指令内容は凶暴なドラゴン退治・・・だったはずなんだが
「ハーリストク・シュタイナー参上つかまつりました」
「うむ、よくぞ来た」
とある一室に一人の兵士が丁寧な口調で名乗りを上げ、片膝を地面につけ頭を下げていた。
兵士の対面には豪華な椅子に踏ん反りかえっている少し小太った神官がいた。
兵士の名は【ハーリストク・シュタイナー】
セルリアン教団支部で最高の成績を誇っているエリート兵士である。
「神官長・・・緊急の任務があると聞き参上したのですが」
「うむ、お前の言うとおり今回は緊急の任務で呼んだ。内容は・・・ドラゴン退治だ」
「!?・・・ドラゴン退治・・・でございますか・・・」
「ああ、知ってのとおりドラゴンとは魔物の中でも最上位の強さを誇り、また人間に対して極めて凶暴な行動を取る存在だ。あくまで情報でしかないのだが・・・最近北の農村地帯にそれらしき存在が目撃されたという情報があるのだ。もしもこれが本当ならば非常に由々しき事態になる恐れがある。
そう・・・かつてお前の村が滅ぼされた時のような事態がな・・・」
「・・・・・・」
「それらを未然に防ぐためにも、お前に是非とも北に向かってもらい事の真意を探り、それが本当ならばその手でドラゴンを葬ってほしいのだ・・・・・・やってくれるな?」
「はっ!この命に代えましても必ずや成し遂げて見せましょう」
「うむ、今回も残念ながら手の空いているてだれの兵士はいなくてな、また一人で行ってもらえるか?」
「はっ!私一人で十分可能と思われますので問題はありません!」
「ならばこれよりハーリストク・シュタイナーに任務を告げる。これより北に向かいドラゴンの存在を確認しだい討伐せよ!」
「はっ!任務了解いたしました!失礼いたします!」
ハーリストクは深々と頭を下げたまま後ろに下がり後ろでに扉を開け、部屋から出て行く。
「・・・・・・あの男もなかなかしぶとい存在よ。だが・・・そのおかげでまた一つ我々の思想の実現に近づくのだ・・・・・・期待しているぞハーリストクよ」
誰もいない室内で神官長はそう呟いていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あの後ハーリストクはいつものように身支度を整えると愛剣を腰のひもに引っ掛け、軽装の鎧を身に付け、徒歩で北の農村地帯を目指した。
支部から北の農村地帯まで向かうのにはかなりの距離があるため本来ならば馬を使い走った方が早いのだが、何故か彼には馬を支給されることはなかった。
それは何も今回だけに限った話ではない、彼は教団に入団してから一度も馬を支給されたことは無いのだ。
それに彼の装備を見てのとおり、とてもではないがエリート兵士が身に付ける装備ではない、どこにでも売っている安物の旅人が着ける装備だ。
しかし、彼はそれが当たり前かのように身に付け、当たり前のように北を歩いて目指す。
何の疑いを抱くこともなく。
当たり前のように。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ハーリストクが支部を出発して1週間がたったころだった。
ようやく件の農村地帯に到着したのだ。
さっそくハーリストクは近くの農村を回り、ドラゴンの情報を集めるのだが。
「兵士様・・・ざんねんだけんど、そんな噂は聞いたことがねえだよ」
「こったら農村にドラゴン?冗談もほどほどにしてけろ・・・」
「ドラゴン?いんや、知らねえだよ」
「ドラゴンどころか・・・魔物すら最近はみねえだよ・・・」
まったくと言っていいほどに情報は集まらなかった。
さすがに今回はガセだったのかと思い始めたがそれでもくまなく聞きまわっているとある農村でその情報は見つかった。
「ドラゴン・・・・・・さあ・・・知らねえだよ・・・」
「!?・・・ドラゴン・・・ま、まさか・・・こんなところにいるわけねえべ!誰かに騙されたんでねえか!」
「どらごん?・・・もしかし「すいませんだ兵士様、もうすぐ飯の時間だでこれで失礼するべ!」
「ドラゴン!?・・・知らねえだ!・・・オラ!別に何も知らねえだ!!!」
その村は何故か余所余所しく、目もあわせてくれないのだ。
ハーリストクは何かあると判断して、夜になるのを待った。
深夜の時間帯にハーリストクは明かりが点いている民家の壁に耳を当てた。
理由はもしドラゴンのことを知っていれば、昼間に聞きまわったことを村人は知っているからこの後どうするのかを夜に集まって話し合う可能性を考えたからだ。
『村長、やべえだ・・・教団の兵士様が噂を聞いてやってきただぞ』
『まずいのぉ〜』
『どうするだよ』
『ともかくじゃ、あの兵士様が帰るまではなんぴとたりともあの洞窟のことは口にするでねえぞ、いくことも禁止じゃ、よいな?』
『しかし、そったらことしたら・・・』
『しかたあるまい・・・心配じゃが、今はそれしかできまい』
どうやらハーリストクの勘は当たっていたようでドラゴンがいることがわかった。
それも近くの洞窟に・・・
「なぜ村人は俺に隠し事をしたんだ?」
そんな疑問が頭をよぎった。
この大陸はほぼ反魔の人間が多く、魔物を見かけたら即座に連絡が来てもおかしくないくらいなのだが、それを故意に隠したということは・・・
「ここの村は親魔の人間ということか・・・あとで報告しなければいけないな」
現状任務はドラゴン退治だけだからこの村を潰す義務はないが、反乱分子は即時排除しなければならない。
彼は常に魔物を憎んでいる。
故にその魔物と仲良くしようという連中は余計に許せなかったのだ。
怒りを飲み込み彼は任務を遂行するために件の洞窟へと向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
洞窟は思いのほか早く見つかった。
何故ならば・・・
「人の手が加わっているな・・・最近整備された後がある」
そう明らかにそこの洞窟は入り口から通路にいたるまで、まるで鉱山のように木組みで洞窟内
部を支える形状になっており、とても自然に出来たものとは言えなかった。
そのまま歩くこと数分・・・奥のほうに広い空間のような場所が見え始めた。
通路を抜けるとそこは先ほど見えた広い空間でまるで洞窟内に謁見の間を作ったような感じだった。
その奥には石椅子があり美しい一人の美女が座っていた。
威風堂々とした威圧感、獲物を絶対に逃がさないといった王者の瞳、どんな攻撃も通さないであろう鈍く光る鱗、鋭く光る鋭利な爪、そんな絶対的な存在が目の前には居た。
「貴様か・・・我の住処に侵入せしものは」
「・・・・・・お前がここらに住んでいるドラゴンだな」
「いかにも・・・して、いったい我に何のようだ?礼儀知らずな教団兵士よ」
「・・・おまえを殺しにきた」
「我を殺しにきたか・・・理由はなんだ?」
ドラゴンの問いにハーリストクは剣を抜いて答える。
「それは俺が教団の人間であり、お前が魔物だからだ」
「そうか・・・ならば我に挑んだことを後悔してもらおう!!!」
瞬間ドラゴンの威圧感はさらに増し、ハーリストクに容赦なくその威圧をぶつける。
その威圧感に冷や汗が流れ始めるがそれでも彼、ハーリストクに逃げるという選択肢は無かった。
「セルリアン教団支部、特攻討伐部隊兵ハーリストク・シュタイナー!いざ参る!」
「ドラゴン族が一人、サラナ・ドラグーン受けて立つ!」
お互いに名乗りをあげ、戦闘態勢を取る。
わずかな静寂の後、先に動いたのはドラゴンの方だった。
一歩踏み込んだと思った瞬間にはハーリストクの目にはもう何も映っていなかった。
瞬時にハーリストクは死を悟った。
本来ならかなうはずが無い・・・相手はドラゴンでこっちは何の能力も無いただの人間。
本当は最初に一撃を繰り出すつもりでいたのに完全に先を越された。
(今回は完全に終わったな・・・)
・・・・・・・・・・・・だが衝撃は何故か来ず、その代わりに後ろの方から激しい衝突音が響いた。
ゴチーーーーーン!!!!!
「・・・はっ?」
衝突音に不思議に思ったハーリストクは後ろを振り返るとそこには
「はらほれひれはれ・・・・・・ばたんきゅ〜」
衝突した壁から離れ目を回し、ピヨピヨマークを回して倒れるドラゴンの姿があった。
その姿はとても先ほどまでのこの世の絶対的な王者であるドラゴンの姿ではなく、なんとも拍子抜けするほどに弱ったドラゴンの姿があった
「これが・・・本当に・・・凶暴な・・・ドラゴンなのか?」
その問いに答えるものはおらず、ハーリストクはただ困惑することしか出来なかった。
つ・づ・く♪
「うむ、よくぞ来た」
とある一室に一人の兵士が丁寧な口調で名乗りを上げ、片膝を地面につけ頭を下げていた。
兵士の対面には豪華な椅子に踏ん反りかえっている少し小太った神官がいた。
兵士の名は【ハーリストク・シュタイナー】
セルリアン教団支部で最高の成績を誇っているエリート兵士である。
「神官長・・・緊急の任務があると聞き参上したのですが」
「うむ、お前の言うとおり今回は緊急の任務で呼んだ。内容は・・・ドラゴン退治だ」
「!?・・・ドラゴン退治・・・でございますか・・・」
「ああ、知ってのとおりドラゴンとは魔物の中でも最上位の強さを誇り、また人間に対して極めて凶暴な行動を取る存在だ。あくまで情報でしかないのだが・・・最近北の農村地帯にそれらしき存在が目撃されたという情報があるのだ。もしもこれが本当ならば非常に由々しき事態になる恐れがある。
そう・・・かつてお前の村が滅ぼされた時のような事態がな・・・」
「・・・・・・」
「それらを未然に防ぐためにも、お前に是非とも北に向かってもらい事の真意を探り、それが本当ならばその手でドラゴンを葬ってほしいのだ・・・・・・やってくれるな?」
「はっ!この命に代えましても必ずや成し遂げて見せましょう」
「うむ、今回も残念ながら手の空いているてだれの兵士はいなくてな、また一人で行ってもらえるか?」
「はっ!私一人で十分可能と思われますので問題はありません!」
「ならばこれよりハーリストク・シュタイナーに任務を告げる。これより北に向かいドラゴンの存在を確認しだい討伐せよ!」
「はっ!任務了解いたしました!失礼いたします!」
ハーリストクは深々と頭を下げたまま後ろに下がり後ろでに扉を開け、部屋から出て行く。
「・・・・・・あの男もなかなかしぶとい存在よ。だが・・・そのおかげでまた一つ我々の思想の実現に近づくのだ・・・・・・期待しているぞハーリストクよ」
誰もいない室内で神官長はそう呟いていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あの後ハーリストクはいつものように身支度を整えると愛剣を腰のひもに引っ掛け、軽装の鎧を身に付け、徒歩で北の農村地帯を目指した。
支部から北の農村地帯まで向かうのにはかなりの距離があるため本来ならば馬を使い走った方が早いのだが、何故か彼には馬を支給されることはなかった。
それは何も今回だけに限った話ではない、彼は教団に入団してから一度も馬を支給されたことは無いのだ。
それに彼の装備を見てのとおり、とてもではないがエリート兵士が身に付ける装備ではない、どこにでも売っている安物の旅人が着ける装備だ。
しかし、彼はそれが当たり前かのように身に付け、当たり前のように北を歩いて目指す。
何の疑いを抱くこともなく。
当たり前のように。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ハーリストクが支部を出発して1週間がたったころだった。
ようやく件の農村地帯に到着したのだ。
さっそくハーリストクは近くの農村を回り、ドラゴンの情報を集めるのだが。
「兵士様・・・ざんねんだけんど、そんな噂は聞いたことがねえだよ」
「こったら農村にドラゴン?冗談もほどほどにしてけろ・・・」
「ドラゴン?いんや、知らねえだよ」
「ドラゴンどころか・・・魔物すら最近はみねえだよ・・・」
まったくと言っていいほどに情報は集まらなかった。
さすがに今回はガセだったのかと思い始めたがそれでもくまなく聞きまわっているとある農村でその情報は見つかった。
「ドラゴン・・・・・・さあ・・・知らねえだよ・・・」
「!?・・・ドラゴン・・・ま、まさか・・・こんなところにいるわけねえべ!誰かに騙されたんでねえか!」
「どらごん?・・・もしかし「すいませんだ兵士様、もうすぐ飯の時間だでこれで失礼するべ!」
「ドラゴン!?・・・知らねえだ!・・・オラ!別に何も知らねえだ!!!」
その村は何故か余所余所しく、目もあわせてくれないのだ。
ハーリストクは何かあると判断して、夜になるのを待った。
深夜の時間帯にハーリストクは明かりが点いている民家の壁に耳を当てた。
理由はもしドラゴンのことを知っていれば、昼間に聞きまわったことを村人は知っているからこの後どうするのかを夜に集まって話し合う可能性を考えたからだ。
『村長、やべえだ・・・教団の兵士様が噂を聞いてやってきただぞ』
『まずいのぉ〜』
『どうするだよ』
『ともかくじゃ、あの兵士様が帰るまではなんぴとたりともあの洞窟のことは口にするでねえぞ、いくことも禁止じゃ、よいな?』
『しかし、そったらことしたら・・・』
『しかたあるまい・・・心配じゃが、今はそれしかできまい』
どうやらハーリストクの勘は当たっていたようでドラゴンがいることがわかった。
それも近くの洞窟に・・・
「なぜ村人は俺に隠し事をしたんだ?」
そんな疑問が頭をよぎった。
この大陸はほぼ反魔の人間が多く、魔物を見かけたら即座に連絡が来てもおかしくないくらいなのだが、それを故意に隠したということは・・・
「ここの村は親魔の人間ということか・・・あとで報告しなければいけないな」
現状任務はドラゴン退治だけだからこの村を潰す義務はないが、反乱分子は即時排除しなければならない。
彼は常に魔物を憎んでいる。
故にその魔物と仲良くしようという連中は余計に許せなかったのだ。
怒りを飲み込み彼は任務を遂行するために件の洞窟へと向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
洞窟は思いのほか早く見つかった。
何故ならば・・・
「人の手が加わっているな・・・最近整備された後がある」
そう明らかにそこの洞窟は入り口から通路にいたるまで、まるで鉱山のように木組みで洞窟内
部を支える形状になっており、とても自然に出来たものとは言えなかった。
そのまま歩くこと数分・・・奥のほうに広い空間のような場所が見え始めた。
通路を抜けるとそこは先ほど見えた広い空間でまるで洞窟内に謁見の間を作ったような感じだった。
その奥には石椅子があり美しい一人の美女が座っていた。
威風堂々とした威圧感、獲物を絶対に逃がさないといった王者の瞳、どんな攻撃も通さないであろう鈍く光る鱗、鋭く光る鋭利な爪、そんな絶対的な存在が目の前には居た。
「貴様か・・・我の住処に侵入せしものは」
「・・・・・・お前がここらに住んでいるドラゴンだな」
「いかにも・・・して、いったい我に何のようだ?礼儀知らずな教団兵士よ」
「・・・おまえを殺しにきた」
「我を殺しにきたか・・・理由はなんだ?」
ドラゴンの問いにハーリストクは剣を抜いて答える。
「それは俺が教団の人間であり、お前が魔物だからだ」
「そうか・・・ならば我に挑んだことを後悔してもらおう!!!」
瞬間ドラゴンの威圧感はさらに増し、ハーリストクに容赦なくその威圧をぶつける。
その威圧感に冷や汗が流れ始めるがそれでも彼、ハーリストクに逃げるという選択肢は無かった。
「セルリアン教団支部、特攻討伐部隊兵ハーリストク・シュタイナー!いざ参る!」
「ドラゴン族が一人、サラナ・ドラグーン受けて立つ!」
お互いに名乗りをあげ、戦闘態勢を取る。
わずかな静寂の後、先に動いたのはドラゴンの方だった。
一歩踏み込んだと思った瞬間にはハーリストクの目にはもう何も映っていなかった。
瞬時にハーリストクは死を悟った。
本来ならかなうはずが無い・・・相手はドラゴンでこっちは何の能力も無いただの人間。
本当は最初に一撃を繰り出すつもりでいたのに完全に先を越された。
(今回は完全に終わったな・・・)
・・・・・・・・・・・・だが衝撃は何故か来ず、その代わりに後ろの方から激しい衝突音が響いた。
ゴチーーーーーン!!!!!
「・・・はっ?」
衝突音に不思議に思ったハーリストクは後ろを振り返るとそこには
「はらほれひれはれ・・・・・・ばたんきゅ〜」
衝突した壁から離れ目を回し、ピヨピヨマークを回して倒れるドラゴンの姿があった。
その姿はとても先ほどまでのこの世の絶対的な王者であるドラゴンの姿ではなく、なんとも拍子抜けするほどに弱ったドラゴンの姿があった
「これが・・・本当に・・・凶暴な・・・ドラゴンなのか?」
その問いに答えるものはおらず、ハーリストクはただ困惑することしか出来なかった。
つ・づ・く♪
12/06/30 00:31更新 / ミズチェチェ
戻る
次へ