そこにはあのジパングブレード…KATANAって名前の武器を大量に腰にかけて…ペロルって呼ばれていた人が立っていたんだよ…
くそぉ！！い、一体いつの間に…！？
こ、こうなったら…逃げ切るしかない！！出口までは１００ｍ…いけるか！？
俺は即座に考え、逃亡を開始した！！
「……はぁっ…めんどくさいですね…【冥土流剣術：愛嬢悪武羅威主】！！」
ま、まさかの当て字技…だとぉ！？
だけど…こんな単純な攻撃…俺だって、無駄に今までの戦闘を後ろの方で見ていたわけじゃないんだぜ？
そう…俺はこの瞬間、この攻撃を右斜めによけて…攻撃をかわしたんだ！！
そう思っていたときだった…
顔を上げると、ペロルの綺麗な右足がそこにあったわけだぜ…
おぉっ！！なんと美しいふとも…ぐぼぁっ！？
そして俺はその後、かかと落としを食らって、その後ふらついているときに回し蹴りを食らって屋敷の方に飛ばされて…綺麗に窓から室内に戻ったのだった…
これは…俺の敗因はたかが当て字技と…油断したことかな？
恐るべし…【アイジョウオムライス】…がくっ…
「おい！！そこのゴミ屑…逃げたのに気絶できると思うな！！」
ぐはっ！？け、蹴りをわき腹に的確に…入れるだと！？
こ、こいつ…背が小さくて生意気な奴としか思っていなかったけど…なんて強い…
どうでもいいけど…凄く楽しそうだ…こ、この人は…Sだな…
「だいたい…折角私が５００金貨などという少ない金でお前を買ったのに、逃げるとはどういうことだ？」
「だ、だって…俺、まだ人生をエンジョイしていないから…奴隷として一生過ごすのは嫌なんですよぉ…けふっ…」
蹴られた威力が強くて…素朴に痛い…
「…なに？お前に抵抗する権限なんて無いんだよゴミ屑が！！」
「ひ…酷い…俺にだって…デメトリオって名前が…」
本気で泣きたくなってきた…うぅ…
「お前の名前なんてどうでもいい！！お前で十分だお前で！！だが…くっくっく…」
そしてふいに笑い始めるこのお方……な、なんだ？
「ペロル、こいつを地下にでも閉じ込めておけ！私は疲れたから少し眠る…明日はこのゴミ屑でも味わうからな…最高級の褒美だ…はっはっは！！」
「だ、ダメです！！エヴァリン様！！このようなゴミ屑の精を摂取しては血が穢れてしまいます！！」
……ぐふっ…だ、だから…ペロルさんは一言の殺傷力が…大きいんですよ…
「なに…この世界で最低のゴミ屑の味を味わっておくのも教養だろう…おい！！お前！！」
「だからデメトリオだって…」
「そんな事はどうでもいい！！お前は明日…高貴な存在である私と交わるのだ…その事実に感謝しながら眠るがいい！！」
……だから、そういったことは愛し合っているもの同士でやるべきものなんだって…何度言えばわかるんだよ！！
でも…そのことを言っても聞いてもらえない気がするなぁ…
そして俺は…地下室に連れて行かれたのだった…
…地下室は、殺風景なんだな…少しは豪華だと期待していたんだが…
しかも…ロックが３重というこの厳重さ…半端じゃないぜ…
「……あなたのような者が…ご主人様のお相手を出来るなんて…ご主人様の考えはよくわかりません…」
いや…俺に言われても…というか…
「そう思うんだったら…俺を逃がしてくださいよ…」
これはこの瞬間こうつぶやいたが…ペロルさんは俺のこの言葉を無視して上に上がっていったのだった…
はぁ…眠れるかな……
正直、いろいろなことが起こって眠れない気がするのは…俺だけかな…
変に警備が厳重な気がするんだよなぁ…
いや、まぁ…厳重であることは不審者を通さないって事だろうし、いいとは思うけどね？
で…他のモンスターラグーンのメンバーのみんなは審査も終わってデクス内に入ったから、俺も早く入ってのんびりしたいと思っていたときだった…
ピー！！ピー！！
な、なんだぁ！？ま、まさか…金属にも反応する装置なのか…？
って事は、このズボンのベルトもはずして置かないといけないじゃないか！！
そう思って俺は即座に金属をはずしてみるんだが…あれ？違ったかな…？
気がつくと俺は、物凄い武装された集団に囲まれていたんだよ！！
「えぇ！？な、なんですか一体！？」
「……国のしきたりにより、コレを着用していただきます」
で、いきなり集団に囲まれた俺は、犬の首輪…？を渡されたのだった…
な、なんだよこれは！？えぇっ！？
「ちょっと待ってくださいよ！！いきなりこれを着用しろって言われても…抵抗ありますって！！」
「これが規則でございますゆえ…お願いしました。後、この書類にサインをお願いします」
そう言って変な紙を渡して来るし…えっと…通行証？
ま、まぁ…通行証にはサインしないとダメだよなぁ…やっぱり…
こうして、俺は少し時間はかかったけど、ようやくデクス領域に入ることが出来たんだよ…
いやぁ…体力的にも疲れたぜ…
そして俺がメリィのところに行くと、メリィは少し何かを考えてから俺にこういってきたんだ。
「ちょっと私…今から用事あるから…先にあそこの【ナイト＝ファミリー】って宿屋で休んでて…デメトリオ、あなたは今日は絶対に寝ないこと…いいわね？」
「えぇ！？いきなり寝るなって言われても…正直困るんですけど！！」
いや…だって、人間に睡眠というものは必要不可欠な要素ですよ！？それをするなって…一体どういうつもりなんだよメリィは！？
はっ…ま、まさか…俺を睡眠不足に陥れて精神的にダメージを与える手段を行使しようとしているのでは…
ひ、ひえぇ…なんて恐ろしい…
俺はこの恐ろしい計画を知ったとたんにあることを決意した…
今日は絶対に快眠してやるってなぁ！！
た、たまには…俺にもメリィに対して反抗してもいいと思うんだって！！
「いっくよーールタちゃーん！！」
「ふっ…あたいの神速の速度は時間を止めて…あいたぁっ！！」
「あははーー！！当たったーー！！」
「むぅーー！！きーちゃんめーー！！くらぇーー！！」
「あわわ…み、皆さんやめましょうよ…夜ですよ？」
……どうして俺の隣の部屋に、子供メンバーが集まって枕投げして遊んでいるんだよおい！！
俺は数時間前に快眠するって宣言しているんだぞ！？もう夜の１１時なんだから子供は早く寝ろよ！！
今現在…予想以上に壁が薄いというこの宿屋内で内心、イライラをためている俺…
俺の宿屋は壁の防音対策は…普通なんだぞ！？さすがにここまでダイレクトに音が聞こえてくるって事は無い！！
やはり…壁の厚さも大切な要素だなって、再確認した瞬間だね…うん
……そういえば、旅に出てからフェルス興国にいたときみたいに酒場に飲みに行くことが無くなったよなぁ…
……行きたい…行きたいけどお金が無い…
まさに…今の俺からすればそれが問題だった…
いや、別に一番安い酒…シュミットでもいいんだ…
正直に言えば…飲みに行くときはいつもそれなんだが…今はそのお金を出すことが出来ないくらいにピンチなんだ！！
旅はまだ終わったわけじゃないから、今金庫にあるお金は使いたくない…
でも…ここにいて眠らずに無駄に時間を過ごすのも惜しい…
あぁーー！！どうすればいいんだよぉーー！！
そしてしばらく考えた結果俺が導き出した結論…それは！！
「よし…チョコレートと裂きイカチーズでも買って来よう…暇だし」
……あればいいけどなぁ…裂きイカチーズ…
そして、俺はほんのり街灯の灯りが照らす夜の道を、お菓子を求めて歩き始めたのだった…
……ふっふっふ、収穫を聞きたいか！？成功だよ！！
バッチリ両方お店においてあったぜ！！
いやぁ…お店まで結構曲がり角を歩いたけど、見つかったこともあって俺の機嫌は上機嫌だぜ！！
さぁて…後は宿に戻って食べるだけ……
「むきゅっ！？」
そして曲がり角を曲がったとき、俺はいきなり…本当にいきなり頭を殴られてその場に倒れこんだのであった…
あ、変な声を上げて倒れこんだわけだから…むきゅ！？についてはそこまで詮索しないでくれよ？
……うぅ…なんだよ一体…？
俺が意識を取り戻すと…俺は鉄の檻の中にいたんだよ！！
ど、どうして俺は鉄の檻の中に…！？俺…さっきまで裂きイカチーズとチョコレートを買って上機嫌で帰っていたはず…だよな…？
そして、俺が気持ちの整理が出来ずにいた時だった…
「ま、眩しい…な、なんだよ一体…」
いきなりスポットライト的なものが当てられ、俺の檻が照らされる…
そして、思わず辺りを見てみると…そこにはなんと！！
物凄い数のヴァンパイアやサキュバスの女性たちが丁寧に席に座って、俺の方を好奇の目で見ているのが見えたんだよ！！
「さぁーー！！淑女の皆様お待たせいたしました…久方ぶりの人間オークションでございます！！今回の商品はこちら…№９８０２番、デメトリオ＝スタンダート！！この商品の売りは何といっても将来の期待性の高さ！！童貞であり未だ夜の世界を知らない未改造のボディが魅力！！なおかつ…非力なため、絶対に逃亡する心配なし！！」
……へ、変に詳しいじゃないか…って、そんな事はいいんだ！！
これは…人身売買じゃないのか！？これは…絶対にしてはいけないことの一つだろ！？
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ！！人身売買は世界律で禁止されて…」
俺がこういったとたんに、思わず周りから含み笑いが聞こえてきたんだが…
俺はおかしいことを言ったか！？言ってないぜ！？
「あなたがここにいるって事は、通行証に書かれてあった禁則事項のうち、３つ以上破ったゆえ、仕方が無いということになっておりますので…通行証をよく読まなかったあなたのミスなんですよ」
な…んだと！？そ、そんな事どこにも書いていなかったぞ！？
俺は必死に通行証にサインしたときのことを思い出していたが…通行証にはこのデクス内に行くことを許可するとしか書いていなかったぜ！？
…わかったぞ！！この司会者は嘘をついているんだ！！きっとそうに違いないぜ！！
「ま、待ってくださいよ！！俺が通行証を見たときはそんな内容…書かれていませんでしたよ！？」
「…では、この通行証の裏をご覧下さい…」
裏？裏だと…？おいおい…裏があったなんて聞いてないぞ！？
俺はそう思いながら裏を見てみるんだけど…
【注意書き：以下の条件を３つ以上破った旅人の方は、どのような目に会っても一切責任を取ることが出来ません。自己責任になりますので、ご了承ください…
① 旅人の男性の方は必ず首輪を着用しておくこと
② 夜１１時以降は外出しないこと
③ マスターベーションは行わないこと
④ 外出の際は、必ず二人以上で行動すること
⑤ 寝ているときになにが起こったとしても、文句は言わないこと
以上の５つの条件をよくお読みして、通行証にはサインをお願いいたします】
……か、書いてたよ…しかも、綺麗に３つ破っているし…これは、自業自得だって事なのかよ！？
だから…今、つかまっていると…そういう事か！？
嘘だろぉ！？こ、こんな裏側まで通行証に目を通す奴っているのか！？
などと内心では言いながら、結局俺が違反していたから、こんな目にあっても仕方がないと…わかりやすく言えば、こういうことさ…
ん…待てよ…この場合、俺って確実に奴隷…だよなぁ？
一生…こき使われる存在って事だよなぁ？
……ふっ…
「嫌だぁーーー！！そんなの嫌だーー！！こ、こんなの間違ってるって！！今すぐ返してくださいよ！！」
そう…俺は半分なきそうな表情でこういったのだった…プライド？
ふっ…そんなものが俺に、あると思ったのかい？
プライドよりも…俺は今、生き延びたいんだよ！！
残りの人生をずっとこき使われて終わるなんて…冗談じゃないぞ！？
ま、まぁ…ここまで嫌がったら司会者のサキュバスの女性も俺に哀れみの心を向けてくれるだろう……だって、これだけ嫌がったんだし…な？
「さぁて…もういつも見慣れた光景ですし…皆様！！お手元のパネルをタッチして金額を入力してください！！レッツ…パーティーー！！」
……世の中は…
世の中は…無情…なんですね…
いや、こんな気はしていたよ……はぁ…
いやいや…レッツパーティーじゃねえよ…これだけ嫌がったんだから帰してくれてもいいじゃないかよぉ…
俺は内心、この無情な世の中に絶望感を感じていたのだった…
それに反して…彼女がたは俺にたいそうな値段をつけているし…
「おぉーーっと！！４０金貨でましたーー！！さぁ…このままでは№４００のお客様が落札するぞーー！？」
ちょ…４、４０金貨だって…！？ふ…ふはははっ！！
「やめておいた方がいいですよ！！俺にそんな価値ないですからねーー！！」
思わず俺はこう言ってしまったぜ…いや、俺なんか、銅貨４枚でも十分だって！
……自分で言うのもなんだけどな…はぁ…
「…！？えっ！？」
ん！？何だ！？なにがあったんだ！？俺に関係あることか！？
ふぅ…のちの自分の人生がかかっていると思うと…敏感になってしまうから困るよな…
「…エヴァリン様の使用人の方ですよね！？いいんですか！？金貨４００枚も…」
「……ご主人様の命令なので…即決で」
「落札ですーー！！ありがとうございましたーー！！」
……で、俺はそんな価値ないのに金貨４００枚で落札されたのだった…
「な、なんで俺なんか…そ、そうだ！！今から俺を逃がしてくださいよ！」
俺は、俺を落札した眼光が鋭いリザードマンの女性…（メイド服）の女性に話しかけてみたんだが…
「…ご主人様が早々に帰宅しろとの事なので…急ぎます」
……これは、逃がしてくれそうにないなぁ…はぁ…
そうしてしばらくすると…俺は物凄い豪邸の前に立っていたんだぜ…
す、すげぇ…ここ、豪邸が多いって思ってたけど…これは既に規模が違うんじゃないのか！？
……だが、ここに入ってしまうと、俺はこれから先の人生をずっと奴隷として過ごすのか…
ふっ…せめて、俺の最後の足掻きを見ててくれ！！
「うぉおおお！！激烈逃亡劇！！」
この洗練されたフォームはまるで流れる水と非常口の緑のお兄さんのポーズを併せ持った完璧なフォーム！！
これで…俺は逃げ切って見せるぜ！！
俺の計算では…逃亡速度マッハ１０は確実か…
……まぁ、こんな妄想を抱いていても、現実はもっと厳しいんですけどね…
俺は逃げるポーズをとった瞬間、体にチェーンを巻きつけられて無理やり連れていかれたのだった…
俺も男だし…いつまでもそのことを引っ張ったりはしないぜ？
うん…ここで、残りの一生を終えるのもいいじゃないか…三食でるし…
いや…でも…でもなぁ…労働とかさせられるのは嫌だなぁ…はぁ…
結局、頭では無理やり納得しようとしても…この現実は俺には重すぎたんだ…
これは…しばらくは続きそうだな…
なんて思っていると、物凄い大きな扉からそれに似合わない背が小さいヴァンパイアの女性がてくてくと歩いてきたんだ…
「ふん…ペロルが連れてきたから中々の上玉と思ったら…見た目からして屑ではないか！！」
……な、生意気だなこの人…背が小さいくせに…
なんて思いながら俺はじっと黙り込んでいたわけだ…
いや、口は災いを呼ぶんだって！！な？今までだってそうだったし…
今は…耐える時間だ！！
「はっ！！エヴァリン様がこれ以上無いほどのゴミ屑のような生き物を一度見てみたいといっておりましたので、連れてきたしだいでございます！」
ぐはぁっ！？け、敬語で結構酷いこと言ったぞ…
俺は相変わらず無言だったが…心に物凄いダメージを食らったのだった…
ご、ゴミ屑っておい……酷い…
「まぁいい！！そこの下等な物！！これから私の為に全力を尽くすのだぞ！では…私は今からディナーの時間だ…お前はそこのお菓子の詰め合わせでも食しているがいい！！」
「では…ディナーの用意をいたします」
「あぁ…早くしてくれ」
……行ったか…
なんだよ！！あの態度！！物凄くえらそうじゃないか！！
やっぱり…金持ちってあんなのばっかりなのかよ！！生意気だ…
誰が下等な物だっての！！こっちはちゃんと人間の負け組で通ってるんだ！！バカにするなって！！
だいたい…いきなりゴミ屑とか礼儀がだな…
……お？こ、このお菓子、おいしいじゃないか…
あっ！！生産中止になったチーズから揚げスナックがあるじゃないか！！
ラッキー！！ひゃっほーい！！
そして無我夢中でお菓子を食べる俺…って、ちょっと待て！！
なんで俺はお菓子に釣られているんだよ！！今の瞬間から逃げるためのことを考えないといけないんじゃないのかって！！
危ない…もうすぐ罠に引っかかるところだったぜ…
あっ！！そこ！！既に釣られているじゃねえかとか言わない！！
よし…気を取り直して逃亡計画を考えるとしよう…
えっと、ここは一階だから窓から逃げるのが一番だが…
そう思いながら窓に近づいてみる…こ、これは…！？
普通に鍵を開けることが出来るじゃないか…
あの二人は今…食事中だし…ラッキーー！！
そうして俺はカッコよく窓をまたいで外に出たんだが…
その瞬間、ビーって大きな音が屋敷内に鳴り響いたんだよ！！
まったく…真夜中だってのに迷惑なことだぜ…
だが、こんなことを気にしている場合じゃないからな…確実に…逃げさせてもらうぜ！！
「ふぅ…この調子だったら無事に逃げれそうだな…」
そう言いながら、草むらの中に隠れながら移動している俺…
あんなに大きな音なのに追っ手が来ないってのもラッキーだぜ！！
そう思っていたとき、俺は肩を誰かに叩かれたわけだが…
「悪いな…今は逃げている最中だから無視してください」
俺はこう答えてさらにそっと出口に向かって草むらをすすんでいった…んだが…
まったく…何回も肩を叩かないでくれないか…？無視してくれって…
「……どこに行くつもりですか？」
この瞬間…俺の周りの時間は一瞬で止まったぜ…
な、なんと…そこにはあのジパングブレード…KATANAって名前の武器を大量に腰にかけて…ペロルって呼ばれていた人が立っていたんだよ…
くそぉ！！い、一体いつの間に…！？
こ、こうなったら…逃げ切るしかない！！出口までは１００ｍ…いけるか！？
俺は即座に考え、逃亡を開始した！！
「……はぁっ…めんどくさいですね…【冥土流剣術：愛嬢悪武羅威主】！！」
ま、まさかの当て字技…だとぉ！？
だけど…こんな単純な攻撃…俺だって、無駄に今までの戦闘を後ろの方で見ていたわけじゃないんだぜ？
そう…俺はこの瞬間、この攻撃を右斜めによけて…攻撃をかわしたんだ！！
そう思っていたときだった…
顔を上げると、ペロルの綺麗な右足がそこにあったわけだぜ…
おぉっ！！なんと美しいふとも…ぐぼぁっ！？
そして俺はその後、かかと落としを食らって、その後ふらついているときに回し蹴りを食らって屋敷の方に飛ばされて…綺麗に窓から室内に戻ったのだった…
これは…俺の敗因はたかが当て字技と…油断したことかな？
恐るべし…【アイジョウオムライス】…がくっ…
「おい！！そこのゴミ屑…逃げたのに気絶できると思うな！！」
ぐはっ！？け、蹴りをわき腹に的確に…入れるだと！？
こ、こいつ…背が小さくて生意気な奴としか思っていなかったけど…なんて強い…
どうでもいいけど…凄く楽しそうだ…こ、この人は…Sだな…
「だいたい…折角私が５００金貨などという少ない金でお前を買ったのに、逃げるとはどういうことだ？」
「だ、だって…俺、まだ人生をエンジョイしていないから…奴隷として一生過ごすのは嫌なんですよぉ…けふっ…」
蹴られた威力が強くて…素朴に痛い…
「…なに？お前に抵抗する権限なんて無いんだよゴミ屑が！！」
「ひ…酷い…俺にだって…デメトリオって名前が…」
本気で泣きたくなってきた…うぅ…
「お前の名前なんてどうでもいい！！お前で十分だお前で！！だが…くっくっく…」
そしてふいに笑い始めるこのお方……な、なんだ？
「ペロル、こいつを地下にでも閉じ込めておけ！私は疲れたから少し眠る…明日はこのゴミ屑でも味わうからな…最高級の褒美だ…はっはっは！！」
「だ、ダメです！！エヴァリン様！！このようなゴミ屑の精を摂取しては血が穢れてしまいます！！」
……ぐふっ…だ、だから…ペロルさんは一言の殺傷力が…大きいんですよ…
「なに…この世界で最低のゴミ屑の味を味わっておくのも教養だろう…おい！！お前！！」
「だからデメトリオだって…」
「そんな事はどうでもいい！！お前は明日…高貴な存在である私と交わるのだ…その事実に感謝しながら眠るがいい！！」
……だから、そういったことは愛し合っているもの同士でやるべきものなんだって…何度言えばわかるんだよ！！
でも…そのことを言っても聞いてもらえない気がするなぁ…
そして俺は…地下室に連れて行かれたのだった…
…地下室は、殺風景なんだな…少しは豪華だと期待していたんだが…
しかも…ロックが３重というこの厳重さ…半端じゃないぜ…
「……あなたのような者が…ご主人様のお相手を出来るなんて…ご主人様の考えはよくわかりません…」
いや…俺に言われても…というか…
「そう思うんだったら…俺を逃がしてくださいよ…」
これはこの瞬間こうつぶやいたが…ペロルさんは俺のこの言葉を無視して上に上がっていったのだった…
はぁ…眠れるかな……
正直、いろいろなことが起こって眠れない気がするのは…俺だけかな…
12/05/30 21:22更新 / デメトリオン
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