連載小説
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猫村さんと俺の夜更けから夜明けにかけて@
(一回きりのお礼のつもりだったのに、俺の方も随分楽しんじゃったなー)
 俺は猫村さんの黒髪を撫でながらそんなことを考えていた。
 二人でひとしきり楽しんだ後に、薄暗い室内光の中で猫村さんは、自分の正体と、出自来歴の全てを俺に明かしてくれた。魔物娘の存在も、魔法も、人間界への渡航の話も、そして自分が魔物娘で、さらにその渡航組の中の一員であるということも全てだ。
 俺はにわかには信じがたかったが、しかし、現にいま愛を交わしたばかりのこの女性に一対の猫耳としっぽが生えているのも、また動かしがたい一つの事実だった。
 俺は猫村さんの耳を光にかざしてみた。ちょっと負担のかかる体勢だったけれど、猫村さんに少し身を起こしてもらうことですぐに出来た。
 猫村さんの薄く毛の生えた猫耳はには、確かに血液が循環しているのが確認できた。それどもなにか精巧な印刷ではないかと尚も疑い、試しに耳の一部分を指の腹でしばらくやや強めに抑えた。俺がぱっと手を離すと、抑えていた部分には血が通わず、そこだけ一時的に黄色く変色したが、すぐに血液が戻ってきて、また薄い赤みをじわりと取り戻した。また、しっぽも先端を握ると、心臓の鼓動に少し遅れて脈を感じ取ることが出来た。 
 こういった諸々の要素を確認していった結果、俺はこれら彼女の各パーツは確かに生きているのだと結論付けた。俺は驚きのあまり、ため息をついてしまった。
「マジなんすね」
「うん、マジなの」
「いや、まあ、今まで思い当たる節はいくつかありましたけど、まさかそんな背景があったとは」
「とはいっても、私たちがこっちに来てからもう10年近くたつから、あっち側が今どうなってるかとかのタイムリーな話は出来ないけどね」
 そういって猫村さんんはちょっと微笑んだ。
「いつから人間界に来たんですか」
「13歳ぐらいの時だったかなー、両親が渡航組に選ばれたんだけど、最初は子供は連れていくことは計画になかったんだ。でも、魔王様からの直々の提案があったの。子供を連れて行って、そこで人間と一緒に育てさせたらどうだって。この世界でも、恋人とか、夫婦みたいな関係を築けるんじゃないかっていうことを願っての提案だったみたい。そっからは普通に人間みたいに育ったよ。中学行って、高校行って、受験して」
 猫村さんは遠い目でそういった彼女の今までのことを喋った。俺はなんとなく、しんみりした気持ちでそれを聞いていた。
 ベッドの中で猫村さんが語ってくれたことがある。それは、魔物娘の過去と現在、そして未来の話だった。
 ちょっと長い話になるからごめんね、と猫村さんは一言断った。猫村さんはゆっくりと静かに、しかし目に強い光を宿しながら話し始めた。





19/08/03 10:59更新 / マモナクション
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■作者メッセージ
猫村さんのしっぽの付け根を優しく叩いてあげると、だんだん及び腰になって、最終的にはその場にへたり込んでしまうことを、今後、新藤君はどこかのタイミングで発見します

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