20 ミストブリッジの死闘(中編)
さぁて、早速一番初めの橋を通ったところだが…一つ、忘れていたことがあるんだ。
そう…死体を供養するのをきれいに忘れていた…今となっては取り返しがつかないことだが…あの死体にはとてもじゃないが、謝罪をしないといけないな…
本当にすまなかった…
「ふぅ…本当にこの橋って3層構造になっているのか?」
「わしが行った通りになっているから心配しないで欲しいのじゃ!というか…信用できぬか?」
「……い、いやぁ?」
お前だから信用してなかったんだけど…なんてとても口に出来ない俺…
そして…さっきのやつら、門を通り抜けてこっちに来る…とか起こらないよな?
結構そのことを心配している俺…いや…でもちゃんと閂したし…大丈夫だよな?
そう思いながら、普通に橋を歩いていると、真ん中付近で俺達はまた一人の女性と遭遇した。これも敵か?絶対に味方では無いと俺は思うのだが…
「おや…?間違えた所に転送されてきちゃったと思ったんだけどなぁ…ここであってたみたいだね」
「……君、誰だい?」
当然のように俺は向こうに対して聞いてみる。何だろう、この橋は…
まるで狙ったかのようなこの雰囲気…オーラ…まるで大きな何かが俺達が橋を渡るたびに敵を出現させようとしているとしか思えない!
「僕の名前はアクスエル!!アレス様の命を受けてこの橋を守ることになったんだ、よろしく〜」
「はぁ…それはご苦労様です…では、俺達はこれで…」
「待ちなよ…君達も僕は通してあげるなんていっていないんだけど?」
……厄介だな本当に…どうしていつもこんなことに巻き込まれてしまうんだ俺は!?
だが、俺はしぶとく頼み込んでみる…無様だって?ふっ、何とでも言うがいいさ!!
「そこを何とかお願いします!!ね?エンジェルでしょあなた!?どうかその清き心で俺達を見逃して…」
「残念だけど、僕はここから先に悪いやつらを通すなって言われているんだ。君達がいい人かどうか…まだ分からないからね?」
……そうか、なら俺は大丈夫だな…だって俺、普通の人間だし!!
身も心も清いからな!!みんなもそう思うだろ?
いや、今までの俺の扱いを見てきたなら分かるはずだ!!
「じゃあ、俺だけ通してくださいよ!!この俺、デメトリオ=スタンダート…生まれてこの方一度でも悪い要素を兼ね備えなかったことで有名なんですから!」
今日、ここで初めてフルネームを言ったのだが、誰も驚いた様子は無かった。
なんだよ…折角の機会だったのに…
「デメトリオ…デメトリオ…どこかで聞いたことのある名前だなぁ…えっと…そうだ!僕の持ってきた重要人物リストに確か名前が…これだ!」
なんか…嫌な予感が…
「『重要人物リストNO.08 デメトリオ=スタンダート (21歳)男
罪名:フラグ破壊、及び運命変更罪…さらに、男らしさが無く、弱い
刑罰:他人の運命を変えたことにより、死刑!さらに、死後天界に来て男
らしさを鍛えた後、転生…その後、人生を4回BADENDで終わらせる
報酬:一ヶ月間の休暇、及びいい夫一人の提供
天使界連盟会長 リアより 』
って書いてますよ?」
はぁーーっ!?嘘だろ!?え?何?フラグ破壊罪って?
それに、運命変更罪に、男らしさが無いし弱いために死刑ってどういうことだ
よ!?どうなってるんだ天使界!?
やばい…凄く文句を言いたい気分だが、ここは耐えるべきところなのか…?
結局、俺はそこに無言で立っていたわけだが…な?
「……ここは、戦う以外に道は無いようね…」
うぉっ!?い、いきなり後ろから出てこないでくれないか!?あ、焦るから…
なんと、俺の後ろから、物凄い悪…的なオーラを出しているメリィが不意に出てきた。やばい…普段は自分から戦おうとしない彼女が…なぜここまで本気なんだ?
俺は一瞬考えたが、相手のアクスエルを見て納得した…なるほどな。
アクスエルの鎧は、かなり胸を締め付けないようなつくりになっており、その鎧の革製の部分にある大きな胸…ここに原因があったのか…
俺は、どうしてメリィがここまで胸にこだわるかが一切分からないのだが、それでもその部分には触れないほうが良いと本能で悟った。
「手合わせすれば、僕と君達がどんな人たちなのか分かり合える!さぁ…行くよ!!」
「どうするジャンヌ…私は今回休みたいのだが…」
「アイネ…私も…少しさっきの戦闘でスタミナ取られたから…」
「あなた達は下がっていなさい…ここは私が行くから!!」
「リーダーだけにはやらせません…私も…行きます!!」
「私も…絶対に倒すから…!!」
……いや、メリィが胸に執着していたというのは薄々感じてはいたのだが、なぜセムちゃんとナナちゃんまで!?
…そこまで胸は重要なパーツか?
まぁ、何はともあれ戦闘が始まったわけだ…この戦い…俺の嫉妬センサーが凄く彼女達から反応している…これは、強いぞ…
「【大いなる神よ…僕の願い…聞き届けたまえ…神斧ボルグ・カムラン】!!行くよ!!」
……あの斧の名前…どこかで昔聞いたことが…って、あぁ!!
ち、違いますよ!!決して神喰いではありませんからね!?
俺は、もう名前の部分をごまかすのに必死だ…元ネタのモンスターの名前を知っているのが何人いることか……
俺の心配などよそに、戦いは始まりを迎えようとしている…
「食らえ!!【ハーピー流飛行武道術12式:紫煙】!!」
さっそくメリィが遠距離攻撃を仕掛けるのだが…なんだ…様子がおかしいぞ!
いきなりアクスエルの体が光り始めたと思うと、物凄い速度でメリィの懐に入り、攻撃を叩き込んだ!
「僕の前で…遠距離攻撃なんて使ってんじゃねぇーーっ!!」
な…なんという攻撃力なんだ…やばいぞ…
「ぐふぅ!?はぁ…はぁ…な、なんて攻撃力なの…」
「リーダー!!回復薬です!!どうぞ!!」
ナナがアイテムを使うと、またもやアクスエルの体が光り始める…
まさか…まさか!?
「だから…僕の前でアイテムなんて…使ってるんじゃねぇーーー!!」
「かはぁっ!?けほっ…ぐっ…」
やばい…こんなに一方的な戦い始めて見たぞ…
「ふっふっふ〜…僕のさっきの力は天使の力…僕は君達が遠距離攻撃、魔法、アイテムを使うと通常の3倍の強さが発揮できるのさぁ!私を倒したければ正々堂々正面からかかってこないとね!!」
「くっ…ナナ、セム…いける?」
「はい…でも、リーダーは…」
「私なら大丈夫よ…行くわよ!!」
……無茶しやがって…勝てない…勝てないよ…
何だよ天使の力って…遠距離、アイテム、魔法を縛られてる上であの強さなんて…ほとんど勝ち目ないじゃないか!!
内心、凄く不愉快な気分の俺…アクスエル…バトルスペック高すぎだろ…
「【ハーピー流飛行武道術63式:鮮烈灰塵衝】!!」
あきらめることをせずに、すかさず蹴り技をアクスエルに叩き込むメリィ…
こちらも普通に強い気がするのは俺だけか?
「くっ…やるね!!やっぱり戦いは正々堂々じゃないとね…」
おお!!押している…押しているぞメリィ!!さすがはモンスターラグーンリーダーだ!!それに、アクスエルにスーパーアーマーが着いていないため、攻撃を仕掛けるとひるんでくれるというのも結構大きい気がする。
「さすがリーダー!!よぉし…私も行きます!!【料理人の魂(お玉)】!」
ナナがメリィの攻撃に便乗して攻撃を仕掛け、アクスエルの頭にお玉をたたきつけた!!
カッキーン!!といい音がして、アクスエルが後ろのほうに飛ばされていく…
なんだあのお玉の威力は!?
「あ!!クリティカルヒットだ!!ラッキー!!」
「くぅ…さっきのは効いたかなーー…じゃあ、そろそろ行くよ!!」
ついにアクスエルの反撃が始まるぞ…どんな技が来るんだ…?
「ふっ…風を感じる…行くよ!!【閃光のマグナアッパー(シエスタ[)】」
「!?は、早い!!」
な、何が起こったんだ…?というか、戦闘能力に違いがありすぎて何も見えないというこのありきたりなシステムどうにかして欲しい…
と、とにかく!!俺には理解できないほどの早さだったんだ!!
「くぅ…でも…甘いわ…」
「甘いのはそっちだよ!!【獄炎のサマーソルト(ヴァリスタV)】」
「ちぃっ…羽にかすったようね…」
「良くかわせたね…でも!!【聖騎士のブロウトマホーク(スタニア\)】」
「きゃあああぁぁっ!!」
「り、リーダー!!大丈夫ですか!?」
ナナとセムちゃんがメリィのところに慌てて走っていっているが…さっきのは普通に懐に入ったぞ…あの斧が懐に当たったって事は…運が悪ければ死ぬ危険性もあるんじゃ…心配だ…
しばらくすると、地面に叩きつけられたメリィがふらふらとだが立ち上がった。も、もう体に響くからそこでやられた振りをしていればよかったのに何で!?
……もう、無理だよ!戦力が圧倒的に違いすぎるって!!
向こうは神の使いなんだぞ……
もう俺の心の中は凄く負けてしまうムードだったし、単純に考えても勝てないだろ!!
なのに…なぜ立ち上がるんだ…
まぁ、戦いが始まってすぐに決着がつくってのはいけない事だって分かってるけどさぁ…
「絶対に…巨乳には負けられない!!胸が戦いの強さを決めるというその定理をぶち壊す!!」
「おぉ…め、メリィは執念で立っておる…子供たちよ…わしの年老いた目の変わりによーく見ておくがいい…」
「デメトリオ…何言ってるんだろ?」
「さぁー?頭のネジ外れたんじゃないーー?あははーー」
くぅ…結構さっきのは、分かる人にはわかって分からない人にはわからないネタだったのに…
と、そんなことはいいんだよ!
「さすが…僕の3コンボ目を食らってまだ立っていられるなんて君…強いね!でも…この攻撃には耐えられるかな?【恋愛のストレートブロー(フォトY)】」
まるで地面をえぐるように…というか、地面をえぐりながらメリィの方に走っているアクスエル…あんな細くて胸は大きいボディのどこにそのような脚力が…って、そんなこともいいんだよ!!
あぁ…なんでだろうか?微妙にだが最近、余計なことをよく言っている気がする…
とにかく、今のメリィの体力だと見るからに耐え切れそうに無いんだが…大丈夫なのだろうか?
「むむっ…リーダー!!宇宙の意思が私に…防げる!!【宇宙防壁イージス】」
何だあのセムちゃんの展開した光の壁はーー!?
というか、アレどこから出したんだ!?
しかも…防ぎきっただと!?
「硬い…!?この防御壁は一体……」
「ふっ…はぁっ!!てぇい!!」
「くっ…蹴りの一撃が強くなっている!?でも…だからこそ僕はあきらめないよ!武人の誇り…受けてみてよ!!」
そうして俺がじっくりと観察していると、アクスエルの鎧が変わった…?
初めのときは、動きやすさを重視したような雰囲気だったのに対し、今回の鎧は凄いオーラを発しながら、まるで重騎士のようになっているタイプだ。
「これが僕のもう一つの姿……この状態になった僕に、近距離攻撃を使ったら反撃するよ!アイテムを使っても戦闘能力3倍の効果つき!!さぁ…どうするのかな?」
「……親切に教えてくれてありがとう…それなら、遠距離攻撃で戦うだけよ!」
「親切に教えるのは戦いをフェアにするためだよ!あと…遠距離で戦うのが果たしていい考えなのかな…?」
何だ…?あの何か裏がありそうな物言いは…?
俺が微妙に疑っていると、セムちゃんが気にした様子も無く大技を繰り出そうとしているところに気がついた。
まだ敵がどんなことをしてくるかも分からないのにいきなり攻撃を仕掛けるのはいささか無謀な気がするけど…
「リーダー!!横によけてください!!【マンティスイレイザー】!!」
おおーー!!種族の特徴をそのまま利用したかの様な技が…
どんな技かというと、両手の鎌から光の衝撃波を放つっていう、俺には絶対出来ない方法だ。
セムちゃん…俺が見ない間に、戦闘中にすっかり頼りがいがあるようになっちゃって…これはもう、セムちゃんは一人でも生活できるな。
心の中で本気でそう思った俺…俺も少しは努力せずに強くなりたいもんだ。
攻撃が当たったところでは、攻撃の衝撃が物凄かったと煙が物語っていた。
だが、煙の中で普通にひるむことなくメリィたちのほうに歩いているアクスエル…どうなっている!?
はじめのほうの鎧の状態だとすぐにひるんでいたというのに…今回はひるむことが無かった?
まさか、スーパーアーマーが追加されたのか!?いや…でも…その要素を追加したら本当に最強になってしまうんじゃ…
あ…だから遠距離で攻撃できるのか…?
だんだん物事を深く考えすぎて頭が痛くなってきたので、俺はここでこの物事を考えるのをやめた。
とにかく!俺は絶対に応援しかしないと決めていたので、余計なことは考えないことにした!なるときになるようになるだろ…?
「何なんですか今の…?あんな軽い攻撃で僕を倒せるとでも思ったんですか?」
「防御力が上がっているようね…でも、はじめのときよりは戦いやすくなっているようだし…」
お…微妙に冷静になってきたようだなメリィは…
いつものようなテンションになってきている…まだ微妙にオーラが黒いのが気になるけど…
「でも、遠距離ならいろいろ戦略が立てられますよリーダー!行きますね!【料理人の魂(アップルパイ)】」
ナナが巨大なアップルパイをアクスエルに投げつける攻撃を繰り出したとき、俺は非常にもったいないと思ったが…広範囲にダメージを与える技は確実性が高いらしいですよ。
俺が心でそう言っていたとき、不意にカシュンッという音がアクスエルのほうから聞こえてきた気がした。まぁ、多分気のせいだろうけど…
「ふっふっふ…この状態の僕に遠距離は効かないよ!てりゃぁ!!」
「えっ!?な、なんで…きゃっ!!」
な…アクスエルが遠距離を対象に反撃した…?
まさかアクスエル…嘘をついていたのか!?
そう思いながらアクスエルのほうを見ると…アクスエルの鎧は初期に装備していたタイプに戻っていた。
なるほど…嘘をついていたわけではなかったか…だったらいつ装備を変えたんだ!?
謎だ…これはまた、解明が難しい謎の一つになりそうだ…
これを解明できないと、メリィたちに勝ち目は…無い…
「くっ…この状態なら近距離です!宇宙の意思!!私に力を!!【超・インパクトゲイザー】!!」
おぉーー!!さすが宇宙の意思…もういちいち突っ込んでいたら疲れるだけって分かったからとにかくどんな技かを説明…
あぁ…説明する前に攻撃を仕掛けやがった…俺の20話の出番を減らす気なのか!?
それと…さっきからなんだ!?このカシュンって音は…さっきも聞いたけど…
「そんな軽い技…通用しないよ!!【スターリングゲイナー(マスタングX)】」
「ふみゅぅっ!?う〜ん…ま…ママぁ…」
あぁっ!?せ、セムちゃんがやられた!!どうする…どうする俺…助けに行くべきなのか…?それとも何もせずにここで決着がつくまで見守るのがいいのか…?
俺は結果、びくびくしながらもセムちゃんを助けに行くルートを選んだ。
「頼むぜ空き箱…俺の相棒!俺の身を隠してくれよ…」
戦いの場は緊迫した雰囲気…アクスエルは少し余裕そうに見え、メリィは少々困惑しかかっているように見える…それをラグーンのほかの仲間達が心配そうな面影で見つめている様子だ。
救出目標のセムちゃんまで残り50m…普通なら近いはずなのに、今は凄く遠い気がするぜ…
「ん…?あの箱は…?」
やばい!!まだ15mしか進んでないのに…もうばれたのか!?
…頼む、ばれるな…ばれるなーー…
「あれはただの空き箱かな?ふっ、僕のバトルスタイルの秘密を見つけないと僕には勝てないよ…?」
「…くぅ…まだ確証が無いか…」
アクスエルはただの空き箱よりも目の前にいるメリィのほうに気が向いているようだ。た、助かった…
そしてその後、無事にセムちゃんの身柄を回収した俺は、エロゲー展開よろしくのようになっている、服がぼろぼろのセムちゃんの足にロープを巻きつけると、そ〜っと引きずって戻っていった。やはり女の子…軽い…ということも無く、普通に重かったがそのときの俺はたぶん、凄い力が発揮できたんだ!
そして無事に味方のほうにセムちゃんを引きずっていったときだった…
いきなり目の前にアクスエルが出てきたときと同じ模様の紋章が出てきた!
「こ…この光は…!?て、天使長!?」
「え、援軍だっていうの…?くっ…」
ま、まさか…この状況でさらに敵の援軍が来るなんて…
終わりだ…何もかも…
今度こそ本当に終わったと俺は本気で思った。思ったのだが…
「アクスエル!!あなた…私の天界ロールケーキ食べたでしょ!」
「え…ぼ、僕、食べてないよ?や、やだなぁ天使長…あはは…」
「嘘をついては駄目よ……私の天界ロールケーキの近くにあなたが昼間食べてたチョコのカスが落ちてたのだから!」
……なんだ!?この急展開…いや、でもコレって…チャンスだ!
「天使長…今僕…戦闘中なんですけど…」
「話は天界に戻ってから聞くわ…うふふふ…」
「ちょっ、お願いです天使長!!戦わせ…いやぁーー!!」
「……なんだったの今の…?」
「さ…さぁ?そんなことよりリーダー!早くセムちゃんを回復させないと…」
ぽかーー…
「そうね…今日はここで宿を展開して寝ましょうか…確か…」
「宿屋にステルス機能をつけたから夜は安全じゃ!わしの科学力があれば…このような宿の改造など余裕じゃ!」
「くそっ!!人が折角ぽかーー……としているのを無視して、勝手に話進めるなよ!それにゾーネ!また俺の宿に変な装置つけて…やめろと何度も言っているだろ!」
「デメトリオは放置して今はセムちゃんの様子を見ましょう…みんな宿へ」
待て!!そこは俺の宿だぞ!と内心言いながらも、俺もセムちゃんが心配だった。
慌ててセムちゃんの様子を見に宿屋の中にいく俺だった…
そう…死体を供養するのをきれいに忘れていた…今となっては取り返しがつかないことだが…あの死体にはとてもじゃないが、謝罪をしないといけないな…
本当にすまなかった…
「ふぅ…本当にこの橋って3層構造になっているのか?」
「わしが行った通りになっているから心配しないで欲しいのじゃ!というか…信用できぬか?」
「……い、いやぁ?」
お前だから信用してなかったんだけど…なんてとても口に出来ない俺…
そして…さっきのやつら、門を通り抜けてこっちに来る…とか起こらないよな?
結構そのことを心配している俺…いや…でもちゃんと閂したし…大丈夫だよな?
そう思いながら、普通に橋を歩いていると、真ん中付近で俺達はまた一人の女性と遭遇した。これも敵か?絶対に味方では無いと俺は思うのだが…
「おや…?間違えた所に転送されてきちゃったと思ったんだけどなぁ…ここであってたみたいだね」
「……君、誰だい?」
当然のように俺は向こうに対して聞いてみる。何だろう、この橋は…
まるで狙ったかのようなこの雰囲気…オーラ…まるで大きな何かが俺達が橋を渡るたびに敵を出現させようとしているとしか思えない!
「僕の名前はアクスエル!!アレス様の命を受けてこの橋を守ることになったんだ、よろしく〜」
「はぁ…それはご苦労様です…では、俺達はこれで…」
「待ちなよ…君達も僕は通してあげるなんていっていないんだけど?」
……厄介だな本当に…どうしていつもこんなことに巻き込まれてしまうんだ俺は!?
だが、俺はしぶとく頼み込んでみる…無様だって?ふっ、何とでも言うがいいさ!!
「そこを何とかお願いします!!ね?エンジェルでしょあなた!?どうかその清き心で俺達を見逃して…」
「残念だけど、僕はここから先に悪いやつらを通すなって言われているんだ。君達がいい人かどうか…まだ分からないからね?」
……そうか、なら俺は大丈夫だな…だって俺、普通の人間だし!!
身も心も清いからな!!みんなもそう思うだろ?
いや、今までの俺の扱いを見てきたなら分かるはずだ!!
「じゃあ、俺だけ通してくださいよ!!この俺、デメトリオ=スタンダート…生まれてこの方一度でも悪い要素を兼ね備えなかったことで有名なんですから!」
今日、ここで初めてフルネームを言ったのだが、誰も驚いた様子は無かった。
なんだよ…折角の機会だったのに…
「デメトリオ…デメトリオ…どこかで聞いたことのある名前だなぁ…えっと…そうだ!僕の持ってきた重要人物リストに確か名前が…これだ!」
なんか…嫌な予感が…
「『重要人物リストNO.08 デメトリオ=スタンダート (21歳)男
罪名:フラグ破壊、及び運命変更罪…さらに、男らしさが無く、弱い
刑罰:他人の運命を変えたことにより、死刑!さらに、死後天界に来て男
らしさを鍛えた後、転生…その後、人生を4回BADENDで終わらせる
報酬:一ヶ月間の休暇、及びいい夫一人の提供
天使界連盟会長 リアより 』
って書いてますよ?」
はぁーーっ!?嘘だろ!?え?何?フラグ破壊罪って?
それに、運命変更罪に、男らしさが無いし弱いために死刑ってどういうことだ
よ!?どうなってるんだ天使界!?
やばい…凄く文句を言いたい気分だが、ここは耐えるべきところなのか…?
結局、俺はそこに無言で立っていたわけだが…な?
「……ここは、戦う以外に道は無いようね…」
うぉっ!?い、いきなり後ろから出てこないでくれないか!?あ、焦るから…
なんと、俺の後ろから、物凄い悪…的なオーラを出しているメリィが不意に出てきた。やばい…普段は自分から戦おうとしない彼女が…なぜここまで本気なんだ?
俺は一瞬考えたが、相手のアクスエルを見て納得した…なるほどな。
アクスエルの鎧は、かなり胸を締め付けないようなつくりになっており、その鎧の革製の部分にある大きな胸…ここに原因があったのか…
俺は、どうしてメリィがここまで胸にこだわるかが一切分からないのだが、それでもその部分には触れないほうが良いと本能で悟った。
「手合わせすれば、僕と君達がどんな人たちなのか分かり合える!さぁ…行くよ!!」
「どうするジャンヌ…私は今回休みたいのだが…」
「アイネ…私も…少しさっきの戦闘でスタミナ取られたから…」
「あなた達は下がっていなさい…ここは私が行くから!!」
「リーダーだけにはやらせません…私も…行きます!!」
「私も…絶対に倒すから…!!」
……いや、メリィが胸に執着していたというのは薄々感じてはいたのだが、なぜセムちゃんとナナちゃんまで!?
…そこまで胸は重要なパーツか?
まぁ、何はともあれ戦闘が始まったわけだ…この戦い…俺の嫉妬センサーが凄く彼女達から反応している…これは、強いぞ…
「【大いなる神よ…僕の願い…聞き届けたまえ…神斧ボルグ・カムラン】!!行くよ!!」
……あの斧の名前…どこかで昔聞いたことが…って、あぁ!!
ち、違いますよ!!決して神喰いではありませんからね!?
俺は、もう名前の部分をごまかすのに必死だ…元ネタのモンスターの名前を知っているのが何人いることか……
俺の心配などよそに、戦いは始まりを迎えようとしている…
「食らえ!!【ハーピー流飛行武道術12式:紫煙】!!」
さっそくメリィが遠距離攻撃を仕掛けるのだが…なんだ…様子がおかしいぞ!
いきなりアクスエルの体が光り始めたと思うと、物凄い速度でメリィの懐に入り、攻撃を叩き込んだ!
「僕の前で…遠距離攻撃なんて使ってんじゃねぇーーっ!!」
な…なんという攻撃力なんだ…やばいぞ…
「ぐふぅ!?はぁ…はぁ…な、なんて攻撃力なの…」
「リーダー!!回復薬です!!どうぞ!!」
ナナがアイテムを使うと、またもやアクスエルの体が光り始める…
まさか…まさか!?
「だから…僕の前でアイテムなんて…使ってるんじゃねぇーーー!!」
「かはぁっ!?けほっ…ぐっ…」
やばい…こんなに一方的な戦い始めて見たぞ…
「ふっふっふ〜…僕のさっきの力は天使の力…僕は君達が遠距離攻撃、魔法、アイテムを使うと通常の3倍の強さが発揮できるのさぁ!私を倒したければ正々堂々正面からかかってこないとね!!」
「くっ…ナナ、セム…いける?」
「はい…でも、リーダーは…」
「私なら大丈夫よ…行くわよ!!」
……無茶しやがって…勝てない…勝てないよ…
何だよ天使の力って…遠距離、アイテム、魔法を縛られてる上であの強さなんて…ほとんど勝ち目ないじゃないか!!
内心、凄く不愉快な気分の俺…アクスエル…バトルスペック高すぎだろ…
「【ハーピー流飛行武道術63式:鮮烈灰塵衝】!!」
あきらめることをせずに、すかさず蹴り技をアクスエルに叩き込むメリィ…
こちらも普通に強い気がするのは俺だけか?
「くっ…やるね!!やっぱり戦いは正々堂々じゃないとね…」
おお!!押している…押しているぞメリィ!!さすがはモンスターラグーンリーダーだ!!それに、アクスエルにスーパーアーマーが着いていないため、攻撃を仕掛けるとひるんでくれるというのも結構大きい気がする。
「さすがリーダー!!よぉし…私も行きます!!【料理人の魂(お玉)】!」
ナナがメリィの攻撃に便乗して攻撃を仕掛け、アクスエルの頭にお玉をたたきつけた!!
カッキーン!!といい音がして、アクスエルが後ろのほうに飛ばされていく…
なんだあのお玉の威力は!?
「あ!!クリティカルヒットだ!!ラッキー!!」
「くぅ…さっきのは効いたかなーー…じゃあ、そろそろ行くよ!!」
ついにアクスエルの反撃が始まるぞ…どんな技が来るんだ…?
「ふっ…風を感じる…行くよ!!【閃光のマグナアッパー(シエスタ[)】」
「!?は、早い!!」
な、何が起こったんだ…?というか、戦闘能力に違いがありすぎて何も見えないというこのありきたりなシステムどうにかして欲しい…
と、とにかく!!俺には理解できないほどの早さだったんだ!!
「くぅ…でも…甘いわ…」
「甘いのはそっちだよ!!【獄炎のサマーソルト(ヴァリスタV)】」
「ちぃっ…羽にかすったようね…」
「良くかわせたね…でも!!【聖騎士のブロウトマホーク(スタニア\)】」
「きゃあああぁぁっ!!」
「り、リーダー!!大丈夫ですか!?」
ナナとセムちゃんがメリィのところに慌てて走っていっているが…さっきのは普通に懐に入ったぞ…あの斧が懐に当たったって事は…運が悪ければ死ぬ危険性もあるんじゃ…心配だ…
しばらくすると、地面に叩きつけられたメリィがふらふらとだが立ち上がった。も、もう体に響くからそこでやられた振りをしていればよかったのに何で!?
……もう、無理だよ!戦力が圧倒的に違いすぎるって!!
向こうは神の使いなんだぞ……
もう俺の心の中は凄く負けてしまうムードだったし、単純に考えても勝てないだろ!!
なのに…なぜ立ち上がるんだ…
まぁ、戦いが始まってすぐに決着がつくってのはいけない事だって分かってるけどさぁ…
「絶対に…巨乳には負けられない!!胸が戦いの強さを決めるというその定理をぶち壊す!!」
「おぉ…め、メリィは執念で立っておる…子供たちよ…わしの年老いた目の変わりによーく見ておくがいい…」
「デメトリオ…何言ってるんだろ?」
「さぁー?頭のネジ外れたんじゃないーー?あははーー」
くぅ…結構さっきのは、分かる人にはわかって分からない人にはわからないネタだったのに…
と、そんなことはいいんだよ!
「さすが…僕の3コンボ目を食らってまだ立っていられるなんて君…強いね!でも…この攻撃には耐えられるかな?【恋愛のストレートブロー(フォトY)】」
まるで地面をえぐるように…というか、地面をえぐりながらメリィの方に走っているアクスエル…あんな細くて胸は大きいボディのどこにそのような脚力が…って、そんなこともいいんだよ!!
あぁ…なんでだろうか?微妙にだが最近、余計なことをよく言っている気がする…
とにかく、今のメリィの体力だと見るからに耐え切れそうに無いんだが…大丈夫なのだろうか?
「むむっ…リーダー!!宇宙の意思が私に…防げる!!【宇宙防壁イージス】」
何だあのセムちゃんの展開した光の壁はーー!?
というか、アレどこから出したんだ!?
しかも…防ぎきっただと!?
「硬い…!?この防御壁は一体……」
「ふっ…はぁっ!!てぇい!!」
「くっ…蹴りの一撃が強くなっている!?でも…だからこそ僕はあきらめないよ!武人の誇り…受けてみてよ!!」
そうして俺がじっくりと観察していると、アクスエルの鎧が変わった…?
初めのときは、動きやすさを重視したような雰囲気だったのに対し、今回の鎧は凄いオーラを発しながら、まるで重騎士のようになっているタイプだ。
「これが僕のもう一つの姿……この状態になった僕に、近距離攻撃を使ったら反撃するよ!アイテムを使っても戦闘能力3倍の効果つき!!さぁ…どうするのかな?」
「……親切に教えてくれてありがとう…それなら、遠距離攻撃で戦うだけよ!」
「親切に教えるのは戦いをフェアにするためだよ!あと…遠距離で戦うのが果たしていい考えなのかな…?」
何だ…?あの何か裏がありそうな物言いは…?
俺が微妙に疑っていると、セムちゃんが気にした様子も無く大技を繰り出そうとしているところに気がついた。
まだ敵がどんなことをしてくるかも分からないのにいきなり攻撃を仕掛けるのはいささか無謀な気がするけど…
「リーダー!!横によけてください!!【マンティスイレイザー】!!」
おおーー!!種族の特徴をそのまま利用したかの様な技が…
どんな技かというと、両手の鎌から光の衝撃波を放つっていう、俺には絶対出来ない方法だ。
セムちゃん…俺が見ない間に、戦闘中にすっかり頼りがいがあるようになっちゃって…これはもう、セムちゃんは一人でも生活できるな。
心の中で本気でそう思った俺…俺も少しは努力せずに強くなりたいもんだ。
攻撃が当たったところでは、攻撃の衝撃が物凄かったと煙が物語っていた。
だが、煙の中で普通にひるむことなくメリィたちのほうに歩いているアクスエル…どうなっている!?
はじめのほうの鎧の状態だとすぐにひるんでいたというのに…今回はひるむことが無かった?
まさか、スーパーアーマーが追加されたのか!?いや…でも…その要素を追加したら本当に最強になってしまうんじゃ…
あ…だから遠距離で攻撃できるのか…?
だんだん物事を深く考えすぎて頭が痛くなってきたので、俺はここでこの物事を考えるのをやめた。
とにかく!俺は絶対に応援しかしないと決めていたので、余計なことは考えないことにした!なるときになるようになるだろ…?
「何なんですか今の…?あんな軽い攻撃で僕を倒せるとでも思ったんですか?」
「防御力が上がっているようね…でも、はじめのときよりは戦いやすくなっているようだし…」
お…微妙に冷静になってきたようだなメリィは…
いつものようなテンションになってきている…まだ微妙にオーラが黒いのが気になるけど…
「でも、遠距離ならいろいろ戦略が立てられますよリーダー!行きますね!【料理人の魂(アップルパイ)】」
ナナが巨大なアップルパイをアクスエルに投げつける攻撃を繰り出したとき、俺は非常にもったいないと思ったが…広範囲にダメージを与える技は確実性が高いらしいですよ。
俺が心でそう言っていたとき、不意にカシュンッという音がアクスエルのほうから聞こえてきた気がした。まぁ、多分気のせいだろうけど…
「ふっふっふ…この状態の僕に遠距離は効かないよ!てりゃぁ!!」
「えっ!?な、なんで…きゃっ!!」
な…アクスエルが遠距離を対象に反撃した…?
まさかアクスエル…嘘をついていたのか!?
そう思いながらアクスエルのほうを見ると…アクスエルの鎧は初期に装備していたタイプに戻っていた。
なるほど…嘘をついていたわけではなかったか…だったらいつ装備を変えたんだ!?
謎だ…これはまた、解明が難しい謎の一つになりそうだ…
これを解明できないと、メリィたちに勝ち目は…無い…
「くっ…この状態なら近距離です!宇宙の意思!!私に力を!!【超・インパクトゲイザー】!!」
おぉーー!!さすが宇宙の意思…もういちいち突っ込んでいたら疲れるだけって分かったからとにかくどんな技かを説明…
あぁ…説明する前に攻撃を仕掛けやがった…俺の20話の出番を減らす気なのか!?
それと…さっきからなんだ!?このカシュンって音は…さっきも聞いたけど…
「そんな軽い技…通用しないよ!!【スターリングゲイナー(マスタングX)】」
「ふみゅぅっ!?う〜ん…ま…ママぁ…」
あぁっ!?せ、セムちゃんがやられた!!どうする…どうする俺…助けに行くべきなのか…?それとも何もせずにここで決着がつくまで見守るのがいいのか…?
俺は結果、びくびくしながらもセムちゃんを助けに行くルートを選んだ。
「頼むぜ空き箱…俺の相棒!俺の身を隠してくれよ…」
戦いの場は緊迫した雰囲気…アクスエルは少し余裕そうに見え、メリィは少々困惑しかかっているように見える…それをラグーンのほかの仲間達が心配そうな面影で見つめている様子だ。
救出目標のセムちゃんまで残り50m…普通なら近いはずなのに、今は凄く遠い気がするぜ…
「ん…?あの箱は…?」
やばい!!まだ15mしか進んでないのに…もうばれたのか!?
…頼む、ばれるな…ばれるなーー…
「あれはただの空き箱かな?ふっ、僕のバトルスタイルの秘密を見つけないと僕には勝てないよ…?」
「…くぅ…まだ確証が無いか…」
アクスエルはただの空き箱よりも目の前にいるメリィのほうに気が向いているようだ。た、助かった…
そしてその後、無事にセムちゃんの身柄を回収した俺は、エロゲー展開よろしくのようになっている、服がぼろぼろのセムちゃんの足にロープを巻きつけると、そ〜っと引きずって戻っていった。やはり女の子…軽い…ということも無く、普通に重かったがそのときの俺はたぶん、凄い力が発揮できたんだ!
そして無事に味方のほうにセムちゃんを引きずっていったときだった…
いきなり目の前にアクスエルが出てきたときと同じ模様の紋章が出てきた!
「こ…この光は…!?て、天使長!?」
「え、援軍だっていうの…?くっ…」
ま、まさか…この状況でさらに敵の援軍が来るなんて…
終わりだ…何もかも…
今度こそ本当に終わったと俺は本気で思った。思ったのだが…
「アクスエル!!あなた…私の天界ロールケーキ食べたでしょ!」
「え…ぼ、僕、食べてないよ?や、やだなぁ天使長…あはは…」
「嘘をついては駄目よ……私の天界ロールケーキの近くにあなたが昼間食べてたチョコのカスが落ちてたのだから!」
……なんだ!?この急展開…いや、でもコレって…チャンスだ!
「天使長…今僕…戦闘中なんですけど…」
「話は天界に戻ってから聞くわ…うふふふ…」
「ちょっ、お願いです天使長!!戦わせ…いやぁーー!!」
「……なんだったの今の…?」
「さ…さぁ?そんなことよりリーダー!早くセムちゃんを回復させないと…」
ぽかーー…
「そうね…今日はここで宿を展開して寝ましょうか…確か…」
「宿屋にステルス機能をつけたから夜は安全じゃ!わしの科学力があれば…このような宿の改造など余裕じゃ!」
「くそっ!!人が折角ぽかーー……としているのを無視して、勝手に話進めるなよ!それにゾーネ!また俺の宿に変な装置つけて…やめろと何度も言っているだろ!」
「デメトリオは放置して今はセムちゃんの様子を見ましょう…みんな宿へ」
待て!!そこは俺の宿だぞ!と内心言いながらも、俺もセムちゃんが心配だった。
慌ててセムちゃんの様子を見に宿屋の中にいく俺だった…
12/02/22 22:29更新 / デメトリオン
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