第四話 純潔
「ギルディア……言いたい事があるのだが…」
「うん? なんだい?」
「これは、少し事を急ぎ過ぎるのではないか…?」
ほとんど流れに流されて決まった結婚から夜が明けてすぐ。
結局あれから一睡も出来ずに夜を過ごしてしまった。
だが、ギルディアから話を聞いて分かった事もある。
「だいたい、「キス=婚姻の儀」というのがおかしいと思うのだが?」
「そうかな? 少なくともこの地方でのしきたりではそうなってるよ?」
しきたりに従ってプロポーズした、なんて言われれば呆れもするというものだ。
かなり過程を飛ばされたような気がするが、どうもギルディアのペースに乗せられたままでいるのが癇に障る。
私とてヴァンパイアなのだ、余裕を以て振る舞えずして何が吸血鬼か。
だが、彼の言葉には何故だか苛立ちを覚えてしまう。
「……それは、「しきたりだから仕方なく」なのか…?」
そう、「しきたりだから」と言うぼんやりとした理由で、好意がある訳でも無いのに結婚を申し込まれているのではないか?
他に恋人なり許嫁なり居たかもしれないのに、それらの思いを無視して奪ってしまったんじゃないかという、罪悪感の混じった後悔が私の心をこれでもかと蝕んでいくのがハッキリと感じ取れる。
だがそんな考えも彼の言葉で消え去ってしまう訳だが。
「そんな訳ないじゃないか」
そう言うとギルディアは、子供に言い聞かせるのと同じように視線を並べてまっすぐに私の目を見る。
これまで過ごしてきた中で、きっとこの瞬間ほど彼が大人びて見えた事は無かっただろう。
「僕は君が好きだ。しきたりがどうのとかそう言うのじゃない。僕は一人の男として君を愛しているんだ」
「っ!」
嬉しさで胸が一杯、なんて言葉があるが、まさに今の私はそんな感じなんだろう。
その嬉しさとやらが詰まってしまって言葉も上手く吐き出せない。
ただ、密かに焦がれていた恋慕が実を結んだ瞬間に酔い痴れていただけなのかもしれないが。
「ギルディア…」
「アレイスター……っ…」
互いの唇が重なり合う。
最初のような、舌を絡ませ合い貪り合うような事はせず、ただただ重ねるのみのそれは、しかし最初の口づけより何倍も甘く蕩けるような感覚に襲われる。
すぐに唇を離してしまうが、どうにも物足りない。
「わ…私は…」
「言わなくても分かるよ…」
そう言いながら、顔に手を添えながらもう一度キスをしてくれる。
優しさに満ちた甘く蕩けそうな感触が頭の中をふわふわとした感覚に陥らせていくのがよく分かる。
「アリス…」
「…?」
「アレイスター、より呼び易くて良いと思わない?」
あだ名とかそういう物の事だろうか?
なんて事を考えるよりも先に、彼の問いに嬉々として答える私が居た。
きっと、心の中のどこかでは「自分が女性になった」のだと受け入れようとしない心があったのだろう。
だが、それも儚く砕け散る。
「女の子っぽい名前になったね…僕の事もギルで良いよ?」
「女の子…」
「うん、いい名前だとおも…あぁ、ごめん…イヤだった…?」
どうしてそんな事を聞く?
と口にする前に、その原因は分かった。
「これは…涙…?」
「ごめんよ、イヤなら良いんだ。いつも通りアレイスターで…」
「いや……アリスで頼む…」
さようなら、紳士であろうとする私。
きっと長い付き合いだっただろうが、これから先に君は居てはいけないんだ。
これからは一人の女として、彼の元で生きていきたい。
「なら……アリス、もう一度言うよ? 僕と…結婚してくれないか?」
「…あぁ、喜んで…」
彼の手を取りプロポーズを受ける。
たったそれだけの動作だったのにも関わらず、私の心は心臓が破裂してしまいそうな程に高鳴っていた。
「しかし、ギル…その……本当に私でいいのか?」
「ん? どうしてそう思うの?」
「私は人間ではなくヴァンパイア…吸血鬼だ。その私と共に居るという事は…その…」
お前の命も危ないかもしれない。
そう言おうとした私の口を、ギルは唇に指を当てて黙らせた。
「君は吸血鬼である前に一人の女性だ…違うかい?」
「それは…」
「なら、君が吸血鬼かどうかなんてのはどうでもいい。男が女を愛する上で、それは些細な事なんだから」
「しかしだな…っ!」
私がそれ以上の言葉を紡ぐことは無かった。
口づけによって口を塞がれてしまったのだから。
===
「……ぷはっ…はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ……大丈夫かい?」
「はぁ…はぁ…き…きしゃまぁ…」
一体どれほど長い間、口を塞がれていただろうか。
舌を絡められ、幾度となく唾液を交換しては舌が引き抜かれそうな程に引っ張られる。
その度に脳が痺れるような快感に襲われて、抵抗の一つも出来やしない。
それどころか、身体はギルを求めずにはいられず彼をしっかりと抱きしめる。
逃がすものか、お前は私のものだと言わんばかりにしっかりと抱き寄せて熱く濃いキスを続ける。
互いに離れる頃にもなると呼吸は荒くなり上気した顔になっていた。
私はその上、呂律も回らないまで疲弊していた訳だが。
「お返しだよ? 心配になって看病してたらあんなに熱いキスをされるんだから…」
「だ…だから、それはしゅまにゃいと…おぉぉおう!」
一体何だこれは!
ギルに秘部を触られただけで、頭の中が真っ白になってしまいそうだ!
「あぁぁ……イッちゃったんだ…」
なんと恥ずかしい事か。
触れられただけで果ててしまうだけでなく、彼の手に何度も潮を噴いてしまうとは。
下着越しでなければ、きっと腕の方まで濡らしてしまっていただろう。
「み…みりゅにゃぁ…」
「どうしてさ? 気持ち良さそうにしてるキミはすごく魅力的だよ?」
「ふあぁ…あぁぁぁ……ふにゃぁぁあぁぁ!!」
イクのが止まらない!
何回果ててもすぐにまた噴き上げてしまう。
その度に頭の中がふわふわとした感覚に浸され、やがて急激に脱力してしまう。
身体中の筋肉が緩み切ってしまったかのような感覚は、呼吸すら忘れてしまいそうな程だ。
「はぁ…はぁ…はひぃ…」
「可愛いなぁ…ほら、戻っておいで?」
「っっ?!やめっ…はうぅぅぅっ!!」
ベッドに完全に身を沈めていた私だったが、ギルが肌をそっと撫でるだけで全身が硬直してしまうほどの刺激と快感に意識が呼び戻される。
別に今撫でられているお腹が性感帯という訳ではない。
そのはずなのに、まるで性感帯であるかのような気持ち良さが、全身を包み込む。
「はぁ…はぁ…き、きしゃま…にゃにを…」
「何もしてないよ? ただこうやって…」
「んにぃぃぃぃっ!!」
指を這わされるだけで、ゾクゾクとした刺激が脳を焼き切ってしまいそうな程の快感として伝わってくる。
きっと今も秘部からは絶えず潮が噴き出している事だろう。
反射的に彼を抱きしめてしまう。
「うぁ……あっ…あぁぁ…」
「イキっぱなしだね…そんなに良かったのかな?」
「この調子だと、これだけでも…」
「っっっっっ!!!」
まさか、乳首を摘ままれただけでイッてしまうとは思わなかった。
頭の中が真っ白になって行くのを感じるのと共に、心の中で封じ込めていた感情がこみ上げてくる。
「吸血衝動」
吸血鬼なら誰でも持っている、誰かの血を吸いたくてしょうがない状態の事を指す。
血を吸う事に抵抗がある者ほど強く表れやすいらしく、私なんかには凶器のようにすら作用し得る。
「はぁ…はぁ……れろっ…ちゅるっ…」
「うん? どうしたんだい?」
こうなってしまえば、彼の声など聞こえようも無い。
今までは隠そうと思えば隠せたし、我慢する事も出来た。
彼と顔を合わせる度に、彼の首元に噛み付いて血を吸いたいと思う衝動を檻に閉じ込め封殺してきたつもりだった。
だが、こうなってしまえばこの衝動を押し殺す為の武器は最早何処にも無い。
我慢しようとする自分の意志とは裏腹に、彼の首筋に舌を這わせていく。
「……っ…」
「…アリス?」
後はあの柔らかな首筋に牙を突き立てれば、芳醇なワインなどよりずっと甘美な物が溢れてくる事だろう。
だが、私にだって意地はある。
どうにかギリギリの所で理性を保って吸血衝動を抑え込もうと踏ん張る。
「んっ……くっ…」
自分の舌を噛んで、なんとか意識を取り戻す。
血が滲むような痛みにも負けず、吸血衝動を抑え込む。
なんとか我慢できそうだったと言うのに、ギルとくれば…
「…良いよ、吸って」
「っ?!」
これである。
必死に葛藤する私の心など知らなげに、頭を持ち上げて首の方へと持って行く。
彼の匂いが、彼の声が、彼の仕草が、私の理性を叩き壊してくれた。
壊してなんて頼んでも居なければ望んでもいないというのに。
「っ…はむっ…」
「くっ…」
ああ、ついにやってしまった…
今まで生まれてこの方、直に噛み付き吸血した事は数回しかない。
最後に噛み付いての吸血を行ったのはいつだっただろうか。
吸血の度に感じる高揚感に恐怖した私は、それ以来自制してきた。
直接での吸血でなくとも、器に盛られた血を口にするだけでもあの感覚が私の身を蝕むような気がして、いつしか血を飲む事自体が億劫になっていたのを思い出す。
最初こそピュアから心配されていたものの、少量であれば大丈夫なようになってからは、グラス半分だったりスプーン一杯だったりと、量を決めて飲むようにしていた。
だが、女の身体となってからはその慣れさえも効かなくなってしまっていたのだ。
ここに来てすぐの頃だっただろうか、給仕がリンゴを切ってくれていた時に指を切ってしまい、流れた血を見るだけであの時の高揚感がこみ上げてしまいそうな自分に初めて気づいたのだ。
「ちゅっ……じゅるっ…」
「あ、あれ…? 痛く…ない…?」
血を必要以上に警戒視していた私からすれば、あれは麻薬のような物だ。
判断力を鈍らせ、もっともっとと欲しくなる。
そして気付いた頃には、もう引き返せない所までその身を堕としてしまう事になる。
「んくっ……じゅるっ…じゅるるっ…」
「……アリス…」
もうこうなってしまっては元には戻れない。
そう諦めていた時だ、ギルが私の頭に手を置いて撫でてくれたのは。
「もしもこのまま死ぬとしても、僕は幸せだよ? アリスの為なんだから…」
「……ぷぁっ…死にはしないさ…死なせるものか…」
何も血を飲んで正気に戻ったとかそういう事ではない。
ただ、ひょんな事で酔いが覚めるのと同じように私の意識もしっかりとしていたのだ。
もう誰も、私達を止める事などできない。
「ギル…」
「うん?」
「抱いてくれ…」
彼を逃がすまいと抱き締めていた腕を解き、下着の紐をゆっくりと引っ張る。
それだけで結び目が解け、下着だったものはただの布切れへと変わる。
普通ならこのまま重力に従って前側は捲れてしまうはずだが、どうも潮を噴き過ぎた所為で張り付いているようだ。
「うわぁ…シーツがびしょ濡れだよ…?」
「い…言うなっ…んぁっ…」
ギルの言うとおり、私の足にあたる場所は雨でも降ったんじゃないかと思う程に濡れてしまっていた。
下着を取るギルが触れるだけでも、クチュッという音がいやらしく部屋に響くのが聞こえてしまう。
「……あっ…」
「うん? どうかした?」
「……み、見たか…?」
さあ始めようとなる段階になって、ある事に気付く。
元は男と言ったって、今の私は女の子。
「見たけど……ちゃんと処理してるんだね」
「う…うわぁぁぁぁぁ!!」
見られてしまった。
しっかりと剃られた下の毛を。
まさかメイドたちがニコニコしながら身体中を綺麗にされるとは思わなかったのだから仕方ない。
やれ「羨ましい程綺麗」だの「私もこうなりたい」だの。
あ、「食べちゃいたい」とか言ってた者も居たか。
「落ち着いて」
「落ち着いてなど居られ…んぅっ…」
ギルめ、私を黙らせるにはキスで物理的に口を塞いでくれようなどと、卑怯な…
「ぷぁ…それじゃ、行くよ?」
「ま、待て!こういうのは順序というものが…くぅん!」
いつの間に脱いでいたのか知らないが、ギルのモノが私の秘部にくっつけられる。
ただそれだけだと言うのに、私の身体は悦びに跳ねてしまう。
「十分に濡れてるから大丈夫…行くよ?」
「まっ…んっ…くぅぅぅぅぅ…」
ギルがゆっくりと腰を沈めて行く。
この身体になってからというもの、男に身体を許した事なんて無かった。
あっても自分の指や剣の柄が限度。
そのどれもが、入り口を弄るだけにとどまっていた。
だが、それも今日までの事だ。
「はいっ……たぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
「っ!?」
ギルと出会い、今までは想像でしかなかった彼との交わり。
それが、今現実となった。
その嬉しさに踊る私とは違い、ギルの顔は驚きに歪んでいた。
「うぐっ…アリス…これは…」
「はぁ…はぁ……?」
ギルは一体何を言っているのかと思ったが、その答えはすぐに分かった。
コウモリのような翼が私の身体から生えていたのだ。
女の身体となって以来、退化して無くなったと思っていた吸血鬼が吸血鬼たる所以の一つ。
外側は闇夜のように暗く妖しく、内側は鮮血のように赤く輝く高貴なる翼が。
「あぁ……無くなった訳では…なかったのか…」
「アリス…っ! アリス…アリス、アリスぅぅぅ!!」
一体どうしたと言うのだギルは。
いきなり苦しみだしたかと思えば、狂ったように腰を振って私に抱きついてくるではないか。
膣内を高速ピストンで抉られる感触は、きっと続けていたらクセになってしまっていただろう。
まぁ、その前にギルの方が保たないようだが
「んあっ! ぎ…ギル…一体どうしたと…んひぃぃ!」
「はぁ…はぁ…あ、アリスぅ…出るよぉぉ!!」
互いに身体を抱きしめあい、快感に身を委ねる。
その直後には、ギルは私の膣の一番奥へと精を流し込んでいた。
「はぁ…はぁ……い、いったいどうしたと言うのだ…」
「わ、分からないよ…ただ、すごくアリスを孕ませたいって気持ちが爆発したみたいに大きくなって…そしたら君がキュウキュウって締め付けて来て…」
一旦モノを引き抜いて、状況の整理をしてみよう。
私の翼が生えてきてからギルの様子がおかしくなって、あっという間に初めての射精を貰ってしまった。
この事から推察できることがあるとすれば…
「ギル、じっとしていてくれ…」
「えっ? 何を…はぅあ!」
やはりそうだ。
精を吐き出してすっかり役目を終えていた彼のモノだったが、私が少し触れてやるだけで一気に膨れ上がってすぐにでも私の膣をまた突いてやろうとばかりに脈打っている。
だが、これだけでは確証足り得ない。
「…んっ…ぅぐ…」
「アリス…?」
自分の物だというのに、まるで今しがた移植したかのような違和感が身体に残ってしまう。
ぎこちないとは言え、どうにか翼を仕舞い込んで、もう一度彼の腫れ上がった逸物に手を伸ばす。
「…っ……どうだ…?」
「うっ……き、きもちいいよ…?」
「それだけか…?」
「それだけ…? あぅっ!」
どうやら私の予想は当たっていたようだ。
翼を仕舞ってしまえば、彼は喘ぎこそするものの理不尽なムラっ気から襲ってくるような事はしてこない。
そこで、唐突に翼をもう一回出してみると…
「はぅぅっ!! はぁ…はぁ…あ、アリス…ありす、ありすぅぅ!!」
「んひゃぅ! か、顔にかかったではないk…ひゃんっ!」
一度翼を出してしまえばこの通り。
息を荒げて私を押し倒したかと思えば、私の胸に彼は自分の逸物を押し付けてきた。
「いいよねっ…いいよねっ…」
「……あぁ、いいぞ…存分に…んはぁ…」
半ば無理矢理に服を脱がされると、まるでオモチャか何かに擦り付けているかのように乱暴に挟み込んで、犬のように激しく腰を振ってくる。
顔に掛かった精液の匂いが私の意識を蕩けさせてしまいそうだ。
気が付けば胸を揉まれている事に身体が痺れてしまいそうな程の快感を感じてしまっている私が居た。
これでは催淫されてしまった彼に何も言えないではないか。
「はぅっ…アリス…アリスぅ…うあぁぁぁ!!」
「ちょ、まっ…んうぅぅぅっ?!?!」
まさか私が、男の精液を飲んでしまう日がこようとは…
胸から手を離したかと思えば、ギルは今度は私の頭を引っ掴んで口の中へと亀頭を捻じ込まれてしまう。
鈴口が舌に触れた時点で限界だったのだろう逸物は、溜め込んでいた精液のありったけを私の口の中へ注ぎ込んでくれる。
「んぐぅぅぅ……んぅっ…んっ…」
射精の最中だというのに、ギルは何度も口の奥へ亀頭を押し付けてくる。
その度にビュルビュルと精液を流し込まれて私は窒息してしまいそうだった。
苦しい筈なのに、同時に精液を呑み込む度に感じるこの高揚感は何だ。
まるで吸血した時のようではないか。
「……じゅるっ…」
「はぅあ!!」
まさか、亀頭に舌を這わせるだけで精を吐きだしてしまうとは思わなんだ。
それとも単なる絞り粕なだけだったのだろうか?
「んぐっ……ぷぁ…はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…はぁ……すっごいよぉ…アリスぅ…」
あぁ、ダメだ。
名前を呼ばれただけでもイッてしまいそうだ。
酒に酔うなんて物じゃ無い。
もっとキツい何かが私の自我を蕩けさせてしまう。
気が付けば、さっきまで私が横になっていた場所にはギルが倒れ込んでいた。
ついさっきまでとは体勢が全くの逆である。
いくら華奢とは言え、私だって吸血鬼なのだ、人間一人を持ち上げる事など造作もない。
「ギル…まだ行けるか…?」
「はぁ…はぁ…す、少し休憩したい…うぐぁ!」
すっかり萎えていた逸物も、指で一撫でしてやればもう元気を取り戻していた。
私が翼を仕舞っているのにも関わらず、だ。
つまりは催淫など関係なしにまだまだ私との情事を楽しみたい気持ちが彼にもあるのだ。
それが分かっただけでも胸が高鳴ってしまう。
「なんだ、ここはすっかり元気ではないか」
「そ、それはキミが…はぅ…」
嘘つきめ。
悪い嘘つきには、お仕置きが必要だろう。
この私自らが、貴様に罰をくれてやる。
「そぉら、一気に食って…んほぉぉぉっ!!」
「うあぁぁぁぁ!!」
……調子に乗り過ぎてしまった。
いくら既に濡れているからと言っても、やはり一気に入れるのはよくないな。
きっと今の私は、乙女がしていてはいけないような酷い顔をしているだろう。
涙や鼻水でぐちゃぐちゃとかそう言うのではなく、善がって表情そのものが歪んでいるとでも言えばいいだろうか。
「ぎりゅっ! ぎりゅぅぅ! んぎもちぃぃぃ!」
「あ、ありっ…ありすぅぅっ!!」
何度も腰を上げては、抜けてしまう寸前でもう一度腰を一番奥まで沈める。
それだけでも狂ってしまいそうな快感が私をおかしくしてしまいそうだというのに、更にその動きをここまで速く動かせたのかと思う程のスピードで腰を叩きつけるように振り続ける。
「ごりごりっ!! ごりごりってぇぇぇ!!」
「ぐっ…うぅ……うあぁぁぁ…」
肩こりの酷い箇所を砕くように抑え込むと、ゴリゴリとした感触で解されていく感触がある。
あんなのとは比べ物にならない程の快感が腰から脳まで一直線に伝わってきてしまう。
これではだらしなく射精していたギルとなんら変わりないではないか。
「んひんっ!! らしてっ!! ぎりゅっ…どぷどぷぅって……らしてへぇぇ!!」
「あぁ…アリス…っ!! で、出る…でりゅぅぅぅぅ!!」
まさか、胸を揉まれただけで果てる準備が整うとは思っても見なかった。
よくよく考えてみれば、自慰の時によく胸も弄っていたからこその感度だったのかもしれない。
その刺激のおかげで膣壁をキュンキュンと締めつけてやればギルもそれに応えて一際深く腰を捻じ込んで子宮にビュルビュルと射精してくれているのがよく感じ取れた。
こんなの射精されてしまっては、すぐにでも孕んでしまいそうだ。
「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
十二分に精液を呑み込んで、快楽の果てもしっかりと掴んできた私はすっかり疲弊していた。
ヴァンパイアが疲れているなど笑い話にもならないではないか。
だが、疲れて倒れ込んだギルの胸は、きっとどんな布団やベッドよりも心地の良い場所だっただろう。
注ぎ込まれた精液が、私の噴き出した愛液と混ざりながら垂れ流しになっているのを感じ取りさえしなければ、幸せの絶頂に浸ったままだっただろう。
「んぅ…はぁ…はぁ……こんなにも…出してくれたのだな…」
少々残念と思う気持ちはあるが、ずっとヌメヌメした感覚のままで居るのもそれはそれで気持ち悪い。
繋がりを解くと、最初に私達がキスしていた時と同じように粘り気の強い一本の糸が線を引き、やがてどちらからともなくプツンと切れる。
まだ私の身体は物足りないらしく、膣口はヒクヒクと動いて肉棒を求めていた。
それを指でこじあけてやれば、私たちが確かに達した証が、ドロドロと混ざり合いながら流れ出て行く。
「これが…子宮に…」
下腹部をそっと撫でてみると、かすかに膨らんでいるのが感じ取れた。
満腹になっている訳でも、尿意を催している訳でも無い。
確かに子宮の中に、子宮を膨らませてしまう程に大量の精液が流し込まれているのだ。
「……もう…逃げられんな…」
「はぁ…はぁ…最初から…逃げるつもりなんて…ないよ…?」
起き上がったギルが、私の手を取り手繰り寄せる。
そしてそのまま、自分の腕の中へと招き入れて互いに抱き合う姿勢となった。
正直な所、まだ顔の精液も拭い切れていないし、胸にだって精液が垂れてしまっている。
そんな状態で彼と抱き合う事には抵抗があったが、耳元で「おいで」と言われてしまえば、それに抵抗する事が出来ない。
「……ギル…」
「うん?」
「今日はこのくらいに…きゃっ」
まさか、私が疲弊していたとは言え人間に引き倒されてしまうとは…
しかも「きゃっ」なんて少女のような声を上げてしまって…なんとも恥ずかしい。
不意だからこそ出来る技とも言えようか。
そんな事より、一瞬にして体勢が元に戻ってしまったではないか。
私は倒れ、ギルが上から覗き込むように身体を被せて来て…
「…嘘つきは、なんだったっけ?」
「ひゃんっ! ぎ、ギル…私はお前の事も思って…んむ!」
すっかり彼のペースになってしまっているようだ。
秘部を指でクチュクチュと掻き回され、同時に唇もキスで塞がれてしまう。
空いた片手は私の胸を執拗なまでに揉んでいて、ジタバタと暴れようにも快感が電気のように走り抜ける度に身体が硬直してしまってロクに動けない。
「んっ…むぅぅ……ぷぁっ…ぎ、ギル…ギルっ! ギルゥぅぅぅぅう!!」
「まだまだ行けそうな気がするんだ…とことん付き合ってもらうからね?」
それからの責めは行ったり来たりだった。
私がギルをこれでもかと絞ったかと思えば、今度はギルが私をこれでもかと犯しイキ狂わせる。
そんなやりとりは、昼食になっても姿を見せない事を不審に思ったメイドが私の部屋に入ってくるまでずっと続けられたのだった。
一つ心配な事があるとすれば、ギルが私の魔力のせいでおかしくなってしまわないか、という事であろうか。
どうか、ギルとの子を孕んでくれている事を願うと共に…
つづく
「うん? なんだい?」
「これは、少し事を急ぎ過ぎるのではないか…?」
ほとんど流れに流されて決まった結婚から夜が明けてすぐ。
結局あれから一睡も出来ずに夜を過ごしてしまった。
だが、ギルディアから話を聞いて分かった事もある。
「だいたい、「キス=婚姻の儀」というのがおかしいと思うのだが?」
「そうかな? 少なくともこの地方でのしきたりではそうなってるよ?」
しきたりに従ってプロポーズした、なんて言われれば呆れもするというものだ。
かなり過程を飛ばされたような気がするが、どうもギルディアのペースに乗せられたままでいるのが癇に障る。
私とてヴァンパイアなのだ、余裕を以て振る舞えずして何が吸血鬼か。
だが、彼の言葉には何故だか苛立ちを覚えてしまう。
「……それは、「しきたりだから仕方なく」なのか…?」
そう、「しきたりだから」と言うぼんやりとした理由で、好意がある訳でも無いのに結婚を申し込まれているのではないか?
他に恋人なり許嫁なり居たかもしれないのに、それらの思いを無視して奪ってしまったんじゃないかという、罪悪感の混じった後悔が私の心をこれでもかと蝕んでいくのがハッキリと感じ取れる。
だがそんな考えも彼の言葉で消え去ってしまう訳だが。
「そんな訳ないじゃないか」
そう言うとギルディアは、子供に言い聞かせるのと同じように視線を並べてまっすぐに私の目を見る。
これまで過ごしてきた中で、きっとこの瞬間ほど彼が大人びて見えた事は無かっただろう。
「僕は君が好きだ。しきたりがどうのとかそう言うのじゃない。僕は一人の男として君を愛しているんだ」
「っ!」
嬉しさで胸が一杯、なんて言葉があるが、まさに今の私はそんな感じなんだろう。
その嬉しさとやらが詰まってしまって言葉も上手く吐き出せない。
ただ、密かに焦がれていた恋慕が実を結んだ瞬間に酔い痴れていただけなのかもしれないが。
「ギルディア…」
「アレイスター……っ…」
互いの唇が重なり合う。
最初のような、舌を絡ませ合い貪り合うような事はせず、ただただ重ねるのみのそれは、しかし最初の口づけより何倍も甘く蕩けるような感覚に襲われる。
すぐに唇を離してしまうが、どうにも物足りない。
「わ…私は…」
「言わなくても分かるよ…」
そう言いながら、顔に手を添えながらもう一度キスをしてくれる。
優しさに満ちた甘く蕩けそうな感触が頭の中をふわふわとした感覚に陥らせていくのがよく分かる。
「アリス…」
「…?」
「アレイスター、より呼び易くて良いと思わない?」
あだ名とかそういう物の事だろうか?
なんて事を考えるよりも先に、彼の問いに嬉々として答える私が居た。
きっと、心の中のどこかでは「自分が女性になった」のだと受け入れようとしない心があったのだろう。
だが、それも儚く砕け散る。
「女の子っぽい名前になったね…僕の事もギルで良いよ?」
「女の子…」
「うん、いい名前だとおも…あぁ、ごめん…イヤだった…?」
どうしてそんな事を聞く?
と口にする前に、その原因は分かった。
「これは…涙…?」
「ごめんよ、イヤなら良いんだ。いつも通りアレイスターで…」
「いや……アリスで頼む…」
さようなら、紳士であろうとする私。
きっと長い付き合いだっただろうが、これから先に君は居てはいけないんだ。
これからは一人の女として、彼の元で生きていきたい。
「なら……アリス、もう一度言うよ? 僕と…結婚してくれないか?」
「…あぁ、喜んで…」
彼の手を取りプロポーズを受ける。
たったそれだけの動作だったのにも関わらず、私の心は心臓が破裂してしまいそうな程に高鳴っていた。
「しかし、ギル…その……本当に私でいいのか?」
「ん? どうしてそう思うの?」
「私は人間ではなくヴァンパイア…吸血鬼だ。その私と共に居るという事は…その…」
お前の命も危ないかもしれない。
そう言おうとした私の口を、ギルは唇に指を当てて黙らせた。
「君は吸血鬼である前に一人の女性だ…違うかい?」
「それは…」
「なら、君が吸血鬼かどうかなんてのはどうでもいい。男が女を愛する上で、それは些細な事なんだから」
「しかしだな…っ!」
私がそれ以上の言葉を紡ぐことは無かった。
口づけによって口を塞がれてしまったのだから。
===
「……ぷはっ…はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ……大丈夫かい?」
「はぁ…はぁ…き…きしゃまぁ…」
一体どれほど長い間、口を塞がれていただろうか。
舌を絡められ、幾度となく唾液を交換しては舌が引き抜かれそうな程に引っ張られる。
その度に脳が痺れるような快感に襲われて、抵抗の一つも出来やしない。
それどころか、身体はギルを求めずにはいられず彼をしっかりと抱きしめる。
逃がすものか、お前は私のものだと言わんばかりにしっかりと抱き寄せて熱く濃いキスを続ける。
互いに離れる頃にもなると呼吸は荒くなり上気した顔になっていた。
私はその上、呂律も回らないまで疲弊していた訳だが。
「お返しだよ? 心配になって看病してたらあんなに熱いキスをされるんだから…」
「だ…だから、それはしゅまにゃいと…おぉぉおう!」
一体何だこれは!
ギルに秘部を触られただけで、頭の中が真っ白になってしまいそうだ!
「あぁぁ……イッちゃったんだ…」
なんと恥ずかしい事か。
触れられただけで果ててしまうだけでなく、彼の手に何度も潮を噴いてしまうとは。
下着越しでなければ、きっと腕の方まで濡らしてしまっていただろう。
「み…みりゅにゃぁ…」
「どうしてさ? 気持ち良さそうにしてるキミはすごく魅力的だよ?」
「ふあぁ…あぁぁぁ……ふにゃぁぁあぁぁ!!」
イクのが止まらない!
何回果ててもすぐにまた噴き上げてしまう。
その度に頭の中がふわふわとした感覚に浸され、やがて急激に脱力してしまう。
身体中の筋肉が緩み切ってしまったかのような感覚は、呼吸すら忘れてしまいそうな程だ。
「はぁ…はぁ…はひぃ…」
「可愛いなぁ…ほら、戻っておいで?」
「っっ?!やめっ…はうぅぅぅっ!!」
ベッドに完全に身を沈めていた私だったが、ギルが肌をそっと撫でるだけで全身が硬直してしまうほどの刺激と快感に意識が呼び戻される。
別に今撫でられているお腹が性感帯という訳ではない。
そのはずなのに、まるで性感帯であるかのような気持ち良さが、全身を包み込む。
「はぁ…はぁ…き、きしゃま…にゃにを…」
「何もしてないよ? ただこうやって…」
「んにぃぃぃぃっ!!」
指を這わされるだけで、ゾクゾクとした刺激が脳を焼き切ってしまいそうな程の快感として伝わってくる。
きっと今も秘部からは絶えず潮が噴き出している事だろう。
反射的に彼を抱きしめてしまう。
「うぁ……あっ…あぁぁ…」
「イキっぱなしだね…そんなに良かったのかな?」
「この調子だと、これだけでも…」
「っっっっっ!!!」
まさか、乳首を摘ままれただけでイッてしまうとは思わなかった。
頭の中が真っ白になって行くのを感じるのと共に、心の中で封じ込めていた感情がこみ上げてくる。
「吸血衝動」
吸血鬼なら誰でも持っている、誰かの血を吸いたくてしょうがない状態の事を指す。
血を吸う事に抵抗がある者ほど強く表れやすいらしく、私なんかには凶器のようにすら作用し得る。
「はぁ…はぁ……れろっ…ちゅるっ…」
「うん? どうしたんだい?」
こうなってしまえば、彼の声など聞こえようも無い。
今までは隠そうと思えば隠せたし、我慢する事も出来た。
彼と顔を合わせる度に、彼の首元に噛み付いて血を吸いたいと思う衝動を檻に閉じ込め封殺してきたつもりだった。
だが、こうなってしまえばこの衝動を押し殺す為の武器は最早何処にも無い。
我慢しようとする自分の意志とは裏腹に、彼の首筋に舌を這わせていく。
「……っ…」
「…アリス?」
後はあの柔らかな首筋に牙を突き立てれば、芳醇なワインなどよりずっと甘美な物が溢れてくる事だろう。
だが、私にだって意地はある。
どうにかギリギリの所で理性を保って吸血衝動を抑え込もうと踏ん張る。
「んっ……くっ…」
自分の舌を噛んで、なんとか意識を取り戻す。
血が滲むような痛みにも負けず、吸血衝動を抑え込む。
なんとか我慢できそうだったと言うのに、ギルとくれば…
「…良いよ、吸って」
「っ?!」
これである。
必死に葛藤する私の心など知らなげに、頭を持ち上げて首の方へと持って行く。
彼の匂いが、彼の声が、彼の仕草が、私の理性を叩き壊してくれた。
壊してなんて頼んでも居なければ望んでもいないというのに。
「っ…はむっ…」
「くっ…」
ああ、ついにやってしまった…
今まで生まれてこの方、直に噛み付き吸血した事は数回しかない。
最後に噛み付いての吸血を行ったのはいつだっただろうか。
吸血の度に感じる高揚感に恐怖した私は、それ以来自制してきた。
直接での吸血でなくとも、器に盛られた血を口にするだけでもあの感覚が私の身を蝕むような気がして、いつしか血を飲む事自体が億劫になっていたのを思い出す。
最初こそピュアから心配されていたものの、少量であれば大丈夫なようになってからは、グラス半分だったりスプーン一杯だったりと、量を決めて飲むようにしていた。
だが、女の身体となってからはその慣れさえも効かなくなってしまっていたのだ。
ここに来てすぐの頃だっただろうか、給仕がリンゴを切ってくれていた時に指を切ってしまい、流れた血を見るだけであの時の高揚感がこみ上げてしまいそうな自分に初めて気づいたのだ。
「ちゅっ……じゅるっ…」
「あ、あれ…? 痛く…ない…?」
血を必要以上に警戒視していた私からすれば、あれは麻薬のような物だ。
判断力を鈍らせ、もっともっとと欲しくなる。
そして気付いた頃には、もう引き返せない所までその身を堕としてしまう事になる。
「んくっ……じゅるっ…じゅるるっ…」
「……アリス…」
もうこうなってしまっては元には戻れない。
そう諦めていた時だ、ギルが私の頭に手を置いて撫でてくれたのは。
「もしもこのまま死ぬとしても、僕は幸せだよ? アリスの為なんだから…」
「……ぷぁっ…死にはしないさ…死なせるものか…」
何も血を飲んで正気に戻ったとかそういう事ではない。
ただ、ひょんな事で酔いが覚めるのと同じように私の意識もしっかりとしていたのだ。
もう誰も、私達を止める事などできない。
「ギル…」
「うん?」
「抱いてくれ…」
彼を逃がすまいと抱き締めていた腕を解き、下着の紐をゆっくりと引っ張る。
それだけで結び目が解け、下着だったものはただの布切れへと変わる。
普通ならこのまま重力に従って前側は捲れてしまうはずだが、どうも潮を噴き過ぎた所為で張り付いているようだ。
「うわぁ…シーツがびしょ濡れだよ…?」
「い…言うなっ…んぁっ…」
ギルの言うとおり、私の足にあたる場所は雨でも降ったんじゃないかと思う程に濡れてしまっていた。
下着を取るギルが触れるだけでも、クチュッという音がいやらしく部屋に響くのが聞こえてしまう。
「……あっ…」
「うん? どうかした?」
「……み、見たか…?」
さあ始めようとなる段階になって、ある事に気付く。
元は男と言ったって、今の私は女の子。
「見たけど……ちゃんと処理してるんだね」
「う…うわぁぁぁぁぁ!!」
見られてしまった。
しっかりと剃られた下の毛を。
まさかメイドたちがニコニコしながら身体中を綺麗にされるとは思わなかったのだから仕方ない。
やれ「羨ましい程綺麗」だの「私もこうなりたい」だの。
あ、「食べちゃいたい」とか言ってた者も居たか。
「落ち着いて」
「落ち着いてなど居られ…んぅっ…」
ギルめ、私を黙らせるにはキスで物理的に口を塞いでくれようなどと、卑怯な…
「ぷぁ…それじゃ、行くよ?」
「ま、待て!こういうのは順序というものが…くぅん!」
いつの間に脱いでいたのか知らないが、ギルのモノが私の秘部にくっつけられる。
ただそれだけだと言うのに、私の身体は悦びに跳ねてしまう。
「十分に濡れてるから大丈夫…行くよ?」
「まっ…んっ…くぅぅぅぅぅ…」
ギルがゆっくりと腰を沈めて行く。
この身体になってからというもの、男に身体を許した事なんて無かった。
あっても自分の指や剣の柄が限度。
そのどれもが、入り口を弄るだけにとどまっていた。
だが、それも今日までの事だ。
「はいっ……たぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
「っ!?」
ギルと出会い、今までは想像でしかなかった彼との交わり。
それが、今現実となった。
その嬉しさに踊る私とは違い、ギルの顔は驚きに歪んでいた。
「うぐっ…アリス…これは…」
「はぁ…はぁ……?」
ギルは一体何を言っているのかと思ったが、その答えはすぐに分かった。
コウモリのような翼が私の身体から生えていたのだ。
女の身体となって以来、退化して無くなったと思っていた吸血鬼が吸血鬼たる所以の一つ。
外側は闇夜のように暗く妖しく、内側は鮮血のように赤く輝く高貴なる翼が。
「あぁ……無くなった訳では…なかったのか…」
「アリス…っ! アリス…アリス、アリスぅぅぅ!!」
一体どうしたと言うのだギルは。
いきなり苦しみだしたかと思えば、狂ったように腰を振って私に抱きついてくるではないか。
膣内を高速ピストンで抉られる感触は、きっと続けていたらクセになってしまっていただろう。
まぁ、その前にギルの方が保たないようだが
「んあっ! ぎ…ギル…一体どうしたと…んひぃぃ!」
「はぁ…はぁ…あ、アリスぅ…出るよぉぉ!!」
互いに身体を抱きしめあい、快感に身を委ねる。
その直後には、ギルは私の膣の一番奥へと精を流し込んでいた。
「はぁ…はぁ……い、いったいどうしたと言うのだ…」
「わ、分からないよ…ただ、すごくアリスを孕ませたいって気持ちが爆発したみたいに大きくなって…そしたら君がキュウキュウって締め付けて来て…」
一旦モノを引き抜いて、状況の整理をしてみよう。
私の翼が生えてきてからギルの様子がおかしくなって、あっという間に初めての射精を貰ってしまった。
この事から推察できることがあるとすれば…
「ギル、じっとしていてくれ…」
「えっ? 何を…はぅあ!」
やはりそうだ。
精を吐き出してすっかり役目を終えていた彼のモノだったが、私が少し触れてやるだけで一気に膨れ上がってすぐにでも私の膣をまた突いてやろうとばかりに脈打っている。
だが、これだけでは確証足り得ない。
「…んっ…ぅぐ…」
「アリス…?」
自分の物だというのに、まるで今しがた移植したかのような違和感が身体に残ってしまう。
ぎこちないとは言え、どうにか翼を仕舞い込んで、もう一度彼の腫れ上がった逸物に手を伸ばす。
「…っ……どうだ…?」
「うっ……き、きもちいいよ…?」
「それだけか…?」
「それだけ…? あぅっ!」
どうやら私の予想は当たっていたようだ。
翼を仕舞ってしまえば、彼は喘ぎこそするものの理不尽なムラっ気から襲ってくるような事はしてこない。
そこで、唐突に翼をもう一回出してみると…
「はぅぅっ!! はぁ…はぁ…あ、アリス…ありす、ありすぅぅ!!」
「んひゃぅ! か、顔にかかったではないk…ひゃんっ!」
一度翼を出してしまえばこの通り。
息を荒げて私を押し倒したかと思えば、私の胸に彼は自分の逸物を押し付けてきた。
「いいよねっ…いいよねっ…」
「……あぁ、いいぞ…存分に…んはぁ…」
半ば無理矢理に服を脱がされると、まるでオモチャか何かに擦り付けているかのように乱暴に挟み込んで、犬のように激しく腰を振ってくる。
顔に掛かった精液の匂いが私の意識を蕩けさせてしまいそうだ。
気が付けば胸を揉まれている事に身体が痺れてしまいそうな程の快感を感じてしまっている私が居た。
これでは催淫されてしまった彼に何も言えないではないか。
「はぅっ…アリス…アリスぅ…うあぁぁぁ!!」
「ちょ、まっ…んうぅぅぅっ?!?!」
まさか私が、男の精液を飲んでしまう日がこようとは…
胸から手を離したかと思えば、ギルは今度は私の頭を引っ掴んで口の中へと亀頭を捻じ込まれてしまう。
鈴口が舌に触れた時点で限界だったのだろう逸物は、溜め込んでいた精液のありったけを私の口の中へ注ぎ込んでくれる。
「んぐぅぅぅ……んぅっ…んっ…」
射精の最中だというのに、ギルは何度も口の奥へ亀頭を押し付けてくる。
その度にビュルビュルと精液を流し込まれて私は窒息してしまいそうだった。
苦しい筈なのに、同時に精液を呑み込む度に感じるこの高揚感は何だ。
まるで吸血した時のようではないか。
「……じゅるっ…」
「はぅあ!!」
まさか、亀頭に舌を這わせるだけで精を吐きだしてしまうとは思わなんだ。
それとも単なる絞り粕なだけだったのだろうか?
「んぐっ……ぷぁ…はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…はぁ……すっごいよぉ…アリスぅ…」
あぁ、ダメだ。
名前を呼ばれただけでもイッてしまいそうだ。
酒に酔うなんて物じゃ無い。
もっとキツい何かが私の自我を蕩けさせてしまう。
気が付けば、さっきまで私が横になっていた場所にはギルが倒れ込んでいた。
ついさっきまでとは体勢が全くの逆である。
いくら華奢とは言え、私だって吸血鬼なのだ、人間一人を持ち上げる事など造作もない。
「ギル…まだ行けるか…?」
「はぁ…はぁ…す、少し休憩したい…うぐぁ!」
すっかり萎えていた逸物も、指で一撫でしてやればもう元気を取り戻していた。
私が翼を仕舞っているのにも関わらず、だ。
つまりは催淫など関係なしにまだまだ私との情事を楽しみたい気持ちが彼にもあるのだ。
それが分かっただけでも胸が高鳴ってしまう。
「なんだ、ここはすっかり元気ではないか」
「そ、それはキミが…はぅ…」
嘘つきめ。
悪い嘘つきには、お仕置きが必要だろう。
この私自らが、貴様に罰をくれてやる。
「そぉら、一気に食って…んほぉぉぉっ!!」
「うあぁぁぁぁ!!」
……調子に乗り過ぎてしまった。
いくら既に濡れているからと言っても、やはり一気に入れるのはよくないな。
きっと今の私は、乙女がしていてはいけないような酷い顔をしているだろう。
涙や鼻水でぐちゃぐちゃとかそう言うのではなく、善がって表情そのものが歪んでいるとでも言えばいいだろうか。
「ぎりゅっ! ぎりゅぅぅ! んぎもちぃぃぃ!」
「あ、ありっ…ありすぅぅっ!!」
何度も腰を上げては、抜けてしまう寸前でもう一度腰を一番奥まで沈める。
それだけでも狂ってしまいそうな快感が私をおかしくしてしまいそうだというのに、更にその動きをここまで速く動かせたのかと思う程のスピードで腰を叩きつけるように振り続ける。
「ごりごりっ!! ごりごりってぇぇぇ!!」
「ぐっ…うぅ……うあぁぁぁ…」
肩こりの酷い箇所を砕くように抑え込むと、ゴリゴリとした感触で解されていく感触がある。
あんなのとは比べ物にならない程の快感が腰から脳まで一直線に伝わってきてしまう。
これではだらしなく射精していたギルとなんら変わりないではないか。
「んひんっ!! らしてっ!! ぎりゅっ…どぷどぷぅって……らしてへぇぇ!!」
「あぁ…アリス…っ!! で、出る…でりゅぅぅぅぅ!!」
まさか、胸を揉まれただけで果てる準備が整うとは思っても見なかった。
よくよく考えてみれば、自慰の時によく胸も弄っていたからこその感度だったのかもしれない。
その刺激のおかげで膣壁をキュンキュンと締めつけてやればギルもそれに応えて一際深く腰を捻じ込んで子宮にビュルビュルと射精してくれているのがよく感じ取れた。
こんなの射精されてしまっては、すぐにでも孕んでしまいそうだ。
「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
十二分に精液を呑み込んで、快楽の果てもしっかりと掴んできた私はすっかり疲弊していた。
ヴァンパイアが疲れているなど笑い話にもならないではないか。
だが、疲れて倒れ込んだギルの胸は、きっとどんな布団やベッドよりも心地の良い場所だっただろう。
注ぎ込まれた精液が、私の噴き出した愛液と混ざりながら垂れ流しになっているのを感じ取りさえしなければ、幸せの絶頂に浸ったままだっただろう。
「んぅ…はぁ…はぁ……こんなにも…出してくれたのだな…」
少々残念と思う気持ちはあるが、ずっとヌメヌメした感覚のままで居るのもそれはそれで気持ち悪い。
繋がりを解くと、最初に私達がキスしていた時と同じように粘り気の強い一本の糸が線を引き、やがてどちらからともなくプツンと切れる。
まだ私の身体は物足りないらしく、膣口はヒクヒクと動いて肉棒を求めていた。
それを指でこじあけてやれば、私たちが確かに達した証が、ドロドロと混ざり合いながら流れ出て行く。
「これが…子宮に…」
下腹部をそっと撫でてみると、かすかに膨らんでいるのが感じ取れた。
満腹になっている訳でも、尿意を催している訳でも無い。
確かに子宮の中に、子宮を膨らませてしまう程に大量の精液が流し込まれているのだ。
「……もう…逃げられんな…」
「はぁ…はぁ…最初から…逃げるつもりなんて…ないよ…?」
起き上がったギルが、私の手を取り手繰り寄せる。
そしてそのまま、自分の腕の中へと招き入れて互いに抱き合う姿勢となった。
正直な所、まだ顔の精液も拭い切れていないし、胸にだって精液が垂れてしまっている。
そんな状態で彼と抱き合う事には抵抗があったが、耳元で「おいで」と言われてしまえば、それに抵抗する事が出来ない。
「……ギル…」
「うん?」
「今日はこのくらいに…きゃっ」
まさか、私が疲弊していたとは言え人間に引き倒されてしまうとは…
しかも「きゃっ」なんて少女のような声を上げてしまって…なんとも恥ずかしい。
不意だからこそ出来る技とも言えようか。
そんな事より、一瞬にして体勢が元に戻ってしまったではないか。
私は倒れ、ギルが上から覗き込むように身体を被せて来て…
「…嘘つきは、なんだったっけ?」
「ひゃんっ! ぎ、ギル…私はお前の事も思って…んむ!」
すっかり彼のペースになってしまっているようだ。
秘部を指でクチュクチュと掻き回され、同時に唇もキスで塞がれてしまう。
空いた片手は私の胸を執拗なまでに揉んでいて、ジタバタと暴れようにも快感が電気のように走り抜ける度に身体が硬直してしまってロクに動けない。
「んっ…むぅぅ……ぷぁっ…ぎ、ギル…ギルっ! ギルゥぅぅぅぅう!!」
「まだまだ行けそうな気がするんだ…とことん付き合ってもらうからね?」
それからの責めは行ったり来たりだった。
私がギルをこれでもかと絞ったかと思えば、今度はギルが私をこれでもかと犯しイキ狂わせる。
そんなやりとりは、昼食になっても姿を見せない事を不審に思ったメイドが私の部屋に入ってくるまでずっと続けられたのだった。
一つ心配な事があるとすれば、ギルが私の魔力のせいでおかしくなってしまわないか、という事であろうか。
どうか、ギルとの子を孕んでくれている事を願うと共に…
つづく
17/05/07 20:59更新 / 兎と兎
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