ツンデレな彼女(後編)
京華は廊下を走りながら考えていた。
なぜ謙弥があのペンダントをプレゼントしてきたのか?
そして、なぜ“あのペンダント”なのか?
しかし、いくら考えても見当すら立たない。
別に謙弥のことが嫌いだった訳ではない。
むしろ、うれしかった。
初めて男子からプレゼントを貰ったことが。
そしてその相手が謙弥であることが。
「誕生日プレゼント」と、謙弥に言われた時。
今日が自分の誕生日だということを思い出した。
だが、それと同時に12年もの間ずっと頭の奥底にしまい込んでいた“ある記憶”も蘇ってしまった。
•••それが原因だった。
京華が女子寮に戻ろうと走り、曲がり角を曲がろうとした時、誰かにぶつかった。
「痛っ、も〜誰ですか?」 ゆったりとしゃべるワーシープがそこに尻もちをついていた。 静子先生だった。
「先生大丈夫ですか?」 京華がそっと手を差し出す。
「も〜京華さん、元気が良いのは分かりますけど、廊下は走っちゃ•••
って京華さん!泣いてるんですか!?」
えっ、
「ちょっと待ってください、今鏡を。」
そう言って静子先生は鏡を取り出して京華の顔を写した。
そこには目の中とその周りを赤くしている京華の顔があった。
「なにかあったんですか?」
「•••ほっといてください。」
「でも•••」
「ほっといてください!!」
あまりの大声にビクッと、体を振るわせる静子先生。
ごめんなさい、と心でつぶやきまた走り出す京華。
自分の部屋に着くと、すぐにベッドの中に入り眠ろうとした。この複雑な思いを一度消すために。
「俺の家族には指一本触れさせんぞ!!」
「•••」
二人の男が剣と刀で戦っている。
剣を持っているのは私の父。
「パパ!!」「あなた!!」
この私によく似た女の子を片手で抱いているのは母。抱かれているのが私。
この後どうなってしまうか、私は知っている。
ほんの一瞬父が隙をみせる、その瞬間男の刀が父のお腹を貫通した。
「お前は弱い。」
「力がなくては何も守れない。」
「自分の命ですらな。」
そして、刀をゆっくり引き抜いた。
父の体が崩れ落ちる。
母も同じようにして殺した。
刀を持ったローブ姿の男。
その胸元にあの“ペンダント”がぶら下がっていた。
謙弥がくれたペンダントと同じものが。
その頃謙弥は、
数分前に京華が走っていった廊下を歩いていた。
京華を泣かそうとプレゼントしたわけではない。
ただ、告白したかっただけ。
そして、前振りのようなもののためにあれをプレゼントした。
しかし、その結果京華に悲しい思いをさせてしまった。
「くそ」
「何が“くそ”なんですか〜?」
「うわっ!」
謙弥は後ろから急に聞こえた声に飛び上がりそうになった。
謙弥に話掛けてきた人というのは、言わずもがな静子先生だった。
「どうしたんですか〜?」
「いえ、別に•••。」
「はぁ〜、謙弥君といい京華さんといい、誰も先生に事情を話くれない。」
「謙弥君、私はそんなに頼りないですか?••••」
「•••••••。」
正直に言ってしまえば頼りないです。
なんてことは口が裂けても言えなかった。
今にも大きな瞳から涙がこぼれそうだったからだ。
そこで謙弥は一つ疑問に思うことがあった。
それはさっきの静子先生との会話だ。
“謙弥君といい京華さんといい”
“京華さんといい”
「京華!?」
「ど、どうしたんですか?」
「先生、京華に会ったんですか!?」
「え、ええ一応会いましたよ。」
謙弥の態度の変わりぶりに驚きつつも、静子はしっかり受け答える。
「京華は、その、どんな様子でした?
やっぱり怒ってましたか?」
「う〜ん、怒っていたというより、悲しんでいた、という方が近いかもしれません、泣いていましから。」
「•••っ。」
やはり悲しませてしまっていた。
今頃になってその確証を得てしまった。
我ながら情けない、と謙弥は思った。
なぜ謙弥があのペンダントをプレゼントしてきたのか?
そして、なぜ“あのペンダント”なのか?
しかし、いくら考えても見当すら立たない。
別に謙弥のことが嫌いだった訳ではない。
むしろ、うれしかった。
初めて男子からプレゼントを貰ったことが。
そしてその相手が謙弥であることが。
「誕生日プレゼント」と、謙弥に言われた時。
今日が自分の誕生日だということを思い出した。
だが、それと同時に12年もの間ずっと頭の奥底にしまい込んでいた“ある記憶”も蘇ってしまった。
•••それが原因だった。
京華が女子寮に戻ろうと走り、曲がり角を曲がろうとした時、誰かにぶつかった。
「痛っ、も〜誰ですか?」 ゆったりとしゃべるワーシープがそこに尻もちをついていた。 静子先生だった。
「先生大丈夫ですか?」 京華がそっと手を差し出す。
「も〜京華さん、元気が良いのは分かりますけど、廊下は走っちゃ•••
って京華さん!泣いてるんですか!?」
えっ、
「ちょっと待ってください、今鏡を。」
そう言って静子先生は鏡を取り出して京華の顔を写した。
そこには目の中とその周りを赤くしている京華の顔があった。
「なにかあったんですか?」
「•••ほっといてください。」
「でも•••」
「ほっといてください!!」
あまりの大声にビクッと、体を振るわせる静子先生。
ごめんなさい、と心でつぶやきまた走り出す京華。
自分の部屋に着くと、すぐにベッドの中に入り眠ろうとした。この複雑な思いを一度消すために。
「俺の家族には指一本触れさせんぞ!!」
「•••」
二人の男が剣と刀で戦っている。
剣を持っているのは私の父。
「パパ!!」「あなた!!」
この私によく似た女の子を片手で抱いているのは母。抱かれているのが私。
この後どうなってしまうか、私は知っている。
ほんの一瞬父が隙をみせる、その瞬間男の刀が父のお腹を貫通した。
「お前は弱い。」
「力がなくては何も守れない。」
「自分の命ですらな。」
そして、刀をゆっくり引き抜いた。
父の体が崩れ落ちる。
母も同じようにして殺した。
刀を持ったローブ姿の男。
その胸元にあの“ペンダント”がぶら下がっていた。
謙弥がくれたペンダントと同じものが。
その頃謙弥は、
数分前に京華が走っていった廊下を歩いていた。
京華を泣かそうとプレゼントしたわけではない。
ただ、告白したかっただけ。
そして、前振りのようなもののためにあれをプレゼントした。
しかし、その結果京華に悲しい思いをさせてしまった。
「くそ」
「何が“くそ”なんですか〜?」
「うわっ!」
謙弥は後ろから急に聞こえた声に飛び上がりそうになった。
謙弥に話掛けてきた人というのは、言わずもがな静子先生だった。
「どうしたんですか〜?」
「いえ、別に•••。」
「はぁ〜、謙弥君といい京華さんといい、誰も先生に事情を話くれない。」
「謙弥君、私はそんなに頼りないですか?••••」
「•••••••。」
正直に言ってしまえば頼りないです。
なんてことは口が裂けても言えなかった。
今にも大きな瞳から涙がこぼれそうだったからだ。
そこで謙弥は一つ疑問に思うことがあった。
それはさっきの静子先生との会話だ。
“謙弥君といい京華さんといい”
“京華さんといい”
「京華!?」
「ど、どうしたんですか?」
「先生、京華に会ったんですか!?」
「え、ええ一応会いましたよ。」
謙弥の態度の変わりぶりに驚きつつも、静子はしっかり受け答える。
「京華は、その、どんな様子でした?
やっぱり怒ってましたか?」
「う〜ん、怒っていたというより、悲しんでいた、という方が近いかもしれません、泣いていましから。」
「•••っ。」
やはり悲しませてしまっていた。
今頃になってその確証を得てしまった。
我ながら情けない、と謙弥は思った。
13/02/21 22:34更新 / 狐目の男
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