連載小説
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ワーバット
今日はなんと、VIPの方の予定が入ってます!!
予定ではそろそろ来るそうですね

魔物娘の紹介の後、道案内も依頼されているのです
今回は前回の妖精のように比較的安全な魔物娘ばかりが相手ではなく、夜道を行かなければならないのです
しかしご安心を
道中の護衛もギルドに頼んでばっちり雇ってます

名前は・・・えっと
なんでしたっけ?


”今日は俺もこの後、仕事が入ってるんだよな
ちなみに言っとくが、俺も生活があるから、たまにはギルドの仕事とかをしてるんだぞ?
つい最近、ギルドに顔を出したときに丁度入って来た依頼があったらしく、そのまま受付嬢に仕事を押し付けられてしまった
確か・・・誰かの護衛だったな
なんでも依頼内容が・・・夜道で魔物娘の巣のすぐ近くまで行き、特定の魔物娘を捜索するという良くわからない内容だったはず・・・
詳しくは依頼主に聞けとか言ってたな
非常に危険で難易度が高いために頼めるほどの人が俺くらいしかいないとか・・・ギルドとして情け無い話だ
それでも、契約金が破格だったから頼まれてやるとする”


今日のVIPはたしか・・・よい○ろさんですね
予約ではお一人で来られるようですね


”VIPか・・・あのしんs・・・いや変態以来だな
仮に紳士だとしても、変態という名の紳士だ
ってか、こんな店のVIPだなんてロクなやつがいないだろう
こんどはどんな人間国宝級のバカが来るのやら・・・”


コンコン・・・

来たようですね!
資料もばっちり揃えてありますし、お茶と茶菓子の準備は完璧・・・
いらっしゃい!
予約のよい○ろさんですね?

「せっしゃがよいころでありまする」


”・・・思ったよりかは普通だったな
いや、一般からすれば十分怪しいがな!!”


見慣れない服装ですね
それに大陸のなまり方ではありませんね
もしかして、ジパングの方ですか?

「そうでありまする」

そうでしたか
いや、失礼
ちょっと聞きなれない語尾だったもので


”だまされんな、店長!!
ジパングでもそんな語尾は付けねーよww”


では、こちらへどうぞ
えーっと、まずは僕がこの店の店長です
店長と呼んでください
さて、さっそくですが自己紹介もさておき、魔物娘さんの紹介に入らせてもらいたいのですが・・・
頼まれているのは、ワーバットでよろしいですね?
また、説明の後、案内も予約されておりますが、こちらの契約書に署名をしてもらいます

「これは・・・なんの書類でありまするか?」

この文章が何かと言うと、魔物娘に近づきたいという方に目を通してもらっている契約書ですね
要約すると、魔物娘に物理的に近づこうとする場合、その身の安全の保障は出来ない、というものです
また、ほとんどの場合帰ってくることが出来ません
捕まったり、つがいになればこの先ずっと彼女達と過ごすことになります
それらの不祥事に関して、僕達は一切の責任を負えません
って感じですかね・・・
まぁ、この量の文章ですから読み流すだけでも相当大変ですが、一応形式でしてね
ここまで来て案内を頼む方々ですから、文章を読みもせずに承諾する方も中にはいましたね


”まぁ、よくある形式文だな”


「承諾しまする!!」

ありがとうございます
では早速、ワーバットの紹介に移りたいと思います

今日、これからご案内させていただくワーバットの居場所から説明しましょうか
ワーバットたちが住みやすい環境は果物などが多く群生しており、冒険者も多く活用している洞窟などの暗い場所ですね
こちらの地図をご覧ください
いくつか候補となるポイントはあるんですが・・・主には印の付いているこの三つの洞窟となります

ここからもっとも近いのはこのベルヌーイ洞窟ですね
ですが、最近この洞窟でラミアが見つかったと言うので、ワーバットが逃げてしまった可能性があります
ええ
魔物娘同士の力関係ははっきりしてませんが、専門家いわく
「進化論において培われてきた本能によるもの」
だそうですが、詳しいことは判っていません

先ほども言ったとおり、ワーバットがいないかも知れないところに探しに行っても不毛なので、ここは却下させてもらいます

次にここから近いのはこのオイラー・コーシー洞窟です
名前の由来ですか?
この洞窟を最初に見つけたのがオイラーさんとコーシーさんだったそうで
おそらく、この洞窟にもっともワーバットがいる可能性が高いですね
この周りに広がってるのが雑木林です
あんまり深く無く、あくまで林なのですが、果実の群生も確認されており、近くに牧場があるのでワーバットの生息には非常に適していると思います
ですが、この雑木林が曲者なんです
僕のような情報屋からは臓器林なんて揶揄されて呼ばれることもありますね


”臓器林!?”


どうなっているかと言うと、ちょっと魔界化が進んでるんですよね
その結果、植物が触手化するなんてよくある話で・・・
肉棒みたいな触手がうねうねしているため、そのような名前で呼ばれてます

さて、曲者は触手だけではなく、森をテリトリーとする魔物娘も多く潜んでいることです
主にオオナメクジとか、アラクネとか、ジャイアントアントとか・・・
正直、出くわすと厄介な魔物娘ばかりですね
ですので、この洞窟も却下させていただきます

そして三つ目の洞窟ですね
この洞窟はロンスキ洞窟なんて呼ばれています
この洞窟はこの三つの中ではもっとも遠い位置にありますが、環境の条件もいいですし、道中がもっとも安全かと思われます
よって、この洞窟を目指しますが、よろしいですね


では、次はワーバットの習性などを見ていきましょう

この写真でわかる通り、成体のワーバットの姿はこんな感じですね
名前や外見から判るとおり、こうもりの特徴を強く残しています
飛行しなければならないため、種族全体を通してものすごくスレンダーな魔物娘さんですね
身を軽くするため、身に着けているものも必要最低限です
えっと、これは一応全年齢を対象にした魔物娘図鑑ですので、ワーバットが胸にベルトを巻いていたり腰に布を巻いていますが、野生のワーバット達はそんなものは着けていません


”さて、そろそろ話を抜けてギルドに行って支度するか”


性質もこうもりに似ているらしいですね
基本的には暗いところを好むみたいです
先ほども言いましたが、主に洞窟とか、森の中とかになります
洞窟の天井にぶら下がって、その下を歩いている獲物に飛び掛り、馬乗りにして捕獲するようです
人間の場合、そのまま・・・ってこともありえるので遭遇されるときはどこから襲われてもいいように心構えをしておいてください

ワーバットは暗いところと明るいところでは性格が違うっていう報告もあります
明るいところでは弱気で草食系な性格で、暗いところまで来ると人が変わったように性格が強気で肉食系に変貌するそうです

とは言っても、ワーバット自体があまり明るいところを好まないので、弱気なワーバットを見る機会も少ないでしょう
ワーバットに襲われるとしたら、辺りは真っ暗でしょうし

また、強気だけではなく意地悪な性格の固体も多いみたいですね
抵抗はもちろんのこと、許しを請うこともワーバットにとっては逆効果みたいですね
逆をとれば、マグロでいればワーバットに開放されるかも知れない、ということでしょうか
似た性格の魔物娘としてアラクネがいますね

ワーバットだけの能力に音を操る程度の能力というのがあります
正確には音というか、音波ですね

彼女たちは暗い場所に長く居続けたため、目が退化してしまいました
見えなくなったというわけではないので、めがねをかける個体も居るらしいですが
その視覚を補うように伸びたのが嗅覚と聴覚ですね

嗅覚のほうはただ感覚が研ぎ澄まされ、鋭くなっただけなのですが、聴覚のほうで新たな能力を編み出したようです
人間が聞き取れない高周波での会話はもちろん、さまざまな音を発することができるようです

たとえば、人間とワーバットとの戦闘において、ほとんどの人間がワーバットの位置をつかむには聴覚くらいしかありません
主に翼の音を聞く程度でしょうね
ドップラー効果などによって大体の位置を割り出して、あとは気配で探るのみ
ですが、その翼が風を切る音がまねできたら、どうなるでしょう
音は遠くから聞こえるようでも、実は真後ろにいたりしたら・・・

また、音を振動として直接ぶつけてくることもできるそうですね
人間の三半規管は耳のすぐそばにありますから、耳元から三半規管に直接振動のダメージが与えられれば、どんなに鍛えられていようと、どんなに魔力が強かろうとお構いなしに平衡感覚を失います
そうなってしまえば、もう後はワーバットにされるがままでしょうね

では、彼女達に襲われたときはどうするのか
まぁ、わざわざ合いに行く貴方に対処法を教えるのも変な話ですが、一応護身のために知っておいて貰う訳です

彼女たちはこうもりの性質を強く引き継いでいると言いましたが、それはメリットだけではなく、デメリットも引き継いでいます

すこし専門的な話になるんですが、こうもりのような小動物は聴力を高めるために外耳と耳骨が極度に接近した構造になっています
外耳で増幅された振動が耳骨に伝わり、耳骨を脳に直結することで聴力を高めることができたのです
その性質もワーバットにしっかり受け継がれています

では、それがどのような弱点となるのか
それは、轟音ほどの衝撃波となったほどの振動が耳に入ると、衝撃そのものが脳に伝わり、ショックで失神してしまうのです

ですので、僕は一応コレを持っていくつもりです
これですか?
閃光手榴弾(スタングレネード)っていうらしいです
このピンを抜いて3秒後に轟音と閃光を放つらしいのですが・・・
どうなんでしょうね

僕も失神してしまうんじゃないかって心配はあるんですけどね

ですが、気をつけてくださいね?
彼女達は群れで行動します
うかつに近寄ると群れでたかられて、輪姦パーティーですから


あと、彼女達の食事についてですが・・・雑食というのであんまり気にしなくても大丈夫でしょう
ですが、食事は夫が作ったほうが良さそうですね
彼女達、そこらへんの物を生でも食べるので・・・


すこし長話しがすぎましたね・・・
では、早速ギルドのほうへ行って用心棒と一緒に出発しましょうか


こんにちは、受付嬢さん
今夜、用心棒を依頼していた店主です

「いらっしゃい、店主さん
用心棒はすでに準備を整えて待っていますので、お呼びしますね」

はい


”こんな変な依頼をするなんて、一体どこの変態だよ・・・って、店主!?
まさか・・・俺が店主の護衛をするのか?
いや待て、店主は俺を知らない・・・ここは初見を装った方が良さそうだ”


「どうも、今回あなた方の護衛をさせて頂きます、pokeと申します」

よろしくお願いします
すみませんね、こんな危険な仕事を押し付けてしまい

「いえ、コレが仕事ですから・・・
ではさっそく、仕事の内容の確認を取らせて頂きます
ロンスキ洞窟までの往復、それまでの護衛ということで間違いないですね?」

えぇ

「また、契約では行きは二人の護衛、帰りは一人の護衛とありますが、これで間違いないですね?」

はい


”ってことは、この男はロンスキ洞窟に置き去りにするのか?
あの周辺にも魔物娘がいるはずだが・・・
まぁ、深く詮索しないことがこの業界で生き残る為の手段でもあるからな
気にしないでおくか”


どうかしましたか?

「あっ、いえ
何でもありません
ちょっと考え事をしてましてね
では、馬車の準備も出来てますので行きましょうか」

はい


〜馬車にて

貴方はいつからこの仕事をなされているんですか?

「俺ですか?
そうですねぇ・・・10年前には旅に出てまして、あの町に流れ着いたのが5年くらい前ですかね
それから細々とこんな仕事をしているんですよ」

5年前と言うと、僕がお店を始めた頃ですね
今はしがない情報屋をやってます


”あぁ、よく知ってるさ
俺は店長の仕事場で生活してるんだからな”


「そうなんですか・・・あぁ?
ちょっと馬車に乗っててください
お客さんが来たようですので、接待しなくちゃいけません」

お客さん、ですか?
こんな夜中の道端で、接待とは・・・?

「ええ、ちょっと手荒な接待になりますけどね」


「いるんだろ?
どうせ見つかるんだからさっさと出て来い、オーク」

(見つかっちゃった!!ヒソヒソ)
(どうしよう、どうしようヒソヒソ)
(かまうもんか!襲って犯しちまえばこっちのモンだ!!ヒソヒソ)
(そうだよねヒソヒソ)
(じゃっ、犯っちゃおう!!ヒソヒソ)


”ったく、親切にも丸聞こえだよ
・・・来るな”

「来いよ、オーク!!!
武器なんて捨てて掛かって来い!!」


「駄目、こいつは敵わない!!
みんな、引くよ!!」


”前の仕返しだ”


何だったんですか!?
突然やってきたのは・・・

「オークですよ
追い払いましたから心配は無いでしょう
さて、洞窟ももうすぐ着きますよ
とは言っても、俺はこの洞窟の構造などについては詳しくないんです」

それなら構いません
こちらで把握してますから


「んで、この金属は何ですか?
コレがあなたたちが探しているのとどのような関係が?」

これですか?
これは『おんさ』といいます
これは特殊なおんさでして、ワーバットの超音波に共鳴して振動するんです
この道具を使うことで、ワーバットが洞窟の外からわかると言う優れものです


”・・・やっぱりこういうことか!?
どうせ何かの魔物娘に関係があるとは思っていたが、ワーバットを探していたのか?
冗談じゃない
真夜中にワーバットを探すなど、死亡フラグ以外の何ものでもないだろJK!”


「・・・お?」

ヒィィィィィィィ・・・・・・・・・・ン

共鳴してますね・・・
この近くの洞窟の中にワーバットがいるみたいですね

よい○ろさん
僕に案内できるのはコレが限界です
この先にワーバットがいると思われるので、後は自分でお探ししてもらうことしか出来ません

また、このまま僕たちと町に帰ることも出来ますが・・・そうですか、ではお気をつけて

またの来店、おまちしてません
それでは、お幸せに

それではpokeさん、よい○ろさんは洞窟の探検を続けるようなので、僕たちは帰りましょうか

「そうですか・・・わかりました」


”・・・今回は何とか無事に終わったな
いや、しかし、まだ帰り道があるから油断は出来ない”

ザッザッザッザッザッザッザッザ・・・・

”それにしても暗いなぁ・・・
ろくに店長の姿も見えないとか・・・
まぁ月が木で隠れているから仕方の無いことだろうが・・・
それでも店長の足音が聞こえるから大丈夫だろ”


いやぁ・・・すごく暗いですねぇ・・・
すぐ近くで歩いているはずのpokeさんの姿もわかりません
ですが、足跡だけは聞こえるので大丈夫でしょう

ザッザッザッザッザッザッザッザッザ・・・


”あれ?
さっきもここに来た気がする・・・
まさか店長、道に迷ったか?
いや、そんなはずは無いだろ”


もうすぐ馬車ですね
いやぁ、お疲れ様でした、pokeさん・・・
って、どうしたんですか?

「ちょっと忘れ物をしたから戻る
ここは危険だから先に馬車で帰っててくれ」

えっ!?
ちょっと!!
急にどうしたんですか!!

タッタッタッタッタッタ・・・・・・

・・・行っちゃいました
仕方がありません
先に帰るとしましょう


ザッザッザッザッザッザッザッザ・・・・

”店長、こりゃ完全に道に迷ったな・・・
これはさすがに声をかけるべきだな”


「店長、ここはどこだ?
さっきも似たような場所を通ったが
・・・店長?」

「店長って、だぁれ?」

鈴のように可愛く、透き通った声


”店長、じゃ無い!?
じゃあ、こいつは・・・”


「貴様、ワーバットか!?」

「お、正解!!
やっと気づいたの!?おバカさぁん♪」

「足音の音をすりかえるなんて芸当、音を操るワーバットにしか出来ないからな・・・気づいてから、答えにたどり着くまでは早かったよ」

「うん、合格!!」

「何が合格なんだ?
帰してくれるならそれに越したことは無いが・・・」

「それはね、みんなの性奴隷になる試験に合格したんだよ!!」

「ハッ!?
何を言うかと思えば・・・!!」

「もしこれに合格できなければここで絞りつくしてあげようと思ったんだけど、お兄さんは合格したから大切にしたげる!!」

頭上に気配・・・!!!
かなり大量のワーバットの気配がした


”これは・・・マズイな
この場はこの閃光手榴弾で・・・!!!”

バァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアン!!!

”ック!!?
俺も目がくらんで、耳がキィィンって・・・”


「本当にバカね!!
私達は音を操れるのにそんなもの聞くわけ無いじゃない!!
それに、あたし達目が悪くてあんまり見えてないのよ!?
結局、自分の首を絞めただけなのよ!!」

「・・・夜明けに、なったら・・・覚えてろよ!!」

「貴方には夜明けは来ない・・・
貴方はこれからずっと、暗闇しか訪れないの・・・
じゃあ、おやすみなさい
起きたらいっぱい可愛がってあげる・・・・フフフ」


どうやら前の護衛の方は戻って来てないらしいですね・・・
ギルドの方からは、よくあることだと言われましたが、少し悪いことをした気がします・・・
10/08/14 04:10更新 / poke
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■作者メッセージ
強気なおんにゃのこでも弱気な一面があって・・・
そのワイルドな格好が素敵すぎる

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