連載小説
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おまけ:後日談 魔生の本懐 〜深海の夫婦生活〜
 アクトが母親と共に海中都市のレイの家へと移り住んで数日。三人は外出することもせずに、互いの肉体を貪るだけの爛れた性活を送っていた。
 魔物娘は精液さえ補充できれば食事の必要は無く、魔物娘に近づいた男性、インキュバスもまたつがいである魔物娘と性交さえしていれば生命力を補充できる。魔物娘の夫婦にとっては、もはや食事も睡眠もどうしても必要というものではなかった。
 だからと言って、食事も睡眠も魔物娘にとっても全く意味の無い行為だというわけでもない。
 食事については、栄養補給としてはもちろん、魔物娘達にとってはそれ以上に交わりを豊かにするための準備として大きな意味を持っている。魔界産の食材には催淫成分など様々な成分を含むものがあり、摂取することで普段以上に性交の際の官能を高めたり、精の味を精錬したり、気分を昂らせたりと言った事が可能になるとされている。
 睡眠という休憩時間もまた、繋がっていない時間があるからこそ愛する者との交わりの素晴らしさを実感出来るとして重要視されている。
 眠っている相手を犯す睡姦も魔物娘達の間では当たり前のように行われる行為の一つでもあり、眠らなくても済むからといって全く睡眠を取らない魔物娘夫婦は少なかった。
 だが、男と女としての初めての共同生活、いわば新婚生活を送っている三人にとっては、食事も睡眠も、時間の浪費でしかなかった。
 魔性の存在へと生まれ変わった彼らにとっては、別れを気にせず常に愛するもののそばに居る事が許された彼女らにとっては、何を置いても互いの身体をよく知り、そして交わり合うことが最優先だった。
 食べるなら愛しい人の身体を、眠るなら愛する者と交わりながら。もっともっと気持ちよく、心さえとろけて、溶け合ってしまうような交わりを。二人ではない、三人だからこそ掴める快楽と幸福を求め続けていた。


 今、アクトの目の前には二匹のスキュラが並んでいた。そのたわわな乳房を腕組みで支えながら、にじり寄りながら熱っぽい視線を送ってくる。
「ねぇ、アクト」
「どっちのおっぱいが好き?」
 悩ましい吐息のような声が、右から、左から、アクトの耳をくすぐる。
 アクトは顔を真っ赤にし、目を反らそうとする。……が、雄の本能は悲しいかな、四つ並んだ丸々と熟れた果実からは、どうしても目を離す事が出来なかった。
 大きさは、パスの方が大きい。少し弛みかけつつも、しかし均整の取れた、熟れた雌の魅力が匂い立つ素晴らしい乳房だ。
 対してレイの乳房は、愛撫するにちょうどよい大きさで、形も素晴らしい。美しさと淫らさを兼ね備えた蠱惑的な乳房だった。
 どっちにも触りたいし、吸い付きたい。
 そんなアクトの内心を察したかのように、二人の女は目くばせすると、互いの触手をアクトの両腕に絡み付かせ、無理矢理に自分達の乳房を握らせる。
 パスの乳房はひたすら柔らかく、食い込む指を受け入れていやらしく形を変える。
 レイの乳房は肌の滑らかさと癖になる弾力を持って、撫で回しているだけで手の平が心地よい。
「ねぇどっちが気持ちいい?」
「どっちのおっぱいに吸い付きたい?」
「母さんのおっぱいよね? 赤ちゃんの頃は夢中になって吸っていたもの」
「でも今は私でしょ? だって交わるとき、いつも止めてって言っても聞かずに跡がつくくらい強く吸うもの」
 アクトは何も言えない。本当はどっちも好きだし、揉みしだきたいし、吸い付きたい。けれどそれでは選んだことにはならない。だが、片方を選ぶことも出来ない。
 女達は目を細めてアクトの事を眺めていたが、そのうちどちらからともなく吹き出し、笑い始める。
「うふふ。アクトったら真面目ね。どちらも好きなら、それで構わないわよ。本当に、困った時のアクトの顔は可愛いわ」
「うん。今のアクト、とっても可愛かった。やっぱりアクトは子供のころから変わらず可愛いなぁ。食べちゃいたくなる」
「二人とも可愛い可愛いって、おれはもう立派な男なんだから、そんな子供扱いするのはやめてくれ」
「あら、私にとってはいつまでもアクトは可愛い息子よ? ふふ、今は息子の息子に可愛がられちゃっているけど」
「うん。私も少年のころのアクトを忘れられないなぁ。顔も体も、アソコも立派になって、好きにされちゃう事も増えたけど、私にとってはアクトは可愛い少年なんだよぉ」
 アクトは一人、唸る。
 そんなアクトに、二人は顔を寄せてくる。
 息が触れる程近づき、そしてアクトの唇に、二つの唇が重なる。
 アクトは口を開いて舌を出した。それに応えるように女達も舌を伸ばし、絡ませ合せる。
 舌で、唇で、三人はそれぞれの柔らかさを堪能する。舌が、唾液が絡み合い、唇が擦れる。三人は顔中よだれまみれになりながらも、更にそれを舐めとりながら舌交合をし続けた。
 やがてアクトの雄が勃起すると、パスとレイは互いの指を絡めて手を繋ぎ、そそり立ったアクトをその中に包み込んで扱き上げ始める。
「んちゅ」
「ぷはぁ」
 アクトの四肢に触手が絡み付く。そこから徐々に、触手がアクトの身体を包み込んでゆく。二匹のスキュラの触手は合わせて十六。その数は四肢だけでなく、全身を覆い尽くしてねっとりと愛撫し、責め上げるのにも十分な量だった。
「ねぇ、アクト」
「全身もみくちゃにされるの、気持ちいい?」
 右耳を熱い吐息がくすぐり、左耳を甘い囁きがとろけさせる。
 アクトの全身を、粘液にまみれたスキュラの触手が包み込む。優しく撫で回し、ねっとりと揉み上げ、吸盤で吸い付きながら締め付け、敏感な部分を舐めしゃぶるように蠢き回る。
 触手の感触も、二人それぞれで少しずつ違っていた。
 パスの触手は力強く、吸盤を使ってでもアクトの身体にくっついていようとする。一方でレイの触手はしなやかで、吸盤はアクセントに使う程度で、アクトの身体を撫でまわす事を好んだ。
 確かに触手も愛撫の仕方も違っている。しかしこう全身を覆われ、同時に愛撫されては、快楽が絡み合いすぎてどれがどちらの触手なのかも判別が出来なかった。
 とにかく気持ちいい事しか分からなくなる。一度に二人の妻から責められるという、その背徳的で淫靡な快楽に身を任せるしかなくなる。
「我慢しなくていいのよ」
「好きな時に出していいよ」
「二人とも、おれは、オモチャじゃ、ないんだぞ」
「嫌ねぇ。母さん達はアクトを気持ち良くさせたいだけなのよ」
「だってアクトの気持ちよさそうな顔、凄く可愛いし」
「ねぇレイさん。こういうのはどうかしら」
「あらお母さん、いいですね。素敵です」
 アクトの身体の一部から触手が引いていく。天井に向かってそそり立つ男根だけが、触手の中から露わになった。
 二人の女はそこに身を寄せてゆくと、自らの乳房を押し付けた。
 アクトの欲棒はたわわな乳房の中に沈み込み、母性の象徴である温かで優しい海の中でもみくちゃにされる。触手よりも締め付けは弱かったが、その柔らかさと見た目の余りの卑猥さは、触手責め以上にアクトの雄を刺激した。
「ねぇ見える? アクトのおちんちん、おっぱいの中に隠れちゃったわよ?」
「わぁ、アクトまっかっかだよ。やっぱりアクトは最高に可愛いなぁ」
 二人は目くばせし合うと、今度は少し身を離して、露わになった男根に二人がかりで口淫を始める。
 一人が表側を舐めれば、もう片方は裏に口づけする。一人が亀頭を責めれば、もう片方は睾丸を甘噛みする。それぞれ異なる唇が、舌が、情熱的に、愛おしむ様に、欲望のままに、労わる様に、アクト自身を包み込んで舐め上げる。
 ぬるぬるねちゃねちゃという触手の奏でる淫らな水音の中に、ぐちゅぐちゅじゅるじゅると雄を貪る雌欲の音が混じり合う。
「もう、我慢、出来ない……。出るっ」
 左右からかりを責められ、吸い付かれた瞬間、アクトのそれが大きく脈動し始め、白濁をほとばしらせる。
 みっともなく跳ねまわりながら粘ついた精液を勢い良く噴き出し、女達の美しい顔を穢してゆく。
 女達は頬を上気させ、舌を伸ばし、歓喜の表情でそれを浴びた。お互いの顔に掛かった精液でさえももったいないとばかりに、互いの顔に口づけて雄汁を啜った。


 全身に射精後の気怠さに広がってゆく。共に暮らし始めた当初は繰り返される搾精に動けなくなってしまうこともあったが、今ではこの感覚を心地良いとさえ感じられるようになっていた。
 このままこの感覚に身を任せるのも悪く無かった。だが、いつまでもやられっぱなしというのも男の気持ちとしては面白く無い。
 とはいえ、一人で同時に魔物娘二匹を相手にするというのは、流石のインキュバスとはいえ分が悪い勝負だった。
 ただし、策や道具があれば話は別だ。
 夢中になって精液を啜り合う女達の隙を、アクトは見逃さなかった。
 するりと触手の拘束を抜けると、部屋の戸棚へと駆け寄る。
「あらアクト。どこに行くのよ」
「もっとしようよぉ。こんなちょっとじゃ足りないよぉ」
 アクトは何も言わずに振り返る。
 男の表情を見るなり、女達の顔から急に余裕が消える。何か悪いことをしてしまっただろうかと、怯えたような顔色になる。
「あ……。母さん達との交わり、嫌になっちゃったの? 調子に乗っていたかもしれないけれど、私達は、その」
「嫌だったわけじゃ無いよね? だって毎回、アクトも気持ち良かったもんね。……ご、ごめんなさい。謝るから、そんな怖い顔しないでよぉ」
 アクトは首を振って、身を堅くする二人を見て表情を緩める。
「気持ち良かった。凄く良かったよ。別に怒ってないし、飽きても無い。もっと二人が欲しくて仕方が無いくらいだ」
「だ、だったらどうして逃げたの?」
「そうだよ、こっちに戻って来て?」
「逃げたんじゃない、あるものを取りに来たんだ。今から戻るよ、これを飲んだら」
 アクトは戸棚から小瓶を取り出すと、蓋を開けて一気にその中身を呷った。
「それは!」
「まさか!」
「そう。強力な魔法薬だ。海の世界に適応する儀式のときに、シー・ビショップさんがくれたんだよ。『スキュラ二人の相手をするのは大変でしょう。両方いっぺんに可愛がってあげたいときは、是非これを使ってくださいね』って」
 言っているそばから、アクトの身体に変化が起き始めていた。
 その両手足から、腹部や背中から、様々な形をした触手が生え始めたのだ。
 先端が男根になっているもの、いぼいぼだらけの太いもの、内側に柔毛を詰め込んだ吸盤のようなもの、刷毛のように細やかな毛を生やしたもの、中に無数の舌を生やしたようなもの。どんな穴にでも滑り込める程細長いもの。それ以外にも、様々な、見るもおぞましい触手が生えてゆく……。
 その数は、軽く二匹のスキュラの触手の合計を凌駕する。
「魔界の触手薬と強壮剤を混ぜあわせた特別製らしい。責められる一方じゃつまらないからな。おれだって、母さんの恥じらう顔や、レイの逝くのを堪える顔が大好きなんだから」
 アクトの身体から、人の輪郭が失われてゆく。
 だがアクト自身には何の恐怖感も無かった。ただ自分が大きく広がってゆく感覚だけがあった。
 教わらずとも、既に全ての触手の動かし方を理解していた。触手にはそれぞれ触覚だけでなく、触れたものの匂いや味を細かく感じ取る嗅覚や味覚も備わっていたが、それすらも全てつぶさに感じ取れていた。
 人間だった頃にいきなりこうなったら意識が振り回されてしまっていたことだろうが、魔物に近しい存在、インキュバスとなっている今は、全ての感覚を制御することが出来ていた。
「さぁ、覚悟はいいか。二人とも」
 今やアクトは、触手の塊から胸から上と両腕を生やした異形の姿に変じていた。しかしスキュラ達はその姿に圧倒されながらも、恐怖よりむしろ何かを期待するかのような表情で身体を震わせていた。
「どうぞ、私を好きにしてください」
「いいよアクト。無茶苦茶にして」
 触手がしなる。アクトは音も無く魔物娘達に忍び寄ると、自分がやられたように彼女達の触手一本一本に自身を絡ませ、じわりじわりとスキュラ達を拘束していった。
 スキュラの触手に、アクトの触手が絡み合う。スキュラ達は触手を波立たせるが、アクトの触手もまたうねりながら巻き付き続ける。その様は、なめくじの交尾を思わせた。
 まだ性器どころか、上半身にさえ触れていないというのに、女達は白い肌を上気させ、びくんびくんと身体を振るわせ始める。
「何、これ。触られているだけなのに。身体が……」
「いやぁ……。身体が、反応しちゃうよぉ」
 スキュラ達は未知の感覚を恐れるように慄くが、既に身体中に触手を巻き付かれてしまった今となっては、どんな抵抗も無意味だった。
 アクトの雄の形をしたそれが、吸盤に先端を擦り付ける。無数の舌の塊のようなそれが、スキュラの肌を嘗め回す。無数の触手が束になって、スキュラの触手を絡め取る。
「ぃや……。あっ」
 先に逝ったのは、パスの方だった。粘膜同士が触れ合う人外の感覚に、つい最近まで人間だった精神は敏感すぎたのだった。
 彼女は身体を痙攣させながら、雌穴からだらしなく愛液を滴らせる。
「気持ち良さそうだね。母さん」
 彼女は唇を噛み真っ赤になって顔を逸らす。目元には涙さえ浮かんでいた。
 そんな中、レイもまた絶頂を迎えようとしていた。
 だが頂きに手が届きかけた寸前、アクトの触手が動きを止めて高みから引き摺り下ろされてしまう。
 大きな喪失感と虚しさの中で、レイもまた涙目でアクトを見上げた。
「あ、アクト、私も……」
「レイとは、もうちょっとギリギリの感覚を愉しみたい。いいだろ」
「そんなぁ。う、あぁ」
 落ち着きを取り戻し掛けると、再び触手の動きが再開する。
 レイは頬を染め、声を上げる。
「そろそろ、こっちにも欲しくなって来ただろう」
 更にアクトの触手が伸び、女達の両腕を縛り上げる。触手の群れの中でも特に柔らかく、ともすればスライムのような質感のそれが手首に、腕に絡み付き、天井から吊り下げているかのように両腕を拘束する。
 無防備になった脇に、乳房に、脇腹に、触手達が近づいてゆく。
 細やかな柔毛に覆われたそれが腋の下でのたくり回り、脇腹や乳房をいびつに蠢くそれが巻きつき縛り上げ、無数の襞を内包した口を持ったそれが乳首に吸い付く。
 パスは再び、強制的に更なる高みへと押し上げられる。全身を痙攣させ、無茶苦茶に身体を揺り動かすが、当然全身を絡められた状態ではそんな抵抗は無意味だった。
 その様は、アクトの目にはもはや歓喜に震えながら男を誘っているようにしか映らない。
「あ、あ、あ、だめ、もう、許して。許してぇ!」
 そしてついにその口にまで、無数のいぼで覆われた触手が押し込まれる。
「ね、ねぇ、アクト、あ、あたしも……」
 一方レイは未だに絶頂を迎えられずに居た。全身の責めは更に激しくはなったものの、逝く寸前になると刺激を弱められてしまうのだ。
 レイの弱いところも強いところも知っているアクトだからこそできる責め方だった。彼女は既に全身汗だくで、息も絶え絶えだった。ごちそうに手が届く瞬間のおあずけを繰り返されて、頭の中はもう逝く事しか考えられなくなってきていた。
「そうだな。どうしようかな」
 アクトは女達の腹部に触手を這わせる。その先端を少しずつ下ろしてゆき、淫らな粘液でぐしょぐしょのそこを何度もなぞって見せる。
 その際、片方の女の陰核をぐりぐりと刺激しては、もう片方の女には充血したひだひだをなぞる程度に留める。
「やめ、やめて。もうやめてぇ」
「もっと、もっとぉ。もっと欲しいのぉ」
 女達はもう、十分に食べごろを迎えていた。
 無数の触手がよだれを垂らす中、中からぬるりと伸びて来たのは、アクトが自分の自身を模して産み出したモノだった。触手が全て自分自身だったとしても、やはり最後は自分本来の形で女を満たしたかった。
 アクトは妖艶にぱっくりと開ききった雌貝の中心を狙い、そして一気に貫き、喰らいついた。
「「あ、ああああっ」」
 艶っぽい喘ぎの二重奏が、部屋の中に木霊する。
 その声音に悦んだ触手達が更に活発に蠢き、繰り返し雌穴を出入りしては、激しく淫らな潮をまき散らした。
 アクトはスキュラ達を責め上げながら、それぞれに異なる女の味を堪能していた。何しろ全ての触手には味覚と嗅覚も備わっているのだ。アクトはまさに文字通り、全身を通して肌で二人を味わい、匂いを嗅いでいた。粘膜同士が擦れる際の音でさえ、皮膚の震えで感じていた。
 その官能は、一人の人間の脳では理解しきれぬほどの快楽だった。それでもアクトは本能的に二人を責め続けた。
 そして、ついに脳が快楽で焼き切れた瞬間。
 アクトの全ての触手が、大量の白濁を吐き出した。
「やぁ、な、なにこれ、おなかが、ふくれて……。はれつしそう」
「おまんこ、こわれちゃうぅ。あかちゃん、できちゃうかもぉ」
 前から、後ろから。さらには口からも触手が侵入し、精液を浴びせかける。
 全身どろどろになるまで雄汁をまき散らしても、しかしそれでも触手達は力を失ってはいなかった。匂いを擦り付けようとするかのように、精液まみれの触手は更に強く女達の身体に巻き付き始める。
「ああぁ、まだ終わらないのね、足りないのね、アクト」
「いいよ。アクトの気の済むまで、好きにしてぇ」
 愛する妻達のうっとりした視線を受け、アクトは本能のままに再び触手を蠢かせ始めるのだった……。


 その夜。否、夜を過ぎ、昼になっても終わらず、ただただ薬の効果が続く限り、彼らは交わり続けた。
 その激しさは、ご近所一帯の魔物娘が揃って発情してしまい、辺りに魔力が満ちて一時的に夜のように薄暗くなってしまう程だったという。


 …………


「あー。この間の薬、ちょっと強くし過ぎたかもしれませんね」
 魔力の闇から離れながら、薄青色の魚の半身を持つ人魚、シービショップは、曇り始めた眼鏡を押さえた。
 もぞもぞと股間を押さえながら、唇を噛んで涙目になる。
「いつも祝福するだけ、というのも切ないですね。……ポセイドン様。どうか私にも、良い出会いをお与えください」
 彼女は身をよじりながら海の神に祈ろうとする。
 が、元々魔力に対する感能力が強い彼女は、交合により生じた周囲の魔力が伝達する性的な官能を敏感に感じ取ってしまい、祈祷に集中する事は中々出来なかった。
 と、その瞳が海上に揺れる一艘の船を捉える。
 己の役割と欲望の間で揺れながらも、しかしその身体は着実に海面を目指して泳ぎ始めてしまう。
 こうして海中都市はその勢力を少し広げ、そして何の罪もない漁師がまた魔物によって愛の海へと誘われたのだった。
16/01/01 23:51更新 / 玉虫色
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■作者メッセージ
なお基本的には普段は二人の嫁さんにやられっぱなしの模様。

どうせ触手が出てくる話を書いたのなら、徹底的に触手が絡むエロい話も書いてみたいと思って書いたのがこのおまけです。
なんだか色々過剰にしすぎて、見直しているうちにエロいのかどうかもよく分からなくなってしまいましたが……。

楽しんでいただけていたら何よりです。
あとはもう一本おまけとして、前日談を投稿して完結にしたいと思っております。そちらもお付き合いいただけると嬉しいです。

ここまで読んで下さりありがとうございました。

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