13.拉致
「指令!第一部隊が……!」
アネットが第一部隊が戻って来たという知らせを聞いたのは、昼過ぎだった。
「指令!隊長が…!」
フィルとマールが砦に戻ってきた。セラはマールに担がれている。
「落ち着いて!セラはどうしたの?」
「首を外されたせいで魔力が流れ出して…!」
「すぐに医務室に運んで!魔力を補充させて!」
「り、了解!」
「オリビアは?」
「隊長は、教会の奴らに……!」
フィルが簡単に説明すると、セラも意識が戻ったのか、呻くように話した。
「う……ぅ……私の……私のせいで…隊長が……!」
「喋らないで!後で聞くから!」
「隊長……隊長……!」
セラは医務室に運ばれて行った。魔力が補充されさえすれば、すぐに回復するだろう。
「……大体の事情はわかったわ。」
「どうしたら……!」
「とりあえず全員を集めて。……皆にも知らせなくちゃ。それから、あなた達にはもう一つ頼みたい事があるの。」
アネットが指示を出すと、すぐに兵士達が集まってきた。
「指令!一体どういう事なの!?」
「オリビア隊長が、教会に攫われたって……!」
「今すぐ救出に行くべきだ!」
集められた隊員達はアネットに口々に叫ぶ。
「落ち着きなさい!奴らのもとには大勢の人質が居る事を忘れたの?うかつに攻め込んだら人質が危険なの!」
「指令!砦内に居るスパイの件はどうなったんですか!?」
辺りがシン、と静まった。
「……今喋ったのは誰?」
アネットが聞くと、一人の兵士が前に出た。
「私です!スパイが情報を流していたんじゃないんですか!?」
「あなた、スパイが誰か知っているの?」
「いえ……しかし、先ほど司令室で指令が話しているのを聞いてしまって…」
兵士がそう言うと、アネットは少し残念そうに言った。
「そう……。それじゃあ、仕方ないわね。もう少し黙っていたほうが良いと思ったんだけど…」
そこまで言って、アネットはある事に気が付いた。
「ちょっと待って……ロアはどこ?」
アネットが訪ねると、兵士達は辺りを見回すと言った。
「あれ?そう言えば居ないね。」
「さっき馬小屋の方に向かってましたよ?」
「あ〜私も見た〜。なんか焦っているみたいだったね〜」
兵士達が口々に話し始めた。
「指令!はやく説明を!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃。
「………うっ」
オリビアが目を覚ますと、後頭部に鈍い痛みが走った。全身も痺れたように力が力が入らない。
目も霞んではっきりと見えない。
周りを見回すと、窓は無く薄暗い。地下室だろうか?両手は鎖で天井から繋がれている。
「(そうだ……私は、教会の奴らに……)」
手足のしびれは麻痺薬でも飲まされたのだろうか。
「ふん、もう目が覚めたか。」
低い男の声。
続いて、牢の中に入って来る人影がぼんやりと見えた。
「…村に、来ていた…教会の者か…」
痺れているせいでまだはっきりと話す事が出来ない。
かすむ目を凝らし、騎士風の男を睨みつけていると、いきなり男が腹を殴りつけてきた。
「うぐっ……!」
「魔物風情が生意気な態度をとりやがる……」
「く……!」
「ふん……まあいい。……おい、入って来い!」
騎士風の男が声をかけると、後ろからもう一人、太った男が入ってきた。
「こいつだ。」
「へぇ、結構な上玉じゃないですか。」
「いつも通りに頼む。」
「はいはい。」
太った男は牢の中に入ると、オリビアが身に着けていた鎧を無理矢理外し始めた。
「……何を、する気だ…」
オリビアを無視すると、今度は乱暴にアンダースーツを破り取った。
「あ〜、こいつは駄目ですね。でかい傷がある。これじゃ売れませんねぇ。」
「売る……!?まさか…貴様…!」
教会の人間が裏で奴隷商人と通じており、親魔物派の人間や魔物達を売りさばいて、活動資金にしていると言う噂を聞いた事がある。
騎士風の男が鼻で笑うと、奴隷商人らしき男に言った。
「ふん、やはりな。」
「まあ、他の奴らはそれなりの値で売れるでしょ。」
他の奴ら……他にも捕われている者が居ると言うのは本当だったようだ。
「それじゃ、コイツはどうしますかぁ?」
「放っておけ。奴らとの約束は3日だったな。取引まで生かしておけば良い。」
「おや、意外と軽いんですねぇ。」
太った男が大げさに肩をすくめると、騎士風の男はぞっとするような笑みを浮かべると言った。
「生かしてさえいれば良い。水も食料も必要ない……コイツらには勿体ないからな。」
「クヒヒ……それは面白そうですねぇ。3日後が楽しみですねぇ!」
二人は大声で笑いながら、地下牢を出て行った。
「(……ちっ……くそ…)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
馬が地面を蹴る音が響く。
カナック村へとまっすぐ馬を走らせる。
「うっ……わっ!?」
馬に慣れていないせいで、何度も放り出されそうになる。
しかし、なんとか手綱を使って耐える。
……ここで落とされるわけにはいかない。
「早く……カナック村に……!」
アネットが第一部隊が戻って来たという知らせを聞いたのは、昼過ぎだった。
「指令!隊長が…!」
フィルとマールが砦に戻ってきた。セラはマールに担がれている。
「落ち着いて!セラはどうしたの?」
「首を外されたせいで魔力が流れ出して…!」
「すぐに医務室に運んで!魔力を補充させて!」
「り、了解!」
「オリビアは?」
「隊長は、教会の奴らに……!」
フィルが簡単に説明すると、セラも意識が戻ったのか、呻くように話した。
「う……ぅ……私の……私のせいで…隊長が……!」
「喋らないで!後で聞くから!」
「隊長……隊長……!」
セラは医務室に運ばれて行った。魔力が補充されさえすれば、すぐに回復するだろう。
「……大体の事情はわかったわ。」
「どうしたら……!」
「とりあえず全員を集めて。……皆にも知らせなくちゃ。それから、あなた達にはもう一つ頼みたい事があるの。」
アネットが指示を出すと、すぐに兵士達が集まってきた。
「指令!一体どういう事なの!?」
「オリビア隊長が、教会に攫われたって……!」
「今すぐ救出に行くべきだ!」
集められた隊員達はアネットに口々に叫ぶ。
「落ち着きなさい!奴らのもとには大勢の人質が居る事を忘れたの?うかつに攻め込んだら人質が危険なの!」
「指令!砦内に居るスパイの件はどうなったんですか!?」
辺りがシン、と静まった。
「……今喋ったのは誰?」
アネットが聞くと、一人の兵士が前に出た。
「私です!スパイが情報を流していたんじゃないんですか!?」
「あなた、スパイが誰か知っているの?」
「いえ……しかし、先ほど司令室で指令が話しているのを聞いてしまって…」
兵士がそう言うと、アネットは少し残念そうに言った。
「そう……。それじゃあ、仕方ないわね。もう少し黙っていたほうが良いと思ったんだけど…」
そこまで言って、アネットはある事に気が付いた。
「ちょっと待って……ロアはどこ?」
アネットが訪ねると、兵士達は辺りを見回すと言った。
「あれ?そう言えば居ないね。」
「さっき馬小屋の方に向かってましたよ?」
「あ〜私も見た〜。なんか焦っているみたいだったね〜」
兵士達が口々に話し始めた。
「指令!はやく説明を!」
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その頃。
「………うっ」
オリビアが目を覚ますと、後頭部に鈍い痛みが走った。全身も痺れたように力が力が入らない。
目も霞んではっきりと見えない。
周りを見回すと、窓は無く薄暗い。地下室だろうか?両手は鎖で天井から繋がれている。
「(そうだ……私は、教会の奴らに……)」
手足のしびれは麻痺薬でも飲まされたのだろうか。
「ふん、もう目が覚めたか。」
低い男の声。
続いて、牢の中に入って来る人影がぼんやりと見えた。
「…村に、来ていた…教会の者か…」
痺れているせいでまだはっきりと話す事が出来ない。
かすむ目を凝らし、騎士風の男を睨みつけていると、いきなり男が腹を殴りつけてきた。
「うぐっ……!」
「魔物風情が生意気な態度をとりやがる……」
「く……!」
「ふん……まあいい。……おい、入って来い!」
騎士風の男が声をかけると、後ろからもう一人、太った男が入ってきた。
「こいつだ。」
「へぇ、結構な上玉じゃないですか。」
「いつも通りに頼む。」
「はいはい。」
太った男は牢の中に入ると、オリビアが身に着けていた鎧を無理矢理外し始めた。
「……何を、する気だ…」
オリビアを無視すると、今度は乱暴にアンダースーツを破り取った。
「あ〜、こいつは駄目ですね。でかい傷がある。これじゃ売れませんねぇ。」
「売る……!?まさか…貴様…!」
教会の人間が裏で奴隷商人と通じており、親魔物派の人間や魔物達を売りさばいて、活動資金にしていると言う噂を聞いた事がある。
騎士風の男が鼻で笑うと、奴隷商人らしき男に言った。
「ふん、やはりな。」
「まあ、他の奴らはそれなりの値で売れるでしょ。」
他の奴ら……他にも捕われている者が居ると言うのは本当だったようだ。
「それじゃ、コイツはどうしますかぁ?」
「放っておけ。奴らとの約束は3日だったな。取引まで生かしておけば良い。」
「おや、意外と軽いんですねぇ。」
太った男が大げさに肩をすくめると、騎士風の男はぞっとするような笑みを浮かべると言った。
「生かしてさえいれば良い。水も食料も必要ない……コイツらには勿体ないからな。」
「クヒヒ……それは面白そうですねぇ。3日後が楽しみですねぇ!」
二人は大声で笑いながら、地下牢を出て行った。
「(……ちっ……くそ…)」
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馬が地面を蹴る音が響く。
カナック村へとまっすぐ馬を走らせる。
「うっ……わっ!?」
馬に慣れていないせいで、何度も放り出されそうになる。
しかし、なんとか手綱を使って耐える。
……ここで落とされるわけにはいかない。
「早く……カナック村に……!」
11/12/17 18:28更新 / ホフク
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