連載小説
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エロシーン
 
 俺と猫村さんは、寝室に入った。猫村さんは頬を薄く染め、何も言わずうつむいたままだった。俺は人差し指を立てて目の前にある、薄いキャミソール一枚に隔たれた猫村さんの背筋をツーっと撫でた。
「んっ」
 猫村さんは背中が弱いらしかった。俺は昼間のいじめっ子心が、またうずきだしたのを感じた。俺は猫村さんの背後に近づき、今度は掌を広げて、腰の辺りを撫でさすった。猫村さんは非常にいい反応をしてくれた。
「あ、ちょ、それ、待って」
「やです」
 俺はさらに撫でる位置を下げて、今度は彼女のお尻の割れ目あたりをさらに二本の指で一層強くこすった。
「待ってってば、だから、その、それ」
「どれっすか」
「その、こするやつ」
「こするのがダメなんすね」
 そう言われたので、今度は俺はちょっと指を指に力を込めて、猫村さんのお尻の片方をぎゅっとつかんだ。彼女の体がちょっと跳ねた。
「ん、ふっ」
 猫村さんのお尻を揉みしだき、次に五本の指を立て、臀部の丸みに合わせてそっと撫で回す。時々親指の爪でひっかくようにすると、そのたびに猫村さんは艶っぽい声を出した。
「う、あ、ぅん」
 猫村さんは次第に前かがみになってきた。もどかしそうに内股をこすり合わせる。俺はこのまま攻めの手をより苛烈な物にしようと思ったのだが、その前に一応確認しておきたいことがあったのだ。俺は猫村さんに聞いた。
「あのー」
「何」
 一度手を止められて猫村さんはわずかに不満そうだった。
「一回、キスしときません? このままでも別にいいんすけど」
「えー。いいけど」
「何か気もち確認しておきたくて」
「あー、じゃあ、やっとこうか」
 やや盛り上がってきたところだったところだったけれど、俺は改めて猫村さんと向かい合い、お互いを見つめあった。そして二人とも何も言わずにキスをした。
 最初に唇と唇が触れ合う程度のものを、つつきあうように数回繰り返し、次はお互いの舌を突き出して先端だけがくっつくようにする。これが意外と難しく、馴れない俺たちは、何度かうっかり狙いを外し、舌をお互いの頬の上に滑らせる結果となった。
 俺たちはちょっとふざけてみるのはここら辺にして、今度は二人の体を密着させて、抱き合いながら、一息にキスをした。そうして、ちょっと呼吸が続かなくなった時に息継ぎをし、また次のキスを繰り出す。相手の唇をついばみ、時には上からおさえこんで塞ぐようにして
「ん、はむ、……ちゅ。あ、だめ、……んう」
心を込めて相手の口吻をむさぼった。
「ん、ぐ、むんぅ、……んっ」
 そのうちに猫村さんが舌を入れてきたので俺もそれに応じて、ベロを伸ばして彼女の歯ぐきを丹念になめまわした。
「んん……っふ、ぷは。ちょ、タンマ……っふ、……あっ……んぐ、ぐっ、むぅっ」
 猫村さんはちょっと息がしづらそうだったが、構わず俺は彼女の前歯の裏側を舌でこすった。途中で猫村さんの声が、『うえ』と『れ』を合わせたような物になるのがなんだか可笑しかった。
 俺が彼女の下顎を攻略しようとしていると、彼女は俺の胸を小突いた。
「むぐっ、うん、……ぷあ、はぁっ、ふうー」
 猫村さんはどうにかして引っ付く俺を引きはがした。
「苦しい」
「サーセン」
「ばか」
「はい」
「そろそろこっちも触って」
 そう言って猫村さんは服の裾を持ち上げた。猫村さんの白磁の肌があらわになった。
「こっちってどっちっすか」
「……おっぱい」
「おっぱいのどこですか」
「その……乳首とか」
「ふーん、乳首ですか」
「なんでいちいち言わせんのよ」
「こういうのが好きなんです」
「あっそ」
 俺は猫村さんに従って、彼女の服の下に手を滑り込ませた。猫村さんの肌はそれこそ本当に陶器のような手触りだった。下着のレースが手の甲に当たって少しかゆかった。指を広げて少しまさぐってみると、彼女の乳首がすぐに見つかった。固く勃起していて、そこだけわずかに服が持ち上がっているのがよくわかったからだ。
「あ、興奮してるー」
「……」
 猫村さんは気まずそうに顔を伏せた。別に猫村さんが気まずくなる必要はまったくないのだけれど、ちょっと恥ずかしいんだろう。その様は俺にとっていよいよ扇情的だった。親指と人差し指で猫村さんの乳首をひねったり、つねったり、こねくり回したりしていると、猫村さんは開いた両手の中に真っ赤になった顔をうずめた。
「んん、ふ、く、ん、っんん、ふ」
「別に声出していいんすよ」
「ぜったい嫌」
「なんで」
「なんか負けた気がするから」
「えー」
 こうなってくると俺の方もちょっと意地になって、決して力は強めず、しかし乳首をいじくる手の速さと正確さをさらに上げた。
「あっ、待って、それずるい。あんっ」
 小さく悩ましい吐息が指の隙間から絶え間なく漏れる。俺が乳首をいじくり続けると、だんだんと吐息の感覚短く、急なものになっていく。
「ん、ん、ん、あ、ふぐ、っ、ああ。うっく、う、ん、ちょっと、もう、もうっ……!……ーーーーっっ!……っふ、ふーっ、ふーっ」
 猫村さんの体が大きく痙攣した。ひょっとしたら達したのかもしれない。
 猫村さんはもうほとんど余裕をなくしていた。二人の熱情は段々と頂点に近づきつつあった。俺はそれを見計らって言った。
「あの、……そろそろいいっすか」
「あ、うん」
 そういって猫村さんは下半身に身に着けていたものを、全て一息にずり下ろした。片足に下着をひっかけたままベッドに上半身を預け、かわいいお尻を俺に向かって突き出した。
「……どーぞ」
 愛液に濡れる猫村さんの花園が目の前で揺れている。彼女のカモシカのような美しい脚がピンと伸びて、そこに彼女の想いを示す愛の涎が伝って流れ落ちる様は、俺の欲情をさらに掻き立てた。それとはまた別に
(いきなりバックかい)
とも心のどこかで冷静に考えてもいたが。
 確か猫村さんにとっては、これが初体験だったはずだ。割とすぐに興奮してくれたのと、本番に関しても乗り気みたいなのは結構ありがたかったけれど、しかし、俺は聞きたいことが一つあった。
「いや、あの、そうじゃなくて。今日ゴム忘れちゃったんで、お借りしてもいいっすか」
「え? ああ、ゴム」
「はい」
「面倒くさいなあ、なしでいいじゃん」
「それ男の言うセリフっすよ」
「そうなの?」
「そうっす。教えてくれたら自分でやるんで」
「うーん、ちょっと待って。……あー、あった。ハイ」
「ども」
 俺は、猫村さんがベッドサイドテーブルから取り出したコンドームを自分の息子にかぶせた。俺がその作業をしている最中ずっと、猫村さんは物欲しそうに俺のソレを見つめていた。
(この人ほんとに初めてなのかな)
 彼女の妙な視線を感じて、俺は何とも言えない微妙な気持ちになったが、そんな態度や、すぐに興奮する性質も、彼女の正体に由来するものだったということは、後から判明するところである。

 ふと、ベッドの枕の脇に置いてあるものが目に入った。いつか俺があげた俺の写真と、ピンク色のマッサージ器だった。エロイことに使われる方のマッサージ器だ。写真の方は、何であげたかはもう覚えていない。
(あー、俺、ほんとにオナられてんのね……)
 俺は妙な感慨を抱きながらそんなことを考えた。

 準備が済むと、俺は改めて猫村さんのお尻に向き合い、腰のあたりをそっと掴んだ。彼女のほうはもう準備万端だった。
「じゃあ、いきますよ」
「うん」
 そうして俺は、樫の木のように固くなった自分のそれを、結構な力を込めて猫村さんの大切な所に押し込んだ。
「う、おぉ、お」
 猫村さんの内側はとても暖かく、それでいて肉棒に吸い付いてくる様な不思議な柔らかさを備えていた。俺はまるで、自分の一物がそのまま溶け出していくような感覚を覚えた。入ったのは先端だけだったが、少しでも身動きすれば、すぐさま達してしまいそうなほどの心地よさだった。俺は必死に歯を食いしばって耐えた。
 しかし受け入れる側の猫村さんの秘所の方は、
みち、みち、みり……
となんだか無理のある、妙に耳に残る音を立てていた。いくら入れる前にすでにグズグズのじゅくじゅくであったとしても、やっぱり多少の痛みを猫村さんは感じているようだった。
 なかなか猫村さんの中に侵入できずに四苦八苦しているうちに、俺は段々、入れる場所を間違えているんではないかとさえ思い始めた。
「あれ、くそ、ここであってるはずなのに」
「……なんか、ちょっと不安なんだけど」
「ちょっと待っててください、すぐに納めきりますから」
 しかしもう少し用心深く探っていると、突破口は急に現れた。何かしまっていた門が開くかのように、俺のペニスはいきなり根元まで達するほど、彼女の深く敏感な所まで誘い込まれたのだ。
「うお、やった!」
 俺が喜んだのも束の間、猫村さんは一瞬遅れてから、かなり大きな声で
「ぎにゃん!!」
と叫んだ。そして奥歯を噛み締め、額をベッドに打ち付けシーツを両手で固く握りしめて細かく震えた。たぶん、痛覚が脳に達するまでのタイムラグがあったせいだろう。
 結合部から一筋血が流れ落ちた。しかしそんな若干可哀そうな感じの彼女をよそに、俺は脳天まで突き抜けるかのような強烈な快楽を全身で体感していた
(っすっげぇ、何だこれ、何だこれ!)
 俺たち二人は、しそれぞれの理由で何秒間かは身動き出来ずにいた。
 少しはその衝撃が収まってきた頃に、
「あの……、だ、いじょうぶっす……か」
 めまいのような快感を、努めて意識から切り離しながら、多いかぶさるようにして猫村さんに聞いた。
「う…ん、大丈夫、大丈夫だから」
「その、けっこう、キツそうでしたけど」
「正直、内臓吐きそう」
「抜きます!」
「わあ、待って。大丈夫、大丈夫だから抜かないで!」
「キツいって言ってるじゃないっすか」
「だんだん気持ちよくなるから、大丈夫だから!」
「だからそれも男側のセリフ!」
 その場で抜くか抜かないかで二人が言い争っている時、ふとした瞬間に俺がずいと腰を引いた。
「ああっっ!」
 猫村さんが急に大声を上げた。固く怒張した俺の肉棒を引き抜く時、猫村さんの敏感な内壁は、削り取られるかのごとき激しい摩擦を受けたのだ。多分、猫村さんの脳内は甘く痺れるような官能の電流で明るく照らされていただろう。
俺はわずかな可能性を感じ、とっさに猫村さんの腰に俺の腰を打ち付けたのだ。それに合わせて俺の性器が猫村さんの大切な所を深々とえぐる。
「はあぅ!」
 今日一番可愛い声で鳴いたかと思うと、猫村さんはベッドに突っ伏した。口角から涎が垂れていた。
 俺と猫村さんの間に、にわかに情欲と期待の入り混じった雰囲気が満ちた。もうこんなものを体験してしまうと、二人とも引き抜くことなんて考えられなかった。
「……やっぱ、抜くのなしで」
「でしょ」
 そう言葉を交わした次の瞬間から、俺は必死に腰を動かし始めた。肉と肉がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。猫村さんの寄りかかるベッドがギシギシと音を立てた。
「うあ、んんっ、あう、だめ、やっ、あ、あ、ああっ!」
 俺の腰の動きに合わせて猫村さんが嬌声を上げる。先ほどの余裕はもうほとんどなくなってきた中で、俺は猫村さんに聞いた。
「どうっ、です、かっ。ちゃんと、気持ちい、いです、かっ!」
「っうん、気持ちいいから、もっと、もっとやってっ!」
 猫村さんは襲い来る快感の中でどうにか返事をしてくれた。
 彼女の返事に俺は心からほっとした。俺の『お礼』に対して、ちゃんと猫村さんが喜んで(悦んで)いてくれることが心の底から嬉しかったのだ。
 俺は動きを止めないまま、猫村さんのシーツを固く掴む手に自分の手を重ねた。猫村さんもそれに気が付いたらしく、自分の白魚のように細く白い指の一本一本を俺の指に絡ませた。
 不意に猫村さんが振り返り、愛しさと切なさとが揺れる瞳で俺の顔を見た。その時俺は何か、たまらない気持ちになって、膝を屈し、彼女の肩を抱き寄せて、強く強く口づけをした。そして舌を絡ませあった。この上なくいやらしいキスだったが、しかしそれこそが何か、とても深い程度で胸からとめどなく溢れ出る愛情をお互いに確認できる最良の方法である気がした。
「あっ、しんど……、君、私、……もう……!」
「俺も、です、せっかく、なんでっ、ふっ、ぐっ、…一緒に!」
「ふふ、ぅくっ、せっかくって、なんか、んっ」
 猫村さんはちょっと笑った。しかしその顔はすぐさま官能に歪む。俺はこれまで以上の速さと力強さで腰を振った。猫村さんが悲鳴を上げる。俺はとどめを刺すかのように力強く性器を押し込んだ。それによって、ついに猫村さんが一瞬早く絶頂に達した。
「ん、あ、ん、んん、んあ、あああぁあぁああぁぁぁーーーっっ!」
「ううっ、く、ああああっっ!」
 猫村さんは一際お尻を高く上げ、彼女のナカの締め付けが一段と強まった。また、その指で握っている俺の指をすごい力で締め上げた。俺もそれに応えるかのようにして、達すると同時に猫村さんの手を握りしめた。頭の中で眩い閃光がそこかしこに飛び交っていた。どちらからともなく俺たちは、その場に重なり合うようにして倒れこんだ。


「ふーっ、ふーっ、ふ−っ、ふうぅーーーー」
「はあーっ、はあーっ、は……っげほっごほっ、……っはあ、はあぁーーーっ」
 俺たちは足に力が入らなくなったまま、その場でへたり込んでいた。
二人とも汗まみれで、豪雨の中から部屋に逃げ込んできたときと変わらないほど全身が水っ気に覆われていた。体にまとわりつくシャツが少しじれったかった。
 猫村さんが口を開いた。
「……すごかったね」
「……すごかったっすね」
「初めてだったんだけど、まさかこんなものだとは」
「俺もびっくりしてます」
「この後どうする? もっかいやる?」
「その前に、一回水かなんか貰っていいすか。のど渇いちゃって」
「あー、冷蔵庫にあるから適当に飲んで」
「どもっす」
 俺は自分の業物を猫村さんから引き抜いた。抜く時、んっ、と猫村さんが小さく声を上げた。
 俺が立ち上がってリビングの方に行く時、猫村さんが俺の背に声をかけた。
「あ、新藤君。冷蔵庫行くなら、ついでに取ってきて欲しいものがあるんだけど」
「はい、なんすか」
「何か、冷蔵庫の中に、マンゴーっていうか、桃っていうか、とにかくちょっと大きめの果物あるから、それも取ってきて」
「ういっす」
俺は冷蔵庫の前で麦茶を一口飲んだ後、猫村さんに言われたものを持って行った。
「これっすか」
「ありがと」
「なんすかこれ。なんかやけに瑞々しいけど、見たことないっすね」
「それね、私の故郷の果物。美味しいよ」
「どうやって食べるんすか」
「もうそのまま生でがぶっと」
 俺がそのよく分からない果物にかぶりつき飲み込むのを、猫村さんは何かを期待する目で見ていた。
「なんか、めちゃくちゃ甘いっすね、美味いけど。脳天突き抜けそうな甘さで、なんていうか、アメリカのチーズケーキみたいな。あとやっぱりかなり水っぽい」
「でしょ」
「ジュースかなんかにして飲むんすか」
「ジュースっていうか……」
 猫村さんが何かを言いかけた時、俺は自分のからだに起きた異変に気が付いた。ふと股間を見ると、今しがた出すものを出したばかりであったのに、なんと自分の一物がすでに半勃ちぐらいにまで回復していたのだ。

「……精力剤?」

 猫村さんが半笑いになって言った。俺はどうして自分がこれを食べさせられたのか、ちょっと分かった気がした。
 俺は猫村さんに近寄った。
「もっかい、しましょっか」
「うん。あ、それ私にもちょうだい」
俺は猫村さんに果実を手渡しながら、彼女の上半身の衣服を脱がしに取り掛かった。


 何度目かの交合の最中、俺にまたがって激しく上下運動を繰り返す猫村さんから、突然猫耳としっぽが飛び出した。毛の生えた三角の耳と、長くて優美なしっぽだった。必死の形相で歯を鳴らしながら、俺のペニスの上を膝をついたまま飛び跳ねている最中であるので、本人は気が付いていないようだった。しかし俺はこれと言った感慨もなくそれを見ていた。
(あー、やっぱり人外さんだったかー)
 俺はあんまり驚かずに猫村さんの耳と揺れるしっぽを観察していた。もともと猫村さんの正体については、いくつか思うところがあったのだ。
(まあ、鳥とか見てると、時々ニャニャニャって言ってたし、暗いとこから出てきたら瞳孔めっちゃ細くなってるし、変な匂い嗅いだら分かりやすくフレーメン反応するし。分かりやすいっちゃこの上なく分かりやすいんだけどね)
 そもそも、『猫村』なんてありえない苗字、偽名に決まってるし。
 色々気になる点はまだ残っていたものの、しょうがないので、とりあえず俺は、跨がれる俺の方からも、腰を浮かせて、猫村さんのいやらしい割れ目を下方から突き上げることにした。猫村さんも、最初はちょっと面食らっていた風だったが、すぐにノリノリで動きを合わせてきた。俺が突き上げる時に腰を下ろし、引くときには逆に上げる。この夜は二人にとっての初めての夜だったが、今思い返してみると、俺も猫村さんも両方が、かなり楽しんでいたと思う
19/08/03 10:48更新 / マモナクション
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■作者メッセージ
8月3日修正 本文が長かったので、修正しました。

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