32 新技と最強の鶏
……こ、このタイミング…朝だな!!
俺は今日、とても気持ちよく目覚めることが出来たんだ!
久しぶりにいい日になりそうだぜ…
そう思いながら俺がロビーの方に行くと…
「うぐっ、うぐっ…ぷはぁっ!!やっぱり朝はこれだよなぁ!」
……アレ?あんな人モンスターラグーンにいたか!?
俺がロビーに入るや否や酒を朝から飲んでいる肌が赤い女性に出会ったわけだな…
待て!!あの人…奉行所でドラグーンって男ともめていた紅緒ってお方じゃないか!?
な、なんでクエストを受けに行ってた場所の人が俺の宿に…?
俺がそう思いながら動きを止めると…向こうも俺に気がついたようだ…
朝の5時にすでにいるこの人は…暇なのか?
などと思っていると向こうが何かに気付いたような顔になってこう言った。
「あんたがデメトリオ?」
「え…まぁ、そうですけど…」
「なんか覇気が感じられない男だねぇ…っと、あんたのところにいるメリィって人、知ってる?」
覇気が無いってのは余計だって…
いやいや、俺はそれはもう覇気に満ち溢れているとそれはそれは評判で…
え?嘘付けって?
……ま、まぁこの話題はもういいって!!
「メリィ…?はぁ、今上で寝てますけど…起こしてきますよ?」
「いや、折角寝ているのを邪魔するのは悪いし、あんたに今日の依頼を渡しとくよ…本来は私の仕事じゃなくて他の奴の仕事だったんだけど……そいつ今、育児休暇もらってるからさ?ま、これからよろしく」
そういうとテーブルの上に依頼の書かれた紙を一枚置いて紅緒さんは去っていった…
俺は一瞬だが、俺が起きるよりも先にすでにおきてて朝から酒を飲んでも平気な紅緒さんを凄いと思った…
なぜこのタイミングで思ってしまったのか…それは俺にもわからないぜ…
そこで俺は依頼の書かれた紙を見る前に一瞬の朝食タイムだ!!
俺は毎日シチューも本音飽きてきたし、たまには干し系の食べ物以外も食べたいという理由でサラダを作ったわけだな。
しかも今回…レモンを少し絞って振りかけてしまうという革新的なアイデアを導き出した俺!!お、恐ろしすぎて声も出ないぜ…
「野菜食べるの久しぶりだなぁ…いただきます」
そしてしゃりっという気持ちいい音と共に俺の口に激痛が!?
「うおぉぉぉぉぉぉっ…な、なんだこの痛みは…!?痛い!!というか染みる!!なんなんだ一体!?」
俺は本気で口の中を野菜で切ったのかと慌てて風呂場の鏡で自分の顔を見てみた…
こ、口内炎じゃないか!?これ!!
そうか…日ごろ肉体に与えてきた疲労が遂に口内炎を引き起こしたか…って、冷静に判断している場合じゃないぞ…
この口内炎の存在がどれほど恐ろしいか…君達は知らないだろうけど…
口内炎って直るまでが無駄に長い気がするんだよ!!
などと文句を言ったりする俺…まぁ、こんな事をしながら有意義に時間を過ごしたわけだな…
そしてメリィたちが起きてきて食事を終わらせ、テーブルの上にある紙の話をするまで俺はそのことをきれいさっぱり忘れていたわけだった…
いやぁ…口内炎のことで頭がいっぱいで…
「デメトリオ…これは?」
「それは依頼書…朝、紅緒って人にもらったんだけど…」
そう言って俺が依頼書の話をメリィにするとメリィは少し目を通してその紙を俺に渡してきた…
何で俺に…?
「この依頼…デメトリオやっといて」
えぇ…お、俺が!?
待て待て…依頼の内容を見てから決めさせてくれよ……
そう思いながら依頼の紙切れに書かれた内容をじっくりと読んでみる…
〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:秋沢 舞香 (あきざわ まいか)
種族:白蛇
内容:お守りを受け取ってきてください
『今回依頼いたしますのは、各神社で一年間奉納される龍皇宝玉を受け取ってきて欲しいのです。
本来ならば私達時雨神社の者がいくのが道理なのですが、今回新しく巫女さまが変わったばかりなので忙しく、その時間がありません。
目的地は伍神村…最近、賊が村を襲ったという話は聞くのですが、なにぶん忙しいので真意がわかりません。
お気をつけください。』
報酬:神社特性の神水を少々と…布を提供します。
備考:あまり大人数での移動は効率が悪いので3人ほどで…移動はこの町の入り口で運び屋をしている圭介さんに頼んでください。
〜〜〜〜〜〜〜〜
へぇ…結構楽そうな仕事だな今回!!
何か物をもらってそれを送り届ければいいんだろ?すぐだな!!
俺は心の中で喜びながら依頼書を懐にしまいこんだ。
そして8時…各自好きなことをしてのんびりしているようだが…伍神村がどれほどの遠さかわからないからなぁ…
そろそろ行くかと決めたと同時に俺は誰を連れて行くか真剣に悩んだ。
まぁ、依頼書に書かれていた内容には3人って書いてあったし…俺とキュラスと…ルタでいいかな…
ここで俺はあえてこのチョイスで行く…凄いと思わないか?
「キュラス…一緒に依頼受けてくれないかな?」
「えぇ〜…まぁ、いいけど…」
良し!!キュラスはOKしてくれたぜ…残るはルタだが…
あいつ…どこに行ったんだ?
そう思って宿中探してみたが…どこにもいないじゃないか!!
仕方が無い…別の奴に頼むとするか…
俺がそう思った瞬間…俺は頭からホイップクリームを被ったわけだな…
誰だ!?いや…皆まで言うな…俺にはわかっているぞ…
こんなことをする奴はこの宿屋の中で一人しかいない!!
「ルタ!!お前か!!」
そう言いながら俺が上を見ると…そこにはきーちゃんがふわふわと浮いていただけだった…
あ…あれぇ…?こんなことする奴はルタだけだと…
「デメトリオーー!!」
「へ…?ぐはぁっーーー!!」
俺の油断が…いけなかったのか…?
俺は顔面に蜂蜜のたっぷり塗られた食パンを叩きつけられ、なんだか得意げに笑うルタを目にしながら後ろに倒れこんだ…
「ふっふっふ…きーちゃんとあたいのダブルトラップは完璧ね!」
「だね〜〜…あははっ」
くそっ…だ、駄目だ…今、今目を開けたら目が!目がやばいことに!!
俺は即座に立ち上がると風呂場に走りこみ、頭と顔を洗ってきた…
や…やばかったぜ…
そんなことをしていながらも何とかルタを説得するのに成功した俺は、キュラスとルタを連れて依頼書に書かれていた圭介って人に伍神村まで送ってもらうことにした…
で、今荷馬車に揺られながらのんびりと目的地に向かっているところだ。
「圭介さん…ありがとうございます」
「いんや、こんぐれぇいっつもしてるから気にしなくていいだ、それにしてもおめぇさん、侍じゃねぇべな…旅の方か?」
「まぁ、そんなところです…」
……圭介さん、話し方はなんだか特徴的だが、中々にゆったりとした性格のようだな…俺、そういうの好きだぜ?
「伍神村はいいところだで、のんびりとしてくるといいだ。あの村は漬物がおいしいだよぉ、お土産にすんならおすすめだ」
「漬物ですか……干し肉のようなものはないんですかね?」
本音、漬物より干し肉が好きな俺は圭介さんにこう聞いていた。
後ろの方でキュラスとルタはカルタとかいう遊びをしているようだ…
いやぁ…いっつもああいう風にしていれば子供らしいのに…
などと思いながら、すっごくスローペースで荷馬車は進んでいく…
そ、そんなことより今は干し肉だ…ストック分は絶対買わなければ…
「干し肉だったら…あそこの干し肉はかてぇが、味が濃くて美味いのがたくさんあるだ、漬物のほうがおすすめだが…そっちも中々いけるとおもうだよ」
硬いだと…?でも、上手いって聞いたぞ…これは…買いだな!!
そして、染木町を出発して2時間くらいか…俺たちはようやく伍神町についた。
いやぁ…結構圭介さんと話をしていると暇にもならなかったし、楽しかったぜ…
キュラスとルタはどうやらカルタとやらにはまったようなので、俺は圭介さんに頼み込んでカルタを受け取った後、圭介さんを入り口に残し、のんびりと村を回ってみることにした。
多分あの階段の上にある大きな建物が目的地だろうし…
今の俺には目的は関係ない!とにかく干し肉が欲しいんだよ!!
そう思いながらルタたちと一緒に干し肉が売っている店を探している俺…
「デメトリオ〜、あそこにある饅頭が食べたい!!」
「駄目駄目!ルタ…今、俺の宿屋がどれほどお金が無いか…わかってるのか?」
そう言いながら、干し肉を買う事を棚に上げる俺…
「むぅ…あたいの言うことを聞かないなんて…デメトリオの癖に…」
ふっ…甘いな、甘すぎるぜ!そう毎回俺が言うことを聞いてやるものかよ!
俺はそう思いながら先へ行こうとしたが…あれ!?
進もうとすると、ポーチに何かしら引っかかっているようで進めない…
木か?木なのか?
俺が振り向いてそっちを見てみると、手錠がポーチにかかっており、もう片方は木に固定されていたわけだな?
待て待て、そんな事をしても面白くないぞ?
「ちょっと財布借りていくよ〜?」
「待てって!!落ち着け!!」
だが、ルタもキュラスも容赦なく財布を抜いて買い物に行ったわけだな…
頼むから…そんなに使ってこないでくれよ…
俺、財布は三つ持ってるけど、その財布の中には一番お金入ってるんだから…
俺はそう強く願ったんだが…子供というのは物凄く無情だった…
戻ってきた俺の可愛い財布は中身が空という状態だったし、ルタやキュラスは思う存分買い物をしたようで、あどけない顔で喜びながら饅頭をむさぼっていた。
お…俺の金…は、ははっ…
俺は凄く気分が落ち込んだが、干し肉が売っている店を見つけた瞬間、さっきまでのブルーな気分はきれいに飛んでいった。
「これは…質といい形といい…最高だな、この干し肉下さい」
「は〜い!!何個必要ですか?」
何個だって…?ふっ愚問だな…
「全部ちょうだい!」
「はい!って…えぇ!?全部ですかぁ!?」
「はい!!あと、この干しナマコっていう奴も…一本下さい」
「いいですけど…お金あるんですか?銀貨10枚になりますよ!?」
「大丈夫だ、問題ない!!じゃあ、これで…」
ふっふっふ…たぶんここまで干し肉を買ったお客は俺くらいだろうな…
そして干し肉を受け取ったときに気がついたんだが…ここの干し肉長いなぁ…
形的にも俺の剣に似てる…だと?そうだ、5本だけ剣の近くにしまっておこうっと…
俺…この干し肉とはベストパートナーになれそうだぜ…
あ…俺はちゃんとここまで何度も助けてくれた木箱たちのことを忘れた訳じゃないぜ!?
そして俺は戻ってくると同時に、ルタとキュラスを近くに置いていなかったことを後悔した。
い…いないぞあいつら…きれいさっぱりいなくなってやがる…
俺がさっきまでキュラスとルタがいた場所に行くと、そこにはさっきまで確かにいたはずの二人の姿はきれいに消えていたんだ。
俺はしばらくの間真剣に考え、一つの結論を導き出した。
初めのうちに目的を達成しておくのも、いいと思うんだよ俺は!
そうときまれば、この村のどこかにいるキュラスとルタを探すのはひとまず後回しにしてあの神社に向かうのが得策だな…
そう思い立ち、神社に続く階段を必死に今登っている俺…
20段くらい上ったか…この階段長くねぇか…?
など、20段上ったところで文句を言っていると、上から青年が一人降りてきたところだった。
え?20段で文句を言うなって?
…ま、まぁいいじゃねえかそこはスルーする方向で…な?
それにしてもこの青年…女性を二人も引き連れてなんと羨ま…なんでもない。
俺は見ず知らずの青年に嫉妬心を抱きながら横を通り過ぎた時だった。
「あの…神社に何かようですか?」
「あぁ…少し用事があって…三人はこれから旅ですか?」
「まぁ…そんなところです」
……か、会話が続かないぜ…しかも、二人の女性陣は俺のことを怪しい奴だと思ったのか…真相はわからないが、いぶかしげな表情で俺を見てきたわけだな?
き、気まずいってこの空気…特に、21にもなって未だに一人の俺からしたら余計に…
「じ…じゃあ、俺はこれで…」
そして俺は何かから逃げるように階段を無心で上った訳だった…
階段を上っていると、上の方から小さい子が降りてきているのが見えたわけだが…ま、まさかこの階段を上り下りできるというのか!?
「お兄ちゃん待ってぇ〜!!」
……そうか、俺が想像するに下の男はこの子の兄といったところなのか?
などと思いながら見ていると、下の男もこの子のことに気がついた用で、動きを止めて手を振っているようだし…兄妹って、いいものだよなぁ…
俺はこの瞬間…確かに何かに感動した。
だが、俺が感動すると同時にその子が前のめりに倒れこんだ!?
か、階段で小さな女の子が倒れる!?こ、これは大怪我の予感がするぜ…
これを見捨てるなんて…俺には到底出来そうにない!!
俺は何と…ここでいいところを見せようとしたのか…逃げの姿勢をこのタイミングで見せなかった訳だ。
俺は空中でバランスを崩したその子をしっかりその場でささえ、無事に体制を立て直さしてあげた…けど…
「へっ?ど、どうして体が傾いて…」
なれないことをすると当然上手くいかないわけで…
その子は無事だが、俺はまるで坂道を転がり落ちるりんごのようなスピードで階段から転がり落ちた…
「のわ〜〜〜っ!!と、止まってくれぇ!!」
容赦なく回転し続ける俺…
俺の回転は結局、近くにあった鶏小屋の餌箱に俺が突っ込むことで納まった…
当然、いきなり入ってきた俺に驚いて鶏はコケーっと泣き声を上げ、俺を容赦なくつついてくる…
俺は頭を抑えながら、鶏小屋から無事に逃げ出すことに成功したんだ!
鶏…恐ろしい子…
またこの階段を上るのかと俺が階段を見上げると、あの青年がこっちの方を見て途中で止まっていたのが見えた。
アレは…こっちに来いって事なのか?って判断した俺は少々時間はかかったが、その青年の下にたどり着いた訳だ…ふぅ、階段きつかったぜ…
「あの…妹を助けてくれてありがとう」
「あぁ!!初めはお前のことを怪しい男って思ってたけど、いいやつじゃん!」
「紅…それは少し失礼でしょう?」
「何だよーー!!葵だってそう思っただろ?」
「そ、それはまぁ…」
……やっぱり、そう思われてたのかよ…
だが、この青年は無言で右手を差し出してきた訳だな…
「俺はカイトっていうんだ。本当にありがとう…」
「俺はデメトリオ…あんなの、当然のことだって!!じゃあな!」
そうして俺たちは男同士の握手を交わした後、去った訳だが…
一見クールそうに見えて…何かしら強い信念じみたものを感じ取れた俺がそこにいた。
で、さっきの出来事が終わり俺はようやく…ようやく目的地に着いたんだよ!
そして神社の中に入ると…アレは!?
そこには、子供達とカルタをしているルタとキュラスの姿が!!
なんだよ!!ここにいたのかよ!!なんて…言いたいけど俺は絶対に言わないぜ…?
「参拝客の方ですか?ようこそいらっしゃいました」
俺が階段を上り終えて息を荒げていると、穏やかな笑みを浮かべながら女性がこっちに向かって歩いているのが見えたわけだ。
あの服装…始めてみるな…
「えっと…時雨神社の方に言われて、龍皇宝玉を受け取りに来ました」
「そうですか…そういえば、もうそのような時期ですね…」
俺が依頼の話をすると、少しだが目を細めたように見えたが…
俺の気のせいだった…そういうことにしておこう。
「少々、お待ちください」
いきなり目の前の女性はこう言うと、どこかに行ってしまったので、俺は一人…子供達のカルタを見ていた。
「ふぅ…疲れた疲れたっと…客か?」
「あ、お邪魔してます」
俺は、これまた見たことが無い雰囲気の男性に話しかけられた…
い、いきなりだったから一瞬だけど焦ったぜ俺は…
「今回は何のようでここに?」
「依頼で、ここに宝玉を受け取るように言われたんです」
そう言って依頼書をその人に見せる俺…
その人は少しの間依頼書を見ると、納得したように依頼書を返してくれたんだぜ!!でも、その人も複雑そうな表情を見せるのは…一体なぜだ!?
そして、一瞬だが空気が沈黙に支配された今現在のこの状況…
俺…静かなのって苦手なんだよなぁ…
そう思っていると、その人がいきなり俺にこういってきたわけだな…
「お前…剣は使うのか?」
「へ?」
いきなり、剣は使うのかって…何なんだこの人は…!?
内心、若干怪しいと思っている俺…
「へ?じゃねえよ、お前、剣は使うのかって聞いてるんだよ」
「使いますけど…」
「そうか…一つ、お前に剣の基本を教えてやるよ!」
「い、いきなりどうしてそのような展開に!?」
本音、訳がわからない俺は焦っていたんだよ…
それからしばらくの間、剣の練習をする羽目になっても、一切強くなることも無くあの女性が後ろから歩いてきた。
「まさか…ここまで戦闘が出来ないとは…」
向こうの人も驚愕しているようだが…好きで戦闘が下手なわけじゃないんだぞ俺は!!
でも、さっきの訓練で何かつかめた気がする…つまり、俺も固有技として新技を覚えたって訳だ!!凄いだろーー!!
「これを、時雨神社の方に渡してください」
そう言って変な書類を俺に渡してきた訳だな?
「あ…はぁ…」
俺はそれを受け取ると、ルタとキュラスをつれてその場を去った…
のんびりしすぎたのか、辺りはすっかり夕暮れ時になっているようだぜ…
そう思いながら俺が向かったのは圭介さんが待っているところでは無く、階段から転がり落ちた時に飛び込んだ鶏小屋だ!
あの時はよくもやってくれたな鶏共!!俺の新技の餌食にしてやるぜ!!
結構あの時にぼこぼこにされた時のことを根に持っていた俺…
「ふっふっふ…覚悟しろ鶏…俺の新技をなぁ!!」
「コケー!!」
今のうちに吼えていればいいさ!!今にお前達は俺のそばから逃げるんだからなぁ!
「食らえ!!【干し肉バスターソード】!!」
どうだ…このすさまじい攻撃力!!硬度!!全てにおいて最強の俺の干し肉!
しかも、軽い!!まさに最強の技だと俺は思うぜ!!
食らえ鶏!!
そして思いっ切り鶏に向かって干し肉を叩き付けた!
だが…な…んだと!?
俺の【干し肉バスターソード】は鶏に当たると同時に無残にもバキッと言う効果音と共に折れた…!?
一体誰がこのような展開を予想できたというのか!?多分誰も予想してなかっただろうな…
俺だって、まさか干し肉が折れるなんて思わなかった…一気に鶏と俺の立場が逆転したというのか!?
「や、やめろ!!お、俺が悪かったよ!!助けてくれ!」
だが、こう必死に叫んでも鶏が俺に容赦してくれることは無かった…
確実にこの出来事のおかげで鶏が怖くなったのは言うまでも無いぜ…
その後、圭介さんの荷馬車で染木町についた頃には辺りはすっかり夜中だったわけだが…
ルタとキュラスがすでに帰っていることに気付かずに圭介さんと話し込んでいた俺…早く帰らないと何を言われたものか判らないからなぁ…
などと思いながら短縮ルートとして人気のない路地を通ったときだった。
「……ちょっといいかな?」
「ん?誰だ…?」
不意に後ろの方から話しかけられたんだが…一体誰だ!?
「僕は…義音子っていうんだ。少し弱者の君に話があってね…?」
…い、いきなり弱者って…酷い奴だな
そう思いながら振り向くと…!?お、俺だと!?
そういえば…昨日も…
「昨日も…あったよな?俺に何の用なんだ?」
「……君に聞きたいことがあってさぁ?今、後悔していることってある?」
後悔…?沢山してるよ!!しなかったことなんて一度もない!
「沢山あるけど……何か?」
「……だから僕がこのような性格になってるんじゃないか…」
「え…?」
「なんでもない!じゃあな!」
そういうと、義音子はきれいにその場から去ったのだが…なんだったんだ!?
毎回不意に出てきては不意に姿を消す俺に似た謎の人物…怪しい…怪しすぎる!
そう思いはしたが、深く考えても仕方が無いし…
俺はそこまで深く物事を考えずに宿に戻ってきたわけだが…
俺が戻ってきた時には他のみんなはもうすでに寝ていたんだよ!!
す、少しは俺が戻るまで待ってくれても…まぁ、いいんだけどさ。
俺は複雑な心境ながらも眠りについたんだ…
そして青年が眠りについたとき、またもタンスから怪しい影が…
「ふっふっふ……今回の発明品では前回の効果に加え、なんと直接刺激効果も追加されたのじゃ!作業の効率化が適用されたのじゃ!!」
「さ、さすがゾーネちゃんだね〜…」
「うん、最強のあたいでも少々…いや、大分凄いと思う」
その後…デメトリオがどういった目に会うか…多分判っていると思うので言いませんけど、青年の寝起きがまた悪くなることに変わりはないのだった…
俺は今日、とても気持ちよく目覚めることが出来たんだ!
久しぶりにいい日になりそうだぜ…
そう思いながら俺がロビーの方に行くと…
「うぐっ、うぐっ…ぷはぁっ!!やっぱり朝はこれだよなぁ!」
……アレ?あんな人モンスターラグーンにいたか!?
俺がロビーに入るや否や酒を朝から飲んでいる肌が赤い女性に出会ったわけだな…
待て!!あの人…奉行所でドラグーンって男ともめていた紅緒ってお方じゃないか!?
な、なんでクエストを受けに行ってた場所の人が俺の宿に…?
俺がそう思いながら動きを止めると…向こうも俺に気がついたようだ…
朝の5時にすでにいるこの人は…暇なのか?
などと思っていると向こうが何かに気付いたような顔になってこう言った。
「あんたがデメトリオ?」
「え…まぁ、そうですけど…」
「なんか覇気が感じられない男だねぇ…っと、あんたのところにいるメリィって人、知ってる?」
覇気が無いってのは余計だって…
いやいや、俺はそれはもう覇気に満ち溢れているとそれはそれは評判で…
え?嘘付けって?
……ま、まぁこの話題はもういいって!!
「メリィ…?はぁ、今上で寝てますけど…起こしてきますよ?」
「いや、折角寝ているのを邪魔するのは悪いし、あんたに今日の依頼を渡しとくよ…本来は私の仕事じゃなくて他の奴の仕事だったんだけど……そいつ今、育児休暇もらってるからさ?ま、これからよろしく」
そういうとテーブルの上に依頼の書かれた紙を一枚置いて紅緒さんは去っていった…
俺は一瞬だが、俺が起きるよりも先にすでにおきてて朝から酒を飲んでも平気な紅緒さんを凄いと思った…
なぜこのタイミングで思ってしまったのか…それは俺にもわからないぜ…
そこで俺は依頼の書かれた紙を見る前に一瞬の朝食タイムだ!!
俺は毎日シチューも本音飽きてきたし、たまには干し系の食べ物以外も食べたいという理由でサラダを作ったわけだな。
しかも今回…レモンを少し絞って振りかけてしまうという革新的なアイデアを導き出した俺!!お、恐ろしすぎて声も出ないぜ…
「野菜食べるの久しぶりだなぁ…いただきます」
そしてしゃりっという気持ちいい音と共に俺の口に激痛が!?
「うおぉぉぉぉぉぉっ…な、なんだこの痛みは…!?痛い!!というか染みる!!なんなんだ一体!?」
俺は本気で口の中を野菜で切ったのかと慌てて風呂場の鏡で自分の顔を見てみた…
こ、口内炎じゃないか!?これ!!
そうか…日ごろ肉体に与えてきた疲労が遂に口内炎を引き起こしたか…って、冷静に判断している場合じゃないぞ…
この口内炎の存在がどれほど恐ろしいか…君達は知らないだろうけど…
口内炎って直るまでが無駄に長い気がするんだよ!!
などと文句を言ったりする俺…まぁ、こんな事をしながら有意義に時間を過ごしたわけだな…
そしてメリィたちが起きてきて食事を終わらせ、テーブルの上にある紙の話をするまで俺はそのことをきれいさっぱり忘れていたわけだった…
いやぁ…口内炎のことで頭がいっぱいで…
「デメトリオ…これは?」
「それは依頼書…朝、紅緒って人にもらったんだけど…」
そう言って俺が依頼書の話をメリィにするとメリィは少し目を通してその紙を俺に渡してきた…
何で俺に…?
「この依頼…デメトリオやっといて」
えぇ…お、俺が!?
待て待て…依頼の内容を見てから決めさせてくれよ……
そう思いながら依頼の紙切れに書かれた内容をじっくりと読んでみる…
〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:秋沢 舞香 (あきざわ まいか)
種族:白蛇
内容:お守りを受け取ってきてください
『今回依頼いたしますのは、各神社で一年間奉納される龍皇宝玉を受け取ってきて欲しいのです。
本来ならば私達時雨神社の者がいくのが道理なのですが、今回新しく巫女さまが変わったばかりなので忙しく、その時間がありません。
目的地は伍神村…最近、賊が村を襲ったという話は聞くのですが、なにぶん忙しいので真意がわかりません。
お気をつけください。』
報酬:神社特性の神水を少々と…布を提供します。
備考:あまり大人数での移動は効率が悪いので3人ほどで…移動はこの町の入り口で運び屋をしている圭介さんに頼んでください。
〜〜〜〜〜〜〜〜
へぇ…結構楽そうな仕事だな今回!!
何か物をもらってそれを送り届ければいいんだろ?すぐだな!!
俺は心の中で喜びながら依頼書を懐にしまいこんだ。
そして8時…各自好きなことをしてのんびりしているようだが…伍神村がどれほどの遠さかわからないからなぁ…
そろそろ行くかと決めたと同時に俺は誰を連れて行くか真剣に悩んだ。
まぁ、依頼書に書かれていた内容には3人って書いてあったし…俺とキュラスと…ルタでいいかな…
ここで俺はあえてこのチョイスで行く…凄いと思わないか?
「キュラス…一緒に依頼受けてくれないかな?」
「えぇ〜…まぁ、いいけど…」
良し!!キュラスはOKしてくれたぜ…残るはルタだが…
あいつ…どこに行ったんだ?
そう思って宿中探してみたが…どこにもいないじゃないか!!
仕方が無い…別の奴に頼むとするか…
俺がそう思った瞬間…俺は頭からホイップクリームを被ったわけだな…
誰だ!?いや…皆まで言うな…俺にはわかっているぞ…
こんなことをする奴はこの宿屋の中で一人しかいない!!
「ルタ!!お前か!!」
そう言いながら俺が上を見ると…そこにはきーちゃんがふわふわと浮いていただけだった…
あ…あれぇ…?こんなことする奴はルタだけだと…
「デメトリオーー!!」
「へ…?ぐはぁっーーー!!」
俺の油断が…いけなかったのか…?
俺は顔面に蜂蜜のたっぷり塗られた食パンを叩きつけられ、なんだか得意げに笑うルタを目にしながら後ろに倒れこんだ…
「ふっふっふ…きーちゃんとあたいのダブルトラップは完璧ね!」
「だね〜〜…あははっ」
くそっ…だ、駄目だ…今、今目を開けたら目が!目がやばいことに!!
俺は即座に立ち上がると風呂場に走りこみ、頭と顔を洗ってきた…
や…やばかったぜ…
そんなことをしていながらも何とかルタを説得するのに成功した俺は、キュラスとルタを連れて依頼書に書かれていた圭介って人に伍神村まで送ってもらうことにした…
で、今荷馬車に揺られながらのんびりと目的地に向かっているところだ。
「圭介さん…ありがとうございます」
「いんや、こんぐれぇいっつもしてるから気にしなくていいだ、それにしてもおめぇさん、侍じゃねぇべな…旅の方か?」
「まぁ、そんなところです…」
……圭介さん、話し方はなんだか特徴的だが、中々にゆったりとした性格のようだな…俺、そういうの好きだぜ?
「伍神村はいいところだで、のんびりとしてくるといいだ。あの村は漬物がおいしいだよぉ、お土産にすんならおすすめだ」
「漬物ですか……干し肉のようなものはないんですかね?」
本音、漬物より干し肉が好きな俺は圭介さんにこう聞いていた。
後ろの方でキュラスとルタはカルタとかいう遊びをしているようだ…
いやぁ…いっつもああいう風にしていれば子供らしいのに…
などと思いながら、すっごくスローペースで荷馬車は進んでいく…
そ、そんなことより今は干し肉だ…ストック分は絶対買わなければ…
「干し肉だったら…あそこの干し肉はかてぇが、味が濃くて美味いのがたくさんあるだ、漬物のほうがおすすめだが…そっちも中々いけるとおもうだよ」
硬いだと…?でも、上手いって聞いたぞ…これは…買いだな!!
そして、染木町を出発して2時間くらいか…俺たちはようやく伍神町についた。
いやぁ…結構圭介さんと話をしていると暇にもならなかったし、楽しかったぜ…
キュラスとルタはどうやらカルタとやらにはまったようなので、俺は圭介さんに頼み込んでカルタを受け取った後、圭介さんを入り口に残し、のんびりと村を回ってみることにした。
多分あの階段の上にある大きな建物が目的地だろうし…
今の俺には目的は関係ない!とにかく干し肉が欲しいんだよ!!
そう思いながらルタたちと一緒に干し肉が売っている店を探している俺…
「デメトリオ〜、あそこにある饅頭が食べたい!!」
「駄目駄目!ルタ…今、俺の宿屋がどれほどお金が無いか…わかってるのか?」
そう言いながら、干し肉を買う事を棚に上げる俺…
「むぅ…あたいの言うことを聞かないなんて…デメトリオの癖に…」
ふっ…甘いな、甘すぎるぜ!そう毎回俺が言うことを聞いてやるものかよ!
俺はそう思いながら先へ行こうとしたが…あれ!?
進もうとすると、ポーチに何かしら引っかかっているようで進めない…
木か?木なのか?
俺が振り向いてそっちを見てみると、手錠がポーチにかかっており、もう片方は木に固定されていたわけだな?
待て待て、そんな事をしても面白くないぞ?
「ちょっと財布借りていくよ〜?」
「待てって!!落ち着け!!」
だが、ルタもキュラスも容赦なく財布を抜いて買い物に行ったわけだな…
頼むから…そんなに使ってこないでくれよ…
俺、財布は三つ持ってるけど、その財布の中には一番お金入ってるんだから…
俺はそう強く願ったんだが…子供というのは物凄く無情だった…
戻ってきた俺の可愛い財布は中身が空という状態だったし、ルタやキュラスは思う存分買い物をしたようで、あどけない顔で喜びながら饅頭をむさぼっていた。
お…俺の金…は、ははっ…
俺は凄く気分が落ち込んだが、干し肉が売っている店を見つけた瞬間、さっきまでのブルーな気分はきれいに飛んでいった。
「これは…質といい形といい…最高だな、この干し肉下さい」
「は〜い!!何個必要ですか?」
何個だって…?ふっ愚問だな…
「全部ちょうだい!」
「はい!って…えぇ!?全部ですかぁ!?」
「はい!!あと、この干しナマコっていう奴も…一本下さい」
「いいですけど…お金あるんですか?銀貨10枚になりますよ!?」
「大丈夫だ、問題ない!!じゃあ、これで…」
ふっふっふ…たぶんここまで干し肉を買ったお客は俺くらいだろうな…
そして干し肉を受け取ったときに気がついたんだが…ここの干し肉長いなぁ…
形的にも俺の剣に似てる…だと?そうだ、5本だけ剣の近くにしまっておこうっと…
俺…この干し肉とはベストパートナーになれそうだぜ…
あ…俺はちゃんとここまで何度も助けてくれた木箱たちのことを忘れた訳じゃないぜ!?
そして俺は戻ってくると同時に、ルタとキュラスを近くに置いていなかったことを後悔した。
い…いないぞあいつら…きれいさっぱりいなくなってやがる…
俺がさっきまでキュラスとルタがいた場所に行くと、そこにはさっきまで確かにいたはずの二人の姿はきれいに消えていたんだ。
俺はしばらくの間真剣に考え、一つの結論を導き出した。
初めのうちに目的を達成しておくのも、いいと思うんだよ俺は!
そうときまれば、この村のどこかにいるキュラスとルタを探すのはひとまず後回しにしてあの神社に向かうのが得策だな…
そう思い立ち、神社に続く階段を必死に今登っている俺…
20段くらい上ったか…この階段長くねぇか…?
など、20段上ったところで文句を言っていると、上から青年が一人降りてきたところだった。
え?20段で文句を言うなって?
…ま、まぁいいじゃねえかそこはスルーする方向で…な?
それにしてもこの青年…女性を二人も引き連れてなんと羨ま…なんでもない。
俺は見ず知らずの青年に嫉妬心を抱きながら横を通り過ぎた時だった。
「あの…神社に何かようですか?」
「あぁ…少し用事があって…三人はこれから旅ですか?」
「まぁ…そんなところです」
……か、会話が続かないぜ…しかも、二人の女性陣は俺のことを怪しい奴だと思ったのか…真相はわからないが、いぶかしげな表情で俺を見てきたわけだな?
き、気まずいってこの空気…特に、21にもなって未だに一人の俺からしたら余計に…
「じ…じゃあ、俺はこれで…」
そして俺は何かから逃げるように階段を無心で上った訳だった…
階段を上っていると、上の方から小さい子が降りてきているのが見えたわけだが…ま、まさかこの階段を上り下りできるというのか!?
「お兄ちゃん待ってぇ〜!!」
……そうか、俺が想像するに下の男はこの子の兄といったところなのか?
などと思いながら見ていると、下の男もこの子のことに気がついた用で、動きを止めて手を振っているようだし…兄妹って、いいものだよなぁ…
俺はこの瞬間…確かに何かに感動した。
だが、俺が感動すると同時にその子が前のめりに倒れこんだ!?
か、階段で小さな女の子が倒れる!?こ、これは大怪我の予感がするぜ…
これを見捨てるなんて…俺には到底出来そうにない!!
俺は何と…ここでいいところを見せようとしたのか…逃げの姿勢をこのタイミングで見せなかった訳だ。
俺は空中でバランスを崩したその子をしっかりその場でささえ、無事に体制を立て直さしてあげた…けど…
「へっ?ど、どうして体が傾いて…」
なれないことをすると当然上手くいかないわけで…
その子は無事だが、俺はまるで坂道を転がり落ちるりんごのようなスピードで階段から転がり落ちた…
「のわ〜〜〜っ!!と、止まってくれぇ!!」
容赦なく回転し続ける俺…
俺の回転は結局、近くにあった鶏小屋の餌箱に俺が突っ込むことで納まった…
当然、いきなり入ってきた俺に驚いて鶏はコケーっと泣き声を上げ、俺を容赦なくつついてくる…
俺は頭を抑えながら、鶏小屋から無事に逃げ出すことに成功したんだ!
鶏…恐ろしい子…
またこの階段を上るのかと俺が階段を見上げると、あの青年がこっちの方を見て途中で止まっていたのが見えた。
アレは…こっちに来いって事なのか?って判断した俺は少々時間はかかったが、その青年の下にたどり着いた訳だ…ふぅ、階段きつかったぜ…
「あの…妹を助けてくれてありがとう」
「あぁ!!初めはお前のことを怪しい男って思ってたけど、いいやつじゃん!」
「紅…それは少し失礼でしょう?」
「何だよーー!!葵だってそう思っただろ?」
「そ、それはまぁ…」
……やっぱり、そう思われてたのかよ…
だが、この青年は無言で右手を差し出してきた訳だな…
「俺はカイトっていうんだ。本当にありがとう…」
「俺はデメトリオ…あんなの、当然のことだって!!じゃあな!」
そうして俺たちは男同士の握手を交わした後、去った訳だが…
一見クールそうに見えて…何かしら強い信念じみたものを感じ取れた俺がそこにいた。
で、さっきの出来事が終わり俺はようやく…ようやく目的地に着いたんだよ!
そして神社の中に入ると…アレは!?
そこには、子供達とカルタをしているルタとキュラスの姿が!!
なんだよ!!ここにいたのかよ!!なんて…言いたいけど俺は絶対に言わないぜ…?
「参拝客の方ですか?ようこそいらっしゃいました」
俺が階段を上り終えて息を荒げていると、穏やかな笑みを浮かべながら女性がこっちに向かって歩いているのが見えたわけだ。
あの服装…始めてみるな…
「えっと…時雨神社の方に言われて、龍皇宝玉を受け取りに来ました」
「そうですか…そういえば、もうそのような時期ですね…」
俺が依頼の話をすると、少しだが目を細めたように見えたが…
俺の気のせいだった…そういうことにしておこう。
「少々、お待ちください」
いきなり目の前の女性はこう言うと、どこかに行ってしまったので、俺は一人…子供達のカルタを見ていた。
「ふぅ…疲れた疲れたっと…客か?」
「あ、お邪魔してます」
俺は、これまた見たことが無い雰囲気の男性に話しかけられた…
い、いきなりだったから一瞬だけど焦ったぜ俺は…
「今回は何のようでここに?」
「依頼で、ここに宝玉を受け取るように言われたんです」
そう言って依頼書をその人に見せる俺…
その人は少しの間依頼書を見ると、納得したように依頼書を返してくれたんだぜ!!でも、その人も複雑そうな表情を見せるのは…一体なぜだ!?
そして、一瞬だが空気が沈黙に支配された今現在のこの状況…
俺…静かなのって苦手なんだよなぁ…
そう思っていると、その人がいきなり俺にこういってきたわけだな…
「お前…剣は使うのか?」
「へ?」
いきなり、剣は使うのかって…何なんだこの人は…!?
内心、若干怪しいと思っている俺…
「へ?じゃねえよ、お前、剣は使うのかって聞いてるんだよ」
「使いますけど…」
「そうか…一つ、お前に剣の基本を教えてやるよ!」
「い、いきなりどうしてそのような展開に!?」
本音、訳がわからない俺は焦っていたんだよ…
それからしばらくの間、剣の練習をする羽目になっても、一切強くなることも無くあの女性が後ろから歩いてきた。
「まさか…ここまで戦闘が出来ないとは…」
向こうの人も驚愕しているようだが…好きで戦闘が下手なわけじゃないんだぞ俺は!!
でも、さっきの訓練で何かつかめた気がする…つまり、俺も固有技として新技を覚えたって訳だ!!凄いだろーー!!
「これを、時雨神社の方に渡してください」
そう言って変な書類を俺に渡してきた訳だな?
「あ…はぁ…」
俺はそれを受け取ると、ルタとキュラスをつれてその場を去った…
のんびりしすぎたのか、辺りはすっかり夕暮れ時になっているようだぜ…
そう思いながら俺が向かったのは圭介さんが待っているところでは無く、階段から転がり落ちた時に飛び込んだ鶏小屋だ!
あの時はよくもやってくれたな鶏共!!俺の新技の餌食にしてやるぜ!!
結構あの時にぼこぼこにされた時のことを根に持っていた俺…
「ふっふっふ…覚悟しろ鶏…俺の新技をなぁ!!」
「コケー!!」
今のうちに吼えていればいいさ!!今にお前達は俺のそばから逃げるんだからなぁ!
「食らえ!!【干し肉バスターソード】!!」
どうだ…このすさまじい攻撃力!!硬度!!全てにおいて最強の俺の干し肉!
しかも、軽い!!まさに最強の技だと俺は思うぜ!!
食らえ鶏!!
そして思いっ切り鶏に向かって干し肉を叩き付けた!
だが…な…んだと!?
俺の【干し肉バスターソード】は鶏に当たると同時に無残にもバキッと言う効果音と共に折れた…!?
一体誰がこのような展開を予想できたというのか!?多分誰も予想してなかっただろうな…
俺だって、まさか干し肉が折れるなんて思わなかった…一気に鶏と俺の立場が逆転したというのか!?
「や、やめろ!!お、俺が悪かったよ!!助けてくれ!」
だが、こう必死に叫んでも鶏が俺に容赦してくれることは無かった…
確実にこの出来事のおかげで鶏が怖くなったのは言うまでも無いぜ…
その後、圭介さんの荷馬車で染木町についた頃には辺りはすっかり夜中だったわけだが…
ルタとキュラスがすでに帰っていることに気付かずに圭介さんと話し込んでいた俺…早く帰らないと何を言われたものか判らないからなぁ…
などと思いながら短縮ルートとして人気のない路地を通ったときだった。
「……ちょっといいかな?」
「ん?誰だ…?」
不意に後ろの方から話しかけられたんだが…一体誰だ!?
「僕は…義音子っていうんだ。少し弱者の君に話があってね…?」
…い、いきなり弱者って…酷い奴だな
そう思いながら振り向くと…!?お、俺だと!?
そういえば…昨日も…
「昨日も…あったよな?俺に何の用なんだ?」
「……君に聞きたいことがあってさぁ?今、後悔していることってある?」
後悔…?沢山してるよ!!しなかったことなんて一度もない!
「沢山あるけど……何か?」
「……だから僕がこのような性格になってるんじゃないか…」
「え…?」
「なんでもない!じゃあな!」
そういうと、義音子はきれいにその場から去ったのだが…なんだったんだ!?
毎回不意に出てきては不意に姿を消す俺に似た謎の人物…怪しい…怪しすぎる!
そう思いはしたが、深く考えても仕方が無いし…
俺はそこまで深く物事を考えずに宿に戻ってきたわけだが…
俺が戻ってきた時には他のみんなはもうすでに寝ていたんだよ!!
す、少しは俺が戻るまで待ってくれても…まぁ、いいんだけどさ。
俺は複雑な心境ながらも眠りについたんだ…
そして青年が眠りについたとき、またもタンスから怪しい影が…
「ふっふっふ……今回の発明品では前回の効果に加え、なんと直接刺激効果も追加されたのじゃ!作業の効率化が適用されたのじゃ!!」
「さ、さすがゾーネちゃんだね〜…」
「うん、最強のあたいでも少々…いや、大分凄いと思う」
その後…デメトリオがどういった目に会うか…多分判っていると思うので言いませんけど、青年の寝起きがまた悪くなることに変わりはないのだった…
12/03/31 19:31更新 / デメトリオン
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