連載小説
[TOP][目次]
第2話 複数人下における性格の違い(9235・9236・9237)
第2話 複数人下における性格の違い(9235・9236・9237)

ここは雪山の麓にある小さな村。ここでは、焼き物が特産で観光客もけっこう来ている。

「うあぁ・・・迷っちゃったね・・」
「・・・そうだな・・」
入り口からそう遠くない場所。ここで迷っている一組のカップルもまた、観光客だ。
それにしても、傍から見れば挙動不審者だ。二人仲良く手を握って、周りを執拗にキョロキョロしている。
まぁ、困っているのは確かなのだろうが、こんな小さな村だ。流石に迷っているのではないと村人も判断しているぞ。

「・・・道に迷われたのですか?と、氷沙は親切心から声をかけます。」
「氷沙達がお送りいたしましょうか?と、氷沙は点数稼ぎを敢行します。」
「ここは私が請け負いましょう。と、氷沙は自分だけで手柄を取ろうと企みます。」
通りかかった雪女っぽい子たちが二人に声を掛けてくれたよ?やったね。これで道に迷わなくて済む。
それにしても、可笑しな喋り方をする子達だ。まるで説明しているかのようじゃないか。
なんにしても、道を教えてくれるのならありがたい。

「君ら、ここの住民か・・?」
「私たち、迷っちゃったの・・・」

「それなら、私が案内します。と、氷沙は貴女の手を引っ張ります。」
「でしたら、私はナビをします。と、氷沙は貴方の腕にしがみつきます。」
「えとえと・・・氷沙は手柄を取られて混乱します。」
にしても、口調だけじゃなく格好まで変だ。
普通、双子でも無ければ全く同じ顔なんてのは見ない。
それが、ここに居る氷沙と名乗る少女達は皆が同じ顔だ。
三つ子とも思ったが、その割には仲が良くないようだ。
三つ子=仲が良いというのは少し違う気がするのだが、とりあえず少女達に送って貰う事にした。

「ここがリンド道具店、色々な小道具が販売されています。と、氷沙は懇切丁寧にお店の紹介をします。」
「そしてあちらが民宿『ハート』働いている人たちがみんな優しいです。と、氷沙は説明をします。」
「こっちにあるのがジェシー農場。牛さんがいっぱい働いています。と、氷沙はジェシーさんにばれないように農場に潜入口を作ります・・・」
あっちこっちを行き来する氷沙達は、いろんな場所に着いて説明をしてくれている。
しかし、三人同時に言っている所為で、何が何やら分からなかった。
説明を求めたが、明らかに聞こえないふりを続けて彼女たちは説明を続けていった。

「最後に、ここが村と外とを繋ぐ唯一の道の出入り口です。と、氷沙は最後の手柄を取って嬉しそうにします。」
最後の一人が、村の出入り口を案内してくれる。その背後では、二人の氷沙達が悔しそうな表情を浮かべているのが見えた。
観光目的で来ていた二人からすれば、もう見物も観光も終わってしまった事になる。
そうなると、もう帰りたいと思う気持ちがこみ上げていた。
実際、雪女に絡まれた時点で男の方は心底帰りたいと思った筈だ。

「それじゃ、俺達これで・・」
「じゃぁ、また来た時にも案内、お願いね・・?」
まるで怪物でも見たかの様な形相で、カップルは村を飛び出して行った。
そこそこに雪が積もっていると言うのに、なんとも俊敏だ。
その様子を、「あっ・・」と、何か言いたげな表情で氷沙達は見送っていた。


続く
11/03/25 14:50更新 / 兎と兎
戻る 次へ

■作者メッセージ
今回は本当にやる気の無い回でした。どうもすいません。
でも、一応アナは埋めないといけなかったので・・・
では、近いうちにもっと良いのを書きますね!失礼しました〜!

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33