03 最終改築一部風呂と俺
次の日の朝…
早速昨日外に設置しておいた箱を確認すると、中にはかなりの意見が書かれている紙が多数入っていた。
「……お風呂はあったほうがいいのか…それにしても、一日でこれほどの意見があるというのか…」
中に入っている紙を見ると、９割は女性の字で書かれていたが、少しだけでも男の字が混じっているのを見ると、お風呂は売り上げ上昇になるのだろうな。
だが、お風呂があったほうがいいという意見はわかったが従業員はどうしようか？俺の宿の売り上げなんかではとても雇える状況じゃ…
仕方がない、少し後伸ばしにして考えるとしよう。
俺はすぐに答えを出す必要もないと思いカウンターに向かって、さぁ座ろうと思ったときだった。
「と…止まるのだ〜！！」
「んっ？」
突拍子もなく変な声が聞こえ、非常に嫌な予感がした。
声は外から聞こえているというのに、だんだん大きくなってくる。
嫌な予感がして、声が聞こえてくる方角の部屋の窓から外を見てみる。
向こうからたくさんの町の人々を凪ぎ飛ばしながら、一台大きな何かがこっちに走ってきているのだが、アレは一体なんだ！？
そんなことより！こっちに来たらやばいんじゃないかアレ！？
相変わらず物凄い速度で向きを変えることもなくこっちに向かってくるアレ…
アレの上で小さな女の子が慌てて頭を抑えている。
「ちょっ…おま、うそだろおおおおぉぉぉぉ！？」
俺も慌てて部屋から逃げ、ロビーに逃げたときにアレは俺の宿に突っ込んできた。
俺の顔にも木の破片が飛んできて、俺の宿の一室は全壊してしまった。
って…こんなに落ち着いてる場合じゃねぇ！
「お…俺の宿がああぁ！一体何が…」
そういいながら、大量の砂埃を上げている俺の部屋があった場所を見る。
そこには大げさにぶつかった衝撃で大破したであろう機械の残骸が転がっていた。
たぶん俺の顔は、口が開きっぱなしの状態になっていただろうな…
「けほけほ…」
不意に、砂煙の中から誰かが咳き込む声が聞こえてきた。
声の質的には女の子の声だったが、もしやあの機械の上に乗っていた子だろうか？
機械の残骸を一箇所に集めていると、俺が考えていた通り女の子が這いながらこっちに向かってきた。
ここであったが１００年目だ！俺の宿を壊した代償はどう払ってもらおうか…
「ふぅ…今回の研究成果も駄目だったのであるな…もう少し速度を出しておけば…」
この子供…何を言っているのかはよくわからないが、俺の宿を破壊したことについて、反省してるのか？
「そこの君…この機械は君が？」
「ん？ああ…ここの主人か。光栄に思うがよいぞ？わが研究成果の攻撃力を体感できたのだからな？」
こいつ…なに言ってるんだ？人の宿の一部屋崩壊させておいて光栄に思うがいいだと…？
「君…お兄さんの家を壊しておいて…光栄に思えって言ってるのかい？」
「そうだ。私の研究は常に進化しておるのでな？破壊力を確かめる手段が…」
……この子供には素を出してもよさそうだ。
「ふざけるな小娘！お前が俺の店を壊してくれたおかげでお客が来なかったらどうするつもりなんだ！？」
「店って…ここの店、何を売っているのだ？見た目何かを売っているようには見えぬが…」
「宿屋だよ！しかもこの町唯一の宿屋！俺の唯一の収入源！わかってるか？」
「宿か…ちょうど良い。私を次の貿易船が来るまでこの宿においていてはくれぬか？すんでいた国を追い出されてしまってなぁ…まったく、天才の研究は常人には理解できぬものなのだな。うん」
「図々しいぞお前！俺の宿を少し壊しておいて…だいたい、お金あるのかよ？」
当然俺は怒っているわけだ…しかも、天才の考え方だと？
こっちはただの一般人だっての！
こう心でぼやいていると、その子供が衝撃的な一言を言った。
「わしはお金など持っておらぬぞ？わしの研究では必要ないのでなぁ」
「はぁ！？ふざけるなよ小娘！お金もないのに俺の宿で泊まろうとしてたのかよ？」
「うむ」
「『うむ』じゃねぇ！！俺の宿もこんなに…」
俺はこういいかけてあることに気づいた。こいつ…確か研究者といったな…
あれほどの機械を作れたのなら家を建てるのなんて簡単なはずだ。
「お前…家を直せるか？いや違うな…お前が破壊した場所に風呂を設置できるか？で、元に戻してほしいんだよ」
「……わしの技術力に頼っているのか？まぁ…出来ぬことはないが…」
「本当か！？何日くらいかかるんだ？出来るだけ早く頼みたいんだが…貿易船がくるまではここにいてもいいからさ！」
「ふん…まぁ、わしの実力なら２時間ほどで出来るな。わしの研究成果を作るよりも簡単だ。わしはドワーフだし…」
「おおーーーー！！」
これは運がよかった！これなら今日の午後からはお風呂付の新しい宿になっているじゃないか！
俺って運がいいな…
「じゃあ早速…」
「まて…やるべきことがひとつあるだろう？」
目の前のドワーフは俺に何を求めているんだろうか？
俺的には早く作ってほしいんだが…
「私の名前はゾーネって言うんだが…店主は？」
あぁ…自己紹介ね。なるほど…
確かに、名前も知らないやつの建物修理作業はしたくないな…うん。
「俺はデメトリオって言うんだ。まぁ、今までの話でわかると思うけど宿屋の…」
「ああ…そんなことはどうでもよい。そこにひれ伏して頼み込んでくれないかのう？『ゾーネ様どうかお願いいたします』とな」
……腹立つなぁゾーネ…
でも、俺は今後の生活がかかっているしな…
「…ゾーネ様、どうかお願いいたします」
俺は悔しさをこらえながらもゾーネにお願いした。
「ふっふっふ…デメトリオよ…」
「はい？」
「超気持ちいいーーーー！！」
「……役目がすんだらこき使ってやるからな…」
「ん？何かいったかのぅ？」
「いえいえ…ゾーネ様、早めにお願いいたします」
俺は話をそらすと、ゾーネに部屋の改築作業を促した。
だって、早めにお願いしておいたら後が楽そうだからね。
俺がまさか作業を手伝うことにはならないだろうし…
↑
こんなことを思っていた結果、俺は自分でフラグを立てたことにも気がつかずに１時間を過ごし、今何をしているかというと…
「くそっ！なんで俺が風呂場の床のタイル張りをやらなければいけないんだ！普通はここもゾーネがやるべきじゃないのかよ！？」
「わしは電気配線と水道管の部分をやっておるのでな…そんな地味な…いや、体力を使う仕事はしたくないのじゃ」
…ゾーネのやろう、さっき地味っていったよな？
そんなことより、なんだよこのセメント！？固まるの早くないか！？
俺はセメントを塗ってタイル張っては、またもセメントに熱を加えての作業を繰り返しながら心で愚痴っていた。まぁ、口に出したら、作業をとめられたら困るから言わないだけなんだがな？
「ふぅ…そろそろ終わりじゃのう…」
ゾーネがそういったのが聞こえたので俺は晴れ晴れとした顔でゾーネのほうをみた。
終わった…ようやく…
「ん？デメトリオ、お前はまだじゃぞ？」
「はぁ！？ゾーネがしてた作業が終わったら変わってくれるっていうから…」
「そんなこと言ったかのぅ？そんなことよりも冷蔵庫の中のジュースもらうぞ？」
「おまえ！？ソレは俺が仕事の合間を縫ってりんご狩りに行って一から絞って作った努力の結晶のジュースじゃないか！やめろ！まだ熟成してないんだぞ！お願いだ！飲むなぁ！」
俺は慌ててゾーネを止めようと冷蔵庫のある部屋に走っていこうとした。
だが、足元にセメントが少し流れてきており足が固定されているためにその部屋を出ることが出来なかった！
このままでは俺の１年に一回の楽しみが…
「デメトリオー！このジュースもらったぞー？」
そう言って俺の１年作りのりんごジュースのビンを手で振りながらゾーネが向こうから歩いてきた。
「あぁ…俺の…俺の１年がぁ…がくっ…」
こうして俺はショックでタイルが敷き詰められた風呂場でセメントにまみれながら気を失った。
目を覚ますと、俺は自分のベッドの上にいた。そういえば…風呂のタイルはどうなったんだ！？
そう思いあわてて作業していた部屋に行くと、そこにはきれいにタイルばりされていた。俺の宿においておくには惜しいほどの大きさの浴槽がそこにあり、あたりには材質のいい素材で壁が造られている。
困惑していた俺に、後ろからゾーネが話しかけてくる。
「ふっふっふ、わしがやっておいたのじゃ」
「なんで…って、そういえば俺のジュース！ひどいじゃないか！」
「そのお詫びもかねてじゃ、そうおこらなくてもよいのでは？」
くっ…そういわれると俺の怒りが消えてしまうじゃないか。
そう思いながら、俺はゾーネを許すことにした。
だが、りんごジュースの出来事が俺の中で消えたことではなかったのだがね。
そしてその日の晩…今日も、こんないざこざがあったことなど気づかずにお客がやってくるんだろうな…
こう思うと、なんだかやるせない。
ちなみに、ゾーネは勝手に俺の宿屋の地下貯蔵室のさらにしたの階を造り、そこで研究品とやらを作るらしい。
勝手に人の宿屋の地下に居座るんじゃねえよと思ったが、変に部屋を取って研究とやらをされるよりは数倍ましだ、だが…あんなのがいると俺の宿の家計簿に余計な出費が…
でも、約束してしまったわけだからなんともいえない。
今になって、次の貿易船が来るまでと言ったことに対して後悔している。
そして、お客様が一番来る時間…俺の嫉妬の時間がやってきた。
今日は一体どんな客が来るのか…
「やぁデメトリオさん。今日もお邪魔していいかい？」
そう言って入ってきたのはなんと…二日前に来たステイ家のかたがただった。
俺は思わず
「はや！？」
といいたくなったが、それを我慢しステイ家のかたがたをお迎えした。
相変わらずおとなしそうな奥さんだ…
いいよなぁ…清楚系…可愛いなぁ…
おっといけない…早くお客様を部屋にお送りしなければ…
「ステイ様、いつもの部屋でよろしいでございますか？」
「ああ…そうだ。今日はいつも一人で頑張っている君に手土産を持ってきたんだよ」
「そうなのですか？うれしいです！」
そう表面上で言いながら内面でこう毒づく。
（一人はよけいだっての）
ステイさんの奥さんのハクさんが俺に何本かのお酒のビンを渡してきた。
そういえばステイ家は酒場だったな…
そう思い、俺は少しだけ笑ってしまう。
これだけお酒があれば、今月は毎日夜に飲めそうだ。
「ありがとうございます！お酒をこんなにもいただいて…感謝します！」
「いやいや…これからも夜のお供によろしくな？それより…お風呂出来たんだって？」
あれ？俺…まだお風呂が改築されたと誰にも言っていないはずなのだが…
「ステイ様…お風呂の件、一体だれから…？」
「ん？ああ…ハーピー宅配のサリィって女の子が怒った感じで言ってきたよ？なんか、奥手のデメトリオさんが女の子と共同作業とか聞いたけど…」
「そんなんじゃないですよ…お風呂の改築作業を手伝ってもらってただけなので…」
「そうか…まぁ、そういうことにしておくか。でも、サリィちゃん鬼の形相だったぜ？」
…はぁ？なんで俺が恨まれなきゃいけないんだか…
そして、ステイ様を部屋に送ると俺は一言…
「お風呂に入る際は、どうか白熱としたプレイをするのだけはご遠慮くださいね？」
「うん？いや、せっかくだしやるよ？」
……大丈夫だろうか？
そしてまたカウンターに戻ると、また新しいお客さんがやってきた。
この人は来たことがないなぁ…
「あの…ここが最近はやりの宿ですか？」
「そうでございますが…お客様は何人でございますか？」
「二人です…」
またかよーーーーーー！！
「うぅ…そうでございますか…わかりました。奥様をお連れになってください」
「マユ…入ってもいいって」
「……うん」
入ってきたのはサハギンの静かそうな女の子だった。
このご夫婦…なかなかおとなしそうだなぁ…
そう思って、俺はこのご夫婦…
ニクソン家の方々を２０３号室に連れて行った。
そして今…俺は一人風呂の湯を沸かしていた。
まさか、熱機能を一切いれずに浴槽を作っていたとは…
後悔しながら俺は薪をくべながら火をもやす。
「げほぉっ！！な…なんて煙だ！？しかも…この声…」
そう、煙にまみれている俺に対し、ステイ家のかたがたが風呂場で完全にやっちゃってくれている。しかも…奥さんの声がまた…響くんだよタイルで…
「畜生！！売り上げが銀貨１枚底上げといってもこれは精神面できくぞ！？」
俺も一回くらいやりてぇえええええええ！！
こう強く思った瞬間だった。
そして、ある程度火を燃やし続け、終わったらしいので火を消しその場を後にした俺はまたもやカウンターに向かっていった。
そして、遠慮がちに扉をノックする音が響いてきた。
もう結構遅いじかんなんだがなぁ…またか？
そう思って扉を開けるとそこにはおとなしそうなアオオニの女性が立っていた。
ふん…どうせ男連れだろ！？そうなんだろーーー！？
そう想いながらも俺は女性に話しかけた。
「どうぞ…お客様、何人でございますか？」
「あっ…一人です」
「え！？あ…いや…なんでもございません。どうぞ…」
嘘だろ！？
まさか？
久しぶりに女性客が一人でキターーーーーーーーー！！
いやっほーーーー！！
２ヶ月ぶりだーーー！！
変にテンションが上がった俺は一人、うかれながらお客さんを案内した。
お客さんは部屋に入っていくとすぐに、何か複雑そうな顔をしてロビーにでてきた。
「あの…お酒ありますか？声が気になって…」
「ああ…すみません、本当はこんなはずではなかったのでございますが…」
確かに…夫もいない女性がこんな声を聞いて恥ずかしくならないわけがないよな…うん。
そう思いながら俺はステイ家の方々からもらったお酒をアオオニのお客さん…
セツナさんにお酒を渡すと、俺はまた元のカウンターに戻ってセツナさんを見る。
そうだ…女性と一緒の部屋にいるというのもまた恥ずかしいからアルフォンスでも読んでテーブルゲームでもするとするか…
俺はそう思い、手早く宿を抜けると工事作業員たちが詰め寄せている建物に行き、アルフォンスを呼んできた。
「うはぁ…相変わらずだなここ…」
「だろ？さすがに女性と二人っきりでこんなところにいるのは抵抗あるんだ。一緒に暇つぶしに付き合ってくれよ」
「いいぜ？じゃあ…UNOな」
「OK…いくぜ！」
こうして俺とアルフォンスはUNOで戦うことになった。
そして俺たちのUNOもそろそろ終わりを告げるかという時だった。
最後の戦い…俺が圧倒的に優位に立っているこの状況で、俺はこの戦いの前の賭けを思い出していた。
「この戦いで最後な？当然最後の戦いだから負けたら罰ゲームだぜ？」
「罰ゲームって…何をするんだデメトリオ？」
「そうだなぁ…あそこで酔いつぶれて寝ているお客さんを部屋に連れて行くってどうだ？」
「マジで！？それって罰ゲームというよりチャンスじゃ！？」
「絶対に手を出すなよ？」
「……俺にそんな度胸あるかよ」
「わかってる」
そして最後のターン…
「ドロー４だ…これで、俺の勝ちだな？」
「負けたーーーー！！」
そう言いながら机に悔しさをぶつけているようだ。
いやぁ…勝つって気持ちいいな…うん。
「うはぁ…このお客さんどれだけ酒飲んでたんだよ…」
「いいから早く連れて行けよ」
愚痴ってばかりいるアルフォンスを促し、俺は扉を指差した。
そして、アルフォンスが俺が起きている間に戻ってくることはなかった…
俺が起きていることができなかったのか、それとも何かあったのか…
後者でないことを祈りたいんだが…
そして次の日…俺は一人で朝風呂に入っていた。
だが、ひとつ後悔していることがある…
湯が沸いてねぇ！そういえば湯を沸かす役目は俺だったじゃないか！
「あぁあ…寒いぜ…そういえば、アルフォンスのやろう…昨日あれほど手を出すなと…」
昨日、結局どうやらあのあと戻ったという話も聞かないアルフォンスはお客様に手を出したのだろう…
これで俺の宿屋の評判が…
そして俺は風呂から上がり、カウンターの場所で靴下を編む作業に入った。
もう…どのくらい編み物をして暇をつぶしてきたのだろうか？
いや…別にいいんだけどね？
そうして、一番初めにカウンターのところにきたのはなんと、アルフォンスとセツナさんの二人組みだった。
あのやろう…なににやにやしてやがんだ！
「ちょっとすみません…おい！アルフォンス！」
俺はアルフォンスを呼ぶと、地下貯蔵室に連れて行った。
「お前！！お客さんには手を出すなとあれほど…」
「違うよ！俺じゃなくてセツナさんが言い寄ってきたんだよ！」
「な…んだと！？」
俺は困惑を隠せなかった…だが、アルフォンスはさらに驚きの事実を言い放った。
「それに…言いにくいんだが…ついに俺にも結婚を前提にお付き合いする機会が…」
「な…なんだってーーーーーーーーー！？」
そんな…そんな馬鹿な…アルフォンスまで、結婚…だと？
嘘だ！ありえない…そんな馬鹿なことが…あるわけがないんだーーーー！！
「は…は…はははっ、嘘だろ？そんな馬鹿みたいなことがあるわけがない！だいたいお前…二日前に集会で誓い合ったばかりじゃないかよ？まさかそんな都合のいい…」
「あったんだよ。俺にもフラグが…お前のおかげだよ本当に」
「……はっ…ははは…そんな、ありえない…俺がまた置いて…いかれるなんて」
そういいながらも、だんだんその事実を受け入れ始めてきた俺がそこにいた。
そして…
他のお客さんを出迎えて、最後にアルフォンスとセツナさんを見送るときになると、俺はなんとも言えない気持ちが湧き上がってきた。
いまだに信じられない…そんな気持ちもあったが、今は祝福したい気分だ。
「アルフォンス…おめでとう」
「ありがとよデメトリオ…今までもずいぶん世話になったな？」
「いやいや…これからどうする気だ？」
「あぁ…セツナさんの国に一時的に行こうと思っているんだ。それで…お願いがあるんだが…」
「ん？何だ？」
「俺が帰ってきたら…これからも友達でいてくれるよな？」
「ふっ…どうかな？まぁ、結婚式の会場としてこの宿を提供してやるよ」
「まったく…素直じゃねえんだから…ま、じゃあな？」
「ああ…」
こうして、俺はアルフォンスを見送るとシーツの清掃作業に移った。
不思議と今回の出来事に嫉妬心はそこまで芽生えてこなかった。
俺もいずれは…結婚するのだろうか？
まぁ、それはまだ、結構後になりそうだが…
早速昨日外に設置しておいた箱を確認すると、中にはかなりの意見が書かれている紙が多数入っていた。
「……お風呂はあったほうがいいのか…それにしても、一日でこれほどの意見があるというのか…」
中に入っている紙を見ると、９割は女性の字で書かれていたが、少しだけでも男の字が混じっているのを見ると、お風呂は売り上げ上昇になるのだろうな。
だが、お風呂があったほうがいいという意見はわかったが従業員はどうしようか？俺の宿の売り上げなんかではとても雇える状況じゃ…
仕方がない、少し後伸ばしにして考えるとしよう。
俺はすぐに答えを出す必要もないと思いカウンターに向かって、さぁ座ろうと思ったときだった。
「と…止まるのだ〜！！」
「んっ？」
突拍子もなく変な声が聞こえ、非常に嫌な予感がした。
声は外から聞こえているというのに、だんだん大きくなってくる。
嫌な予感がして、声が聞こえてくる方角の部屋の窓から外を見てみる。
向こうからたくさんの町の人々を凪ぎ飛ばしながら、一台大きな何かがこっちに走ってきているのだが、アレは一体なんだ！？
そんなことより！こっちに来たらやばいんじゃないかアレ！？
相変わらず物凄い速度で向きを変えることもなくこっちに向かってくるアレ…
アレの上で小さな女の子が慌てて頭を抑えている。
「ちょっ…おま、うそだろおおおおぉぉぉぉ！？」
俺も慌てて部屋から逃げ、ロビーに逃げたときにアレは俺の宿に突っ込んできた。
俺の顔にも木の破片が飛んできて、俺の宿の一室は全壊してしまった。
って…こんなに落ち着いてる場合じゃねぇ！
「お…俺の宿がああぁ！一体何が…」
そういいながら、大量の砂埃を上げている俺の部屋があった場所を見る。
そこには大げさにぶつかった衝撃で大破したであろう機械の残骸が転がっていた。
たぶん俺の顔は、口が開きっぱなしの状態になっていただろうな…
「けほけほ…」
不意に、砂煙の中から誰かが咳き込む声が聞こえてきた。
声の質的には女の子の声だったが、もしやあの機械の上に乗っていた子だろうか？
機械の残骸を一箇所に集めていると、俺が考えていた通り女の子が這いながらこっちに向かってきた。
ここであったが１００年目だ！俺の宿を壊した代償はどう払ってもらおうか…
「ふぅ…今回の研究成果も駄目だったのであるな…もう少し速度を出しておけば…」
この子供…何を言っているのかはよくわからないが、俺の宿を破壊したことについて、反省してるのか？
「そこの君…この機械は君が？」
「ん？ああ…ここの主人か。光栄に思うがよいぞ？わが研究成果の攻撃力を体感できたのだからな？」
こいつ…なに言ってるんだ？人の宿の一部屋崩壊させておいて光栄に思うがいいだと…？
「君…お兄さんの家を壊しておいて…光栄に思えって言ってるのかい？」
「そうだ。私の研究は常に進化しておるのでな？破壊力を確かめる手段が…」
……この子供には素を出してもよさそうだ。
「ふざけるな小娘！お前が俺の店を壊してくれたおかげでお客が来なかったらどうするつもりなんだ！？」
「店って…ここの店、何を売っているのだ？見た目何かを売っているようには見えぬが…」
「宿屋だよ！しかもこの町唯一の宿屋！俺の唯一の収入源！わかってるか？」
「宿か…ちょうど良い。私を次の貿易船が来るまでこの宿においていてはくれぬか？すんでいた国を追い出されてしまってなぁ…まったく、天才の研究は常人には理解できぬものなのだな。うん」
「図々しいぞお前！俺の宿を少し壊しておいて…だいたい、お金あるのかよ？」
当然俺は怒っているわけだ…しかも、天才の考え方だと？
こっちはただの一般人だっての！
こう心でぼやいていると、その子供が衝撃的な一言を言った。
「わしはお金など持っておらぬぞ？わしの研究では必要ないのでなぁ」
「はぁ！？ふざけるなよ小娘！お金もないのに俺の宿で泊まろうとしてたのかよ？」
「うむ」
「『うむ』じゃねぇ！！俺の宿もこんなに…」
俺はこういいかけてあることに気づいた。こいつ…確か研究者といったな…
あれほどの機械を作れたのなら家を建てるのなんて簡単なはずだ。
「お前…家を直せるか？いや違うな…お前が破壊した場所に風呂を設置できるか？で、元に戻してほしいんだよ」
「……わしの技術力に頼っているのか？まぁ…出来ぬことはないが…」
「本当か！？何日くらいかかるんだ？出来るだけ早く頼みたいんだが…貿易船がくるまではここにいてもいいからさ！」
「ふん…まぁ、わしの実力なら２時間ほどで出来るな。わしの研究成果を作るよりも簡単だ。わしはドワーフだし…」
「おおーーーー！！」
これは運がよかった！これなら今日の午後からはお風呂付の新しい宿になっているじゃないか！
俺って運がいいな…
「じゃあ早速…」
「まて…やるべきことがひとつあるだろう？」
目の前のドワーフは俺に何を求めているんだろうか？
俺的には早く作ってほしいんだが…
「私の名前はゾーネって言うんだが…店主は？」
あぁ…自己紹介ね。なるほど…
確かに、名前も知らないやつの建物修理作業はしたくないな…うん。
「俺はデメトリオって言うんだ。まぁ、今までの話でわかると思うけど宿屋の…」
「ああ…そんなことはどうでもよい。そこにひれ伏して頼み込んでくれないかのう？『ゾーネ様どうかお願いいたします』とな」
……腹立つなぁゾーネ…
でも、俺は今後の生活がかかっているしな…
「…ゾーネ様、どうかお願いいたします」
俺は悔しさをこらえながらもゾーネにお願いした。
「ふっふっふ…デメトリオよ…」
「はい？」
「超気持ちいいーーーー！！」
「……役目がすんだらこき使ってやるからな…」
「ん？何かいったかのぅ？」
「いえいえ…ゾーネ様、早めにお願いいたします」
俺は話をそらすと、ゾーネに部屋の改築作業を促した。
だって、早めにお願いしておいたら後が楽そうだからね。
俺がまさか作業を手伝うことにはならないだろうし…
↑
こんなことを思っていた結果、俺は自分でフラグを立てたことにも気がつかずに１時間を過ごし、今何をしているかというと…
「くそっ！なんで俺が風呂場の床のタイル張りをやらなければいけないんだ！普通はここもゾーネがやるべきじゃないのかよ！？」
「わしは電気配線と水道管の部分をやっておるのでな…そんな地味な…いや、体力を使う仕事はしたくないのじゃ」
…ゾーネのやろう、さっき地味っていったよな？
そんなことより、なんだよこのセメント！？固まるの早くないか！？
俺はセメントを塗ってタイル張っては、またもセメントに熱を加えての作業を繰り返しながら心で愚痴っていた。まぁ、口に出したら、作業をとめられたら困るから言わないだけなんだがな？
「ふぅ…そろそろ終わりじゃのう…」
ゾーネがそういったのが聞こえたので俺は晴れ晴れとした顔でゾーネのほうをみた。
終わった…ようやく…
「ん？デメトリオ、お前はまだじゃぞ？」
「はぁ！？ゾーネがしてた作業が終わったら変わってくれるっていうから…」
「そんなこと言ったかのぅ？そんなことよりも冷蔵庫の中のジュースもらうぞ？」
「おまえ！？ソレは俺が仕事の合間を縫ってりんご狩りに行って一から絞って作った努力の結晶のジュースじゃないか！やめろ！まだ熟成してないんだぞ！お願いだ！飲むなぁ！」
俺は慌ててゾーネを止めようと冷蔵庫のある部屋に走っていこうとした。
だが、足元にセメントが少し流れてきており足が固定されているためにその部屋を出ることが出来なかった！
このままでは俺の１年に一回の楽しみが…
「デメトリオー！このジュースもらったぞー？」
そう言って俺の１年作りのりんごジュースのビンを手で振りながらゾーネが向こうから歩いてきた。
「あぁ…俺の…俺の１年がぁ…がくっ…」
こうして俺はショックでタイルが敷き詰められた風呂場でセメントにまみれながら気を失った。
目を覚ますと、俺は自分のベッドの上にいた。そういえば…風呂のタイルはどうなったんだ！？
そう思いあわてて作業していた部屋に行くと、そこにはきれいにタイルばりされていた。俺の宿においておくには惜しいほどの大きさの浴槽がそこにあり、あたりには材質のいい素材で壁が造られている。
困惑していた俺に、後ろからゾーネが話しかけてくる。
「ふっふっふ、わしがやっておいたのじゃ」
「なんで…って、そういえば俺のジュース！ひどいじゃないか！」
「そのお詫びもかねてじゃ、そうおこらなくてもよいのでは？」
くっ…そういわれると俺の怒りが消えてしまうじゃないか。
そう思いながら、俺はゾーネを許すことにした。
だが、りんごジュースの出来事が俺の中で消えたことではなかったのだがね。
そしてその日の晩…今日も、こんないざこざがあったことなど気づかずにお客がやってくるんだろうな…
こう思うと、なんだかやるせない。
ちなみに、ゾーネは勝手に俺の宿屋の地下貯蔵室のさらにしたの階を造り、そこで研究品とやらを作るらしい。
勝手に人の宿屋の地下に居座るんじゃねえよと思ったが、変に部屋を取って研究とやらをされるよりは数倍ましだ、だが…あんなのがいると俺の宿の家計簿に余計な出費が…
でも、約束してしまったわけだからなんともいえない。
今になって、次の貿易船が来るまでと言ったことに対して後悔している。
そして、お客様が一番来る時間…俺の嫉妬の時間がやってきた。
今日は一体どんな客が来るのか…
「やぁデメトリオさん。今日もお邪魔していいかい？」
そう言って入ってきたのはなんと…二日前に来たステイ家のかたがただった。
俺は思わず
「はや！？」
といいたくなったが、それを我慢しステイ家のかたがたをお迎えした。
相変わらずおとなしそうな奥さんだ…
いいよなぁ…清楚系…可愛いなぁ…
おっといけない…早くお客様を部屋にお送りしなければ…
「ステイ様、いつもの部屋でよろしいでございますか？」
「ああ…そうだ。今日はいつも一人で頑張っている君に手土産を持ってきたんだよ」
「そうなのですか？うれしいです！」
そう表面上で言いながら内面でこう毒づく。
（一人はよけいだっての）
ステイさんの奥さんのハクさんが俺に何本かのお酒のビンを渡してきた。
そういえばステイ家は酒場だったな…
そう思い、俺は少しだけ笑ってしまう。
これだけお酒があれば、今月は毎日夜に飲めそうだ。
「ありがとうございます！お酒をこんなにもいただいて…感謝します！」
「いやいや…これからも夜のお供によろしくな？それより…お風呂出来たんだって？」
あれ？俺…まだお風呂が改築されたと誰にも言っていないはずなのだが…
「ステイ様…お風呂の件、一体だれから…？」
「ん？ああ…ハーピー宅配のサリィって女の子が怒った感じで言ってきたよ？なんか、奥手のデメトリオさんが女の子と共同作業とか聞いたけど…」
「そんなんじゃないですよ…お風呂の改築作業を手伝ってもらってただけなので…」
「そうか…まぁ、そういうことにしておくか。でも、サリィちゃん鬼の形相だったぜ？」
…はぁ？なんで俺が恨まれなきゃいけないんだか…
そして、ステイ様を部屋に送ると俺は一言…
「お風呂に入る際は、どうか白熱としたプレイをするのだけはご遠慮くださいね？」
「うん？いや、せっかくだしやるよ？」
……大丈夫だろうか？
そしてまたカウンターに戻ると、また新しいお客さんがやってきた。
この人は来たことがないなぁ…
「あの…ここが最近はやりの宿ですか？」
「そうでございますが…お客様は何人でございますか？」
「二人です…」
またかよーーーーーー！！
「うぅ…そうでございますか…わかりました。奥様をお連れになってください」
「マユ…入ってもいいって」
「……うん」
入ってきたのはサハギンの静かそうな女の子だった。
このご夫婦…なかなかおとなしそうだなぁ…
そう思って、俺はこのご夫婦…
ニクソン家の方々を２０３号室に連れて行った。
そして今…俺は一人風呂の湯を沸かしていた。
まさか、熱機能を一切いれずに浴槽を作っていたとは…
後悔しながら俺は薪をくべながら火をもやす。
「げほぉっ！！な…なんて煙だ！？しかも…この声…」
そう、煙にまみれている俺に対し、ステイ家のかたがたが風呂場で完全にやっちゃってくれている。しかも…奥さんの声がまた…響くんだよタイルで…
「畜生！！売り上げが銀貨１枚底上げといってもこれは精神面できくぞ！？」
俺も一回くらいやりてぇえええええええ！！
こう強く思った瞬間だった。
そして、ある程度火を燃やし続け、終わったらしいので火を消しその場を後にした俺はまたもやカウンターに向かっていった。
そして、遠慮がちに扉をノックする音が響いてきた。
もう結構遅いじかんなんだがなぁ…またか？
そう思って扉を開けるとそこにはおとなしそうなアオオニの女性が立っていた。
ふん…どうせ男連れだろ！？そうなんだろーーー！？
そう想いながらも俺は女性に話しかけた。
「どうぞ…お客様、何人でございますか？」
「あっ…一人です」
「え！？あ…いや…なんでもございません。どうぞ…」
嘘だろ！？
まさか？
久しぶりに女性客が一人でキターーーーーーーーー！！
いやっほーーーー！！
２ヶ月ぶりだーーー！！
変にテンションが上がった俺は一人、うかれながらお客さんを案内した。
お客さんは部屋に入っていくとすぐに、何か複雑そうな顔をしてロビーにでてきた。
「あの…お酒ありますか？声が気になって…」
「ああ…すみません、本当はこんなはずではなかったのでございますが…」
確かに…夫もいない女性がこんな声を聞いて恥ずかしくならないわけがないよな…うん。
そう思いながら俺はステイ家の方々からもらったお酒をアオオニのお客さん…
セツナさんにお酒を渡すと、俺はまた元のカウンターに戻ってセツナさんを見る。
そうだ…女性と一緒の部屋にいるというのもまた恥ずかしいからアルフォンスでも読んでテーブルゲームでもするとするか…
俺はそう思い、手早く宿を抜けると工事作業員たちが詰め寄せている建物に行き、アルフォンスを呼んできた。
「うはぁ…相変わらずだなここ…」
「だろ？さすがに女性と二人っきりでこんなところにいるのは抵抗あるんだ。一緒に暇つぶしに付き合ってくれよ」
「いいぜ？じゃあ…UNOな」
「OK…いくぜ！」
こうして俺とアルフォンスはUNOで戦うことになった。
そして俺たちのUNOもそろそろ終わりを告げるかという時だった。
最後の戦い…俺が圧倒的に優位に立っているこの状況で、俺はこの戦いの前の賭けを思い出していた。
「この戦いで最後な？当然最後の戦いだから負けたら罰ゲームだぜ？」
「罰ゲームって…何をするんだデメトリオ？」
「そうだなぁ…あそこで酔いつぶれて寝ているお客さんを部屋に連れて行くってどうだ？」
「マジで！？それって罰ゲームというよりチャンスじゃ！？」
「絶対に手を出すなよ？」
「……俺にそんな度胸あるかよ」
「わかってる」
そして最後のターン…
「ドロー４だ…これで、俺の勝ちだな？」
「負けたーーーー！！」
そう言いながら机に悔しさをぶつけているようだ。
いやぁ…勝つって気持ちいいな…うん。
「うはぁ…このお客さんどれだけ酒飲んでたんだよ…」
「いいから早く連れて行けよ」
愚痴ってばかりいるアルフォンスを促し、俺は扉を指差した。
そして、アルフォンスが俺が起きている間に戻ってくることはなかった…
俺が起きていることができなかったのか、それとも何かあったのか…
後者でないことを祈りたいんだが…
そして次の日…俺は一人で朝風呂に入っていた。
だが、ひとつ後悔していることがある…
湯が沸いてねぇ！そういえば湯を沸かす役目は俺だったじゃないか！
「あぁあ…寒いぜ…そういえば、アルフォンスのやろう…昨日あれほど手を出すなと…」
昨日、結局どうやらあのあと戻ったという話も聞かないアルフォンスはお客様に手を出したのだろう…
これで俺の宿屋の評判が…
そして俺は風呂から上がり、カウンターの場所で靴下を編む作業に入った。
もう…どのくらい編み物をして暇をつぶしてきたのだろうか？
いや…別にいいんだけどね？
そうして、一番初めにカウンターのところにきたのはなんと、アルフォンスとセツナさんの二人組みだった。
あのやろう…なににやにやしてやがんだ！
「ちょっとすみません…おい！アルフォンス！」
俺はアルフォンスを呼ぶと、地下貯蔵室に連れて行った。
「お前！！お客さんには手を出すなとあれほど…」
「違うよ！俺じゃなくてセツナさんが言い寄ってきたんだよ！」
「な…んだと！？」
俺は困惑を隠せなかった…だが、アルフォンスはさらに驚きの事実を言い放った。
「それに…言いにくいんだが…ついに俺にも結婚を前提にお付き合いする機会が…」
「な…なんだってーーーーーーーーー！？」
そんな…そんな馬鹿な…アルフォンスまで、結婚…だと？
嘘だ！ありえない…そんな馬鹿なことが…あるわけがないんだーーーー！！
「は…は…はははっ、嘘だろ？そんな馬鹿みたいなことがあるわけがない！だいたいお前…二日前に集会で誓い合ったばかりじゃないかよ？まさかそんな都合のいい…」
「あったんだよ。俺にもフラグが…お前のおかげだよ本当に」
「……はっ…ははは…そんな、ありえない…俺がまた置いて…いかれるなんて」
そういいながらも、だんだんその事実を受け入れ始めてきた俺がそこにいた。
そして…
他のお客さんを出迎えて、最後にアルフォンスとセツナさんを見送るときになると、俺はなんとも言えない気持ちが湧き上がってきた。
いまだに信じられない…そんな気持ちもあったが、今は祝福したい気分だ。
「アルフォンス…おめでとう」
「ありがとよデメトリオ…今までもずいぶん世話になったな？」
「いやいや…これからどうする気だ？」
「あぁ…セツナさんの国に一時的に行こうと思っているんだ。それで…お願いがあるんだが…」
「ん？何だ？」
「俺が帰ってきたら…これからも友達でいてくれるよな？」
「ふっ…どうかな？まぁ、結婚式の会場としてこの宿を提供してやるよ」
「まったく…素直じゃねえんだから…ま、じゃあな？」
「ああ…」
こうして、俺はアルフォンスを見送るとシーツの清掃作業に移った。
不思議と今回の出来事に嫉妬心はそこまで芽生えてこなかった。
俺もいずれは…結婚するのだろうか？
まぁ、それはまだ、結構後になりそうだが…
12/01/04 19:03更新 / デメトリオン
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