連載小説
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コカトリス
夏の暑さも大分落ち着いてきましたね
もうすっかり秋ですよ


”とは言っても昼間は死ぬほど暑いがな”


秋といえば、最近走っている人をよく見かけますね
運動の秋、とでも言いましょうか
夕方には涼しくなってきますからね
駅伝に出場する選手もランニングに精を出しています


”あれだ
突然ランニングを始めて数日でやめるアレが大量に発生する時期だ”


そういえば、去年の駅伝はすごかったですね
魔族が正式に駅伝に出場が認められた年から、ずっと魔族のチームが人間のチームを圧倒していたんです
ですが、去年の出場チームに
「霊長類なめんな!!」
をスローガンに掲げたチームが出てきまして、初めて魔族チームに勝って優勝したんです


”そのチームはワシが育てた
・・・嘘ですマジごめんなさい”


魔族チームはコカトリスを筆頭にケンタウロスやワーキャットで構成されています
どの魔物娘さんも走ることに関してのエキスパートですよね


”ええ
どう見てもチートです
本当にありがとうございました”


アンカーの大将戦はすごかったですよ
全力で逃げるコカトリスに追走する選手の姿はかっこよかったですね
ゴールと同時に気を失ってしまいましたが、チームは勝利することができました
今年もそんなドラマのある駅伝が見れることを楽しみに待ってます

あ、僕は運動が得意ではないので、走ったりはしませんよ?


おや、お客さんですね

いらっしゃい
今日はどんなご用件ですか?


”あれ?
この人、さっき言ってた駅伝のアンカーの人じゃね?”


ええ
ここでは魔物娘さんの紹介をしてますよ
どんな魔物娘さんについて知りたいですか?
コカトリス、ですね
ええ、はい
いろいろとありますけど

ちょっと待っててください
資料を持ってきます


こちらがコカトリスの資料になります

まずは、コカトリスがどのような魔物娘さんなのかを説明させて頂きます

コカトリスさんはハーピーの一種に分類されます
ハーピー類にそこまで大きな種類はいないんですけど、その中でもさらに小柄な種族になります

ハーピーは基本的には集団行動をするんですが、コカトリスは個別で行動します
彼女達、自分の仲間にも驚いて逃げるので一箇所にまとまることができないんですね


”どこまで臆病なんだよ・・・”


ハーピーであるため、腕が翼になっています
が、コカトリスだけは他のハーピーと違って飛べないみたいです
基本的な役割として、体温の保持や物に衝突したときの衝撃吸収の役割を持つらしいです
ですが、聞いた話によると浮遊くらいならできる固体もいるみたいですね

彼女たちは飛ぶことができないので、ひたすら走り回ります
常に忙しなく動いてます


先ほども少し言いましたが、一般的に彼女たちは非常に臆病です
自分より大きい固体にあった時はもちろんのこと、自分と同じ大きさの固体にあった時も、自分より小さな固体にあった時もすぐさまに逃げ出します


”結局、何に出会っても逃げ出すんだな”


彼女達は逃げる際、フェロモンを出しながら走るそうです
人間の男がそれを嗅ぐと、追いかけたくなります
まぁ、フェロモンなんてそんなものでしょう


”そんなもんって・・・
まぁ、魔物娘は意外と適当なことが多いからな”


なんで逃げながらフェロモンをばら撒くのかって?

それは、強いオスの選定です
オスというと御幣があるかも知れませんが、彼女達は基本的、話しかける瞬間には逃げ出しているので、じっくりとオスを選ぶ余裕が無いんですね
それこそ、ラミヤ種やサキュバス種のように肝っ玉が据わっているコカトリスならば話は別でしょうが、魔物学上、それはありえないでしょうね

コカトリスがいくら早くても、フェロモンが残れば追うことができますよね
このフェロモン、既婚のコカトリスからは散布されないんです
フェロモンがないと追うのは困難ですし、そもそもコカトリスを追いかけようという気になりませんから
逆に言えば、コカトリスがフェロモンを出して逃げるってのは求愛行動の一種なんですよ
求愛されたら、しっかりと受け止めてあげてくださいね


”店主ならともかく、全力で逃げるやつが言えた口じゃないがな”


ちなみに、こちらの写真を見ていただければ判りますが、成体のコカトリスはこのように赤い羽が三本ほど頭に生えます
また、首も成体になるにつれて赤くなるそうですので、追いかける際はここを目印に確認してからのほうがいいですよ

世の中、幼いからこそ良いって言う方もいるらしいでs

「幼女を呼んだのは誰かのぉ!?」
「コカトリスの幼女と聞いて!!」


”こっちくんな
帰れ
こっちみんな
ショボーンって顔をすんな”


そうそう
コカトリスってあまり知られていませんが、相手を石化させる能力を持つ魔物娘の一種なんです
めったに使用しないんですが、いざとなると使うそうです

どんなときに使うかといいますと、スキでもない男性に追い詰められた時とか、紳士に追い掛け回された挙句ハァハァしながら迫られたりした時とか、既婚のコカトリスは追いかけようとする者を問答無用で石化させます

石化について、ですか?
体に関しては大丈夫ですよ
石化しても、実際は石化している気になっているだけの暗示、に近いものですから
金縛りの一種だと思ってください
寝ているときに金縛りにあっても、心臓や呼吸が止まることはありませんよね?
それと同じです

ですがこの石化、直接は無害でも、間接的な要因を考えるとかなり危険だったりします

えぇ
大体、何かしら潜んでますね
たとえば・・・オークだとか、ダークエルフだとか・・・
おこぼれを狙って何かしら潜んでいるみたいです


”そいつぁヤバイな
勝てる気がしない”


自然に石化が解けるのには数時間掛かります
その間にお持ち帰りされているケースも少なくありません
お持ち帰りされた後は・・・


”ゆっくり(楽)しんでいってね!!!”


ですので、それだけには十分注意をしてくださいね

食事に関しては主に木の実、または雑食なので、問題は無いかと思われます


”虫とかを食うことに関しては良いのか!?”


最後に、これがコカトリスの巡回ルートです
何も無ければ一日中このコースを走ってるみたいですね


”・・・まぁ、普通の山の地図だな
って、待てよ!
この地図の縮尺、明らかにおかしいだろ!
どんだけデカイ山を駆け巡ってんだ!?
ってか、巡回ルートがこの等高線が密集してる場所を通ってるって、どんだけの坂、いや崖を登ってんだ!?”


その山の麓まで、だいぶ距離があります
馬車で半日ほどなので案内しましょう


店主移動中〜


パカッパカッパカッ・・・


貴方はどうしてコカトリスを紹介してもらおうと思っていたんですか?
えぇ、ちょっと気になりましてね
うちに来るほとんどのお客さんは、魔物娘さんを紹介してもらおうかが決まってないままの方が殆どなんです
最初からコカトリスって決めている方に合うのは初めてじゃないですかね

以前コカトリスを追いかけたときの興奮が忘れられない・・・?
コカトリスを追うなんて、一体どんな状況だったんですか?
あ、いえ
そこまで詮索しようとは思いませんよ
こんな話に付き合ってもらってすみませんね


次の日の朝

さて、山の麓まで来た訳ですが・・・
正直、肉眼で山を駆け巡ってるコカトリスを探すのは至難の業なので、望遠鏡を持ってきました


・・・・・・

店主捜索中〜

・・・・・・


”この間1時間15分”


あっ!!
いました!!
あそこです!
あの丁度木が無くなって山の表面が見える場所です!!


”今一瞬通ったやつか!?”


え?
ここから追いかける!?
そんな無茶な
相手はコカトリスですよ?
もうちょっと待っても・・・

って、行っちゃっいました

どうしましょうか
仕方ないのでここで眺めることにしましょう


”・・・クンカクンカ
なんかいいにおいがする
なんだろう・・・?”


BGM〜RUNNER


”ハァ・・・・ハァ・・・
なんで俺はこんなに全力で走っているんだ?
そしてどこに向かっているんだ!?
今、ここは、どこだ!?
ハァ・・・ハァ・・・
何か前に、いる?”


ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


”コカトリス!?
この良い匂い・・・コカトリスのフェロモンか?
なるほど・・・クンカクンカ
どうりで・・・クンカクンカ
こんなに・・・クンカクンカ
クンカクンカクンカクンカ・・・ハァハァ!!!”


「こけー!!
こけぇーーーー!!
ん、なに!?
何か近づいてくる・・・
い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
な、何か変なのが追いかけてくるーー!!!」


”クンカクンカ!!!!
ハァハァ!!!”


ドドドドドドドドドドドドドドド


「キャァァァァァァァァァァ!!!」


”ハァハァ!!
トサカが無いってことは・・・ょぅυ゛ょktkr!!
ヒャッハァァァーーーーーーーーー!!!!!”


「ヒィィ!?
こ、来ないでぇぇ!!!」


”ヒィィハァーーーーーーーーー!!
良い感じに追い込んだ!
コカトリス、ゲットだぜぇ!!!”


「えっ!?
も、もう逃げられないの!?」


”クンカクンカ・・・
グヘヘヘヘヘヘヘ
もう追いかけっこはおしまいかぁ!?”


「か、固まっちゃえぇぇぇ!!!!」

コカトリスの石化攻撃!!

pokeは固まってしまった!!


”HAHAHAHAHAHA I want to fuck you!!!!!!!
くぁwせdrftgyふじこlp;@:!?
か、体が・・・動か、な・・・い?
だ・・・が、なんの・・・こ、れ、し・・・き・・・!!!”


「ま、まだ向かってくる!!
イヤァァァァァァァァァァァァ」


ドドドドドドドドドド・・・・・


”ま、だだ
まだ、終、わ・・・・ら・・・・ん、よ
こ、の・・・体、が、動、か・・・・な・・く、と・・・も!!
クソ・・・
ど、こへ・・・行、こ、う、と、言・・・うの、かね!?”


『じゃ、これは貰っていきますねwww』


”オーク・・・だ、と!?
貴、様、に、用・・・・など、無い!!!
☆H☆A☆N☆A☆S☆E☆”


『まだ幼いコカトリスを狙った罰だねぇ〜
その分、私達がいっぱい苛めてあげるから
もう私達無くては生きられないような体にしてあげる!』


”ほ・・・ざ、くな!!
この・・・子、豚、の・・・分際、でぇ!!!
お、俺・・・は、コカ・・・トリス、たんでぇ、ハァハァ、した・・・い、ん・・・DA☆”


ブツン(←オークの何かが切れる音


「・・・貴方、自分の立場が分かっていないんだね
良いよ
今ここでその体に、分からせてア・ゲ・ル」


残念、pokeの冒険はここで終わってしまった!!


一方、もう片方は・・・

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!!

「君、待って!!!」

『いやぁぁぁぁぁ!!!』

「ハァ・・・ハァ・・・
捕まえた!!
君って、去年の駅伝のアンカーを走ってたよね?」

『えっ!
どうして、それを!?』

「走り方で分かるよ
あんなに近くを走ったんだから
ゴールには僕のほうが早かったけどね」

『貴方・・・私を抜かした、あのアンカーの人!?』

「うん
なんかね、君を追いかけている時からずっと、君のことが気になってて・・・
でも、あの時は君を捕まえることができなかった
チーム全体を背負ってたから
でもね、こうしてまた君を追いかけて、捕まえることができた
今度はチームの為なんかじゃなく、僕自身の為に・・・」

『・・・・っ!!
・・・私も、ずっと気になってたの
私を、抜かした、人間の男の人・・・
貴方だったんだ』

「・・・僕と一緒に並走してくれませんか?」

『・・・はい!』


う〜ん・・・どうやら上手く捕まえることができたようですね
では、このまま望遠鏡で二人を眺めているのも野暮と言うものですので、僕は帰るとしましょうか

またのご来店、お待ちしてません
では、お幸せに
10/08/05 20:54更新 / poke
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■作者メッセージ
嫌よ嫌よも好きの内・・・許せる!!!

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