読切小説
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遠くて近きは男女の仲
高校に入って二回目の夏休み、それも残り一週間になっていた。
俺は最後の一週間をゆったりと過ごそうと考えていた、まぁ考えるだけでゆったり過ごす事なんて出来ない事は分かっている。
「ショーちゃん、たすけてー。」
毎年、課題をやらないで俺に助けを求めるバカがいるから。

「ボクの一生のお願い、ショーちゃんの課題を写させて下さい。」
俺の目の前にいる銀髪のショートヘアのコカトリスが翼を合わせて頼み込んでいる。幼馴染の石川 琴理(いしかわ ことり)だ。正直な所、琴理はコカトリスじゃなくてバカトリスって言う新種なんじゃないかと思うぐらいバカだ。
「……お前の一生は何回あるのか俺は疑問に思うよ。課題くらい計画を立ててやればいいじゃないかって言っても無駄か、毎年言ってるのにこれだもんなぁ。」
毎年二回、夏休みと冬休みに毎回同じことを言うんだから琴理はバカトリスに違い無い、そうじゃないと他のコカトリスに失礼だ。
「バカにしないでよショーちゃん、ボクだって計画は立ててるんだから。」
「計画通りにできなければ意味が無いだろバカ、それに俺の課題を写すだけだとお前のためにならん、だから手伝ってやるが写させはしないぞ。」
こうして今年も琴理と一緒に勉強会が始まったのだった。







「同衾ってどんな意味?教えてショーちゃん。」
「二人以上が一つの寝具で寝ることだ、それくらい国語辞典に載ってるだろう。」
「だって手伝ってくれるって言ったじゃん!」
「全部の答えを俺が言うのは手伝うとは言わんぞ。」
「だって解んないんだもん。それに現代文の課題だけエッチなのばっかだし、調べるの恥ずかしいじゃん。」
だったら異性の俺に聞く方が恥ずかしくないか?と俺は思いたい、ってかコカトリスが男と二人っきりで恥ずかしがらなくていいのか?とも思ったが琴理はバカトリスだから大丈夫か。
「まぁ問題に明らかにアレ系が多いのは先生の種族がメロウだからじゃないのか?」
「あの脳内お花畑め、何がしたくてこんな問題を作るのか?あてつけか?恋人がいない組へのあてつけか?」
「常識的に考えて教育だろ、バカトリス。」
「流石にそれは無いでしょ。」
さすがにバカトリスには琴理にも頭に来たか!?
「悪い、謝るよ、ごめん。」
「青姦を使って短文を作りなさい、なんて問題が教育なわけないでしょ。」
そっちか!怒る所そっちなのか!バカトリスって言った方じゃないのか流石バカトリスだ!!
「魔界の方ではそっちの教育が重点的に行われてるんだろ、確か。」
「そうなの?ショーちゃん物知りだね!」
「お前って本当に魔物なのか気になってきたよ、俺は。」
「なんで?女の子が下ネタを嫌うのは普通じゃないの?」
「もういいよ、それでお前ならコウノトリが赤ちゃんを運んでくるっての信じてそうだから。」
「違うの!?コウノトリが赤ちゃんを運んでくるんじゃないの?僕はてっきりそうだと思ってたのに!」
琴理はバカなんだか純粋なんだか、いやバカ且つ純粋なのか?
「話が脱線しすぎたな、いい加減にして課題をやろうか?琴理。」
「課題ヤダー、雑談の方が楽しいー、覚えてろよショーちゃんこの借りは必ず返すからなー。」
「いいからやれ。」








夏休み残り二日だってのに、なんでまだ俺はバカトリスもとい琴理と一緒に居るんだろう?課題は昨日終わったはずなのに。
「ショーちゃん、次はあれに乗ろう、ナガシマショウ。」
なんでフジヤマhighランドに来てるんだよ、しかも二人っきりで。

「友達からフジヤマhighランドのフリーパスの割引券を貰ったよ。これさえあればフジヤマhighランドではボクったらさいきょーだね。」
「へぇ、よかったじゃないか。お前の課題も終わったし誰かと行くのか?」
「うん、友達がショーちゃんと行ってきなって。あとついでに、その夜には赤ちゃんの作り方を教えて貰えって変なの渡された。」
ちょっと待て、その変なのってどう見てもゴムなんですけど。
「いいか、琴理。お前は友達にいじられてるだけだと思うぞ、ってかそれ以外に考えられないよ、俺は。」
「そんなわけ無いよ、だってボクとショーちゃんの仲をもっと良くしてあげるって言われたんだよ。」
「お前はもっと仲良くなると、どんな関係になると思ってんだよ。」
「友達から親友にランクアップします。」
うん、おしいよ、でも違うと思うな。その友達は俺らの仲を恋人にランクアップさせようとしてるんだと思うな。琴理がバカ且つ純粋のバカトリスでなかったら色んな意味でヤられてる所だった。
「まぁ、琴理その変なのは友達から恋人にランクアップ用のアイテムだから返してきなさい。」
「恋人かぁ……それでもいいかな?ショーちゃん面倒見いいし。」
!!なっ何を言い出してるんですか!?このバカトリスは。そもそも俺が恋人になる準備できてねぇよ。
「まぁ、とりあえず恋人云々は置いといて、どうするんだフジヤマhighランドのフリーパス割引券。」
「だから、ボクがショーちゃんと一緒に行く、ちなみに明日に駅に集合だから。」
「ちょっと待ていくらなんでも早すぎないか?割引券の期限だってそんなに短くないだろ。」
「だって暇でしょ?それに善は急げって言うじゃん。」

とこれが昨日の出来事だ。昨日のせいで琴理のことを意識しまくってしまう。人が多いからはぐれないようにって腕を組まされたりして本当に恋人になろうとしてるんじゃなかろうか?
「ショーちゃん聞いてる?ナガシマショウに乗ろうよ。」
「ん?聞いてるよ、でもあれ結構混んでるぞ?」
「混んでるって事は面白いって事でしょ並ぶ価値有り!だよ。」
本当に楽しそうにするなこいつは。そういう所は見てて飽きないな、その時の笑顔は本当に可愛いし。
「お前がそう言うなら並ぶか。」
「やったー。」
琴理は子供のように飛び跳ねて喜ぶ、琴理と恋人ってのも悪くは無いかもしれない。




「ナガシマショウって濡れれば濡れるほど男女の仲が深まるんだって。ショーちゃん。」
「そうなのか、やっぱり合羽は配られるのか?」
「今日は暑いし別に合羽は着なくても良いんじゃないかな?濡れた方が涼しいよ、きっと。」
「そうかもしれんが、まあいいか携帯はロッカーに入れとけば。」
そしてこの時、俺たちはこの時に合羽借りなかったことを後悔することになった。

「予想外に濡れたな。ナガシマショウ。」
「うん、ボクも合羽が無いと、ここまで濡れるとは思わなかったよ。」
俺も琴理もビショ濡れだった、それはもう頭から爪先まで濡れて無い所は無いくらいだ。
「ショーちゃん、この際遊び尽くしちゃいますか?」
「そうだな、そうしますか。」





俺たちは閉園ギリギリまで遊んだ。
「ねぇ、ショーちゃん。デートってこんな感じなのかな?」
帰るときに琴理が俺にそんな事を聞いてきた。
「わからん、俺はデートなんてした事が無かったからな、でもこんな感じだと思う。たぶんな。」
「だったらさ、これをボクの初デートにしても良いかな?初デートがつまんなかったらヤダもん。」
「それって、告白って思って良いのか?」
「彼女がボクでよかったら、ね。」
俺はどうする?答えは決まっているはずだ、断る理由なんて無いだろ?









「琴理はバカだな。」
「そっか、ごめんね変なこと言い出して。」
物凄く分かりやすく琴理は落ち込んだ、今にも泣きそうなくらいだ、そこで俺は追い討ちをかける。







「お前みたいなバカトリスに合せられるのは俺しかないだろ?」
途端に琴理は笑顔になった、でも涙が見えている、追い討ちが効き過ぎたか?
「そっか、そっか。よかった。でも紛らわしい言いかたをしないでもいいじゃん。ボク泣いちゃうよ、ってか泣く。泣くから胸を貸せ。」
そういって琴理は俺の胸に飛び込んできた、幸い今日は気温が高かった為、服は乾いている。
「悪かったな、でもお前のリアクションが見たかった。どうすれば泣き止んでくれる?いい加減、こっちも恥ずかしい。」
「だったらキスして、そうしたら泣き止む。」
そう言って琴理は顔を上げてきた。ここでキスをしなかったらやっぱり男としてだめなんだろうか?
「どうしてもキスしなきゃだめなのか?」
「うん、キスしてくれなきゃだめ。」
「だったら目を瞑っててくれ、恥ずかしいから。」






そして目を瞑った琴理の額に俺はキスをした。琴理にとっては予想外だったようで、驚いた顔をされた。
「なんかズルイってか、せこいよそれは。」
「いいの、お前が場所の指定をしなかったのが悪いんだからな。」
「むぅー、今度はちゃんと口にキスしてもらうからな、おぼえてろよー。」
こうして俺と琴理の初デートは終わっていった。
14/09/17 08:46更新 / アンノウン

■作者メッセージ
後日談

「結局この変なのは恋人にランクアップしたのに使わないじゃん。」
「それはもっと親密な関係になってから使うものだからしまっておきなさい。」
「でも、これを渡してくれた友達って彼氏が居るってことだよね?」
「まぁ、そうだな。」
「だったら使い方を聞いてくれば良いんだ!」
「よくねぇよ、今度教えるから今は聞いてくるな。魔物の癖に性の知識が無いお前が聞いたらたぶんショックを受ける。」
「そうなの?」
「そうだから今は聞いてくるな。」

色々とフラグを壊している翔矢君でした。



デート場所がラージマウスランドではなかったのは作者の地元にフジヤマhighランドがあるからだったり。

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