第36話「時代の遺物」
オアシスの傍らで赤々と燃えるキャンプファイアーの炎が、満天の星空を湛える夜空を照らしている。
焚き火には串焼きにされた魚やトカゲが香ばしい香りを漂わせており、コレールたちはようやく訪れた安息の時を味わっていた。
「コレール……食べれる?」
「ああ……それじゃあ、ひとくちだけ」
そう言ってパルムがトカゲの串焼きを毛布にくるまっているコレールに差し出すと、彼女は震える手を毛布の隙間から差し出して――
ブチッ、バリバリ!
――串ごとトカゲの頭を食いちぎってから、残りの部分の肉もあっという間に喰いつくし、残骸を地面に放り投げた。
「……コレールの体調は悪くなさそうね。そっちはどう?」
クリスが振り向いた先では、エミリアが傷を負ったゼロ=ブルーエッジ――神聖ステンド国の魔物娘に対する中立姿勢に反発し、国を去った勢力の指導者――の看病をしていた。
「……応急手当は済ませましたが……意識が混濁しているみたいです。もしかしたら傷口が炎症を起こしているのかも。もっと治療薬や医療設備が充実しているところまでいければ良いのですが……」
「となると、最も単純な解決策は、このまま神聖ステンド国に向かうことだな」
そう言ってアラークが焼き魚の腹の部分を食い千切る。
「魔物娘を出し抜いて大虐殺を引き起こした男と、魔物娘と共存していく体制に反発した男の両方を、半分が魔物娘の集団が、主神教団勢力の本拠地に連れこむってわけか。笑えるね」
苦笑するコレール。
「案外素直に通してくれるかもしれないぞ。『コンコン! お届け物です! 危険分子を二人ほどお届けにお伺いしました!』『ああどうぞぞうぞ! ゆっくりしていってください!』」
アラークの不謹慎な冗談に、疲れ果てていた一行は全員引きつったような表情で、絞り出したかのように小さい笑い声を漏らす。
その声がきっかけとなったかどうかはともかく、ゼロ=ブルーエッジが意識を取り戻して上体を持ち上げていた。
「おっっ……!」
予想外のタイミングに間抜けな声を出す一同。
それでもコレールは身を低くして戦闘体勢に入り、ドミノは掌に暗黒の魔力を集め、クリスは魔杖を突き付け、アラークとパルムはそれぞれの得物を抜き出していた。
ゼロはターバンの隙間からぞっとするような深紅の双眼で周囲を見回し、ひと呼吸おいてから、呟いた。
「誰か……水をくれ」
――――――――――――――――――――――――――
「『赤い砂嵐』から一人も欠けずに脱出することが出来たということか。奇跡だな」
多少かすれてはいるものの、はっきりとした声量で話すゼロ。敵意が無いことを判断したコレールたちは、そわそわしつつも彼の言葉に耳を傾けていた。
「私は部下を引き連れて行軍している最中にあの砂嵐に捕まったんだ。あそこが死に場所になると覚悟はしていたが……お前たちには借りが出来たな」
「気にするな……それよりも、あの化け物について、何か知っているか?」
コレールの質問に、ゼロはふうと小さく息を吐いた。
「確かなことは何も……だが恐らく、古代技術の産物である可能性は高いな。奴はどうやら犠牲者の肉体を丸ごと取り込んで、その魂から魔力を少しずつ吸い上げることで、活動のエネルギーとしているようだ。その性質は、古代ウィルザードの伝説で語られる『魂の宝玉』と酷似しているとも言える」
そう言ったきり、ゼロは言葉を続けることはなく、しばらくの間一行は沈黙に包まれた。
その内静けさに耐え切れなくなってきたクリスがおもむろにドミノの脇腹に軽い肘撃ちを食らわせた。
「(ドミノ! 何でも良いから話振って!)」
「(なんで俺なんだよ!)」
「(いつも軽口ばっか叩いてるじゃない! 貴方の得意分野でしょ!)」
「(ああ確かにそうだな! それじゃあお言葉に甘えて――)なあ、爺さん」
ドミノが口を開く。
「あんた、今まで何人の魔物娘をぶち殺してきた?」
クリスは渾身の拳骨をドミノの頭に食らわせた。
「どーして! どうして貴方はいつもいつもそういう血なまぐさい方向にばかり考えを向けるのよ!!」
「重要なことだろうが! 忘れちゃいねえだろうな、こいつは反魔物思想の指導者で、あのバトリークの野郎のボスなんだぞ!!」
「よせクリス」
ドミノの胸ぐらをつかんで怒鳴りつけるクリスを、コレールが諫める。
「私もはっきりさせておきたいと思っていたんだ。ゼロ。あんたは魔物娘や、魔物娘に協力的な人間を殺したことはあるのか?」
コレールは深紅の双眼を真っ直ぐ見据えながら訊ねる。ゼロはその視線を正面から受け止めつつ、口を開いた。
「魔物娘も、彼女らと親しい人間も、殺したことは一度もない。部下に持たせているのも魔界銀製の武器だ」
「……そうか」
「おいおいボス。まさかこいつの主張を鵜呑みにする気じゃねえだろうな?」
穏やかな口調で呟くコレールに、早速ドミノが噛みついた。
「俺は魔物娘のことは嫌いじゃねえけどよ。そうやってすぐに人のことを信じる部分は正直言って賞賛できな――」
「ドミノ」
ゼロが落ち着いた様子で自分のことを信用するまいと考える青年の名を呼ぶ。
「何だよ。気やすく名前で呼びやがって……」
「私と私についてきた部下たちは、神聖ステンド国の教皇に破門された身分だ。それ故に魔王軍に敵対的な行動をとっても、『連中は既に破門した身分なのだから、我々とは無関係だ』と教皇は主張できる」
ゼロは話を続ける。
「だが仮に死者が出てくるとそのような理屈は通用しなくなる。今の神聖ステンド国が魔物娘に対して中立・共存の立場をとっている以上、魔王軍は『裏でブルーエッジ派の連中とつながって、魔物娘を始末しているという疑惑を否定し、身の潔白を証明するために、そちらの方でゼロ=ブルーエッジとその一味を捕らえろ。さもなくばこれは魔王軍に対する宣戦布告とみなす』と教皇に迫るだろう。そうすれば私たちはかつての同士と怒れる魔王軍の双方を相手取ることとなる。そのようなリスクを犯してでも魔物娘を殺めるメリットがあるとでも?」
「……ちっ」
ゼロの論理的な説得にはさすがのドミノも口を閉じる他はないようだった。
「ウィルザードの様々な場所で魔物娘を追い払い、現地民に主神教団の教えに従うよう説いてきた。でも最終的な結果はいつも同じだった。人々は皆信仰よりも魔物娘と生きる道を選び、我々は追い立てられた」
「まぁ、考えてみれば当然だな」
ゼロの言葉にアラークがウンウンと頷く。
「何の代償も払わずに美しく、老いることも病むこともない嫁を得られて、更に自分もそうなることが出来るという事実の前で、わざわざ主神教団の信仰を選ぶような人間が果たして存在するかどうか」
「「「(ドストレートな正論をぶちかましてきたなこいつ……)」」」
この場にいるゼロ以外の全員の頭に、同じ感想が浮かんだ。
「あの……その鋼鉄の義手は、どうやって手に入れたんですか?、私、気になります!」
流石に機嫌を損ねてしまうかもしれないと考えたのか、エミリアは話題を変えようと話しかける。
「これは……かつて私が勇者として認められた時に、主神の加護を授かった聖なる武器として、与えられたものだ」
ゼロは鋼鉄製の拳を静かに握りしめながら呟いた。
「待て……あんた今、自分のことを勇者と言ったのか?」
「ああ」
驚きを隠せないといった様子のコレールの言葉に、静かにうなずく。
「私は生まれながらに右腕が欠損した人間として産まれ、そのことに絶望した両親に、教会の玄関前に置き去りにされた。そしてそのまま教会の牧師の元で育ち、学び、ある日主神からのお告げを耳にして、自身に勇者としての素質があることを知ったんだ」
黙り込んだままのコレールたちに囲まれて、ゼロは話を続ける。
「勇者として、数えきれないほどの戦場に立ち、魔物たちと戦った。当時はこのまま勇者として名誉の戦死を迎えるか、年老いて体が動かなくなるまで戦い続けるののだと思っていたが、実際はそうではなかった」
ゼロの視線は、遥か遠い過去の記憶へと向けられているようだった。
「その日のことは忘れもしない。私は信頼できる部下たちと共に、その地域で最大のゴブリンの巣を奇襲する手はずになっていた。だが、偵察を終えて戻ってきた兵士が妙な報告を伝えに来た。『巣穴にゴブリンの姿が一匹も確認できず、なぜか角の生えた少女たちが、ゴブリンに捕らえられたはずの人間たちと戯れていた』と。当然私は報告の内容を信じられず、襲撃の予定を延期して、自分の目で巣穴の様子を確かめに行った。結論から言うと、偵察兵が言った通りの状況だった。その後も経過観察を行ったが、ゴブリンたちは姿を見せず、角の生えた少女たちも人間に危害を加える様子が見られなかったので、私は本部に帰還することを決めた」
「まぁ、その時点で旧世代の魔物と魔物娘を同一の存在だと断定は出来なかっただろうな」
アラークが言った。
「その通りだ。私がそのように判断したのは、その後何度か後に魔物娘と呼ばれるようになる存在の観察と、各地の魔物娘との接触に関する報告の分析を繰り返してからだ。最終的に私は魔物が人間に危害を加えることのない存在へと変化したと判断し、調査内容を自分の所属する主神教団の上層部へと報告した」
「経過観察の積み重ねと、情報収集から実態を判断したわけね。とても理知的な考えだわ」
感心するクリスに向かって、ゼロは目を細めた。
「そうとも言えないな。結局その行動が原因となって、私は教団に身柄を拘束され、裁判にかけられることになったのだから」
「え……どうして……?」
「想像に難くはないな」
納得出来ない様子のクリスの横で、アラークがギロリと眼を動かした。
「魔物が倒すべき存在ではないと世間に広く知られることになったら、それらに対抗できる存在として培われてきた、教団の権力基盤の根本が揺らぐことになる。連中は保身に走ったんだ。」
「そのように語る歴史家もいるだろう。だが、私はそのような人間ばかりではなかったと思いたい。実際に処刑や精神病院行きになりそうだった私を庇ってくれた者もいた。彼らはただ……そう簡単に恐れを捨てて、魔物娘のことを信じることが出来なかったんだ。」
ゼロは一口水を飲む。
「結局私は出鱈目な情報で主神教を侮辱し、混乱を招いたとして破門され、故郷を追放された。勇者の加護故に簡単には死ぬこともできず、気の遠くなるような時間を根無し草となって大陸中を彷徨うことになった。何処かに腰を落ち着けようとも考えたが、この顔では何処に行っても歓迎されなかったものでな」
「おいよせよ。そんなこと言うんじゃない」
ここに来てドミノがゼロの言い方に口を挟んだ。
「男の価値は顔なんかじゃ決まらねえ。器のでかさで決まるもんだ。人は見た目が全てつっても、内面を磨けば自ずと表情にも現れヴォエッ!!」
ゼロが顔に巻いてあるターバンを外して、その下にある長年風雨に晒された、大木の樹皮のような顔面を露にする。
それを見ると同時に、ドミノは眼球が飛び出そうなほど目を見開いて盛大にえずいた。
「……わりぃ。さっき言ったこと全部無かったことにしてくれ。あんたの顔、肌で腐った玉葱をすりおろしたみたいだ」
「ドミノっ!!」
あんまりな物言いにクリスが怒鳴り付ける。
「それか、毎朝発酵したラクダの小便で洗顔してる人みたいだ……くそっ、目に焼き付いちまった。俺は少し横になる。それとゼロ、言いたくないけど顔は隠すか、なるべく早めに死んでくれ」
罵詈雑言をいい終えると、ドミノはそのまま背を向けて横になり、それきり何も言わなくなった。
「すまないゼロ。許してやってくれ。こいつは一言で言うとアホなんだ」
「おまけに倫理観の欠片もないわ!」
「おまけに童貞だ」
「おまけにウ◯コした後手を洗わない」
コレール、クリス、アラーク、パルムの四人にボロクソ言われるドミノの背中を眺めながら、ゼロは唇の端をひくつかせて苦笑した。
「気にしないさ。何十年も同じようなことを言われ続けたからな。むしろ下手に気を使われるより、清々しく思う」
そう言って木の枝を一本、焚き火の中へと投げ込む。
「どこまで話したか……あぁ、それでつい最近になって、私の存在を別の地域の主神教団が察知した。彼らは私の昔の罪を、過去のこととして破門を解き、ウィルザードへの開拓団の護衛として、雇用することにした。それが今、私がウィルザードにいる理由だ」
「よく連中の要請を受け入れる気になったな。また理不尽な理由で罪を着せられるかもしれないとか、考えなかったのか?」
コレールが目を吊り上げながらゼロに問う。
「それこそ過去の話だ。それに、私は古巣で働くのが結局一番落ち着く人間だったからな。尤もウィルザード皇帝のお墨付きを得た開拓団に危害を加えようという賊も少なかったし、私がやったことと言えば精々、若い男にちょっかいを出そうと時々やってくる魔物娘を追い払うぐらいのことだった」
「あんたは時代の遺物って感じだな。その錆び付いた鋼鉄の義手と同じだ」
先ほどまで黙りこくっていたドミノの口から、急に言葉が発せられた。眠っている振りをして、しっかり話を聞いていたのだ。
「今時魔物を殺すための武器や能力なんて、何の役にも立ちやしねえ。あんたは時代の潮流から蹴り落とされて、そのまま取り残されちまった、哀れな爺さんだよ」
「物事の本質を突いているな」
ゼロはドミノの攻撃的な物言いにも眉ひとつ動かさずに同調した。
「……あの……そろそろ横になった方が……」
怪我人を長時間喋らせることをためらってか、エミリアはそう言ってゼロの肩に手をかける。
「そうだな。この先の話はまた別の機会にするとしよう」
そういってゼロはエミリアに肩を借りながら、就寝用のテントの方へと歩いていった。
―――――――――――――――――――――
「ねぇコレール」
「どうした?」
「ゼロはどうして魔物娘が人を傷つけないことを知ってからも、魔物娘に頼って結婚とかはしなかったのかな?」
満点の星空の下で寝袋に身を包んだクリスは、横にいるコレールに尋ねた。
「さぁな。アラーク、お前はどう思う?」
「……恐らく、彼は勇者として多くの魔物を殺めてきたことに、負い目を感じているんだろう。罪悪感に蝕まれる男の胸中を想像することは難しくない」
「成る程な……まぁ少なくとも私は、あいつと腹を割った話ができてよかったと思う。眉唾物だったとは言え、噂ほど凶悪な人間ではないことを確かめられた」
「本当か? 俺は逆だね」
コレールの呟きにドミノが異論を唱えた。
「正直言って俺はがっかりだ。あんなイカすメタルアームを持ってるぐらいだから、もっと『キレてる』男だと思ってたのに。実際はしょぼくれた爺さんだったなんてな」
「先輩、エミィさんがあの人に付きっきりだから焼きもち妬いてるの?」
「パルムてめぇ! 喋れるようになってからでかい口叩くようになったじゃねえか!」
実際、エミリアは「睡眠中に容態が急変するかもしれない」という理由から、一人ゼロが眠るテントの中で彼の看病を続けていたのだ。
寝袋のまま転がって逃走を図るパルムの後を追い、ドミノは自分も寝袋のままゴロゴロと転がっていった。
「寝袋脱いで追っかけりゃいいのに……」
「放っとけ。もう寝るぞ」
コレールはクリスにそう言うと、明日のステンド国への入国に備えて静かに目を閉じた。
ドボンッ
「びゃーっ!」
「……ドミノの奴、オアシスの湧水に落ちたな」
――――――――――――――――――――――
翌日の朝出発したコレールたちは、その後大きなトラブルもなく、神聖ステンド国の城門前に到着した。
「神聖ステンド国への入国には審査が必要だ。入国許可が降りるまでの間、待機する必要のある人々のために、ちょっとした宿場町が用意されている」
ゼロの言う通り、城門前からそれほど遠くない場所に、いくつもの宿屋が立てられ、ちょっとした町のようになっている場所が見える。
「私は破門されている身分だから、入国はできない。向こうで本格的な治療や、本隊との連絡を取らせてもらうことにしよう」
ゼロはそのままゆっくりとした足取りでコレールたちから離れていったが、エミリアが遠慮がちに小さく手を振っていることに気がつくと、少し表情を和らげて手を振り返した。
「私一人ではここまで来れなかった。感謝するよ。偉大なる神の御加護があらんことを」
―――――――――――――――――――――――
「何度も言わせるな! サバトの連中は入国禁止だ!」
城門前では門番の兵士が何やら、揉め事に巻き込まれているようだった。
「なんじゃと!? 儂らはサバトとは関係ない! どこからどうみても国を追われた子供の難民じゃろうが! お主らの国には人道的な処置と言う言葉は存在しないのか!?」
そうは言っても、その「子供の難民」とやらは、交渉している者も含めて全員、全身を不自然に大きなローブで隠しており、どうにも胡散臭さが否めない。
「じゃあ聞くが、どうやって子供たちだけでこの荒野を乗り越えてきたって言うんだ?」
「あっやべっ、保護者役も用意するべきだったのじゃ……」
「あのちっこいの、今自分からボロ出したぞ」
「あぁ。間違いなく『バフォメット』だな」
様子を見ていたドミノの反応に、コレールが返す。
「さぁとっとと帰った帰った! これ以上ごねる気ならアイルレット大臣を呼んでくるぞ!」
「ぐぬぬ……覚えておれ!」
ローブを纏った難民――もといバフォメット率いるサバトの構成員たちは、飛行魔法を使い、渋々空の向こうへと消えていった。
「サバトの人たちは神聖ステンド国には入れないの?」
先客が立ち去った後、クリスが門番の兵士の一人に話しかける。
「ああ。そういう規則なんだ。あんたらも入国希望者か? それなら今書類を取ってくるから――」
「リネス=アイルレットに、『魂の宝玉の件で話がある』と伝えろ」
コレールに割って入られた兵士はハッとした様子で彼女の方を向く。
「あんた……コレール=イーラか? ちょっと待て、今本部の方に問い合わせてくる……」
彼が詰め所の方へと戻っている間、アラークはもう一人の方の門番の兵士に話しかけていた。
「神聖ステンド国がサバトの入国を認めていない理由は? ここは中立国のはずだろう?」
「まぁ確かにそうなんだが……色々と複雑でな。皆が皆魔物娘の価値観をすんなり受け入れられるわけでもない」
そうこうしていると、本部と連絡を取るために詰所に行っていた兵士が戻ってきた。
「入ってくれ。コレール=イーラ殿。リネス=アイルレット大臣が話を聞きたいそうだ」
――第36話に続く。
焚き火には串焼きにされた魚やトカゲが香ばしい香りを漂わせており、コレールたちはようやく訪れた安息の時を味わっていた。
「コレール……食べれる?」
「ああ……それじゃあ、ひとくちだけ」
そう言ってパルムがトカゲの串焼きを毛布にくるまっているコレールに差し出すと、彼女は震える手を毛布の隙間から差し出して――
ブチッ、バリバリ!
――串ごとトカゲの頭を食いちぎってから、残りの部分の肉もあっという間に喰いつくし、残骸を地面に放り投げた。
「……コレールの体調は悪くなさそうね。そっちはどう?」
クリスが振り向いた先では、エミリアが傷を負ったゼロ=ブルーエッジ――神聖ステンド国の魔物娘に対する中立姿勢に反発し、国を去った勢力の指導者――の看病をしていた。
「……応急手当は済ませましたが……意識が混濁しているみたいです。もしかしたら傷口が炎症を起こしているのかも。もっと治療薬や医療設備が充実しているところまでいければ良いのですが……」
「となると、最も単純な解決策は、このまま神聖ステンド国に向かうことだな」
そう言ってアラークが焼き魚の腹の部分を食い千切る。
「魔物娘を出し抜いて大虐殺を引き起こした男と、魔物娘と共存していく体制に反発した男の両方を、半分が魔物娘の集団が、主神教団勢力の本拠地に連れこむってわけか。笑えるね」
苦笑するコレール。
「案外素直に通してくれるかもしれないぞ。『コンコン! お届け物です! 危険分子を二人ほどお届けにお伺いしました!』『ああどうぞぞうぞ! ゆっくりしていってください!』」
アラークの不謹慎な冗談に、疲れ果てていた一行は全員引きつったような表情で、絞り出したかのように小さい笑い声を漏らす。
その声がきっかけとなったかどうかはともかく、ゼロ=ブルーエッジが意識を取り戻して上体を持ち上げていた。
「おっっ……!」
予想外のタイミングに間抜けな声を出す一同。
それでもコレールは身を低くして戦闘体勢に入り、ドミノは掌に暗黒の魔力を集め、クリスは魔杖を突き付け、アラークとパルムはそれぞれの得物を抜き出していた。
ゼロはターバンの隙間からぞっとするような深紅の双眼で周囲を見回し、ひと呼吸おいてから、呟いた。
「誰か……水をくれ」
――――――――――――――――――――――――――
「『赤い砂嵐』から一人も欠けずに脱出することが出来たということか。奇跡だな」
多少かすれてはいるものの、はっきりとした声量で話すゼロ。敵意が無いことを判断したコレールたちは、そわそわしつつも彼の言葉に耳を傾けていた。
「私は部下を引き連れて行軍している最中にあの砂嵐に捕まったんだ。あそこが死に場所になると覚悟はしていたが……お前たちには借りが出来たな」
「気にするな……それよりも、あの化け物について、何か知っているか?」
コレールの質問に、ゼロはふうと小さく息を吐いた。
「確かなことは何も……だが恐らく、古代技術の産物である可能性は高いな。奴はどうやら犠牲者の肉体を丸ごと取り込んで、その魂から魔力を少しずつ吸い上げることで、活動のエネルギーとしているようだ。その性質は、古代ウィルザードの伝説で語られる『魂の宝玉』と酷似しているとも言える」
そう言ったきり、ゼロは言葉を続けることはなく、しばらくの間一行は沈黙に包まれた。
その内静けさに耐え切れなくなってきたクリスがおもむろにドミノの脇腹に軽い肘撃ちを食らわせた。
「(ドミノ! 何でも良いから話振って!)」
「(なんで俺なんだよ!)」
「(いつも軽口ばっか叩いてるじゃない! 貴方の得意分野でしょ!)」
「(ああ確かにそうだな! それじゃあお言葉に甘えて――)なあ、爺さん」
ドミノが口を開く。
「あんた、今まで何人の魔物娘をぶち殺してきた?」
クリスは渾身の拳骨をドミノの頭に食らわせた。
「どーして! どうして貴方はいつもいつもそういう血なまぐさい方向にばかり考えを向けるのよ!!」
「重要なことだろうが! 忘れちゃいねえだろうな、こいつは反魔物思想の指導者で、あのバトリークの野郎のボスなんだぞ!!」
「よせクリス」
ドミノの胸ぐらをつかんで怒鳴りつけるクリスを、コレールが諫める。
「私もはっきりさせておきたいと思っていたんだ。ゼロ。あんたは魔物娘や、魔物娘に協力的な人間を殺したことはあるのか?」
コレールは深紅の双眼を真っ直ぐ見据えながら訊ねる。ゼロはその視線を正面から受け止めつつ、口を開いた。
「魔物娘も、彼女らと親しい人間も、殺したことは一度もない。部下に持たせているのも魔界銀製の武器だ」
「……そうか」
「おいおいボス。まさかこいつの主張を鵜呑みにする気じゃねえだろうな?」
穏やかな口調で呟くコレールに、早速ドミノが噛みついた。
「俺は魔物娘のことは嫌いじゃねえけどよ。そうやってすぐに人のことを信じる部分は正直言って賞賛できな――」
「ドミノ」
ゼロが落ち着いた様子で自分のことを信用するまいと考える青年の名を呼ぶ。
「何だよ。気やすく名前で呼びやがって……」
「私と私についてきた部下たちは、神聖ステンド国の教皇に破門された身分だ。それ故に魔王軍に敵対的な行動をとっても、『連中は既に破門した身分なのだから、我々とは無関係だ』と教皇は主張できる」
ゼロは話を続ける。
「だが仮に死者が出てくるとそのような理屈は通用しなくなる。今の神聖ステンド国が魔物娘に対して中立・共存の立場をとっている以上、魔王軍は『裏でブルーエッジ派の連中とつながって、魔物娘を始末しているという疑惑を否定し、身の潔白を証明するために、そちらの方でゼロ=ブルーエッジとその一味を捕らえろ。さもなくばこれは魔王軍に対する宣戦布告とみなす』と教皇に迫るだろう。そうすれば私たちはかつての同士と怒れる魔王軍の双方を相手取ることとなる。そのようなリスクを犯してでも魔物娘を殺めるメリットがあるとでも?」
「……ちっ」
ゼロの論理的な説得にはさすがのドミノも口を閉じる他はないようだった。
「ウィルザードの様々な場所で魔物娘を追い払い、現地民に主神教団の教えに従うよう説いてきた。でも最終的な結果はいつも同じだった。人々は皆信仰よりも魔物娘と生きる道を選び、我々は追い立てられた」
「まぁ、考えてみれば当然だな」
ゼロの言葉にアラークがウンウンと頷く。
「何の代償も払わずに美しく、老いることも病むこともない嫁を得られて、更に自分もそうなることが出来るという事実の前で、わざわざ主神教団の信仰を選ぶような人間が果たして存在するかどうか」
「「「(ドストレートな正論をぶちかましてきたなこいつ……)」」」
この場にいるゼロ以外の全員の頭に、同じ感想が浮かんだ。
「あの……その鋼鉄の義手は、どうやって手に入れたんですか?、私、気になります!」
流石に機嫌を損ねてしまうかもしれないと考えたのか、エミリアは話題を変えようと話しかける。
「これは……かつて私が勇者として認められた時に、主神の加護を授かった聖なる武器として、与えられたものだ」
ゼロは鋼鉄製の拳を静かに握りしめながら呟いた。
「待て……あんた今、自分のことを勇者と言ったのか?」
「ああ」
驚きを隠せないといった様子のコレールの言葉に、静かにうなずく。
「私は生まれながらに右腕が欠損した人間として産まれ、そのことに絶望した両親に、教会の玄関前に置き去りにされた。そしてそのまま教会の牧師の元で育ち、学び、ある日主神からのお告げを耳にして、自身に勇者としての素質があることを知ったんだ」
黙り込んだままのコレールたちに囲まれて、ゼロは話を続ける。
「勇者として、数えきれないほどの戦場に立ち、魔物たちと戦った。当時はこのまま勇者として名誉の戦死を迎えるか、年老いて体が動かなくなるまで戦い続けるののだと思っていたが、実際はそうではなかった」
ゼロの視線は、遥か遠い過去の記憶へと向けられているようだった。
「その日のことは忘れもしない。私は信頼できる部下たちと共に、その地域で最大のゴブリンの巣を奇襲する手はずになっていた。だが、偵察を終えて戻ってきた兵士が妙な報告を伝えに来た。『巣穴にゴブリンの姿が一匹も確認できず、なぜか角の生えた少女たちが、ゴブリンに捕らえられたはずの人間たちと戯れていた』と。当然私は報告の内容を信じられず、襲撃の予定を延期して、自分の目で巣穴の様子を確かめに行った。結論から言うと、偵察兵が言った通りの状況だった。その後も経過観察を行ったが、ゴブリンたちは姿を見せず、角の生えた少女たちも人間に危害を加える様子が見られなかったので、私は本部に帰還することを決めた」
「まぁ、その時点で旧世代の魔物と魔物娘を同一の存在だと断定は出来なかっただろうな」
アラークが言った。
「その通りだ。私がそのように判断したのは、その後何度か後に魔物娘と呼ばれるようになる存在の観察と、各地の魔物娘との接触に関する報告の分析を繰り返してからだ。最終的に私は魔物が人間に危害を加えることのない存在へと変化したと判断し、調査内容を自分の所属する主神教団の上層部へと報告した」
「経過観察の積み重ねと、情報収集から実態を判断したわけね。とても理知的な考えだわ」
感心するクリスに向かって、ゼロは目を細めた。
「そうとも言えないな。結局その行動が原因となって、私は教団に身柄を拘束され、裁判にかけられることになったのだから」
「え……どうして……?」
「想像に難くはないな」
納得出来ない様子のクリスの横で、アラークがギロリと眼を動かした。
「魔物が倒すべき存在ではないと世間に広く知られることになったら、それらに対抗できる存在として培われてきた、教団の権力基盤の根本が揺らぐことになる。連中は保身に走ったんだ。」
「そのように語る歴史家もいるだろう。だが、私はそのような人間ばかりではなかったと思いたい。実際に処刑や精神病院行きになりそうだった私を庇ってくれた者もいた。彼らはただ……そう簡単に恐れを捨てて、魔物娘のことを信じることが出来なかったんだ。」
ゼロは一口水を飲む。
「結局私は出鱈目な情報で主神教を侮辱し、混乱を招いたとして破門され、故郷を追放された。勇者の加護故に簡単には死ぬこともできず、気の遠くなるような時間を根無し草となって大陸中を彷徨うことになった。何処かに腰を落ち着けようとも考えたが、この顔では何処に行っても歓迎されなかったものでな」
「おいよせよ。そんなこと言うんじゃない」
ここに来てドミノがゼロの言い方に口を挟んだ。
「男の価値は顔なんかじゃ決まらねえ。器のでかさで決まるもんだ。人は見た目が全てつっても、内面を磨けば自ずと表情にも現れヴォエッ!!」
ゼロが顔に巻いてあるターバンを外して、その下にある長年風雨に晒された、大木の樹皮のような顔面を露にする。
それを見ると同時に、ドミノは眼球が飛び出そうなほど目を見開いて盛大にえずいた。
「……わりぃ。さっき言ったこと全部無かったことにしてくれ。あんたの顔、肌で腐った玉葱をすりおろしたみたいだ」
「ドミノっ!!」
あんまりな物言いにクリスが怒鳴り付ける。
「それか、毎朝発酵したラクダの小便で洗顔してる人みたいだ……くそっ、目に焼き付いちまった。俺は少し横になる。それとゼロ、言いたくないけど顔は隠すか、なるべく早めに死んでくれ」
罵詈雑言をいい終えると、ドミノはそのまま背を向けて横になり、それきり何も言わなくなった。
「すまないゼロ。許してやってくれ。こいつは一言で言うとアホなんだ」
「おまけに倫理観の欠片もないわ!」
「おまけに童貞だ」
「おまけにウ◯コした後手を洗わない」
コレール、クリス、アラーク、パルムの四人にボロクソ言われるドミノの背中を眺めながら、ゼロは唇の端をひくつかせて苦笑した。
「気にしないさ。何十年も同じようなことを言われ続けたからな。むしろ下手に気を使われるより、清々しく思う」
そう言って木の枝を一本、焚き火の中へと投げ込む。
「どこまで話したか……あぁ、それでつい最近になって、私の存在を別の地域の主神教団が察知した。彼らは私の昔の罪を、過去のこととして破門を解き、ウィルザードへの開拓団の護衛として、雇用することにした。それが今、私がウィルザードにいる理由だ」
「よく連中の要請を受け入れる気になったな。また理不尽な理由で罪を着せられるかもしれないとか、考えなかったのか?」
コレールが目を吊り上げながらゼロに問う。
「それこそ過去の話だ。それに、私は古巣で働くのが結局一番落ち着く人間だったからな。尤もウィルザード皇帝のお墨付きを得た開拓団に危害を加えようという賊も少なかったし、私がやったことと言えば精々、若い男にちょっかいを出そうと時々やってくる魔物娘を追い払うぐらいのことだった」
「あんたは時代の遺物って感じだな。その錆び付いた鋼鉄の義手と同じだ」
先ほどまで黙りこくっていたドミノの口から、急に言葉が発せられた。眠っている振りをして、しっかり話を聞いていたのだ。
「今時魔物を殺すための武器や能力なんて、何の役にも立ちやしねえ。あんたは時代の潮流から蹴り落とされて、そのまま取り残されちまった、哀れな爺さんだよ」
「物事の本質を突いているな」
ゼロはドミノの攻撃的な物言いにも眉ひとつ動かさずに同調した。
「……あの……そろそろ横になった方が……」
怪我人を長時間喋らせることをためらってか、エミリアはそう言ってゼロの肩に手をかける。
「そうだな。この先の話はまた別の機会にするとしよう」
そういってゼロはエミリアに肩を借りながら、就寝用のテントの方へと歩いていった。
―――――――――――――――――――――
「ねぇコレール」
「どうした?」
「ゼロはどうして魔物娘が人を傷つけないことを知ってからも、魔物娘に頼って結婚とかはしなかったのかな?」
満点の星空の下で寝袋に身を包んだクリスは、横にいるコレールに尋ねた。
「さぁな。アラーク、お前はどう思う?」
「……恐らく、彼は勇者として多くの魔物を殺めてきたことに、負い目を感じているんだろう。罪悪感に蝕まれる男の胸中を想像することは難しくない」
「成る程な……まぁ少なくとも私は、あいつと腹を割った話ができてよかったと思う。眉唾物だったとは言え、噂ほど凶悪な人間ではないことを確かめられた」
「本当か? 俺は逆だね」
コレールの呟きにドミノが異論を唱えた。
「正直言って俺はがっかりだ。あんなイカすメタルアームを持ってるぐらいだから、もっと『キレてる』男だと思ってたのに。実際はしょぼくれた爺さんだったなんてな」
「先輩、エミィさんがあの人に付きっきりだから焼きもち妬いてるの?」
「パルムてめぇ! 喋れるようになってからでかい口叩くようになったじゃねえか!」
実際、エミリアは「睡眠中に容態が急変するかもしれない」という理由から、一人ゼロが眠るテントの中で彼の看病を続けていたのだ。
寝袋のまま転がって逃走を図るパルムの後を追い、ドミノは自分も寝袋のままゴロゴロと転がっていった。
「寝袋脱いで追っかけりゃいいのに……」
「放っとけ。もう寝るぞ」
コレールはクリスにそう言うと、明日のステンド国への入国に備えて静かに目を閉じた。
ドボンッ
「びゃーっ!」
「……ドミノの奴、オアシスの湧水に落ちたな」
――――――――――――――――――――――
翌日の朝出発したコレールたちは、その後大きなトラブルもなく、神聖ステンド国の城門前に到着した。
「神聖ステンド国への入国には審査が必要だ。入国許可が降りるまでの間、待機する必要のある人々のために、ちょっとした宿場町が用意されている」
ゼロの言う通り、城門前からそれほど遠くない場所に、いくつもの宿屋が立てられ、ちょっとした町のようになっている場所が見える。
「私は破門されている身分だから、入国はできない。向こうで本格的な治療や、本隊との連絡を取らせてもらうことにしよう」
ゼロはそのままゆっくりとした足取りでコレールたちから離れていったが、エミリアが遠慮がちに小さく手を振っていることに気がつくと、少し表情を和らげて手を振り返した。
「私一人ではここまで来れなかった。感謝するよ。偉大なる神の御加護があらんことを」
―――――――――――――――――――――――
「何度も言わせるな! サバトの連中は入国禁止だ!」
城門前では門番の兵士が何やら、揉め事に巻き込まれているようだった。
「なんじゃと!? 儂らはサバトとは関係ない! どこからどうみても国を追われた子供の難民じゃろうが! お主らの国には人道的な処置と言う言葉は存在しないのか!?」
そうは言っても、その「子供の難民」とやらは、交渉している者も含めて全員、全身を不自然に大きなローブで隠しており、どうにも胡散臭さが否めない。
「じゃあ聞くが、どうやって子供たちだけでこの荒野を乗り越えてきたって言うんだ?」
「あっやべっ、保護者役も用意するべきだったのじゃ……」
「あのちっこいの、今自分からボロ出したぞ」
「あぁ。間違いなく『バフォメット』だな」
様子を見ていたドミノの反応に、コレールが返す。
「さぁとっとと帰った帰った! これ以上ごねる気ならアイルレット大臣を呼んでくるぞ!」
「ぐぬぬ……覚えておれ!」
ローブを纏った難民――もといバフォメット率いるサバトの構成員たちは、飛行魔法を使い、渋々空の向こうへと消えていった。
「サバトの人たちは神聖ステンド国には入れないの?」
先客が立ち去った後、クリスが門番の兵士の一人に話しかける。
「ああ。そういう規則なんだ。あんたらも入国希望者か? それなら今書類を取ってくるから――」
「リネス=アイルレットに、『魂の宝玉の件で話がある』と伝えろ」
コレールに割って入られた兵士はハッとした様子で彼女の方を向く。
「あんた……コレール=イーラか? ちょっと待て、今本部の方に問い合わせてくる……」
彼が詰め所の方へと戻っている間、アラークはもう一人の方の門番の兵士に話しかけていた。
「神聖ステンド国がサバトの入国を認めていない理由は? ここは中立国のはずだろう?」
「まぁ確かにそうなんだが……色々と複雑でな。皆が皆魔物娘の価値観をすんなり受け入れられるわけでもない」
そうこうしていると、本部と連絡を取るために詰所に行っていた兵士が戻ってきた。
「入ってくれ。コレール=イーラ殿。リネス=アイルレット大臣が話を聞きたいそうだ」
――第36話に続く。
19/08/16 18:44更新 / SHAR!P
戻る
次へ