35 稲妻の走る土俵
…今日は、みんな朝早いんだな…
俺がベッドからゆっくりと目を覚ますと、ロビーの方からメリィや他のみんなが話す声が聞こえてくるんだが…今の時間は5時…夜じゃないぞ?朝だぞ?
いつもなら皆、爆睡している時間帯じゃないか…まぁ、いいんだけど…
そして俺がロビーに行くと、いつもよりテンションが高いみんなが俺の方を見てきたわけだよ!!
なぜ朝からそんなにテンションが高いんだ!?
「あ、デメトリオ!!昨日のウェンさんとドラグーンの愛の営み…見た?」
「は?」
一瞬だが俺の周りの時間が止まった気がするぜ…
あ、愛の営みだと…?と言う事は、やはりあの後…ヤったのか!?
つまり、俺はあの後逃げたわけだが、俺の取った行動は間違いではなかったということじゃないか!!
「いいよねぇ…ああいうの…」
「羨ましい限りだ…」
皆はなんだか恍惚とした表情を時折見せてくるのだが…そこまで良かったのか!?悔しくなったりしないのか?
俺は毎回悔しくなっているんだけどなぁ…さすがだというべきか…
「…デメトリオ、私達は今日は寝るわ…依頼が来たらあなたが受けてね?」
「えぇ!?め、メリィ…起きたばかりじゃないのか!?」
「さっき戻ってきたのよ…久しぶりに萌えるシチュだったわ…」
……まさか、帰宅したから皆おきていたというのか…そこまで凄いものだったのか!?
いけないことなのだが…頭の端っこで少し想像してしまう俺がそこにいた…
駄目だぁ!!俺には…そんな出来事は起こりえないのに…そんな事を考えても虚しくなるだけじゃないか!!
そしてみんなが寝た後…一人で虚しくカルタを思いっきり地面に当て、表面の絵柄を裏面の絵柄に変えるという、聞いた事もやったことも無い遊びを一人でしていたわけだが…
虚しいよこの状況!!まさか、一人で室内で遊んでいるのがここまで虚しいものだとは思っていなかった!!
俺が無言でカルタをパシパシ地面に叩きつけていると遂に宿屋の扉が開かれたんだ!!
この時間帯だからお客ってことは無いし…まさか依頼か!?
そう思い振り向くと、そこにいたのは紅緒では無く、堅物そうなイメージのカラステングの女性だった…
あれ?今日は担当が違うのかな?
「いつもお疲れ様です、今日の依頼は何ですか?」
「…依頼?」
ん?この依頼って何だって言いたそうな表情…この人は奉行所の役人の方じゃないのか!?
「あれ…?奉行所の方じゃないんですか?」
「いや…私は小鳥遊 八千代…前回、あなた達が受けてくれた依頼の前の依頼を奉行所に送っていた物なのだが…『みすりる銀』を手に入れる手伝いをしてくれた礼を言いに来たのだ…ありがとう」
「えっと…俺は具体的に何もしていないようなものなので、夕方ぐらいに来ていただければ、リーダーが起きてくると思うので、その時間帯にリーダーにお礼を言ってください。お疲れ様です…」
……まさか、八千代さんが来るなんて思わなかった…でも、まさか終わった依頼の礼…しかも、俺たちは直接的には何もしていないというのに…
几帳面な性格の人なんだなぁ…
そしてまた暇な時間が始まるのだが…
「おーっす!!デメトリオって奴いるかーー?」
「へ?あぁ紅緒さんじゃないですか…」
あれ?俺、名前教えたっけ…?
名前を教えた覚えは全然無いのだが、まぁどうでもいいか…
「お前のリーダーに名前を聞いたんで、呼んでみたんだが…」
「メリィが俺の名前を?で、今日はどんな用事なんですか?」
いや、もう依頼を持ってきたって事はわかっているんだけど、一応聞いたんだよ。
「依頼持ってきたんだ!ほら!!」
そう言って紅緒は俺に依頼書を投げつけると、すぐに宿屋から去っていったわけだな…
そ、そこまで依頼書を粗末に扱うのもどうかと…
まぁいいか…今日は俺一人で依頼を受けるんだし、楽な依頼だといいんだけどなぁ…
そう思いながら俺は依頼書に目を通してみた。
〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:柳淵 富(やなぎぶち とみ)
内容:彼討伐依頼
『今回、この依頼を受けてくれる方には、感謝しております。
私が毎回、典孝に相撲を挑んで負けていることは、かなりの人が知っている と思いますが…
典孝を地面に倒すために手伝ってください!!
ずっと自分自身で慰める生活は飽きたので…絶対勝ちましょう!!
そして…絶対に結婚してみせる!!』
報酬:銀貨3枚 米
備考:典孝のスペックは異常なので…どんな手を使ってもかまいません!殺さなければ…
〜〜〜〜〜〜〜〜
典孝のスペックは異常って書いてあるんだが…でも人間なんだろ?
なら、何回も戦闘していたらいずれは疲れて勝てるんじゃないか?
どんな手も使っていいって書いてるし…俺でもこの依頼なら受けれそうだぜ…
そう思った俺は、この依頼をいけることを決めた訳だ!!
あ、でも、丸腰で行くのは怖いな……ゾーネに何かもらっていくか…
そう思って、さっき眠りについたばかりのゾーネの部屋に向かった俺…
そういえば、こっちの方にくるのも久しぶりだな…
思わず辺りを見回してみたんだが…何!?この赤く蠢く壁!?
「うへぁ…何かひくひく蠢いているんだが…ぬめってるし…気持ち悪い…」
一体全体、どんな素材なんだこれ…ってか、俺の宿屋の地下をまた改造しやがって…これ、一歩間違えたらモンスターハウスだろ…
そして、無駄に長い廊下を通り遂にゾーネの部屋の前に来たのだが…
ここに来て思い出した…エレベーター的なものがついてたなそういえば…
ここで思い出すなんて…馬鹿だよなぁ俺も…
そして、手作りした部屋の表札のついた扉を開けると…
「ひゃん♥」
……ん?何ださっきのは!?
俺は一瞬だが、扉を開けたとたんに停止してしまった…
「はっ…で、デメトリオ!?か、帰るのじゃぁっ!!」
「す、すまん…ごゆっくりぃっ!!」
恍惚の表情でふるふる震えていたゾーネに追い返されてしまった俺…
なんだこの状況は!?昨日、あのタイミングで逃げたから俺にも勝ち組的な事が起こっているのか!?だとしたら、俺はこの状況を堪能するべきではないのだが…みんなはどう思う?
うっ…この変な空気は何だ…?画面前から嫉妬のオーラが…
やめろ!!俺にそんなオーラを近づけるのはやめてくれぇ!!
俺は自分が嫉妬するのはいいけど他人に嫉妬されると…体がうずくんだよ!
そしてしばらくすると、ゾーネが恥ずかしそうな表情でそっと扉から出てきたんだった……
恨みがましい目で俺を見てくるんだが…本気で悪かったって思ってるよ…
「デメトリオ…勝手に部屋に入ったのはなぜじゃ?」
「えっと…依頼書で必要になりそうな薬でも受け取ろうかと…」
「嘘をつくな!!」
う、嘘じゃないんだが…事実を言ったのに嘘と決め付けられて俺も…やるせないぜ…
「本当はわしが…その…じ、自慰をしているところを覗き見するつもりだったのじゃろう!?」
「それは無い!!絶対に無い!!ありえない!!」
だって…俺にそんな勇気無いしなぁ…
俺はそのことについて物凄い勢いで反論したのだが…
「黙れぇ!!これだけは使いたく無かったのじゃが…」
「使いたくなかったのなら、使わなければいいと…思うよ?」
「ふっふっふ…痺れてしまうのじゃ!!ポチッとな」
お、押しやがった…な、何が起こる?
そう思って思わず身構えるんだが…なんだ?あれ…
ゾーネがボタンを押したとたんに、いきなり出て来た丸い玉…あれがそうなのか?
また…凄くわかりやすいものを…
そう思っていると、なんとあの玉から黄色の光線が!?
ま、まさか…そっち系かよ!?
そして、その後俺は体をはって黄色の光線を体感し、それが…物凄い電気ショックだとわかったんだ…
そして俺がゾーネの発明品の光線を受け、10000コンボ以上の攻撃を食らった後、ようやくゾーネは俺の話を信用してくれたわけだ…
もしも俺の服のポケットから依頼書が出てこなかったら、俺はもうここで死んでいたかも知れないと思うと、運がよかったのかな?
というか、10000コンボ以上の攻撃を耐えた俺って…凄くね!?
そして部屋に戻ったゾーネから良くわからない薬の詰め合わせをもらうと、俺は早速依頼を受けに行った訳だな?
で、薬の説明なんだが…だから俺に読めない文字で説明書等を書くのはやめて欲しいんだよ!!
まぁ、役に立つ薬らしいからもって行くけどさぁ?
依頼に書かれていたのはこの場所だと思うんだけど…誰もいない気がするのは俺の気のせいか!?
目的地には小さなあばら家が一つ…まさか…だまされたというのか!?
「あのぉ〜?富さんいませんか〜?」
一応俺は依頼者の富さんの名前を呼んでみるが…一切反応なし…
これ、やっぱりあの依頼、偽の依頼だったに違いないぜ!!
そう思って帰ろうとしたときだった…
「待ってくださいーー!!」
…ん?この絶妙なタイミングで俺を呼び止めるとは…中々出来る!!
そして俺はゆっくりと後ろを振り向いているわけだが…
……はぁっ!?き、きゅうりの山がこっちに歩いてくるだと!?
「は、はやい…俺よりも早いなんて…」
そういう俺はまだ振り向いてもいなかったわけだがね?
……腰を抜かしたっぽいぜ…
でも、俺は信じているんだ…あのきゅうりの山は俺の近くに来たらきっと動きを止めてくれるって!!
「きゃぁっ!?」
……えっと、さっきの考えは取り消すよ…だから、誰かあのきゅうりを止めてくれ!!
目の前のきゅうりの山はいきなり地面に倒れ、きゅうりがまるで雪崩のように俺に降り注ぐ…
え?表現が若干おかしいって…?そ、それは気のせいかな?ははは…
きゅうりは俺に容赦なくタックルしてきたわけだが…
何本か地面に当たってクシャって変な音を立ててつぶれ、俺はきゅうりに埋っていたわけだ…
なんて水分を大量に含んだきゅうりなんだ!?まるでさっき水洗いしてきたかのように冷たいぜ!!
では一口…
「おぉっ!?けっこう美味いじゃないか!!塩が欲しいな…」
そう言っていると、俺の襟首を誰かが掴みきゅうりの山から引っ張りだしたんだ!!
そのときの俺はまるで空中を舞っているような気になったぜ…
「あの…すみません!!依頼を受けてくれた人…ですよね?」
「あ、はい…」
…この人が依頼人かぁ、なかなかおとなしそうな人じゃないか!
これなら、対戦相手の典孝という人物はこの人からしたら強いって事だ…
そこまで強くないのかもしれないぜ!?
そう思うと、凄く気が楽になる俺だった…
で、肝心の対戦場所の土俵って場所に連れられていったわけだが…
対戦相手の雷電院 典孝って人物はこの場所では結構人気がある人物のようだな…嫌な予感がしてきたぜ…
「デメトリオさん!!試合には私が出るので、アドバイスをお願いします!」
「アドバイスって…俺、典孝って人を見たこと無いんだけどな…」
俺がそう言ったときだった…後ろの方から不意に歓声が沸き起こり、俺は思わずそっちの方を見たんだ。
……あいつ、凄いな…すでにオーラが目に見えるというか…あいつの周りに電気が走っているというか…
とにかく、すさまじい人物がそこにいた…あれは本当に人間なのか?
そして、その人間離れしたオーラを発していた人物がその場を去った後…
富さんが俺の方を振り向き、意を決した表情でこう言った…
「あれが…典孝です!!」
………えっと…なんていえばいいんだ?
驚くタイミングを逃してしまったんだが、今驚くべきなのか?
本当に、余りの衝撃に開いた口が塞がらない状況だ…
待て、あんなのを相手にするのか!?
「あの……あきらめて帰りません?報酬とかいらないんで、帰りましょうよ」
「駄目です!!絶対に今回こそは…結婚したいんですから!」
「で、でも、あんなの相手にしたら死にますよ!?」
オーラや目線だけで人を殺せそうじゃないか!!俺の入れ知恵では到底かなわないだろ!?
でも、富さんは多分…何を言おうとも耳を傾けてくれそうに無いな…
結局、富さんの押しに負けた俺は必死に知恵を絞り出そうとしていた…
でも、どの考えもあいつにかないそうに無いんだよ!!
もう、本音逃げたいんだ!!もしも失敗して依頼人に怪訝な目で見られるのも我慢できないしな!?
対策なんて、ゾーネがくれた俺には読めない文字で書かれた説明書の同封された薬だけだし…
ん?薬…そうだ、富さんがこの文字を読めたら何か変わるかも知れない…
「あの…これ、なんて書いてあるかわかりますか?」
俺はゾーネがくれた薬を富さんに渡してみた…わかってくれたらいいけど…
「これは…読めますよ?」
「えぇ!?よ、読んでみてください!」
ま、まさか読めるとは…天はまだ、俺たちを見捨ててはいなかったということか!?
「…この薬は花粉対策用の薬じゃ!!梅干と一緒に服用すると眠くなるので注意じゃ!!って書いてますよ?」
…ま、まだ他に薬は二個あるし、どちらかが凄い効果の薬に違いない!!
「こ、こっちの方の薬はどうですか?」
「こっちは…腹痛のときに服用する薬、こっちは蜂蜜のようですよ?」
ぞ、ゾーネぇぇぇ!!こ、このタイミングでまさか…まさか一切関係ないようなものを渡してくるなんて…ひ、ひどすぎる!!
こ、これで万策尽きた…ど、どうすればいいんだ!?
そう思った俺は、そこであることを思い出した…
そう、俺の剣だよ!!あの、切ったものを幼女化させ、その後切ると一回ごとに全ステータスが4倍されていく剣!!
あまり強くしすぎるのもあれなので、20回くらい切るのでいいか…
で、その後幼女状態解除ボタン…Zボタンを押しながら切る…完璧だ!!
卑怯だと思うなら…思っていればいいさぁ!!
このときの俺は多分…人生で一番必死だったと思う。
「ちょっと…いいですか?」
「え?なんですか?」
「この剣で…21回切らせて下さい!!」
「い、いやですよぉ!!」
……まぁ、確かに説明もせずにいきなり切らせてくれといったら誰でも断るよな…うん。
俺はその後、剣の説明をしたんだが、このシーンはスルーしてもいいな!?
そして剣の攻撃をまずは一つと思ったとき、俺はある事実に気がついたんだ…
幼女化するってことはロリ化する…ロリ化=縮む…
この状態で攻撃をいれると服が…はらりって事になって幼女の裸体が見えてしまうんじゃないか!?
……挿絵を入れるほどの腕も無いから、この部分は俺だけが見るということになってしまうが…それはフェアじゃない!!
くそぉ…こんな大切なことになぜ気がつかなかったんだ!?
そして俺は、くだらないと言えばそこまでなのだが…この事実に結構真剣に悩んでいた。
そしてある結論を導き出したわけだ…フェアにするなら、俺も見なければいいじゃない!!
って事で、早速目隠しをして切ってみたが…何かに当たった感触がない…
その後も必死に空気を切りまくり、何回か当たった感触を信じて21回目をカウントした後、俺はZボタンで富さんを攻撃した…
……運よくパワーアップしたのかは、この今から始まる試合でわかることだ…
俺が目隠しをとっても普通の状態の富さんしかいなかったからなぁ…
しかも、俺が出来たかも知れないっていったら後の俺の台詞も聞かずに試合にエントリーして行ったからなぁ…
俺は変な罪悪感を感じながら観客席に座っていたんだが…
「はぁ…無事、勝ってくれるといいなぁ…」
思わずこんな台詞を口ずさんでしまう俺だった…
そして3分間位待っていると、ステージに司会者っぽい人が上がってきたんだ…
よ、ようやくはじまるのか…き、緊張するぜ…
「さぁて始まりました!!今回の試合…雷電院 典孝 VS 柳淵 富!!今回で合計120回目の挑戦になります!!まず初めに登場するのは…雷電院 典孝ぁーーーー!!」
司会者がそういったと同時に辺りから歓声が湧き上がる…す、凄い人気に嫉妬しそうだぜ俺は…
典孝が土俵に立ったとき、辺りを雷がほとばしったような気がした…
や、やはり凄いオーラだ…そしてあの洗練された肉体…あいつは悪魔か!?
結構…着太りするタイプなんだな…どうでもいいけど…
うはぁ…あんなパンツとも言えないようなものを腰に巻いて…寒くないのかな…?
「続きまして登場するのは…柳淵 富ぃーーー!!」
おぉっ!?と、富さんでもここまで歓声が沸き起こるなんて…富さんも実は凄い人なのか!?
そう思いながら羨望のまなざしで土俵を見ていた俺だったが…
富さんが出たとき、俺は驚きを隠せなかったわけだ…
む、胸の部分に布を巻いて、下は典孝と同じぱ、パンツだとぉ!?
……は、恥ずかしくないのか!?それとも、ああいうスポーツなのか…?
やっぱり、ジパングには判らないものが多いなぁ…
「思えば、いまやこの戦いも120回…私たちはかなりこの試合を見てきました!!典孝に一瞬で倒されても、富はあきらめはしなかった!!果たして、今回も富は勝てずに終わるのか!?それとも、勝って典孝と結婚するのか!?」
会場のボルテージが一気に上がっていく…なるほど、この一戦は価値があるもののようだな…
それにしても、120回も戦うなんて…俺だったら相手を見ただけで逃げたね
間違いなく。
「……富、腕を上げたな」
「典孝…子供のときの約束、覚えてる?」
「ふっ…我に勝ってからほざくがいい!!行くぞぉ!!」
さぁ、戦いが始まったぞ!!一体どんな戦いなのか…
……えっと、え?これは一体?
裸でぶつかり合って互いにパンツを掴んだだと!?
「おぉーっと、ここで両者まわしを掴んだぁーー!!」
…あのパンツ、まわしって言うのか…
「くっ…ば、馬鹿な…一体どこでこれほどの…」
あれ!?典孝が押されているんじゃないか…?
と、言うことは俺の計画は成功したって事じゃないか!!
「……いっけぇーーー!!」
「ば、馬鹿なぁーーー!!」
よっしゃぁーーーーー!!俺の計画が…初めていい意味で成功した気がする!
俺はガッツポーズを取ると同時にあることを改めて決意した…
こ、この剣、扱いには十分注意しないと…
そして試合が終わった後、司会者が凄く文字が書かれていそうな巻物を取り出したのを確認した俺は、長い話を聞くのも嫌なのでそっと外に出て富さんが出てくるのを待っていたわけだ…
……すでに2時間くらい経つんだが、一向に出てくる気配が無い…
一体どれくらい長い話をしているんだ!?
こういう風に俺が葛藤し続けてさらに1時間後、ようやく俺は富さんが出てくるのを確認できたわけだな…
いやぁ、待ち時間長かったぜ本当に…
「デメトリオさん!!本当に…ありがとうございました!!」
そう言って心のそこから笑っている富さん…まぁ、喜んでくれたみたいだからいいかと思うべきか、もう夜近いから早く報酬を渡して欲しいと思うべきか…
複雑な心境だったわけだ…
結局、無理やり話を切り上げて報酬をもらって帰る勇気が無かった俺は、最後の最後まで富さんと話してから報酬をもらい帰路についた…
最後まで聞いた結果…初めて出会ったときのことから延々と話されて、他人の幸せ話を素直に喜べない俺は早く帰りたいと思ったりもしたわけだけど…
まぁ、他のメンバーもいない中、よくやったと思うよ俺は!!
そして俺は無事に宿屋に帰った後…宿の内装の荒れように泣きかけたわけだけどね…
結局、宿の掃除をするのに夜をすべて使い果たし、俺は今日…寝ずに過ごしたんだ…
明日…まぁ、もう今日といってもいい時間なんだが…眠くならないか心配だよ…
後、最後にどうでもいい事を一つ…
大量に床にぶちまけられ、踏みつけられたトマトを拭き取っていると、床にテープで『ルタ様参上!!参ったかぁ!!』って書かれた文字が出てきたときは…本気でむかついたぜ…
ルタに文句を言っても華麗にスルーされるだけだから何も言わないけどさ…
俺がベッドからゆっくりと目を覚ますと、ロビーの方からメリィや他のみんなが話す声が聞こえてくるんだが…今の時間は5時…夜じゃないぞ?朝だぞ?
いつもなら皆、爆睡している時間帯じゃないか…まぁ、いいんだけど…
そして俺がロビーに行くと、いつもよりテンションが高いみんなが俺の方を見てきたわけだよ!!
なぜ朝からそんなにテンションが高いんだ!?
「あ、デメトリオ!!昨日のウェンさんとドラグーンの愛の営み…見た?」
「は?」
一瞬だが俺の周りの時間が止まった気がするぜ…
あ、愛の営みだと…?と言う事は、やはりあの後…ヤったのか!?
つまり、俺はあの後逃げたわけだが、俺の取った行動は間違いではなかったということじゃないか!!
「いいよねぇ…ああいうの…」
「羨ましい限りだ…」
皆はなんだか恍惚とした表情を時折見せてくるのだが…そこまで良かったのか!?悔しくなったりしないのか?
俺は毎回悔しくなっているんだけどなぁ…さすがだというべきか…
「…デメトリオ、私達は今日は寝るわ…依頼が来たらあなたが受けてね?」
「えぇ!?め、メリィ…起きたばかりじゃないのか!?」
「さっき戻ってきたのよ…久しぶりに萌えるシチュだったわ…」
……まさか、帰宅したから皆おきていたというのか…そこまで凄いものだったのか!?
いけないことなのだが…頭の端っこで少し想像してしまう俺がそこにいた…
駄目だぁ!!俺には…そんな出来事は起こりえないのに…そんな事を考えても虚しくなるだけじゃないか!!
そしてみんなが寝た後…一人で虚しくカルタを思いっきり地面に当て、表面の絵柄を裏面の絵柄に変えるという、聞いた事もやったことも無い遊びを一人でしていたわけだが…
虚しいよこの状況!!まさか、一人で室内で遊んでいるのがここまで虚しいものだとは思っていなかった!!
俺が無言でカルタをパシパシ地面に叩きつけていると遂に宿屋の扉が開かれたんだ!!
この時間帯だからお客ってことは無いし…まさか依頼か!?
そう思い振り向くと、そこにいたのは紅緒では無く、堅物そうなイメージのカラステングの女性だった…
あれ?今日は担当が違うのかな?
「いつもお疲れ様です、今日の依頼は何ですか?」
「…依頼?」
ん?この依頼って何だって言いたそうな表情…この人は奉行所の役人の方じゃないのか!?
「あれ…?奉行所の方じゃないんですか?」
「いや…私は小鳥遊 八千代…前回、あなた達が受けてくれた依頼の前の依頼を奉行所に送っていた物なのだが…『みすりる銀』を手に入れる手伝いをしてくれた礼を言いに来たのだ…ありがとう」
「えっと…俺は具体的に何もしていないようなものなので、夕方ぐらいに来ていただければ、リーダーが起きてくると思うので、その時間帯にリーダーにお礼を言ってください。お疲れ様です…」
……まさか、八千代さんが来るなんて思わなかった…でも、まさか終わった依頼の礼…しかも、俺たちは直接的には何もしていないというのに…
几帳面な性格の人なんだなぁ…
そしてまた暇な時間が始まるのだが…
「おーっす!!デメトリオって奴いるかーー?」
「へ?あぁ紅緒さんじゃないですか…」
あれ?俺、名前教えたっけ…?
名前を教えた覚えは全然無いのだが、まぁどうでもいいか…
「お前のリーダーに名前を聞いたんで、呼んでみたんだが…」
「メリィが俺の名前を?で、今日はどんな用事なんですか?」
いや、もう依頼を持ってきたって事はわかっているんだけど、一応聞いたんだよ。
「依頼持ってきたんだ!ほら!!」
そう言って紅緒は俺に依頼書を投げつけると、すぐに宿屋から去っていったわけだな…
そ、そこまで依頼書を粗末に扱うのもどうかと…
まぁいいか…今日は俺一人で依頼を受けるんだし、楽な依頼だといいんだけどなぁ…
そう思いながら俺は依頼書に目を通してみた。
〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:柳淵 富(やなぎぶち とみ)
内容:彼討伐依頼
『今回、この依頼を受けてくれる方には、感謝しております。
私が毎回、典孝に相撲を挑んで負けていることは、かなりの人が知っている と思いますが…
典孝を地面に倒すために手伝ってください!!
ずっと自分自身で慰める生活は飽きたので…絶対勝ちましょう!!
そして…絶対に結婚してみせる!!』
報酬:銀貨3枚 米
備考:典孝のスペックは異常なので…どんな手を使ってもかまいません!殺さなければ…
〜〜〜〜〜〜〜〜
典孝のスペックは異常って書いてあるんだが…でも人間なんだろ?
なら、何回も戦闘していたらいずれは疲れて勝てるんじゃないか?
どんな手も使っていいって書いてるし…俺でもこの依頼なら受けれそうだぜ…
そう思った俺は、この依頼をいけることを決めた訳だ!!
あ、でも、丸腰で行くのは怖いな……ゾーネに何かもらっていくか…
そう思って、さっき眠りについたばかりのゾーネの部屋に向かった俺…
そういえば、こっちの方にくるのも久しぶりだな…
思わず辺りを見回してみたんだが…何!?この赤く蠢く壁!?
「うへぁ…何かひくひく蠢いているんだが…ぬめってるし…気持ち悪い…」
一体全体、どんな素材なんだこれ…ってか、俺の宿屋の地下をまた改造しやがって…これ、一歩間違えたらモンスターハウスだろ…
そして、無駄に長い廊下を通り遂にゾーネの部屋の前に来たのだが…
ここに来て思い出した…エレベーター的なものがついてたなそういえば…
ここで思い出すなんて…馬鹿だよなぁ俺も…
そして、手作りした部屋の表札のついた扉を開けると…
「ひゃん♥」
……ん?何ださっきのは!?
俺は一瞬だが、扉を開けたとたんに停止してしまった…
「はっ…で、デメトリオ!?か、帰るのじゃぁっ!!」
「す、すまん…ごゆっくりぃっ!!」
恍惚の表情でふるふる震えていたゾーネに追い返されてしまった俺…
なんだこの状況は!?昨日、あのタイミングで逃げたから俺にも勝ち組的な事が起こっているのか!?だとしたら、俺はこの状況を堪能するべきではないのだが…みんなはどう思う?
うっ…この変な空気は何だ…?画面前から嫉妬のオーラが…
やめろ!!俺にそんなオーラを近づけるのはやめてくれぇ!!
俺は自分が嫉妬するのはいいけど他人に嫉妬されると…体がうずくんだよ!
そしてしばらくすると、ゾーネが恥ずかしそうな表情でそっと扉から出てきたんだった……
恨みがましい目で俺を見てくるんだが…本気で悪かったって思ってるよ…
「デメトリオ…勝手に部屋に入ったのはなぜじゃ?」
「えっと…依頼書で必要になりそうな薬でも受け取ろうかと…」
「嘘をつくな!!」
う、嘘じゃないんだが…事実を言ったのに嘘と決め付けられて俺も…やるせないぜ…
「本当はわしが…その…じ、自慰をしているところを覗き見するつもりだったのじゃろう!?」
「それは無い!!絶対に無い!!ありえない!!」
だって…俺にそんな勇気無いしなぁ…
俺はそのことについて物凄い勢いで反論したのだが…
「黙れぇ!!これだけは使いたく無かったのじゃが…」
「使いたくなかったのなら、使わなければいいと…思うよ?」
「ふっふっふ…痺れてしまうのじゃ!!ポチッとな」
お、押しやがった…な、何が起こる?
そう思って思わず身構えるんだが…なんだ?あれ…
ゾーネがボタンを押したとたんに、いきなり出て来た丸い玉…あれがそうなのか?
また…凄くわかりやすいものを…
そう思っていると、なんとあの玉から黄色の光線が!?
ま、まさか…そっち系かよ!?
そして、その後俺は体をはって黄色の光線を体感し、それが…物凄い電気ショックだとわかったんだ…
そして俺がゾーネの発明品の光線を受け、10000コンボ以上の攻撃を食らった後、ようやくゾーネは俺の話を信用してくれたわけだ…
もしも俺の服のポケットから依頼書が出てこなかったら、俺はもうここで死んでいたかも知れないと思うと、運がよかったのかな?
というか、10000コンボ以上の攻撃を耐えた俺って…凄くね!?
そして部屋に戻ったゾーネから良くわからない薬の詰め合わせをもらうと、俺は早速依頼を受けに行った訳だな?
で、薬の説明なんだが…だから俺に読めない文字で説明書等を書くのはやめて欲しいんだよ!!
まぁ、役に立つ薬らしいからもって行くけどさぁ?
依頼に書かれていたのはこの場所だと思うんだけど…誰もいない気がするのは俺の気のせいか!?
目的地には小さなあばら家が一つ…まさか…だまされたというのか!?
「あのぉ〜?富さんいませんか〜?」
一応俺は依頼者の富さんの名前を呼んでみるが…一切反応なし…
これ、やっぱりあの依頼、偽の依頼だったに違いないぜ!!
そう思って帰ろうとしたときだった…
「待ってくださいーー!!」
…ん?この絶妙なタイミングで俺を呼び止めるとは…中々出来る!!
そして俺はゆっくりと後ろを振り向いているわけだが…
……はぁっ!?き、きゅうりの山がこっちに歩いてくるだと!?
「は、はやい…俺よりも早いなんて…」
そういう俺はまだ振り向いてもいなかったわけだがね?
……腰を抜かしたっぽいぜ…
でも、俺は信じているんだ…あのきゅうりの山は俺の近くに来たらきっと動きを止めてくれるって!!
「きゃぁっ!?」
……えっと、さっきの考えは取り消すよ…だから、誰かあのきゅうりを止めてくれ!!
目の前のきゅうりの山はいきなり地面に倒れ、きゅうりがまるで雪崩のように俺に降り注ぐ…
え?表現が若干おかしいって…?そ、それは気のせいかな?ははは…
きゅうりは俺に容赦なくタックルしてきたわけだが…
何本か地面に当たってクシャって変な音を立ててつぶれ、俺はきゅうりに埋っていたわけだ…
なんて水分を大量に含んだきゅうりなんだ!?まるでさっき水洗いしてきたかのように冷たいぜ!!
では一口…
「おぉっ!?けっこう美味いじゃないか!!塩が欲しいな…」
そう言っていると、俺の襟首を誰かが掴みきゅうりの山から引っ張りだしたんだ!!
そのときの俺はまるで空中を舞っているような気になったぜ…
「あの…すみません!!依頼を受けてくれた人…ですよね?」
「あ、はい…」
…この人が依頼人かぁ、なかなかおとなしそうな人じゃないか!
これなら、対戦相手の典孝という人物はこの人からしたら強いって事だ…
そこまで強くないのかもしれないぜ!?
そう思うと、凄く気が楽になる俺だった…
で、肝心の対戦場所の土俵って場所に連れられていったわけだが…
対戦相手の雷電院 典孝って人物はこの場所では結構人気がある人物のようだな…嫌な予感がしてきたぜ…
「デメトリオさん!!試合には私が出るので、アドバイスをお願いします!」
「アドバイスって…俺、典孝って人を見たこと無いんだけどな…」
俺がそう言ったときだった…後ろの方から不意に歓声が沸き起こり、俺は思わずそっちの方を見たんだ。
……あいつ、凄いな…すでにオーラが目に見えるというか…あいつの周りに電気が走っているというか…
とにかく、すさまじい人物がそこにいた…あれは本当に人間なのか?
そして、その人間離れしたオーラを発していた人物がその場を去った後…
富さんが俺の方を振り向き、意を決した表情でこう言った…
「あれが…典孝です!!」
………えっと…なんていえばいいんだ?
驚くタイミングを逃してしまったんだが、今驚くべきなのか?
本当に、余りの衝撃に開いた口が塞がらない状況だ…
待て、あんなのを相手にするのか!?
「あの……あきらめて帰りません?報酬とかいらないんで、帰りましょうよ」
「駄目です!!絶対に今回こそは…結婚したいんですから!」
「で、でも、あんなの相手にしたら死にますよ!?」
オーラや目線だけで人を殺せそうじゃないか!!俺の入れ知恵では到底かなわないだろ!?
でも、富さんは多分…何を言おうとも耳を傾けてくれそうに無いな…
結局、富さんの押しに負けた俺は必死に知恵を絞り出そうとしていた…
でも、どの考えもあいつにかないそうに無いんだよ!!
もう、本音逃げたいんだ!!もしも失敗して依頼人に怪訝な目で見られるのも我慢できないしな!?
対策なんて、ゾーネがくれた俺には読めない文字で書かれた説明書の同封された薬だけだし…
ん?薬…そうだ、富さんがこの文字を読めたら何か変わるかも知れない…
「あの…これ、なんて書いてあるかわかりますか?」
俺はゾーネがくれた薬を富さんに渡してみた…わかってくれたらいいけど…
「これは…読めますよ?」
「えぇ!?よ、読んでみてください!」
ま、まさか読めるとは…天はまだ、俺たちを見捨ててはいなかったということか!?
「…この薬は花粉対策用の薬じゃ!!梅干と一緒に服用すると眠くなるので注意じゃ!!って書いてますよ?」
…ま、まだ他に薬は二個あるし、どちらかが凄い効果の薬に違いない!!
「こ、こっちの方の薬はどうですか?」
「こっちは…腹痛のときに服用する薬、こっちは蜂蜜のようですよ?」
ぞ、ゾーネぇぇぇ!!こ、このタイミングでまさか…まさか一切関係ないようなものを渡してくるなんて…ひ、ひどすぎる!!
こ、これで万策尽きた…ど、どうすればいいんだ!?
そう思った俺は、そこであることを思い出した…
そう、俺の剣だよ!!あの、切ったものを幼女化させ、その後切ると一回ごとに全ステータスが4倍されていく剣!!
あまり強くしすぎるのもあれなので、20回くらい切るのでいいか…
で、その後幼女状態解除ボタン…Zボタンを押しながら切る…完璧だ!!
卑怯だと思うなら…思っていればいいさぁ!!
このときの俺は多分…人生で一番必死だったと思う。
「ちょっと…いいですか?」
「え?なんですか?」
「この剣で…21回切らせて下さい!!」
「い、いやですよぉ!!」
……まぁ、確かに説明もせずにいきなり切らせてくれといったら誰でも断るよな…うん。
俺はその後、剣の説明をしたんだが、このシーンはスルーしてもいいな!?
そして剣の攻撃をまずは一つと思ったとき、俺はある事実に気がついたんだ…
幼女化するってことはロリ化する…ロリ化=縮む…
この状態で攻撃をいれると服が…はらりって事になって幼女の裸体が見えてしまうんじゃないか!?
……挿絵を入れるほどの腕も無いから、この部分は俺だけが見るということになってしまうが…それはフェアじゃない!!
くそぉ…こんな大切なことになぜ気がつかなかったんだ!?
そして俺は、くだらないと言えばそこまでなのだが…この事実に結構真剣に悩んでいた。
そしてある結論を導き出したわけだ…フェアにするなら、俺も見なければいいじゃない!!
って事で、早速目隠しをして切ってみたが…何かに当たった感触がない…
その後も必死に空気を切りまくり、何回か当たった感触を信じて21回目をカウントした後、俺はZボタンで富さんを攻撃した…
……運よくパワーアップしたのかは、この今から始まる試合でわかることだ…
俺が目隠しをとっても普通の状態の富さんしかいなかったからなぁ…
しかも、俺が出来たかも知れないっていったら後の俺の台詞も聞かずに試合にエントリーして行ったからなぁ…
俺は変な罪悪感を感じながら観客席に座っていたんだが…
「はぁ…無事、勝ってくれるといいなぁ…」
思わずこんな台詞を口ずさんでしまう俺だった…
そして3分間位待っていると、ステージに司会者っぽい人が上がってきたんだ…
よ、ようやくはじまるのか…き、緊張するぜ…
「さぁて始まりました!!今回の試合…雷電院 典孝 VS 柳淵 富!!今回で合計120回目の挑戦になります!!まず初めに登場するのは…雷電院 典孝ぁーーーー!!」
司会者がそういったと同時に辺りから歓声が湧き上がる…す、凄い人気に嫉妬しそうだぜ俺は…
典孝が土俵に立ったとき、辺りを雷がほとばしったような気がした…
や、やはり凄いオーラだ…そしてあの洗練された肉体…あいつは悪魔か!?
結構…着太りするタイプなんだな…どうでもいいけど…
うはぁ…あんなパンツとも言えないようなものを腰に巻いて…寒くないのかな…?
「続きまして登場するのは…柳淵 富ぃーーー!!」
おぉっ!?と、富さんでもここまで歓声が沸き起こるなんて…富さんも実は凄い人なのか!?
そう思いながら羨望のまなざしで土俵を見ていた俺だったが…
富さんが出たとき、俺は驚きを隠せなかったわけだ…
む、胸の部分に布を巻いて、下は典孝と同じぱ、パンツだとぉ!?
……は、恥ずかしくないのか!?それとも、ああいうスポーツなのか…?
やっぱり、ジパングには判らないものが多いなぁ…
「思えば、いまやこの戦いも120回…私たちはかなりこの試合を見てきました!!典孝に一瞬で倒されても、富はあきらめはしなかった!!果たして、今回も富は勝てずに終わるのか!?それとも、勝って典孝と結婚するのか!?」
会場のボルテージが一気に上がっていく…なるほど、この一戦は価値があるもののようだな…
それにしても、120回も戦うなんて…俺だったら相手を見ただけで逃げたね
間違いなく。
「……富、腕を上げたな」
「典孝…子供のときの約束、覚えてる?」
「ふっ…我に勝ってからほざくがいい!!行くぞぉ!!」
さぁ、戦いが始まったぞ!!一体どんな戦いなのか…
……えっと、え?これは一体?
裸でぶつかり合って互いにパンツを掴んだだと!?
「おぉーっと、ここで両者まわしを掴んだぁーー!!」
…あのパンツ、まわしって言うのか…
「くっ…ば、馬鹿な…一体どこでこれほどの…」
あれ!?典孝が押されているんじゃないか…?
と、言うことは俺の計画は成功したって事じゃないか!!
「……いっけぇーーー!!」
「ば、馬鹿なぁーーー!!」
よっしゃぁーーーーー!!俺の計画が…初めていい意味で成功した気がする!
俺はガッツポーズを取ると同時にあることを改めて決意した…
こ、この剣、扱いには十分注意しないと…
そして試合が終わった後、司会者が凄く文字が書かれていそうな巻物を取り出したのを確認した俺は、長い話を聞くのも嫌なのでそっと外に出て富さんが出てくるのを待っていたわけだ…
……すでに2時間くらい経つんだが、一向に出てくる気配が無い…
一体どれくらい長い話をしているんだ!?
こういう風に俺が葛藤し続けてさらに1時間後、ようやく俺は富さんが出てくるのを確認できたわけだな…
いやぁ、待ち時間長かったぜ本当に…
「デメトリオさん!!本当に…ありがとうございました!!」
そう言って心のそこから笑っている富さん…まぁ、喜んでくれたみたいだからいいかと思うべきか、もう夜近いから早く報酬を渡して欲しいと思うべきか…
複雑な心境だったわけだ…
結局、無理やり話を切り上げて報酬をもらって帰る勇気が無かった俺は、最後の最後まで富さんと話してから報酬をもらい帰路についた…
最後まで聞いた結果…初めて出会ったときのことから延々と話されて、他人の幸せ話を素直に喜べない俺は早く帰りたいと思ったりもしたわけだけど…
まぁ、他のメンバーもいない中、よくやったと思うよ俺は!!
そして俺は無事に宿屋に帰った後…宿の内装の荒れように泣きかけたわけだけどね…
結局、宿の掃除をするのに夜をすべて使い果たし、俺は今日…寝ずに過ごしたんだ…
明日…まぁ、もう今日といってもいい時間なんだが…眠くならないか心配だよ…
後、最後にどうでもいい事を一つ…
大量に床にぶちまけられ、踏みつけられたトマトを拭き取っていると、床にテープで『ルタ様参上!!参ったかぁ!!』って書かれた文字が出てきたときは…本気でむかついたぜ…
ルタに文句を言っても華麗にスルーされるだけだから何も言わないけどさ…
12/04/09 20:18更新 / デメトリオン
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