連載小説
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34 負け組と勝ち組の境界線
今日…俺はやけに湿った状態の枕カバーを洗濯し、干してロビーに戻ってきたときに、やけに重苦しい雰囲気を感じ取っていた訳だが…
なんでこんなに空気が重いんだろうな?
それに、奉行所から俺の宿に来ている紅緒さんと…あれ?あの人は違うな…
俺が朝から宿の方に来ている3人組…全員俺、見たことあるぞ…?
確か、あのアオオニが蒼葉、オーガは…名前聞いてないけど、見たことはあるなぁ…
こんな朝早くから俺の宿に陣取って全くもう…
などと思いながら俺は横を通り、普通に部屋の中に戻っていった…

こうして一人部屋に戻って布団の上で天井を見ながら寝そべっていると、さっきの俺の行動のことで一つ言いたいことが出てきたんだ…
「…止めろよ!!」
しまった…口に出してしまったが…まぁいい!!
俺的にはそこまで構って欲しくないのに構って欲しいっていうよくわからない心境を理解してくれるとありがたいのだが…

こうして、くだらないことを考えていると、話し合いが終わったらしくメリィが俺の部屋に入ってきたわけだな?
「あれ?どうしたんだメリィ?」
「デメトリオ…ちょっと今回の依頼は危険よ…」
き、危険!?
……よし!何と言おうと参加は拒否してみせる!!
俺は内容を聞く前に強く決意したのだった…って言うか、危険って判っているのに行くやつっているのかよ!?
でも、俺はメリィがそっと渡してきた依頼書を一応読んで見たんだ。

〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:黒峰連山自警団青年部団長 小鳥遊八千代(たかなし やちよ)
種族:カラステング
内容:拠点襲撃
『この依頼は黒峰連山周辺を荒らしている賊の壊滅に協力を募るものである。
本来なら我ら自警団で対処するのが筋ではあるが、団員の中に荒事が得意な者が少なく、
賊達が事の外手強く現状では打開の見込みが無い、と判断した為依頼を申請した次第です。
賊の拠点は発見しており、人数も30名と確認しておりますが装備が【みすりる銀製】と
明らかに強力過ぎる点を考慮すると、賊に偽装した反妖怪派藩の武士か、
異国の【教団】とやらの兵の可能性が有り、戦いに自信がある方々の協力を求めています。
何卒御協力のほど宜しくお願い致します。』

報酬:金貨1枚

備考:なお、親世代の戦闘協力は期待出来ないと思っていて下さい。
〜〜〜〜〜〜〜〜

……こ、この依頼をまさか受けるつもりなのか!?
人数30人もいる賊を相手にするって!?死にたいのかよ!?
「こ、こんな危険な依頼を受けるつもりなのか!?や、やめておこうぜ…命がいくつあっても足りないだろ!?」
俺はここで、もっともらしいことを言ったわけだ……相手が悪すぎる!!
いくらモンスターラグーンのメンバーのみんなの戦闘力が高いとしても…圧倒的武器と兵士の数には絶対にかなわないだろ!?
だが、凄く焦っている俺とは対照的にメリィは凄く落ち着いていたんだ…

「デメトリオ…少し落ち着きなさい…この依頼の内容とは若干…内容が違うのよ」
え!?な、内容が違う…?それってどういうことなんだ!?
「それって一体…?」
「この依頼の元々の目的は、他の団体が果たしてくれたのよ……でも、その団体の一人が謀反を起こし、『みすりる銀』って素材の物を持ち出して逃亡したの。で、その団体…【クロッセスタイド】と一緒にその人物を追いかけ、『みすりる銀』を取り返すのが私達の仕事なのよ」
……当初の目的と物凄く変わっているけど、それでも危ないことに変わりは無いんじゃないか!?
そ、そんな簡単に判断なんて下せないよ俺…
「で、でも…俺たちが行く必要は…」
「それでも、『みすりる銀』は誰かが取り戻さないといけないの…まぁ、今回はさすがに戦闘能力が低すぎるあなたに強制で参加させるつもりは無いわ…」

待て…待ってくれよ…
確かに俺は命は大事だと思っているよ…でも、自分自身が傷つくのがイヤだって言っても、他の仲間が傷つくのを見捨てるなんてこともとても出来ないし…
本音、今回は真面目な話で悩んでいたわけだが…
結局俺は、戦力には全く役に立たないっていわれた事実は無かったことにして、依頼に参加することを決意したのだった…
まぁ、危なくなったら逃げればいいしな?

そして、俺も参加することを決め、集合場所として定められていた場所にモンスターラグーンのメンバーみんなで行くと、そこにはクロッセスタイドと思われる団体がすでにいたわけだ…
良く見ると、数名だが怪我をしている奴もいるようだし…万全の状態じゃないようだけどさ?
「良く来てくれたモンスターラグーンの諸君…私がクロッセスタイドのリーダーであるウェス・アーウェン…今回はふがいない部下が迷惑をかけて申し訳ない…」
どうやらクロッセスタイドのリーダーはドラゴンのようで、この前の依頼で傷ついたのか左手に包帯が巻かれてあった…この声、どこかで聞いたことがあるんだけど…思い出せないから大したことじゃないんだろうな…多分

そしてメリィはウェスのことを見てから…というか、ウェスの胸を見てから満足したような表情になると、依頼の具体的な内容を話し合い始めた…
そこまで断崖絶壁の如くストーンっとした胸がコンプレックスなのか、同じような胸の女性と話すときのメリィはなんだか落ち着いているよな…
ってこんなことを考えていたとばれたら俺は絶対に酷い目に会うから…黙っておくんだけどな?

「えっと…今回の依頼で誰を止めに行けばよかったのかしら…?」
「今回…私の部下のネクロサス・ドラグーンを止めてもらいたい…あいつは今、森谷草原を移動しているようだ…お願いだ!あいつを止める手伝いをしてくれ!」
「……もしかしたら、戦闘になるかもしれないわよ?」
「かまわない…あいつさえ私の元に帰ってくるなら…」
「リーダーはあいつのことが好きなんすよ…俺からもお願いします!」
「ちょ!?馬鹿!!そ、そんな事はない!私は大切な部下だからこそだな…」

……判りやすい反応というか何というか…まぁ、俺には関係ないことだから別にいいんだけどさぁ…
くそぉ…俺もこういう風に思ってくれる相手が欲しいぜ…
そう思うと同時に、一生涯そういった相手が現れないと最近思い始めた俺がここにいて、若干だが俺は虚しい気分になった…

それからしばらくして、俺がジュンコに借りていた薬を返した後、ナナの手伝いをしていた時に、ようやく話し合いが終わったのかメリィが戻ってきたんだ。
結構話していたんだなぁ…一体全体何をはなしていたんだ?
まぁ、いいけどさぁ…
若干は気にしながらも、俺はその話題には触れずに、皆の後を追いかけて森谷草原に入ったのだった…

それから、一体どれくらいの距離を俺たちは歩いたのか…気がつくと数時間は草原を歩いていたわけだ…だんだん、どれくらいこの草原広いんだよと思い始めてきたよ俺は…
きっと周りのみんなもそう思っているに違いな…えぇ!?普通の表情で苦痛となんて思っていないだと!?
どうやら周りのみんなは他の人と話しながら歩いていたので、どれくらいの時間が経ったのかを考えてもいなかったようだ…
まさか、この程度の距離は話しながら進んでいたら気にならないというのか!?
まぁ、それが事実でも俺は話す相手もおらずに一人、無言で草原を歩き続けるわけだが…

俺がそう思いながら歩いていると、いきなり目の前に人影が見えた…
服装はクロッセスタイドのメンバーと同じ服装の男がとぼとぼと歩いているのが見えたんだが…まさかあいつが今回の依頼の相手なのか!?
「い、いた!!いたぜ隊長!!ドラグーンだ!」
「え!?い、いたの!?どこ?」
「目の前です!!ほら…あそこでとぼとぼ歩いているのが…」
「間違いないわ…みんな!!急ぐぞ!」
どうやら間違いなかったようだな…
そう思いながら俺たちも後を追いかけていった…

そして俺たちがドラグーンを囲むと、予想以上にドラグーンは落ち着いた状況だった訳だ…
どうしてこの状況でさえも落ち着いていられるんだ!?俺だったら絶対に慌てている状況じゃないか!!
……あれ?あいつ焦ってないか!?なんだ…焦ってたのかよ…
俺はてっきりあいつは焦っていないのかと思えるくらいに表情が固まっていたんだよあいつは!!

「な、なんだよ?俺に何の用なんだ!?」
「ドラグーン…持っていった『みすりる銀』を返して、クロッセスタイドに戻ってきてくれないか?」
ウェスはどうやら心のそこでそう思っているようだが…自分から逃げた奴ほど戻りたくないって感情は強いと思うぜ?
などと思っている俺…多分俺の感はあたっていると思うんだ!

「イヤだ…隊長、俺は絶対にクロッセスタイドには戻らない!!」
「な…なぜだ!?」
「……何でも出来て凄く強い、いわば勝ち組の隊長や他の連中のいるところには戻りたくない!!俺はこれからずっと一人で生きていきたいんだ!」
………あいつ、勝ち組が嫌いなようだなぁ…
まぁ、その気持ちはわからないでも無いけどさ…
などと思いながら、俺は無言で事の成り行きを見守っているんだがな?
出来るなら穏便に済んでくれよ?って思うけど…どうなるかはまだ判らないよなぁ…

「……無理やりにでも戻って来てもらう!!」
「隊長、俺なんか戦力にならないから私に頼っていろっていつも俺に言うじゃないか!!だったら俺なんてクロッセスタイドに戻らなくても誰も困らないだろ!?」
「それでも戻って来い!!」
「イヤだ!!」
「ならば…無理にでも戻ってきてもらうぞ!!」

そう言いながらウェンは自分の腰につけていた剣を抜いた…!?
まさか、結局和解せずに戦闘する羽目に!?
なんか、こんなことになるって気はしてたけどさぁ…
そう思いながら俺はいつもの定位置に戻る…
え?俺の定位置?モンスターラグーンの皆の最後尾に位置する場所だけど?
さぁて、今回も戦わずに戦闘の状況をのんびり見させてもらおう!!

まぁ、この戦力差だし、まず負けることは無いだろ?
俺がそう思っていると、早速ジャンヌが剣をもってウェンに向かっていったわけだな?
もうあいつ負けたな…ジャンヌは俺が見た限り、モンスターラグーンのメンバーの中で一番戦闘力があるはずだ!!
案外、早く終わりそうだなこのペースだと…それに、メリィやスカニの遠距離攻撃も支援攻撃として発動しているようだしな?

「おっと!?遠距離攻撃もあるのか…吼えろマソッドランス!!」
そう言ったと思うと、ドラグーンの槍がジャンヌの体を思いっ切り後ろに押した…?
ここからだとジャンヌがガードの構えを取った事しか判らないんだが…?
え!?あいつ…槍が伸びた!?
見ると、さっきまでの槍の長さのなんと二倍の長さになっている槍がそこにあったんだよ!!その分、さっきより槍は細くなっている気もするけど…
そして槍を適当に振り回しながら遠距離攻撃を全てはじき飛ばす…!?
なんだよあいつ!?普通に強いじゃないかよ!!

「はぁっ!!」
声をあげながら六人を相手にしているドラグーン…俺ではまず無理な芸当だぜ…
しかも、槍のふる速度が速いの何のって……
気付けば的確にクロッセスタイドのメンバーの剣をドラグーンは弾き飛ばしていたんだ!!

「リーダー…本気で行きますけど、いいですか?」
「……いいわ、本気でいっても」
こういう風にジャンヌとメリィが話し合うのが聞こえてきたということは…
遂にジャンヌが本気モードに入るというのか!?ってか、本気モードってなんだ!?
後ろで見ているだけだが…テンション上がってきたぜ!!

そしてジャンヌが剣を水平に構えたわけだが…大技か!?大技が発動するというのか!?
「これもかわしてみなさい!!【バーニングクォーツ】!!」
そう言うと、ジャンヌの尻尾の炎がさらに激しくなり、思いっ切り剣を振りぬいたんだ!!
剣の衝撃波がまるで炎でつくられた龍のようになりドラグーンに飛んでいく…
あれを食らったら数日間はやけどで動けなくなりそうだと、俺は初めの感想で即座にそう思ったのだった。

「くっ…耐え切れるか!?」
見ると、【バーニングクォーツ】は綺麗にドラグーンに当たったのが見えたぜ!!あれを食らったらやけどになることは間違いないだろうな…
俺はそう思っていたが……なんと、ドラグーンはあの炎に耐えたんだよ!!
すごいのはあいつなのかそれともあの鎧なのか…誰か俺に教えてくれ!!

「耐え切るなんて…やるわね?なら直接!!」
「俺の槍で麻痺させてやる!!オラオラオラ!!」
ジャンヌが直接大剣で攻撃を仕掛けに行くと、ドラグーンも物凄い速度で応戦し槍を突き出す…本当に槍を使いこなすのが上手いよなぁ…
俺は本音、感嘆しているよ……

だが、勝負は長くは続かなかったんだよ…
ジャンヌが遂にドラグーンの槍を綺麗に叩き折ったから、もうあいつに抵抗する力があるとは到底…
ジャンヌもそう思ったのか若干構えが緩くなったときだった…
「油断するな!!あいつの槍は…折れても生えるんだ!!」
ウェンがそう言って、次の瞬間ドラグーンの槍が生えてきたんだよ!!
折れても生えてくる槍って…凄く強いと思うのは俺だけかな?
そして、若干だが勝ったと思っていたジャンヌの大剣はドラグーンの槍によって弾き飛ばされ、深々と地面に突き刺さった…
ま、まさか…ジャンヌが負けるなんて…そんな恐ろしいことが…
普通に何人も相手にして…そして普通に勝ってジャンヌにも勝っているなんて…お前は負け組じゃねぇ!!
…逃げたくなってきました。

だが、ジャンヌにドラグーンの槍が届くかというときに、アイネがその槍を斬って戦いに入ったんだ!!
アイネ…ジャンヌが負けたのに勝てるのか?
「貴殿…これほどの強さを誇っておきながら負け組と言い切るのか?」
「これは俺の強さじゃないんだ!!『みすりる銀』の力を借りて一時的に強いと思わせているだけだ!」
「……強さを一時的に…か、強さというものを勘違いしているようだな貴殿は…いい筋肉をしているのにもったいない…」
「き、筋肉だとぉ!?」
「あぁ!!貴殿の筋肉は鍛えればさらに伸びる!!そうなった暁にはこの私と婚約の契りを…」
「それはだめぇーーー!!」

……ウェン、本当にドラグーンのことを好きなのか…ってか、アイネはどれだけ筋肉が好きなんだ!?
俺は変な部分に食いつきながらも戦いの行方を見守ることにしたんだ。

「俺の槍さばき…かわせるか!?」
そう言いながら、半ばおかしくなったかのように槍を突き出すドラグーン…
なぜそこまで戦闘に参加するんだ!?今の俺には理解できないぜまったく…
そして一方のアイネはそれを動じることなく盾で的確に防いでいるのだが、本当に二人とも戦闘スペックおかしすぎだろ…
ドラグーンのどこが負け組なんだよ…俺よりちょこっとだけ勝ち組じゃないかよ…
な?みんなもそう思うよな?

「【龍多槍】!!」
「貴殿は腰の振りが甘すぎる!!そのような動きでは私を満足させることは出来ないぞ!!」
「くそぉっ!!」
「もっと奥まで突いて来い!!」
……さっきからアイネの台詞が別の意味のように聞こえてきて仕方が無いんだが…俺の頭の中はまだ大丈夫なのだろうか?
などと考えていると、遂にアイネが反撃に転じたんだよ!!
「……飽いたな…そろそろ終わりにしてやろう!!」
行けーー!!アイネ!!やってやれーー!!

「なめるなーーー!!」
ふぅ…ドラグーンもタダでは負けたくないようだな…あきらめて負ければいいのに…なんて夢のないことを考えながら戦いの様子を見ているわけだが…
果たしてこれほど押されているのにアイネは勝てるのか?
「遅い!!」
……横に突かれた槍をそっちの方を見もせずに斬るだと!?
斬られた部分は地面に落ち、落ちたときの衝撃だけで粉々になるということは、あの槍は驚くべき脆さだというのか!?
なんだかなぁ…長所もあれば短所もあるもんなんだなやっぱり…
などと当たり前の事実を再確認した俺はそこにいた。

ドラグーンの槍は驚くべき速度で再生し、驚くべき速度で斬れていった…
これは…アイネの勝ちって事になりそうだな…
俺がそう思って、伍神村で買った干しなまことやらをかじってみたが…
「おぇっ!!な、なんだよこれ…!?」
凄い俺の嫌いな食感だったぜ…苦いし…
俺…これ、いらねぇや…
そう思うと、俺は干しなまこを誰も見ていないところで捨てたのだった…

「お、俺が…押されている!?『みすりる銀』を使用している俺が!?」
「そのようなものに頼っているから、貴殿は本当の力を知らんのだ!!」
「うるせぇ!!もともと何にも頼らないでそこまで強い性能のお前には絶対に言われたくねえよ!!弱い奴の心境も知らないくせに!!」
……ドラグーン、いいこと言ってるんだけどなぁ…お前の強さも勝ち組の一員的な部分あるから俺は認めたくないなぁ…
「くそぉーーーー!!二槍合体!!ロッドライク展開!!」
えぇーーー!?あ、あの槍合体するの!?まさか…二槍でありながらダブルブレードの役割まで果たすなんて…凄い武器だぜ…
「俺の高速回転の攻撃…かわせるものかぁーー!!」
そういいながら、ドラグーンは物凄い速度でダブルブレードを回転させ始めたんだが…ここまで風を切る音が聞こえてくるということは物凄い回転速度だぞ……?単純に考えても一秒間に5回転は確実か……

「面白い…ウェンさん、協力技を仕掛けましょう!!」
「協力技…?」
不意にアイネが協力技というと、ウェンと小さい声でこそこそ話し始めたんだ。その間、必死にダブルブレードを回転させ続けているドラグーン…
この間に待っていなくても攻撃を仕掛ければいいのに…
そう思っている俺は多分…空気が読めてないのかもしれないな…

そして、アイネも話が終わったようで、ドラグーンの方に向き合った頃…ドラグーンは初めの間の回転の勢いはどこに行ったのか…明らかに回転速度が遅くなっていたわけだ…
うん、つらかったと思うぜ俺も…
「はぁっ…は、早くかかって来い!!はぁっ…」
「行くぞ!!」
そういうと、アイネは何も考えずにドラグーンの方に向かって走っていく…
いくら疲れて速度が遅くなったとはいえ、それでも十分早いといえる速度なのに、何も考えず突っ込むのか!?
「はっはぁ!!馬鹿め!!俺の攻撃の餌食になれ!!」
「遅い!!はぁっ!!」
……そういえば、アイネには物凄いすばやい剣さばきがあったんだったな…
アイネは疲れた様子も見せずにただ、ドラグーンの方に向かいながらダブルブレードの切っ先を切り落としていたんだ…
でも、ドラグーンの武器も切れてもすぐに生えてくるから意味ないんじゃ…

それから数分、同じことが繰り返されていた…この戦いは、どちらかが疲れるまで続くのかと俺が思ったときだった…
いきなりウェンが二人の方に向かって走り始め、それと同時にアイネが盾を後ろに放り投げたんだよ!!
な、何が起こるっていうんだ!?
え?なんだか少し強引じゃないかって?
……事実だからしょうがないじゃないか…

でも、あの軌道だとウェンの顔にあの盾当たるぞ…?
「えいっ!!」
と、飛んだぁっ!?
ウェンは絶妙なタイミングで飛び上がり、盾を踏みつけると空高く飛び上がった!そしてそのままドラグーンの真上に移動し、その後一気に真下に急降下したんだ!!
ま、まさかジャンプか!?あの有名な竜騎士特有技の!?
……わからない人は、知らなかったほうがいいこともありますよ?

「くそっ!!駄目だ!今攻撃をやめたら…でも、やめなかったら隊長の得意技を食らってしまう…」
どうやらドラグーンは物凄く悩んでいるようだが…時間は有限だったので、まともな判断を下すことも出来ずにウェンのジャンプをまともに食らったのだった…
あぁ…ああいう状況は出来るだけなりたくないな…逃げるって選択肢だけを用意しておかなくちゃな?

そしてウェンに押し倒され、ダブルブレードが手元から離れたドラグーン…
ドラグーンはそれでも必死に抵抗しようとしているから…さすがだと思うよ?
「…は、放してくれ隊長!!」
「……駄目だ、約束だぞ?お前は負けたんだ…クロッセスタイドに戻って来い」
「嫌だ!!だって…俺は、勝ち組が嫌いだから…お前達全員が信じれないんだよ!!」
……お前も十分勝ち組だよとか、俺は突っ込まない…
「お前も…十分勝ち組だろ?」
お、俺が突っ込まないって決めた瞬間から言うって、ちょっと酷いよウェン…
まるで先を読まれた気分だ…

「……勝ち組が嫌いなのはなぜなんだ?」
「俺が…何をやっても上手くいかない負け組だからだ!!」
「なら…勝ち組になればいいじゃないか…んっ♥」
き、キスだとぉ!?
俺が一瞬だが動揺したのはいうまでも無いが…なんだこのまんざらでもない空気は!?
周りを見れば、モンスターラグーンのみんなも興味ありって感じで、キラキラした目でそっちを見ているわけだ…
「た、隊長!?何を…」
「…わ、私がお前を勝ち組にしてやろう♥」

ま、まさか!?嘘だろ!?
鎧を脱がしたってことは…アレが始まるのか!?
……あひっ…
ぐやぐやがぎあじあ…あへへへへふぉいえあ…あうぐいてあえあ!?
すぺいんうぇお、かろまいっさい…ふぁるかんあはふぁぁぁぁぁぁっ…

す、すまない…と、取り乱したぜ…
と、とにかく、俺にこれから先、どのような出来事があったのかを報告する義務は…無い!!
一ついえることは、ドラグーンは…勝ち組だったって事さぁ!!
そして、俺は後ろを振り返ることも無く自分の宿屋に戻っていき、すぐにベッドの中で眠ったのだった…

え?どんな出来事があったのか知りたくないのかって?
いえいえ…全然、知りたくもない…
と心でいいながら、今夜も一人泣いたのは…モンスターラグーンのみんなには内緒で…お願いしますね?
12/04/06 21:27更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
さて…いやぁ、ジパング編はストーリーが濃い気がするのですが…
気にしない方向で行きましょう!!

まだまだジパング編のストーリーは続きますので…
キャラクター募集や、このようなストーリーを入れて欲しいなど…希望があったらどうぞ!!

さて…次回ものんびり見てやってください!!
ありがとうございましたー!!

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