守りたい奴が居る!だからこそ戦うんだ!
レイナに転移魔法をかけれらたハーリストクは気がつくとサラナが住んでいる洞窟付近にある村のど真ん中に転移していた。
時間は夜のためか周囲に人はおらず、寝静まっているようだった。
「どうやら、まだやつらはついていないようだな」
間に合ったことに安堵の息をつき、これからのことを思案するハーリストク。
(おそらく教団の連中は馬車や馬を用いて全速力で向かっているはずだ。それから考えるにおそらくは明日の朝には到着するだろう。だとしたら・・・あそこで待ち伏せをするか村人やサラナを巻き込むわけにはいかないからな)
考えをまとめたハーリストクは決意を新たに、転移するときに兵士から奪ってきた剣を力強く握り村から静かに立ち去ってゆく。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
朝日が静かに上り、鳥の鳴き声が響き、動物達がこぞって動き始めるなかのことだった。どこからともなく何かが走るような音が聞こえ始める。はじめは小さくかすかに聞こえるくらいの音だったのだが、やがてそれは大きく響きはじめ、次第に大地を揺るがすほどの音に変わっていた。
その音を聴いた動物達は身の危険を感じ素早く逃げ出し身を隠し始める。
そして、先ほどまで静かだった森の道に件の足音を響かせる集団が現れる。そうそれは紛れも無くセルリアン教団支部の馬達が駆ける足音だったのだ。馬達は容赦なく草花を踏み潰し、すさまじいスピードで駆けていく。
その音はまったく途切れる様子を見せず、いつまでも体に響くような音を立てて突き進んでいた。
「皆のもの!!!もうすぐに件のドラゴンが潜伏している村付近に到着する!!!そこの村もドラゴンを崇拝している者達と聞く、間違いなく神に反逆せし者どもだ!!!到着次第、神の威光をもって浄化するのだ!!!」
その騒音の中でマーディブルック神官長は声を張り上げ兵士の指揮を鼓舞していた。兵士達も己が指名を果たさんと神官長の鼓舞に答え馬を加速させていく。
やがて、兵士達は村のふもとに位置する坂道の入り口に差し掛かっていた。村は高地にあり、その周りは自然で溢れる場所なのだが、そこに向かうには1本の坂道を通らなくてはならず、他の道は断崖絶壁に阻まれており模索することは不可能であり、ある意味天然の要塞に近い立地条件だった。この坂道を突破すれば、目標はもう目の前ということもあり兵士の士気は最高潮に達していた。
マーディブルック神官長はほくそ笑み、また一つ出世への道が開かれると気分を高揚させている・・・そんな時だった。
「悪いがここは通行止めだぜ!!!」
突然声が聞こえたと思った次の瞬間のことだった。
バキッ! ゴロ ゴロロ ドンガラゴロゴロ!!!!!
坂の上から突然小規模な岩が次から次へと転がり落ち、教団兵の先団へと襲い掛かろうとしていた。
「う、うわああああ!!!!!」
「ぶつかる!!!」
「あぎゃあああああ!!!!!」
「止まれ!全隊止まれ!!!落石だ!!!」
先頭にいた教団兵は成す術も無く落石に巻き込まれ押しつぶされてゆく。
後方にいた隊長格の兵が号令を出したおかげで後方部隊は巻き込まれずにすんだがその被害は甚大で騎馬隊はほぼ全滅。残ったのは馬車に乗り込んでいる歩兵部隊のみであった。
「何だ!何が起こっているのだ!?」
突然のことに動揺を隠せないマーディブルック。
しかし、坂の上を見上げた瞬間にその表情は驚きから怒りの表情へと変貌する。
「何故貴様がそこにいるのだ・・・ハーリストク・シュタイナー!!!」
「決まっているだろう?てめえの馬鹿げた作戦を潰すためだ!!!」
そう、そこにいたのは先ほど転移をしてきたハーリストクだった。
ハーリストクは村を去った後、教団の兵力を減らすためにこの坂道を利用し、岩を徹夜で運び込み罠を張ったのだ。
「どうだ?大群で一気にドラゴンを仕留めようと来た矢先に一人の男によって、騎馬隊を失った感想は?」
「ぐぐぐ・・・!!おのれ、ふざけた真似をしおってからに!貴様どうやってあの牢を脱出して我々より先回りが出来たのだ!!!」
「そんなこと今から死ぬてめえらに話す義理はねえな」
そういうとハーリストクは剣を眼前に構えて宣言をする。
「俺が生きている限りはどうあってもこの道は通さねえ、ハーリストク・シュタイナーいざ参る!!!」
宣言した後にハーリストクは駆け出し、一直線に突っ込んでいく。
「くそ!皆のもの!!!奴は我が教団を裏切り魔物の手先と化したようだ!神の名のもとに奴も浄化してやるのだ!!!」
マーディブルックが鼓舞するのと同時に馬車から降りていた兵達は駆けてくるハーリストクを目にして少しばかり動揺していたがすぐに気持ちを切り替え剣と盾を構えて駆け出し始める。
『うおおおおおおお!!!!!』
一体どれくらい居るのかわからないほどの人数が仲間が踏み潰された岩群を乗り越えハーリストクに向かっていく。
しかし、それより早くハーリストクが先頭集団に近づき攻撃をしかけていた。
「どけぇえええええ!!!!!」
力任せに横なぎに払い一人を切り捨てる。さらに後続に続いてやってくる兵士達も一人また一人と切り捨てる。
「バラバラにかかるな!!!まとめて攻撃するんだ!!!」
隊長格の兵士が後方から号令をだすとすぐさまに動き、5人ほどで攻撃をするが。
「無駄なんだよ!!!」
剣ですばやく一斉攻撃を受け止め、飛び蹴りを繰り出して一人を倒して、その勢いをつかって後ろに回りこみ、勢いをつけて一気に2人を切り捨て、残っていた2人に突きを繰り出すことでまとめて突き刺していた。
「馬鹿者どもが!!!攻撃を同じ方向から一斉にするんじゃない!!!」
そう先ほどの攻撃は全員が横一列で隊列を組み、全員同じタイミングで剣を振り下ろしていたためにハーリストクは剣1本で攻撃をうけとめれたのだ。
「バカはてめえだ!こんな狭い道で一斉にかかってきたら、縦にしか剣を振れないのは一目瞭然だろうが!」
ハーリストクのいうとおりこの道は少し狭くて、横は岩壁がむき出しで人が5人横一列に並んで限界の道幅だったのだ。
「ならば!3人一組でかかれ!!!」
今度は3人で違うタイミングで襲い掛かるとさすがにきつかったのか、避けることに専念してしまうハーリストク。
「さすがにきついな。だが、この程度の困難はいつでも切り抜けてきたぜ!!!」
そういうと、倒した兵士が所持していた剣を攻撃を避け様に拾い上げ、それを投げつける。
「うげっ!!!」
胸元にささり、ばさりと倒れる兵士。
その後に突っ込んで素早い切り替えしで2人の兵士も切り捨てる。
「くっ!?なんてやつだ!たった数分で10人以上も切っている」
「怯むでない!!!ここで怯めば、この大陸はドラゴンの手に落ちるのだぞ!!!」
兵士達がハーリストクの強さに怯みそうになった瞬間、マーディブルックの一言に我を取り戻し再び攻撃を試み始める。
「やっぱそう簡単には引かねえか。だが、こっちも負けられねえーんだよ!!!」
そして再び彼らは己が信念を胸にぶつかり合いはじめる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
所変わってここはサラナの住む洞窟。
サラナはいつものように石座に座っていた。
「はあー、これでかれこれ1週間は過ぎたのね。ハーリストクさん元気にしているのかしら?」
あの後ハーリストクが去ってからずっと彼のことが気になって仕方が無く、1週間近くサラナはこの一人問答を繰り返していた。
1日おきにご飯を作りにきてる村人に相談しようかとも何ども考えたがその度に恥ずかしくなり口に出すことも出来ずにこうして一人で悩みこんでしまっているのだ。
「うーん、やっぱいつまでもここで悩まずにハーリストクさんに会いに行くべきかしら?でも、教団の所で働いているはずだから見つかったら大変だし、うーんどうしよう」
このように、今日もまた同じように問答を始めようとしたときだった。
突然目の前の空間が歪むような感覚に襲われ、すぐに戦闘態勢を取り警戒をする。すると目の前が桃色の光で溢れたと思ったら、何故か目の前にサキュバスが立っていた。
「んー、成功かな?おっ、あんたねあの堅物が気に入ったていうドラゴンは?」
「あ、あ、はっ!?・・・・・・何者だ貴様?サキュバスとはいえいきなり我が根城に転移してくるなど、少しは礼儀をわきまえたらどうなのだ?」
「まちがいないわね、このドジな感じは」
「なに!?我のどこがドジだと言うのだ!!!」
「その台詞はまず自分の姿を確認してからいいなさい」
そうこの時のサラナは光に驚き、戦闘態勢を解いて、思わず頭をかかえてしゃがみこんでいたのだ。そして、そのしゃがみこんだ体制で腕を組んでいるものだからまったくと言っていいほどに威厳がなかった。
それに気がついたサラナは何事もなかったかのようにすくっと立ち上がりビシッと腕を組みなおす。
「何者だ貴様?サキュバスとはいえいきなり我が根城に転移してくるなど、少しは礼儀をわきまえたらどうなのだ?」
「まさか、本当に言い直されるとは思わなかったわ」
思わず額に手を当ててため息をつくサキュバス。
「まあいいわ、私はレイナ・キュバスレイ。ちょっとしたおせっかいなサキュバスよ」
「ふむ、それでそのおせっかいなサキュバスが何のようだ?」
「実はね、さっきハーリストクっていう堅物をここr「ハーリストクさんをご存知なんですか!!!」って近い近い!!!」
ハーリストクの名前が出た瞬間にサラナは光の速さでレイナの目の前に行き肩を掴み顔を思いっきり近づける。
「知ってるからっていうかちょっと伝えたいことがあったから来たのよ!!!だから一回離れて!!!」
「あ、ごめんなさ・・・・・・すまん、我としたことがいささか落ち着きがなかったようだ」
「・・・・・・うん、まあいいわ。ええと、そのハーリストクなんだけど実はさっきこの辺りに転移させたのよ」
「転移?それは何故だ。貴様ほどのサキュバスならハーリストクほどの男を手篭めにしないのはおかしい気がするが?」
「本当は手篭めにしたかったけどね・・・じゃなくて、転移したのは実は彼さっきまで教団に捕まっていたのよ」
「なんですって!!?」
「で、私も捕まっててその時に助けてもらったから少し手助けしてあげたの」
「それと転移の話がどうつながるんですか!?」
「あんた、だんだん地がでてるわよ。えーとね、なんでも教団の連中があんたを始末しようと大人数できてるらしくてね、それを止めるために転移してあげたのよ」
「な、なんですって・・・」
「彼は、あんたを助けたい一心で牢をやぶり、ここに転移してきたのよ」
「そ、それじゃ、まさか・・・」
「そう、今頃は一人で連中を迎え撃ってるかもしれないわね」
「なんで一人で行かせたんですか!!!!!」
するどい声が洞窟に響き渡る。その声はレイナですら一瞬しり込みしてしまうほどに怒気と威圧感が含まれていた。
しかし、それでも威圧されること無くレイナは言葉を口にする。
「あの時は私も魔力が少なかったし、一人を転移させるので精一杯だったのよ」
「そうじゃなくて!なんで、そんな死地にハーリストクさんを転移させたんですか!!!」
「仕方ないじゃない、あんたを助けるっていう一心でアイツは行動しているんだから、止めるだけ無駄っていうものよ」
「でも、でも!!!」
さらに抗議の声を出そうとした瞬間だった。突然膨大な魔力が膨れ上がるのを感じサラナは体を震わせてしまう。
その魔力は紛れも無く目の前のレイナから発せられており、表情は無表情ながらもどこか怒気をはらんでおり、それでいて悲しみも同時に感じられていた。
「今はねこんな口論をしている場合じゃないのよ、私がなんでわざわざ、あんたのとこに来てまで忠告しているのと思ってるの?」
「そ、それは・・・」
「こうしている間にもアイツが死んでしまうかもしれない、それはアンタにだってわかるでしょ。お願いだから、アイツを・・・死なせないで」
サラナは一瞬何かを口にしようとしたが思いとどまり、直ぐにレイナの横を通り過ぎ洞窟を抜け出していく。
一人残ったレイナは涙を浮かべていた。
「私だって、アイツを助けたい。でも、私が助けたら駄目なのよ・・・だってアイツの心は私じゃなく、あの娘を選んでるんだもの。だったら、私はあの娘の背中を押してあげるしかないじゃない。それがアイツの幸せにもつながるのだから」
そういうとレイナは転移魔法の魔力を溜め始める。
「必ず捕まえなさいよねドジなドラゴンさん」
その言葉と涙を残し、レイナはその場から消え去るのだった。
時間は夜のためか周囲に人はおらず、寝静まっているようだった。
「どうやら、まだやつらはついていないようだな」
間に合ったことに安堵の息をつき、これからのことを思案するハーリストク。
(おそらく教団の連中は馬車や馬を用いて全速力で向かっているはずだ。それから考えるにおそらくは明日の朝には到着するだろう。だとしたら・・・あそこで待ち伏せをするか村人やサラナを巻き込むわけにはいかないからな)
考えをまとめたハーリストクは決意を新たに、転移するときに兵士から奪ってきた剣を力強く握り村から静かに立ち去ってゆく。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
朝日が静かに上り、鳥の鳴き声が響き、動物達がこぞって動き始めるなかのことだった。どこからともなく何かが走るような音が聞こえ始める。はじめは小さくかすかに聞こえるくらいの音だったのだが、やがてそれは大きく響きはじめ、次第に大地を揺るがすほどの音に変わっていた。
その音を聴いた動物達は身の危険を感じ素早く逃げ出し身を隠し始める。
そして、先ほどまで静かだった森の道に件の足音を響かせる集団が現れる。そうそれは紛れも無くセルリアン教団支部の馬達が駆ける足音だったのだ。馬達は容赦なく草花を踏み潰し、すさまじいスピードで駆けていく。
その音はまったく途切れる様子を見せず、いつまでも体に響くような音を立てて突き進んでいた。
「皆のもの!!!もうすぐに件のドラゴンが潜伏している村付近に到着する!!!そこの村もドラゴンを崇拝している者達と聞く、間違いなく神に反逆せし者どもだ!!!到着次第、神の威光をもって浄化するのだ!!!」
その騒音の中でマーディブルック神官長は声を張り上げ兵士の指揮を鼓舞していた。兵士達も己が指名を果たさんと神官長の鼓舞に答え馬を加速させていく。
やがて、兵士達は村のふもとに位置する坂道の入り口に差し掛かっていた。村は高地にあり、その周りは自然で溢れる場所なのだが、そこに向かうには1本の坂道を通らなくてはならず、他の道は断崖絶壁に阻まれており模索することは不可能であり、ある意味天然の要塞に近い立地条件だった。この坂道を突破すれば、目標はもう目の前ということもあり兵士の士気は最高潮に達していた。
マーディブルック神官長はほくそ笑み、また一つ出世への道が開かれると気分を高揚させている・・・そんな時だった。
「悪いがここは通行止めだぜ!!!」
突然声が聞こえたと思った次の瞬間のことだった。
バキッ! ゴロ ゴロロ ドンガラゴロゴロ!!!!!
坂の上から突然小規模な岩が次から次へと転がり落ち、教団兵の先団へと襲い掛かろうとしていた。
「う、うわああああ!!!!!」
「ぶつかる!!!」
「あぎゃあああああ!!!!!」
「止まれ!全隊止まれ!!!落石だ!!!」
先頭にいた教団兵は成す術も無く落石に巻き込まれ押しつぶされてゆく。
後方にいた隊長格の兵が号令を出したおかげで後方部隊は巻き込まれずにすんだがその被害は甚大で騎馬隊はほぼ全滅。残ったのは馬車に乗り込んでいる歩兵部隊のみであった。
「何だ!何が起こっているのだ!?」
突然のことに動揺を隠せないマーディブルック。
しかし、坂の上を見上げた瞬間にその表情は驚きから怒りの表情へと変貌する。
「何故貴様がそこにいるのだ・・・ハーリストク・シュタイナー!!!」
「決まっているだろう?てめえの馬鹿げた作戦を潰すためだ!!!」
そう、そこにいたのは先ほど転移をしてきたハーリストクだった。
ハーリストクは村を去った後、教団の兵力を減らすためにこの坂道を利用し、岩を徹夜で運び込み罠を張ったのだ。
「どうだ?大群で一気にドラゴンを仕留めようと来た矢先に一人の男によって、騎馬隊を失った感想は?」
「ぐぐぐ・・・!!おのれ、ふざけた真似をしおってからに!貴様どうやってあの牢を脱出して我々より先回りが出来たのだ!!!」
「そんなこと今から死ぬてめえらに話す義理はねえな」
そういうとハーリストクは剣を眼前に構えて宣言をする。
「俺が生きている限りはどうあってもこの道は通さねえ、ハーリストク・シュタイナーいざ参る!!!」
宣言した後にハーリストクは駆け出し、一直線に突っ込んでいく。
「くそ!皆のもの!!!奴は我が教団を裏切り魔物の手先と化したようだ!神の名のもとに奴も浄化してやるのだ!!!」
マーディブルックが鼓舞するのと同時に馬車から降りていた兵達は駆けてくるハーリストクを目にして少しばかり動揺していたがすぐに気持ちを切り替え剣と盾を構えて駆け出し始める。
『うおおおおおおお!!!!!』
一体どれくらい居るのかわからないほどの人数が仲間が踏み潰された岩群を乗り越えハーリストクに向かっていく。
しかし、それより早くハーリストクが先頭集団に近づき攻撃をしかけていた。
「どけぇえええええ!!!!!」
力任せに横なぎに払い一人を切り捨てる。さらに後続に続いてやってくる兵士達も一人また一人と切り捨てる。
「バラバラにかかるな!!!まとめて攻撃するんだ!!!」
隊長格の兵士が後方から号令をだすとすぐさまに動き、5人ほどで攻撃をするが。
「無駄なんだよ!!!」
剣ですばやく一斉攻撃を受け止め、飛び蹴りを繰り出して一人を倒して、その勢いをつかって後ろに回りこみ、勢いをつけて一気に2人を切り捨て、残っていた2人に突きを繰り出すことでまとめて突き刺していた。
「馬鹿者どもが!!!攻撃を同じ方向から一斉にするんじゃない!!!」
そう先ほどの攻撃は全員が横一列で隊列を組み、全員同じタイミングで剣を振り下ろしていたためにハーリストクは剣1本で攻撃をうけとめれたのだ。
「バカはてめえだ!こんな狭い道で一斉にかかってきたら、縦にしか剣を振れないのは一目瞭然だろうが!」
ハーリストクのいうとおりこの道は少し狭くて、横は岩壁がむき出しで人が5人横一列に並んで限界の道幅だったのだ。
「ならば!3人一組でかかれ!!!」
今度は3人で違うタイミングで襲い掛かるとさすがにきつかったのか、避けることに専念してしまうハーリストク。
「さすがにきついな。だが、この程度の困難はいつでも切り抜けてきたぜ!!!」
そういうと、倒した兵士が所持していた剣を攻撃を避け様に拾い上げ、それを投げつける。
「うげっ!!!」
胸元にささり、ばさりと倒れる兵士。
その後に突っ込んで素早い切り替えしで2人の兵士も切り捨てる。
「くっ!?なんてやつだ!たった数分で10人以上も切っている」
「怯むでない!!!ここで怯めば、この大陸はドラゴンの手に落ちるのだぞ!!!」
兵士達がハーリストクの強さに怯みそうになった瞬間、マーディブルックの一言に我を取り戻し再び攻撃を試み始める。
「やっぱそう簡単には引かねえか。だが、こっちも負けられねえーんだよ!!!」
そして再び彼らは己が信念を胸にぶつかり合いはじめる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
所変わってここはサラナの住む洞窟。
サラナはいつものように石座に座っていた。
「はあー、これでかれこれ1週間は過ぎたのね。ハーリストクさん元気にしているのかしら?」
あの後ハーリストクが去ってからずっと彼のことが気になって仕方が無く、1週間近くサラナはこの一人問答を繰り返していた。
1日おきにご飯を作りにきてる村人に相談しようかとも何ども考えたがその度に恥ずかしくなり口に出すことも出来ずにこうして一人で悩みこんでしまっているのだ。
「うーん、やっぱいつまでもここで悩まずにハーリストクさんに会いに行くべきかしら?でも、教団の所で働いているはずだから見つかったら大変だし、うーんどうしよう」
このように、今日もまた同じように問答を始めようとしたときだった。
突然目の前の空間が歪むような感覚に襲われ、すぐに戦闘態勢を取り警戒をする。すると目の前が桃色の光で溢れたと思ったら、何故か目の前にサキュバスが立っていた。
「んー、成功かな?おっ、あんたねあの堅物が気に入ったていうドラゴンは?」
「あ、あ、はっ!?・・・・・・何者だ貴様?サキュバスとはいえいきなり我が根城に転移してくるなど、少しは礼儀をわきまえたらどうなのだ?」
「まちがいないわね、このドジな感じは」
「なに!?我のどこがドジだと言うのだ!!!」
「その台詞はまず自分の姿を確認してからいいなさい」
そうこの時のサラナは光に驚き、戦闘態勢を解いて、思わず頭をかかえてしゃがみこんでいたのだ。そして、そのしゃがみこんだ体制で腕を組んでいるものだからまったくと言っていいほどに威厳がなかった。
それに気がついたサラナは何事もなかったかのようにすくっと立ち上がりビシッと腕を組みなおす。
「何者だ貴様?サキュバスとはいえいきなり我が根城に転移してくるなど、少しは礼儀をわきまえたらどうなのだ?」
「まさか、本当に言い直されるとは思わなかったわ」
思わず額に手を当ててため息をつくサキュバス。
「まあいいわ、私はレイナ・キュバスレイ。ちょっとしたおせっかいなサキュバスよ」
「ふむ、それでそのおせっかいなサキュバスが何のようだ?」
「実はね、さっきハーリストクっていう堅物をここr「ハーリストクさんをご存知なんですか!!!」って近い近い!!!」
ハーリストクの名前が出た瞬間にサラナは光の速さでレイナの目の前に行き肩を掴み顔を思いっきり近づける。
「知ってるからっていうかちょっと伝えたいことがあったから来たのよ!!!だから一回離れて!!!」
「あ、ごめんなさ・・・・・・すまん、我としたことがいささか落ち着きがなかったようだ」
「・・・・・・うん、まあいいわ。ええと、そのハーリストクなんだけど実はさっきこの辺りに転移させたのよ」
「転移?それは何故だ。貴様ほどのサキュバスならハーリストクほどの男を手篭めにしないのはおかしい気がするが?」
「本当は手篭めにしたかったけどね・・・じゃなくて、転移したのは実は彼さっきまで教団に捕まっていたのよ」
「なんですって!!?」
「で、私も捕まっててその時に助けてもらったから少し手助けしてあげたの」
「それと転移の話がどうつながるんですか!?」
「あんた、だんだん地がでてるわよ。えーとね、なんでも教団の連中があんたを始末しようと大人数できてるらしくてね、それを止めるために転移してあげたのよ」
「な、なんですって・・・」
「彼は、あんたを助けたい一心で牢をやぶり、ここに転移してきたのよ」
「そ、それじゃ、まさか・・・」
「そう、今頃は一人で連中を迎え撃ってるかもしれないわね」
「なんで一人で行かせたんですか!!!!!」
するどい声が洞窟に響き渡る。その声はレイナですら一瞬しり込みしてしまうほどに怒気と威圧感が含まれていた。
しかし、それでも威圧されること無くレイナは言葉を口にする。
「あの時は私も魔力が少なかったし、一人を転移させるので精一杯だったのよ」
「そうじゃなくて!なんで、そんな死地にハーリストクさんを転移させたんですか!!!」
「仕方ないじゃない、あんたを助けるっていう一心でアイツは行動しているんだから、止めるだけ無駄っていうものよ」
「でも、でも!!!」
さらに抗議の声を出そうとした瞬間だった。突然膨大な魔力が膨れ上がるのを感じサラナは体を震わせてしまう。
その魔力は紛れも無く目の前のレイナから発せられており、表情は無表情ながらもどこか怒気をはらんでおり、それでいて悲しみも同時に感じられていた。
「今はねこんな口論をしている場合じゃないのよ、私がなんでわざわざ、あんたのとこに来てまで忠告しているのと思ってるの?」
「そ、それは・・・」
「こうしている間にもアイツが死んでしまうかもしれない、それはアンタにだってわかるでしょ。お願いだから、アイツを・・・死なせないで」
サラナは一瞬何かを口にしようとしたが思いとどまり、直ぐにレイナの横を通り過ぎ洞窟を抜け出していく。
一人残ったレイナは涙を浮かべていた。
「私だって、アイツを助けたい。でも、私が助けたら駄目なのよ・・・だってアイツの心は私じゃなく、あの娘を選んでるんだもの。だったら、私はあの娘の背中を押してあげるしかないじゃない。それがアイツの幸せにもつながるのだから」
そういうとレイナは転移魔法の魔力を溜め始める。
「必ず捕まえなさいよねドジなドラゴンさん」
その言葉と涙を残し、レイナはその場から消え去るのだった。
12/11/14 00:59更新 / ミズチェチェ
戻る
次へ