一輝「旅行先の地酒を頂こうとバーに行ったら地酒以外のものまでついてきた、どういうことなの…」(サテュロス)ジュン「友人とバーに行ったら無理やりに考え方を変えられたよ…」(アプサラス)
※この話は二人が魔物娘に出会う前の導入編です。
※これもまた起こり得た未来の話です。
「これからどうするかな〜?」
一輝は部屋で呟いた。
「デュエルスペースか、バーにも行きたいしな〜。」
一輝はそれから少し考えてどちらにしろ1階まで降りないと行けないと気づいたのでとりあえず1階に降りて考えることにした。
「ジュン、ロビーで一体何をしてんの?」
「食べ歩きに行こうと思ってたがタイミングが測れん。」
「ならデュエルスペースかバー行く?」
「バーへの通り道を少し過ぎたところにデュエルスペースの入り口があるからまずはデュエルスペースだな。」
「そうなってるのか。」
「事前の下調べは大事だ、情報アドバンテージは今の社会だとかなり大事だろうからな。」
「確かに、ならそれで行こう。」
俺達はまずはデュエルスペースに行くことにした。
「誰もいないな。」
「いない。」
「どうする?」
「少し待ってみてから誰も来ないならバー行こう。」
「いいけど俺は飲めないぞ?」
「大丈夫、そこら辺も調べてあるでしょ?」
「まあ食べ物もうまいらしいな。」
「それにソフトドリンクやノンアルコールカクテルもある、それを飲めばいいんじゃないかな?」
「ならそうしようかな。」
10分程待った後誰も来なかったので俺達はバーに向かった。
「さて、何を頼むよ?」
「メニュー見てから考える」
『いらっしゃいませ〜』
「!」
そのバーは魔物娘が経営していた。
「さて、これからどうするか…。」
「地雷踏んだかも…。」
「いや、さすがにTPOはわきまえてるだろ…」
「そう信じたい。」
と話していると先ほど俺達を迎えてカウンター席に案内した魔物娘がメニューを持ってきた。
「ちょっといいか?」
『はい、何でしょう?』
「魔物娘が経営していると知らなかったんだが、あっち方面のサービスはあったりするのか?」
『双方合意なら、もちろんありますよ。』
「分かった、ありがとう。」
俺は彼女が言ったその時に乾いた感じの雰囲気を感じた。
「さて、メニュー来たし早速見よう。」
「だな。」
俺達はそれから少し経って俺はノンアルコールカクテルとおつまみ、及び食べ物を3品、一輝はここの地酒とおつまみのセットを頼んだ。
「さて、これからどうする?」
「それな。」
「しかしいろいろな魔物が居るな、パッと見で分かるのはみんないきなり襲い掛かってくるタイプではないってことだ。」
「だな、後は結構愛神の信者が多いな。」
「俺には関係ないがな。」
「俺にも今のところはないな。」
「しかし、このまま出られるかな…?」
「知らん。」
「お、来たみたいだ。」
『お待たせしました〜。』
「ありがとう、なんかグラス2つ多くないか?」
『マスターからのサービスです。』
「困った、俺は酒が飲めないんだが…。」
『あ、そうですか…』
「なら俺が飲むから大丈夫。」
「頼んだ。」
『ではまた注文がありましたら呼んでください。』
「あ、はい。」
とりあえず俺達は来たものを食べることにした。
「評判通り、酒以外もうまい。」
「そのスペアリブ一切れもらっていい?」
「ならそのチーズと生ハム一つづつとならいいよ。」
「いいよ。」
俺達は野郎だけでもそれなりに楽しくやっていた。
「何か他に頼む?」
「ん〜マスター、今の季節のオススメありますか?」
『私の一存ではこのカクテルがイチオシだね。』
「ならそれ1つ。」
「ノンアルコールカクテルにできるならノンアルコールでもう1つください。」
『君は本当に一滴も飲めないのかな?』
「二十歳になった年の夏に缶チューハイを一缶飲んだら吐きまくった上で翌日頭痛になりました。」
『なるほど。』
「それ以降は飲まないようにしてます、また迷惑をかけたくないので。」
『その事で酒に対して恐怖を持っているみたいだね。』
「情けない話ですがね。」
『大丈夫、ここは飲めない人にも楽しんでもらいたいからノンアルコールカクテルもある。』
「少なくともここの食べ物はうまいです。」
『楽しんでもらうのにはおいしい食べ物も必要だからね。』
「宴かなんかですか?」
『そう、コンセプトは宴なんだ。』
「おいしい食べ物と飲み物、後は魔物的思考ならそこに肉欲が加わるというところですか。」
『そういうことになるね、なかなか分かってるね君は。』
と言うとマスターはカクテルを2つ俺達の前に出した。
『左のサクランボが乗っているのがアルコールありだからね。』
俺は早速そのカクテルを飲んでみた。
「!このカクテル、不思議な味だ。」
『魔界産の果物から作られたシロップだからね、まだ魔界になっていないところでは珍しい味かもしれない。』
「なるほど、どうりで…。」
それからしばらく食べたり飲んだりしていたら一輝が酔いつぶれてしまった。
「ん…。」
「飲み過ぎだ、全く…。」
『飲み過ぎてしまったみたいですね。』
「全く、仕方ない。」
俺は一輝を担いで出ようとすると、マスターが手を貸してくれた。
『彼のことは、私達に任せてくれないか?』
「それは飢えた人達のところに食べ物を投げ込むようなものだろう…。」
『流石に私達でも、酔いつぶれに手を出す程ではないよ。』
「なら任せた。」
俺はもう一輝を助けられないと悟り、少しして一輝は彼女に連れて行かれた。
「さて、会計済ませて帰るか」
俺は金を払って出ようとした。
『待って。』
「あんたは?」
『私はアプサラスのティーアです。』
「で、なに?」
『貴方は愛を信じますか?』
「愛?俺には不要な感情だ。」
『?』
「愛で死人を蘇らせることができるか?虐げられた者達に希望を与えられるか?一生消えない傷を負った者達を助けられるか?」
『え…?』
「愛で救えるなら、それは結構なことだしそう出来るならそうすべきだ、だが愛より報復を選んだ者達にとって愛は綺麗事でしかない。」
『…。』
「俺は愛なんて不確かなものは信じない、仲間達との絆、そして力を信じる。」
『辛いことが、あったんですね…。』
「あんたには関係のないことだ、俺がいくら辛くて苦しくてもあんたには関係ない。」
『でも!』
「あんたらの考えにとやかく言うつもりはない、だが世界にはあんた達みたいに愛を至高のものと考える者ばかりではないことを覚えておいて欲しい。」
『…。』
「もう1つ言うなら、愛を語るなら語る存在が愛に満ちてないと説得力も半減する、これは愛以外にも他のことにも言えることだろうけど。」
『貴方、どうして私が踊っていたときに涙を?』
「単純に感動したからだ、美しい舞だった。」
俺は話を切り上げて部屋に戻ろうとした。
『待って!』
「?」
『貴方に言われたこと、確かにそうかもしれません。』
「どれ?」
『愛を語るなら語り手自身が愛に満ちてないと説得力も半減するってところです。』
「で?」
『貴方に愛する心を取り戻して貰います!』
「…何故そうなる。」
『貴方からは愛の感情を無理矢理押さえ込んでるように見えました。』
「だとしたら?」
『貴方に愛を取り戻して貰います!』
「いらん。」
『即答しないでくださいよ…。』
「愛なんて不純物があると間違った決断をして仲間を守れない、だから不要な感情だと言ったんだ。」
『?』
「愛は刃を鈍らせる、報復者にとっては致命的なことだ。」
『だったら報復を止めれば済む話じゃないですか?』
「はっきり分かった、あんたも所詮産まれながらの強者のものさしでしか物事を測れない。」
『?』
「報復者の理由も聞かずにそれを力で押さえ込む、これが強者の横暴と言わずに何と言うんだ?」
『…。』
「まああんた達に言っても全く意味はないだろうけどな。」
俺は今度こそ帰ろうとした。
『可哀想な人…。』
「憐れみのつもりか?」
『私達がもっと早く気付けていたらこんなことには…。』
「何故あんたが泣く?直接苦しみを味わった訳でもないのに。」
『もっと早く気付けていたら貴方達がそこまで力にこだわる前に何とかできていたのかもしれません。』
「だがそうはならなかった、あんたにとっては悲しいことにな。」
『今からでも間に合わないんですか?』
「いや、あんた達が望んだ方法ではないかもしれないが手はある。」
『?』
「俺達をどうこうするより先に俺達のような人間が生まれないように世界を変えて行けばいい。」
『これ以上増やさないように、ですか。』
「そして報復者達が大願成就したところに愛する心を取り戻させて徹底的に与えればいい。」
『?』
「ここであんた達が報復を止めたら強者の横暴になるがな。」
『…。』
「力なき正義は無意味だ、いくら正しいことをしても力がなければ無意味だ。」
『?』
「力がある奴は自分に都合の悪いものを隠して切り捨てる、代表的なのは教育者や政治家だ。」
『それは何となく分かります。』
「分かっていても黙認して弱い者を切り捨てる、そういう奴らを潰して何が悪い?そういう奴らを潰さずに平和があると思うか?」
『…。』
「この世界が弱肉強食だって言うなら自分が食われる立場になっても同じ口を叩けるか?という話だ、あくまでも無差別攻撃ではないんだよ。」
『…。』
「じゃあな。」
俺は支払いを済ませて店から出た。
一方その頃、一輝は…。
「ん、寝ちゃってたのか。」
『お目覚めみたいね、気分はどう?』
「え」
一輝はバーのマスターに膝枕されていた。
『思ったより早いお目覚めだ。』
「失礼しました。」
『何かの縁だ、私と飲み直さない?』
「いいよ。」
『なら君、ワインは大丈夫?』
「だいたい大丈夫。」
『はい。』
一輝は早速ワインを飲んだ。
「これは…。」
『お味はいかが?』
「今までに味わったことのない味だけど一番美味しい。」
『それは何より、これは私のオリジナルワインなんだ。』
「お宅ブドウ農家か何か?」
『私はサテュロスだ。』
「なるほど、だから酒を作ってたのか。」
『私の名前はカルア、君は?』
「一輝って名前。」
『そうか、君は魔物に対してどんな感情を?』
「種族は関係ない、大事なのはその個人が自分に合うかどうか。」
『なるほど。』
「合うならそれでいいし合わないなら離れればいい。」
『確かに、そうだね。』
「あいつももう少し考え方を軟らかく持てばいいのに。」
『君の連れのことかな?』
「そう、あいつの言ってることややってることは間違ってはいないしその権利もあるけど力にこだわり過ぎだと思うんだ。」
『なるほど、彼はやっぱりそういうタイプか。』
「?」
『魔物の観察力を侮らない方がいい、彼がどんな人間かはだいたい分かったつもりだ。』
「…。」
『きっと辛いことを経験したからこそそういう人たちを助けたいんだと思うよ。』
「俺も詳しくは知らない、ただ…。」
『ただ?』
「あいつは時折、とんでもない無茶をするんだ。」
『何となくそれは分かるよ、仲間を守る為に無茶をしたりとか考えられそうだ。』
「実際、高校の時にも一回大怪我してるしなぁ…。」
『というと?』
「仲間のために行かなければいけないって言って授業中に飛び出して行ってそれから戻って来た時には頭から血を流してるわ所々アザになってた…」
『一体何をしてきたんだ…?』
「聞いても詳しくは教えてくれなかったけど内臓の一部も損傷してたらしい…」
『結構な負傷だ…』
「ただ同日に二人、ある学校の生徒3人が再起不能になってたなぁ…」
『え…?』
「そいつらはその学校で起こってたいじめの首謀者だって話」
『彼なら、やりかねないな…』
「あいつを、止めてもらえないかな…」
一輝達も話がまとまって来たようだ。
※これもまた起こり得た未来の話です。
「これからどうするかな〜?」
一輝は部屋で呟いた。
「デュエルスペースか、バーにも行きたいしな〜。」
一輝はそれから少し考えてどちらにしろ1階まで降りないと行けないと気づいたのでとりあえず1階に降りて考えることにした。
「ジュン、ロビーで一体何をしてんの?」
「食べ歩きに行こうと思ってたがタイミングが測れん。」
「ならデュエルスペースかバー行く?」
「バーへの通り道を少し過ぎたところにデュエルスペースの入り口があるからまずはデュエルスペースだな。」
「そうなってるのか。」
「事前の下調べは大事だ、情報アドバンテージは今の社会だとかなり大事だろうからな。」
「確かに、ならそれで行こう。」
俺達はまずはデュエルスペースに行くことにした。
「誰もいないな。」
「いない。」
「どうする?」
「少し待ってみてから誰も来ないならバー行こう。」
「いいけど俺は飲めないぞ?」
「大丈夫、そこら辺も調べてあるでしょ?」
「まあ食べ物もうまいらしいな。」
「それにソフトドリンクやノンアルコールカクテルもある、それを飲めばいいんじゃないかな?」
「ならそうしようかな。」
10分程待った後誰も来なかったので俺達はバーに向かった。
「さて、何を頼むよ?」
「メニュー見てから考える」
『いらっしゃいませ〜』
「!」
そのバーは魔物娘が経営していた。
「さて、これからどうするか…。」
「地雷踏んだかも…。」
「いや、さすがにTPOはわきまえてるだろ…」
「そう信じたい。」
と話していると先ほど俺達を迎えてカウンター席に案内した魔物娘がメニューを持ってきた。
「ちょっといいか?」
『はい、何でしょう?』
「魔物娘が経営していると知らなかったんだが、あっち方面のサービスはあったりするのか?」
『双方合意なら、もちろんありますよ。』
「分かった、ありがとう。」
俺は彼女が言ったその時に乾いた感じの雰囲気を感じた。
「さて、メニュー来たし早速見よう。」
「だな。」
俺達はそれから少し経って俺はノンアルコールカクテルとおつまみ、及び食べ物を3品、一輝はここの地酒とおつまみのセットを頼んだ。
「さて、これからどうする?」
「それな。」
「しかしいろいろな魔物が居るな、パッと見で分かるのはみんないきなり襲い掛かってくるタイプではないってことだ。」
「だな、後は結構愛神の信者が多いな。」
「俺には関係ないがな。」
「俺にも今のところはないな。」
「しかし、このまま出られるかな…?」
「知らん。」
「お、来たみたいだ。」
『お待たせしました〜。』
「ありがとう、なんかグラス2つ多くないか?」
『マスターからのサービスです。』
「困った、俺は酒が飲めないんだが…。」
『あ、そうですか…』
「なら俺が飲むから大丈夫。」
「頼んだ。」
『ではまた注文がありましたら呼んでください。』
「あ、はい。」
とりあえず俺達は来たものを食べることにした。
「評判通り、酒以外もうまい。」
「そのスペアリブ一切れもらっていい?」
「ならそのチーズと生ハム一つづつとならいいよ。」
「いいよ。」
俺達は野郎だけでもそれなりに楽しくやっていた。
「何か他に頼む?」
「ん〜マスター、今の季節のオススメありますか?」
『私の一存ではこのカクテルがイチオシだね。』
「ならそれ1つ。」
「ノンアルコールカクテルにできるならノンアルコールでもう1つください。」
『君は本当に一滴も飲めないのかな?』
「二十歳になった年の夏に缶チューハイを一缶飲んだら吐きまくった上で翌日頭痛になりました。」
『なるほど。』
「それ以降は飲まないようにしてます、また迷惑をかけたくないので。」
『その事で酒に対して恐怖を持っているみたいだね。』
「情けない話ですがね。」
『大丈夫、ここは飲めない人にも楽しんでもらいたいからノンアルコールカクテルもある。』
「少なくともここの食べ物はうまいです。」
『楽しんでもらうのにはおいしい食べ物も必要だからね。』
「宴かなんかですか?」
『そう、コンセプトは宴なんだ。』
「おいしい食べ物と飲み物、後は魔物的思考ならそこに肉欲が加わるというところですか。」
『そういうことになるね、なかなか分かってるね君は。』
と言うとマスターはカクテルを2つ俺達の前に出した。
『左のサクランボが乗っているのがアルコールありだからね。』
俺は早速そのカクテルを飲んでみた。
「!このカクテル、不思議な味だ。」
『魔界産の果物から作られたシロップだからね、まだ魔界になっていないところでは珍しい味かもしれない。』
「なるほど、どうりで…。」
それからしばらく食べたり飲んだりしていたら一輝が酔いつぶれてしまった。
「ん…。」
「飲み過ぎだ、全く…。」
『飲み過ぎてしまったみたいですね。』
「全く、仕方ない。」
俺は一輝を担いで出ようとすると、マスターが手を貸してくれた。
『彼のことは、私達に任せてくれないか?』
「それは飢えた人達のところに食べ物を投げ込むようなものだろう…。」
『流石に私達でも、酔いつぶれに手を出す程ではないよ。』
「なら任せた。」
俺はもう一輝を助けられないと悟り、少しして一輝は彼女に連れて行かれた。
「さて、会計済ませて帰るか」
俺は金を払って出ようとした。
『待って。』
「あんたは?」
『私はアプサラスのティーアです。』
「で、なに?」
『貴方は愛を信じますか?』
「愛?俺には不要な感情だ。」
『?』
「愛で死人を蘇らせることができるか?虐げられた者達に希望を与えられるか?一生消えない傷を負った者達を助けられるか?」
『え…?』
「愛で救えるなら、それは結構なことだしそう出来るならそうすべきだ、だが愛より報復を選んだ者達にとって愛は綺麗事でしかない。」
『…。』
「俺は愛なんて不確かなものは信じない、仲間達との絆、そして力を信じる。」
『辛いことが、あったんですね…。』
「あんたには関係のないことだ、俺がいくら辛くて苦しくてもあんたには関係ない。」
『でも!』
「あんたらの考えにとやかく言うつもりはない、だが世界にはあんた達みたいに愛を至高のものと考える者ばかりではないことを覚えておいて欲しい。」
『…。』
「もう1つ言うなら、愛を語るなら語る存在が愛に満ちてないと説得力も半減する、これは愛以外にも他のことにも言えることだろうけど。」
『貴方、どうして私が踊っていたときに涙を?』
「単純に感動したからだ、美しい舞だった。」
俺は話を切り上げて部屋に戻ろうとした。
『待って!』
「?」
『貴方に言われたこと、確かにそうかもしれません。』
「どれ?」
『愛を語るなら語り手自身が愛に満ちてないと説得力も半減するってところです。』
「で?」
『貴方に愛する心を取り戻して貰います!』
「…何故そうなる。」
『貴方からは愛の感情を無理矢理押さえ込んでるように見えました。』
「だとしたら?」
『貴方に愛を取り戻して貰います!』
「いらん。」
『即答しないでくださいよ…。』
「愛なんて不純物があると間違った決断をして仲間を守れない、だから不要な感情だと言ったんだ。」
『?』
「愛は刃を鈍らせる、報復者にとっては致命的なことだ。」
『だったら報復を止めれば済む話じゃないですか?』
「はっきり分かった、あんたも所詮産まれながらの強者のものさしでしか物事を測れない。」
『?』
「報復者の理由も聞かずにそれを力で押さえ込む、これが強者の横暴と言わずに何と言うんだ?」
『…。』
「まああんた達に言っても全く意味はないだろうけどな。」
俺は今度こそ帰ろうとした。
『可哀想な人…。』
「憐れみのつもりか?」
『私達がもっと早く気付けていたらこんなことには…。』
「何故あんたが泣く?直接苦しみを味わった訳でもないのに。」
『もっと早く気付けていたら貴方達がそこまで力にこだわる前に何とかできていたのかもしれません。』
「だがそうはならなかった、あんたにとっては悲しいことにな。」
『今からでも間に合わないんですか?』
「いや、あんた達が望んだ方法ではないかもしれないが手はある。」
『?』
「俺達をどうこうするより先に俺達のような人間が生まれないように世界を変えて行けばいい。」
『これ以上増やさないように、ですか。』
「そして報復者達が大願成就したところに愛する心を取り戻させて徹底的に与えればいい。」
『?』
「ここであんた達が報復を止めたら強者の横暴になるがな。」
『…。』
「力なき正義は無意味だ、いくら正しいことをしても力がなければ無意味だ。」
『?』
「力がある奴は自分に都合の悪いものを隠して切り捨てる、代表的なのは教育者や政治家だ。」
『それは何となく分かります。』
「分かっていても黙認して弱い者を切り捨てる、そういう奴らを潰して何が悪い?そういう奴らを潰さずに平和があると思うか?」
『…。』
「この世界が弱肉強食だって言うなら自分が食われる立場になっても同じ口を叩けるか?という話だ、あくまでも無差別攻撃ではないんだよ。」
『…。』
「じゃあな。」
俺は支払いを済ませて店から出た。
一方その頃、一輝は…。
「ん、寝ちゃってたのか。」
『お目覚めみたいね、気分はどう?』
「え」
一輝はバーのマスターに膝枕されていた。
『思ったより早いお目覚めだ。』
「失礼しました。」
『何かの縁だ、私と飲み直さない?』
「いいよ。」
『なら君、ワインは大丈夫?』
「だいたい大丈夫。」
『はい。』
一輝は早速ワインを飲んだ。
「これは…。」
『お味はいかが?』
「今までに味わったことのない味だけど一番美味しい。」
『それは何より、これは私のオリジナルワインなんだ。』
「お宅ブドウ農家か何か?」
『私はサテュロスだ。』
「なるほど、だから酒を作ってたのか。」
『私の名前はカルア、君は?』
「一輝って名前。」
『そうか、君は魔物に対してどんな感情を?』
「種族は関係ない、大事なのはその個人が自分に合うかどうか。」
『なるほど。』
「合うならそれでいいし合わないなら離れればいい。」
『確かに、そうだね。』
「あいつももう少し考え方を軟らかく持てばいいのに。」
『君の連れのことかな?』
「そう、あいつの言ってることややってることは間違ってはいないしその権利もあるけど力にこだわり過ぎだと思うんだ。」
『なるほど、彼はやっぱりそういうタイプか。』
「?」
『魔物の観察力を侮らない方がいい、彼がどんな人間かはだいたい分かったつもりだ。』
「…。」
『きっと辛いことを経験したからこそそういう人たちを助けたいんだと思うよ。』
「俺も詳しくは知らない、ただ…。」
『ただ?』
「あいつは時折、とんでもない無茶をするんだ。」
『何となくそれは分かるよ、仲間を守る為に無茶をしたりとか考えられそうだ。』
「実際、高校の時にも一回大怪我してるしなぁ…。」
『というと?』
「仲間のために行かなければいけないって言って授業中に飛び出して行ってそれから戻って来た時には頭から血を流してるわ所々アザになってた…」
『一体何をしてきたんだ…?』
「聞いても詳しくは教えてくれなかったけど内臓の一部も損傷してたらしい…」
『結構な負傷だ…』
「ただ同日に二人、ある学校の生徒3人が再起不能になってたなぁ…」
『え…?』
「そいつらはその学校で起こってたいじめの首謀者だって話」
『彼なら、やりかねないな…』
「あいつを、止めてもらえないかな…」
一輝達も話がまとまって来たようだ。
16/03/24 22:58更新 / サボテン
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