連載小説
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4.裏通りの恐怖
部屋に戻る途中、ロアは何人もの魔物に興味深そうな目で見られているのを感じた。
「……なんだか、視線が」
「まあ、しょうがない。……ただ、十分に気を付けろよ。砦よりも狙ってくる奴が多いだろうから(性的な意味で)
「……気を付けます。」
男性もいるにはいるが、大抵は他の魔物とくっついている。
一夫多妻もいるにはいるが、やはり夫を独り占めしたい、という魔物も多い。
「本当に気を付けるんだぞ(……砦でのこともある。下手したらこいつ、男にも狙われそうだしな……)」
「?」

オリビアの部屋に到着した。扉を開けて部屋の中に入ると、昼間よりもさらに物が増えていた。
「(アネットめ……!)」
元の部屋の面影はもはや全くなかった。ロアも一緒に暮らすならばある程度は仕方がないが、自分の部屋を勝手に弄られるというのはあまり嬉しいものではない。
「さて……移動の疲れもあるし、今日は早く休もう。」
帰り際に購入したパンをテーブルに広げ、二人で食事をとる。
「ロア、明日からのことだが……私たちは報告なんかで少し忙しい。悪いが一人で適当にぶらついていてくれ」
「わかりました。せっかくなんで、町を見て回ってみます」
「うん、それが良いだろう。……そうだ、町を回るなら……ほら、少しだが持ってけ」
オリビアはロアに小さな袋を渡す。袋を開いてみると、中には貨幣が少しばかりはいっていた。
「い、いいんですか?」
「うん、構わないさ。昼食もそれで買ってくれ」
「ありがとうございます!」
「この町は貿易も盛んだからな。お前の気にいるようなものがあるかもしれない」

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「(へー、いろんなお店があるんだなあ)」
ロアは町を歩き回りながら、様々な店を回っていた。

この通りには食べ物屋、雑貨屋、様々な露店が並んでいます。
『表通りには』そういった店が多くあります。しかし、やはり魔物たちが多くいる街。
ちょっと裏道に行けば『そういう』店だらけです。
露店のメニューに精の付きそうなものが多くなったら注意が必要です。
「気が付いたら娼館だらけの通りにいて、すっかり搾り取られた。どうだったかって?最高でした」
という観光客が後を絶ちません。
観光客の方は誤って迷い込まないように注意しましょう。
もし迷い込んだ場合、娼館のご利用は計画的に。
―――町のパンフレットより抜粋

「……とは言ったものの、精の付きそうな食べ物がどんなものだか知らないんでした。どうしよう」
先ほど買った焼き芋をかじりながら道を歩く。
「まあ、いざとなったら走って逃げれば大丈夫かなあ……あれっ」
気が付くと、怪しい色使いの看板が並ぶ通りに立っていた。
パンフレットを読んでいて気が付かなかったようだ。
「……これは、もしかしなくても」
「あら!かわいい子!ちょっと遊んでいかない?」
「うっ……!?」
周りを多数の魔物たちに囲まれていた。全員が怪しい目つきで手招きしている。
「今なら格安にしておくわよん♡」
「それよりもうちのお店にしない?」
「いやいや、うちにしておきなさい♡」
じりじりと近寄る魔物たち。
「(こ、このままでは、パンフレットの通り搾り取られてしまう……!)」
「さあさあさあ!」
「え、遠慮しておきます!」
「そんなこと言わずにぃ♡」
「ひ、人を待たせておりますので!失礼します!」
大急ぎで逃げ出すロア。全力疾走である。
「うううううう!ちゃんと道を見ておくんだった……!あ痛っ!」
「おや、大丈夫かね?」
「す、すいません!ありがとうござっ……!」
道を曲がったところで、誰かにぶつかってしまいロアは転んでしまった。
相手は親切そうに手を差し伸べてくれたが、その『男性』ははあはあと荒い息でロアに迫る。
「君、うちのお店来ないかい?」
「ひえっ……!え、遠慮しておきますう!人を待たせておりますのでええ!失礼しますうううわああああああ!」
先ほどよりもさらに必死で逃げる。若干涙目になりながら、ロアは町を後にするのであった。

「はあっ、はあっ、はあっ!」
全力疾走で走ったロアは、息を切らせながら、部屋に入った。
「……どうした?そんなに息を切らせて……大丈夫か?」
「はあっ、はあっ、だ、大丈夫です!何もありませんでした!はい!全く持ってなにもありませんでした!問題ありません!」
「(ああ……裏通りに入ったんだなコイツ……)」

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3日後。

ロアに呼び出しがかかった。どうやら検査の準備が整ったらしい。
呼び出されたのはロア一人だけだったのだが、オリビアが「私も良く」と言ってついてくること人なった。
それだけでなく、いつの間にかアネットもついてくることとなり、結局三人で向かうことになった。

指令室の扉を軽くノックすると、中から間延びした声で「勝手に入っとくれー」とベラの声が聞こえた。
「失礼します。ロア・フレインです」
「お〜!よく来たの!……あれ、なんでオリビアとアネットがいるんじゃ?」
少年にくっついてきた二人をぽかんと見つめながらベラは尋ねる。
「ロア一人じゃトラブルがあった時心配ですので」
「……ワシ、そんなに信頼されてないの?アネットもそうなのか?」
不安そうにアネットに尋ねるが、彼女の答えはオリビアとは違う意味でベラをがっかりさせた。
「いえ、面白そうだったので〜♪」
「お主はもうちょっと緊張感を持った方がいいのう」
「そうですか?仕事中に居眠りできるくらいには緊張感持ってますよ?」
「まだ引っ張るか!もういいじゃろ!」
机をバンバンと叩きながらベラは抗議する。司令官の威厳などあったものではない。
「ゴホン……それでじゃな。ちょっと手を出してくれるか?」
「どうするんです?」
「ちょっと血を貰うんじゃよ。血中の成分を調べるんじゃ」
ベラは手にもった注射器をロアの腕に静かにさし、ゆっくりと血を抜いた。
「痛……」
「すまんの、ちょっと我慢しとくれ」
抜いた血を試験管にたらし、薬品らしい液体と混ぜ合わせる。
「よしよし、反応が出るまでちょっとかかるから、それまで菓子でも食べて待ってておくれ」


13/11/03 16:56更新 / ホフク
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■作者メッセージ
こんな裏通りあったら皆さんは行きますか?私は行きたい……

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