第七章 訓練と依頼の日記その二(ほのぼの、おまけあり)
「よくぞ来てくださいました。ささ、そちらのソファーに腰掛けてください」
フレイヤ達はエリエール学園の校長の依頼を受けて、現在校長室にやってきている。
フレイヤの目の前に居る老人こそ、この学園の校長をしているコーリアン=アレクその人である。
「それでは失礼します」
フレイヤは勧められるままにソファーに腰をおろした。
三姉妹もフレイヤの左右に陣取っていた。
「あなたがフレイヤさんですね、噂は聞いていますよ。何でも久しく機能していなかったあのギルドに入った新入りさんだそうで」
「そのようですね」
「すでに知っていると思いますが、今回の依頼についてですがあなたには臨時講師をお願いしたいのです」
「ええ聞いています。何でも戦闘部門と言う場所が人手不足だそうで」
「ええ、そうなんです。実はわが校の戦闘部門の教師が4人ほど明日はどうしても出られないそうなんです」
「何か深刻な事情でも?」
フレイヤが心配そうに質問をする。
「それが、4人とも一斉に休暇を求めてきたのです」
「理由は?」
「まあ全員が全員失恋したそうで、一日だけそっとしておいてほしいとの届けでして」
ズガン
フレイヤ達は思わず前のめりにずっこけていた。
「そんな理由で4人も休ませたんですか?」
ぶつけた額をさすりながら尋ねるフレイヤ。
三姉妹はぶつけ所が悪かったのか涙目になっている。
「ええわが校には失恋休暇というのがありまして、失恋の傷を癒すために一日だけ休暇届を出すことが可能なのです」
校長が苦笑いをしながら説明をしてくれた。
それに対しフレイヤはかなりあきれた表情になっていた。
「そういうわけで、明日一日だけでよいので臨時で講師をお願いしたいのです」
「わかりました。授業はどのようなことをすればよろしいのでしょうか?」
「そのことについては合同授業と言う形を取るので、その内容をユキ先生と決めてもらいます」
「ユキ先生?」
「ええ唯一戦闘部門で出勤できる教師なので、この先生と相談していただけますか?」
「ユキ先生とはどのような方ですか?」
「そうですね、まず彼女はアマゾネスと言う魔物です。大変おおらかな性格で生徒にも人気の高い先生です。それから・・・」
その後約一時間に渡り校長によるユキ先生の特徴やら自慢話やらをたっぷりと聞かされたそうな。
「・・・すみませんがユキ先生に会いたいのですが、ユキ先生はどちらに?」
これ以上は時間の無駄と感じたのか途中で割って入ってゆくフレイヤ。
「おお、すいません長々とお話してしまいましたな、今の時間でしたら職員室に居るはずです」
「わかりました。では私はこれで」
「ええ本日はわざわざお越しいただきありがとうございます。明日はよろしくお願いします」
「期待に沿えるように努力します。失礼します。・・・行くぞお前たち」
「「「・・・コクコク・・・はっ!?はい!!!」」」
フレイヤが校長室から出ようと三姉妹に声をかけた。
三姉妹はちょうど居眠りをしていたらしくコクコクと舟をこいでいたが、フレイヤの一声でぱっと目が覚めたらしい。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「失礼します」
がらがらと音を立て職員室の引き戸を引くフレイヤ。
中に入ると先生であろう人(魔物も含む)達が机に向かい書類を書いていたり、テストのチェックをしたりしていた。
「この中にユキ先生と呼ばれる方はいらっしゃいますか?」
フレイヤが少し大きめの声で質問をする。
「うん?俺に何か用かい?」
(ちょうどお昼時だったせいか)大量のパンを食べているアマゾネスがこちらを向き返事をしてきた。
「あなたがユキ先生ですか?」
「そうだけど、あんたは?」
「わたしはヴァル=フレイヤといいます。明日の戦闘部門の臨時講師として呼ばれました」
「ふーん、あんたが臨時講師かい・・・ん?その後ろに居るのは?」
ユキ先生が指摘したのはゴブリン三姉妹達の事だ。
「この子達は私の仲間だ」
「あたし、カリンっていうんだよろしく!!!」
「あたしはコリンです。よろしくお願いします」
「ま、マリンです。よ、よろしくおねがいします」
「ああ!!!よろしく!!!紹介が遅れたな、俺はアマゾネスのユキだ。戦闘部門で集団戦を教えている。明日はよろしく頼むぜ!!!」
とびきりの笑顔で三姉妹に挨拶を終えた後、ユキ先生は自己紹介をした。
「ユキ先生、実は先ほど校長先生に明日の授業内容はユキ先生と相談してやってみてくれと言われまして、明日はどのような授業を考えていますか?」
「それが今一番悩んでるんだよなー。明日は4人も休むから、俺のクラスだけならともかく他の4クラスも一緒にやらなきゃならねんだよなー、いくら合同と言っても全部で5クラス分これはちょいと骨が折れるぜ」
「合同でやるんですよね、ならばユキ先生が教えている集団戦が一番じゃないですか?」
「それもそうなんだがな・・・」
ユキ先生が何か奥歯に物が詰まったような表情をする。
「正直俺の指導じゃな・・・今まで3クラス分だけしか教えたことが無いから、あまり自信がないんだ」
「自信がない・・・ですか?」
「まあな、集団戦闘は実践をするだけじゃすべてを把握できないからな。ちゃんと座学もしなきゃならない。だから・・・」
勝気そうな表情が見る見るうちに自信なさげな表情へと変化していった。
「ユキ先生、あなたはそれでも先生ですか。教えたことが無いから自信が無い、それは失敗を恐れているから言った台詞ですか?」
「なっ!?」
「失敗したっていいじゃないですか、初めてやることなんですから失敗して当然です。・・・今回はあくまで一日だけなんですから難しく考えないでやりましょう。それこそ楽しんでやるくらいがちょうどいいと思います」
フレイヤはユキ先生に対し思ったことを口にしていた。
「・・・はは、まさか臨時講師に説教されるとはね、俺もずいぶん弱気になっていたようだ。よし!いっちょ気合入れるか!!!」
さっきまでの自信なさげな表情はどこへやら、すっかり元気になったユキ先生。パンッと顔をたたき気合を入れる。
「さて気合をいれたのはいいが実際どうする?5クラスで集団戦はちょっと大変だぞ」
「・・・やはり実践が一番だと思うんです。先生は2人だから2チームに分かれて模擬戦争なんてどうですか?」
「そうか!その手があったか!!!乗ったぜその案!!!」
「それではその線で話を進めるとして・・・」
その後ユキ先生とフレイヤによる明日の授業の話し合いが夜遅くまで続いたそうな。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
今日はここまでかな。
これがその日一日の日記だが、なんだか冒険のぼの字も出てこないな。
まあこのような依頼も冒険者なら一度くらいは受けているはずだから私は順調に冒険者の道を一歩ずつ前進しているはずだ。
さて、続きはまた明日にしよう。
○月×日 ヴァル=フレイヤ
フレイヤ達はエリエール学園の校長の依頼を受けて、現在校長室にやってきている。
フレイヤの目の前に居る老人こそ、この学園の校長をしているコーリアン=アレクその人である。
「それでは失礼します」
フレイヤは勧められるままにソファーに腰をおろした。
三姉妹もフレイヤの左右に陣取っていた。
「あなたがフレイヤさんですね、噂は聞いていますよ。何でも久しく機能していなかったあのギルドに入った新入りさんだそうで」
「そのようですね」
「すでに知っていると思いますが、今回の依頼についてですがあなたには臨時講師をお願いしたいのです」
「ええ聞いています。何でも戦闘部門と言う場所が人手不足だそうで」
「ええ、そうなんです。実はわが校の戦闘部門の教師が4人ほど明日はどうしても出られないそうなんです」
「何か深刻な事情でも?」
フレイヤが心配そうに質問をする。
「それが、4人とも一斉に休暇を求めてきたのです」
「理由は?」
「まあ全員が全員失恋したそうで、一日だけそっとしておいてほしいとの届けでして」
ズガン
フレイヤ達は思わず前のめりにずっこけていた。
「そんな理由で4人も休ませたんですか?」
ぶつけた額をさすりながら尋ねるフレイヤ。
三姉妹はぶつけ所が悪かったのか涙目になっている。
「ええわが校には失恋休暇というのがありまして、失恋の傷を癒すために一日だけ休暇届を出すことが可能なのです」
校長が苦笑いをしながら説明をしてくれた。
それに対しフレイヤはかなりあきれた表情になっていた。
「そういうわけで、明日一日だけでよいので臨時で講師をお願いしたいのです」
「わかりました。授業はどのようなことをすればよろしいのでしょうか?」
「そのことについては合同授業と言う形を取るので、その内容をユキ先生と決めてもらいます」
「ユキ先生?」
「ええ唯一戦闘部門で出勤できる教師なので、この先生と相談していただけますか?」
「ユキ先生とはどのような方ですか?」
「そうですね、まず彼女はアマゾネスと言う魔物です。大変おおらかな性格で生徒にも人気の高い先生です。それから・・・」
その後約一時間に渡り校長によるユキ先生の特徴やら自慢話やらをたっぷりと聞かされたそうな。
「・・・すみませんがユキ先生に会いたいのですが、ユキ先生はどちらに?」
これ以上は時間の無駄と感じたのか途中で割って入ってゆくフレイヤ。
「おお、すいません長々とお話してしまいましたな、今の時間でしたら職員室に居るはずです」
「わかりました。では私はこれで」
「ええ本日はわざわざお越しいただきありがとうございます。明日はよろしくお願いします」
「期待に沿えるように努力します。失礼します。・・・行くぞお前たち」
「「「・・・コクコク・・・はっ!?はい!!!」」」
フレイヤが校長室から出ようと三姉妹に声をかけた。
三姉妹はちょうど居眠りをしていたらしくコクコクと舟をこいでいたが、フレイヤの一声でぱっと目が覚めたらしい。
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「失礼します」
がらがらと音を立て職員室の引き戸を引くフレイヤ。
中に入ると先生であろう人(魔物も含む)達が机に向かい書類を書いていたり、テストのチェックをしたりしていた。
「この中にユキ先生と呼ばれる方はいらっしゃいますか?」
フレイヤが少し大きめの声で質問をする。
「うん?俺に何か用かい?」
(ちょうどお昼時だったせいか)大量のパンを食べているアマゾネスがこちらを向き返事をしてきた。
「あなたがユキ先生ですか?」
「そうだけど、あんたは?」
「わたしはヴァル=フレイヤといいます。明日の戦闘部門の臨時講師として呼ばれました」
「ふーん、あんたが臨時講師かい・・・ん?その後ろに居るのは?」
ユキ先生が指摘したのはゴブリン三姉妹達の事だ。
「この子達は私の仲間だ」
「あたし、カリンっていうんだよろしく!!!」
「あたしはコリンです。よろしくお願いします」
「ま、マリンです。よ、よろしくおねがいします」
「ああ!!!よろしく!!!紹介が遅れたな、俺はアマゾネスのユキだ。戦闘部門で集団戦を教えている。明日はよろしく頼むぜ!!!」
とびきりの笑顔で三姉妹に挨拶を終えた後、ユキ先生は自己紹介をした。
「ユキ先生、実は先ほど校長先生に明日の授業内容はユキ先生と相談してやってみてくれと言われまして、明日はどのような授業を考えていますか?」
「それが今一番悩んでるんだよなー。明日は4人も休むから、俺のクラスだけならともかく他の4クラスも一緒にやらなきゃならねんだよなー、いくら合同と言っても全部で5クラス分これはちょいと骨が折れるぜ」
「合同でやるんですよね、ならばユキ先生が教えている集団戦が一番じゃないですか?」
「それもそうなんだがな・・・」
ユキ先生が何か奥歯に物が詰まったような表情をする。
「正直俺の指導じゃな・・・今まで3クラス分だけしか教えたことが無いから、あまり自信がないんだ」
「自信がない・・・ですか?」
「まあな、集団戦闘は実践をするだけじゃすべてを把握できないからな。ちゃんと座学もしなきゃならない。だから・・・」
勝気そうな表情が見る見るうちに自信なさげな表情へと変化していった。
「ユキ先生、あなたはそれでも先生ですか。教えたことが無いから自信が無い、それは失敗を恐れているから言った台詞ですか?」
「なっ!?」
「失敗したっていいじゃないですか、初めてやることなんですから失敗して当然です。・・・今回はあくまで一日だけなんですから難しく考えないでやりましょう。それこそ楽しんでやるくらいがちょうどいいと思います」
フレイヤはユキ先生に対し思ったことを口にしていた。
「・・・はは、まさか臨時講師に説教されるとはね、俺もずいぶん弱気になっていたようだ。よし!いっちょ気合入れるか!!!」
さっきまでの自信なさげな表情はどこへやら、すっかり元気になったユキ先生。パンッと顔をたたき気合を入れる。
「さて気合をいれたのはいいが実際どうする?5クラスで集団戦はちょっと大変だぞ」
「・・・やはり実践が一番だと思うんです。先生は2人だから2チームに分かれて模擬戦争なんてどうですか?」
「そうか!その手があったか!!!乗ったぜその案!!!」
「それではその線で話を進めるとして・・・」
その後ユキ先生とフレイヤによる明日の授業の話し合いが夜遅くまで続いたそうな。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
今日はここまでかな。
これがその日一日の日記だが、なんだか冒険のぼの字も出てこないな。
まあこのような依頼も冒険者なら一度くらいは受けているはずだから私は順調に冒険者の道を一歩ずつ前進しているはずだ。
さて、続きはまた明日にしよう。
○月×日 ヴァル=フレイヤ
11/03/07 21:09更新 / ミズチェチェ
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