戦いの終わりと新しい生き方 At the end of a war and new life-style 前編
翌日…
「…。」
『ふふふ♪』
「そういえば…。」
『?』
「俺をこの世界に飛ばしたあの声の主は一体何者なんだろう…。」
『…そんな事気にしなくていいじゃない。』
「いや、あの声の主がいなかったらブランにも会ってないから。」
『そういえばそうだったわね…。』
「一体誰だろう…。」
と話しているとまた頭の中に直接声が聞こえて来た。
「そろそろ、私の事を知っておいた方がいいかもしれないな。」
「で、誰なんだ?あんた。」
『貴方にしか聞こえないのね…。』
「私は、この世界を創った者だ。」
「主神ではないみたいだけど、誰なんだ?あんたは。」
「私は主神と魔物達の神を創った者だ。」
「いわば創世神ってところか。」
「その呼び方は、私は好きではないがな。」
「え。」
「さっきまでの呼び方でいい。」
「ならなんであんたは俺をこの世界に?」
「君がいない世界では、魔物と人間のバランスが乱れてしまい、世界が壊れてしまったからだ。」
「俺はバランス調整のために召集されたのか。」
「グリネ村の惨劇も、君が居なければ他の村にまで被害が出ていたんだ。」
「つまり、頭に乗った教団を絞めるために呼んだのか。」
「魔物も、人間も、この世界に必要なパーツなんだよ。」
「?」
「私が求めたのは、人間と魔物が共存している世界だ。」
「そのバランスを乱す要因の排除パーツとして俺を呼んだのか。」
「そういう事になる。」
「共存って、具体的にはどんな感じなんだろう…。」
「今の魔王が抱いている世界に近い。「違うのは魔物になるかどうかは人間の自由」というところだ。」
「…なるほど。」
「君はたくさん辛いことを経験しながらも私の目的のために戦ってくれた、本当にありがとう。」
「で?」
「?」
「俺はこれからどうしたらいい?」
「君の自由だ、命尽きるまで教団と戦い続けてもいいし、君を愛してくれる相手に応えてもいい。」
「…そうか、教団はまだ機能を停止したわけではないみたいだけどな。」
「とりあえず暴走は止まった、教団も魔物も平常に戻ったんだ。」
「?」
「君達が滅ぼした教国は放っておくとバランスを崩す存在だ、君達の戦いはもういつでも終わらせてもいい段階なんだよ。」
「なるほど。」
「もう君とも会うことはないだろう、今まで本当にありがとう、そして戦いを止めるならお疲れ様。」
「一つ聞いていいか?」
「何?」
「またバランスを崩しかねないことになったら、その時は俺はどうなるんだ?」
「新しい適合者がいるなら、その適合者に任せることになる。」
「居なかったら?」
「大丈夫、新しい適合者はもうこの世界にいるから。」
「もう目星が?」
「適合者は別の世界だけとは限らないからね。本来はこの世界から探すんだけど、時間がなかったんだ。」
「この世界の人間に適合者が?」
「そういうことだ。君が戦ってくれていた間に見つかった。」
「安心した。」
「じゃあ本当にこれでさよならだ。」
「俺こそ今までありがとう。」
「?」
「あんたが力を与えてくれなかったら俺はまず生き残れなかった。」
「君にその力は残していくことにしよう、これからの役に立てば幸いだ。」
「じゃあ。」
「今まで、本当にお疲れ様。」
その言葉を最後に、声は消えた。
『終わった?』
「ああ。」
『誰からだったの?』
「この世界の創世神だった。」
『え』
「かつて主神と魔物の神を創った者だって言ってた。」
『なるほど。』
「俺がこの世界に来た理由とかも聞いた。」
『結局どうしてこの世界に呼ばれたの?』
「この世界のバランスを保つために力の適合者を探していて、俺が適合者だったらしい。」
「バランス?」
「創世神の望みは、人間も魔物も共存している世界なんだってよ。」
『素晴らしいわね♪』
「そのバランスを崩しかねないことが起ころうとしていて、急だったから他の世界から呼ぶことになったんだってさ。」
『それで貴方が来た訳ね。』
「そういうことらしい。」
『運命かもしれないわね♪』
「あと創世神はこうも言ってたな、「もう戦いはもういつでも終わらせていい段階」だってな。」
『朗報ね♪』
「まあ終わらせなくてもいいらしいけどな。」
『まだ戦うの?』
「殺戮を行ったなら、とことん極めて歴史に名を残すほどの巨悪になるのもいいかもしれないってな。」
『地獄絵図じゃない…。』
「まあそれは置いといて。」
『置いていいものなの!?』
「あれからしばらく考えてみたが、俺はブランには釣り合わない。」
『?』
「俺は勇者じゃない、ましてや少し前まで報復と殺戮に取りつかれていたんだ。」
『まあ前者はともかく、後者は否定できないわね。』
「戦闘能力は勇者クラスかもしれないが他がてんで駄目だ。」
『そうかしら?』
「?」
『貴方は創世神の加護をもらって報復の理由も虐げられている人たちのために戦い続けた、貴方はいつも言っていたわ、「俺みたいな奴が居ない未来の為に戦う」って。確かに教国の理論とは違うけど、そもそも教国が決めた勇者が勇者の全てかしら?』
「一般論では勇者は教国の勇者を指すとは思う。」
『だけど貴方は弱い人たち、虐げられている人たちの為に戦っていたわね。』
「ああ。」
『そもそも勇者って、弱い人たちを守る為に戦うのが勇者じゃないかしら?』
「教国とか善悪の概念を取り払ったらそうなるな。」
『貴方は勇者としての条件を満たしているんじゃないかしら?』
「こんな血塗られた経歴の勇者が居てたまるかよ。」
『確かに血塗られた経歴よね…。』
「だから勇者じゃない。」
『そもそも勇者になんでこだわるの?』
「ブランは魔界のお姫様だ、それに釣り合う男はそれ相応でないといけない。」
『そうでもないわよ?』
「?」
『身分なんて魔界では飾りよ。』
「飾りに価値があるんだろうが…。」
『私達魔物には飾りなんていらないわね。』
「見極めるのはそいつの本質のみか。」
『そういうこと。』
「厄介な奴に目を付けられたな、俺も…。」
『もう手遅れよ♪』
「いや、まだ手はある。」
『?』
「ってあれは何だ!?」
『あれは…。』
『ブラン様!教団の勇者達が攻めて来たようじゃ!』
「…」
俺は破壊と封印の剣を腰に差した。
『お主…まだ戦う気か?』
「あくまでも俺の行動を止めるのは「報復の為に戦うこと」だけだ、何かを守る為に戦うならあんた達に俺を止める権利は無いはずだ。」
『…確かに。』
「戦力は多い方がいいだろう。」
『…仕方あるまい、できるだけ殺してくれるなよ?』
「俺より先に持ち帰ればいい、できないなら黙って見ていろ。」
『む…』
そんなことを話していると封印の剣の方が光りだし、頭の中に直接声が聞こえて来た。
「あんたはさしずめ、封印の剣の人格か?」
「そうだ、そして破壊の剣の人格ももう1人の私だ。」
「もともと1つだったのか?」
「そうだ、お前が破壊の剣に喰わせた命は私のもとにもたくさん来た。」
「ほとんど使ってないのに満腹ってことか。」
「ああ、私もお前に力を託したい。」
「どんな力なんだ?」
「私達の、本来の力の一端だ。」
「本来の力?」
「私達はもともと1つだったが、意見の違いから分かれた。」
「力、半減しないか?」
「いや、能力を特化したことでそれを阻止した。」
「そうか。」
「私達が本来の姿に戻る時が来たらしい。」
「?」
「私達の意見が一致したんだ。」
「一致って、何が一致したんだよ。」
「ジュン、「君を死なせたくない」ということだ。」
「何せ力を貸してくれるならありがたい、頼む。」
「任せて欲しい。」
と言い終わるか終わらないかのうちに俺が着ている鎧が光りだし、姿が変わった。
『貴方、一体何をしたの?』
「何が?」
『鏡を見て。』
鏡を見るとそこには、右側が前と同じ鎧、左側が対照的に真っ白な鎧になっていた。
『剣も光って共鳴してるんだけど。』
「!?」
2つの剣が光りだし、重なったかと思うと1つになった。
『合体、した…?』
「いや、本来の姿に戻ったんだ。」
『本来の姿?』
「もともと1つだったって言ってた。」
『なるほど。』
「んじゃ、行ってくる。」
『え!?』
「死ぬのは嫌だ、だけど守れず自分だけ生き延びるのはもっと嫌だから。」
『待って!』
『待つのじゃ、青年よ!』
俺は部屋から飛び出した。
俺が戦場に着いた時には、戦いが始まろうとしていた。
「…。」
「我々に歯向かうのか?」
「…俺の居場所を壊すなら容赦しない。」
「笑わせる、悪魔に入れ込む裏切り者が!」
そこから先は言わせなかった、俺はその勇者らしき人間を斬り、突き進んだ。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
『凄まじい力じゃ…。』
「アイシス、居たのか。」
『ここから先は共闘であり、競争じゃな。』
「ああ。」
俺は敵に斬り込んで行き、1人の男に話し掛けられた。
「君は興味深い男だ。」
「お前は?」
「まあ君の敵だ、一応勇者なんでね。」
「何のつもりだ?」
「僕も魔物が人間を傷つけないことは知っている。」
「そうか、魔物が嫌いなのか?」
「嫌っては居ない、だけど彼女達が居ると僕達はいずれ滅んでしまうんだ。」
「人間と魔物の間には魔物しか産まれないからか?」
「そうだ。」
「もうすぐ人間と魔物の間からでも男が産まれるようになるらしいけどな。」
「そうか…、良かった。」
「…迷ってるんだな。」
「みんなは教えてくれなかった!魔物が人間を愛している事も!人間を食べないことも!それを知って僕は心が壊れそうになった!」
「ならどうしたいんだ?」
「それでも、僕は君と戦う。」
「結局お前も奴らと同じか。」
「そう言われても仕方ないかもしれない、だけど僕は勇者としてでなく、「ただの戦士」として君と闘いたい。」
「まさかあんたがここに来た理由って…。」
「魔王城に攻め込めば、強い奴と戦えると思った。」
「そうか、なら俺も挑まれた勝負は受ける。」
「ありがとう、君の名前を聞かせてくれないか?僕はレオだ。」
「俺はジュン、そろそろ始めようか。」
と言ってたくさんの視線に気付き辺りを見回すと、教団の戦士も、魔王軍の魔物達も俺達の戦いを見ていた。
「どういうことだ…?」
「僕にもわからない…。」
「魔族に味方する人間よ、1つ提案がある。」
「あんたは?」
「私はジェイン、彼の親友だ。」
「提案?」
「君とレオの一騎討ちの結果を、この戦いの結果にしたい。」
「つまり俺が勝ったらそのまま引き返すのか。」
「まあそうなる。」
「…、その話に乗る。」
そして戦いが始まった…。
「…始めようか。」
「そうだな。」
そこから先は、ひたすらに力と力、技と技のぶつかり合いだった。
「…強いな、お前。」
「君こそ、敵じゃなかったら…。」
「お互い、次が最後みたいだな。」
「そうみたいだな。」
「今までの全部を、この一撃に…。」
「僕も、負けない…。」
ギィン!
「ぐっ!」
俺は立っていられず、膝を着いた。
「僕の…。」
と言い終わるか終わらないのうちに、レオの鎧がバラバラになり、彼は倒れた。
「勇敢な勇者達よ!貴方方の将は俺に敗れた!ただちに引き返すなら追撃を加えさせはしない!」
『ジュンが、教団の人間を生かした!?』
「…引き下がることにするよ、提案を受けてくれて感謝する。」
「引き返して、お前達がどうなるかは知らないけどな。」
『それなら私達の捕虜になった方がいいわよ♪』
「…少なくとも死なないぞ。」
「ならそうさせてもらうか。」
とりあえず、犠牲は最小限で戦いは終わったようだ。
「…。」
『ふふふ♪』
「そういえば…。」
『?』
「俺をこの世界に飛ばしたあの声の主は一体何者なんだろう…。」
『…そんな事気にしなくていいじゃない。』
「いや、あの声の主がいなかったらブランにも会ってないから。」
『そういえばそうだったわね…。』
「一体誰だろう…。」
と話しているとまた頭の中に直接声が聞こえて来た。
「そろそろ、私の事を知っておいた方がいいかもしれないな。」
「で、誰なんだ?あんた。」
『貴方にしか聞こえないのね…。』
「私は、この世界を創った者だ。」
「主神ではないみたいだけど、誰なんだ?あんたは。」
「私は主神と魔物達の神を創った者だ。」
「いわば創世神ってところか。」
「その呼び方は、私は好きではないがな。」
「え。」
「さっきまでの呼び方でいい。」
「ならなんであんたは俺をこの世界に?」
「君がいない世界では、魔物と人間のバランスが乱れてしまい、世界が壊れてしまったからだ。」
「俺はバランス調整のために召集されたのか。」
「グリネ村の惨劇も、君が居なければ他の村にまで被害が出ていたんだ。」
「つまり、頭に乗った教団を絞めるために呼んだのか。」
「魔物も、人間も、この世界に必要なパーツなんだよ。」
「?」
「私が求めたのは、人間と魔物が共存している世界だ。」
「そのバランスを乱す要因の排除パーツとして俺を呼んだのか。」
「そういう事になる。」
「共存って、具体的にはどんな感じなんだろう…。」
「今の魔王が抱いている世界に近い。「違うのは魔物になるかどうかは人間の自由」というところだ。」
「…なるほど。」
「君はたくさん辛いことを経験しながらも私の目的のために戦ってくれた、本当にありがとう。」
「で?」
「?」
「俺はこれからどうしたらいい?」
「君の自由だ、命尽きるまで教団と戦い続けてもいいし、君を愛してくれる相手に応えてもいい。」
「…そうか、教団はまだ機能を停止したわけではないみたいだけどな。」
「とりあえず暴走は止まった、教団も魔物も平常に戻ったんだ。」
「?」
「君達が滅ぼした教国は放っておくとバランスを崩す存在だ、君達の戦いはもういつでも終わらせてもいい段階なんだよ。」
「なるほど。」
「もう君とも会うことはないだろう、今まで本当にありがとう、そして戦いを止めるならお疲れ様。」
「一つ聞いていいか?」
「何?」
「またバランスを崩しかねないことになったら、その時は俺はどうなるんだ?」
「新しい適合者がいるなら、その適合者に任せることになる。」
「居なかったら?」
「大丈夫、新しい適合者はもうこの世界にいるから。」
「もう目星が?」
「適合者は別の世界だけとは限らないからね。本来はこの世界から探すんだけど、時間がなかったんだ。」
「この世界の人間に適合者が?」
「そういうことだ。君が戦ってくれていた間に見つかった。」
「安心した。」
「じゃあ本当にこれでさよならだ。」
「俺こそ今までありがとう。」
「?」
「あんたが力を与えてくれなかったら俺はまず生き残れなかった。」
「君にその力は残していくことにしよう、これからの役に立てば幸いだ。」
「じゃあ。」
「今まで、本当にお疲れ様。」
その言葉を最後に、声は消えた。
『終わった?』
「ああ。」
『誰からだったの?』
「この世界の創世神だった。」
『え』
「かつて主神と魔物の神を創った者だって言ってた。」
『なるほど。』
「俺がこの世界に来た理由とかも聞いた。」
『結局どうしてこの世界に呼ばれたの?』
「この世界のバランスを保つために力の適合者を探していて、俺が適合者だったらしい。」
「バランス?」
「創世神の望みは、人間も魔物も共存している世界なんだってよ。」
『素晴らしいわね♪』
「そのバランスを崩しかねないことが起ころうとしていて、急だったから他の世界から呼ぶことになったんだってさ。」
『それで貴方が来た訳ね。』
「そういうことらしい。」
『運命かもしれないわね♪』
「あと創世神はこうも言ってたな、「もう戦いはもういつでも終わらせていい段階」だってな。」
『朗報ね♪』
「まあ終わらせなくてもいいらしいけどな。」
『まだ戦うの?』
「殺戮を行ったなら、とことん極めて歴史に名を残すほどの巨悪になるのもいいかもしれないってな。」
『地獄絵図じゃない…。』
「まあそれは置いといて。」
『置いていいものなの!?』
「あれからしばらく考えてみたが、俺はブランには釣り合わない。」
『?』
「俺は勇者じゃない、ましてや少し前まで報復と殺戮に取りつかれていたんだ。」
『まあ前者はともかく、後者は否定できないわね。』
「戦闘能力は勇者クラスかもしれないが他がてんで駄目だ。」
『そうかしら?』
「?」
『貴方は創世神の加護をもらって報復の理由も虐げられている人たちのために戦い続けた、貴方はいつも言っていたわ、「俺みたいな奴が居ない未来の為に戦う」って。確かに教国の理論とは違うけど、そもそも教国が決めた勇者が勇者の全てかしら?』
「一般論では勇者は教国の勇者を指すとは思う。」
『だけど貴方は弱い人たち、虐げられている人たちの為に戦っていたわね。』
「ああ。」
『そもそも勇者って、弱い人たちを守る為に戦うのが勇者じゃないかしら?』
「教国とか善悪の概念を取り払ったらそうなるな。」
『貴方は勇者としての条件を満たしているんじゃないかしら?』
「こんな血塗られた経歴の勇者が居てたまるかよ。」
『確かに血塗られた経歴よね…。』
「だから勇者じゃない。」
『そもそも勇者になんでこだわるの?』
「ブランは魔界のお姫様だ、それに釣り合う男はそれ相応でないといけない。」
『そうでもないわよ?』
「?」
『身分なんて魔界では飾りよ。』
「飾りに価値があるんだろうが…。」
『私達魔物には飾りなんていらないわね。』
「見極めるのはそいつの本質のみか。」
『そういうこと。』
「厄介な奴に目を付けられたな、俺も…。」
『もう手遅れよ♪』
「いや、まだ手はある。」
『?』
「ってあれは何だ!?」
『あれは…。』
『ブラン様!教団の勇者達が攻めて来たようじゃ!』
「…」
俺は破壊と封印の剣を腰に差した。
『お主…まだ戦う気か?』
「あくまでも俺の行動を止めるのは「報復の為に戦うこと」だけだ、何かを守る為に戦うならあんた達に俺を止める権利は無いはずだ。」
『…確かに。』
「戦力は多い方がいいだろう。」
『…仕方あるまい、できるだけ殺してくれるなよ?』
「俺より先に持ち帰ればいい、できないなら黙って見ていろ。」
『む…』
そんなことを話していると封印の剣の方が光りだし、頭の中に直接声が聞こえて来た。
「あんたはさしずめ、封印の剣の人格か?」
「そうだ、そして破壊の剣の人格ももう1人の私だ。」
「もともと1つだったのか?」
「そうだ、お前が破壊の剣に喰わせた命は私のもとにもたくさん来た。」
「ほとんど使ってないのに満腹ってことか。」
「ああ、私もお前に力を託したい。」
「どんな力なんだ?」
「私達の、本来の力の一端だ。」
「本来の力?」
「私達はもともと1つだったが、意見の違いから分かれた。」
「力、半減しないか?」
「いや、能力を特化したことでそれを阻止した。」
「そうか。」
「私達が本来の姿に戻る時が来たらしい。」
「?」
「私達の意見が一致したんだ。」
「一致って、何が一致したんだよ。」
「ジュン、「君を死なせたくない」ということだ。」
「何せ力を貸してくれるならありがたい、頼む。」
「任せて欲しい。」
と言い終わるか終わらないかのうちに俺が着ている鎧が光りだし、姿が変わった。
『貴方、一体何をしたの?』
「何が?」
『鏡を見て。』
鏡を見るとそこには、右側が前と同じ鎧、左側が対照的に真っ白な鎧になっていた。
『剣も光って共鳴してるんだけど。』
「!?」
2つの剣が光りだし、重なったかと思うと1つになった。
『合体、した…?』
「いや、本来の姿に戻ったんだ。」
『本来の姿?』
「もともと1つだったって言ってた。」
『なるほど。』
「んじゃ、行ってくる。」
『え!?』
「死ぬのは嫌だ、だけど守れず自分だけ生き延びるのはもっと嫌だから。」
『待って!』
『待つのじゃ、青年よ!』
俺は部屋から飛び出した。
俺が戦場に着いた時には、戦いが始まろうとしていた。
「…。」
「我々に歯向かうのか?」
「…俺の居場所を壊すなら容赦しない。」
「笑わせる、悪魔に入れ込む裏切り者が!」
そこから先は言わせなかった、俺はその勇者らしき人間を斬り、突き進んだ。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
『凄まじい力じゃ…。』
「アイシス、居たのか。」
『ここから先は共闘であり、競争じゃな。』
「ああ。」
俺は敵に斬り込んで行き、1人の男に話し掛けられた。
「君は興味深い男だ。」
「お前は?」
「まあ君の敵だ、一応勇者なんでね。」
「何のつもりだ?」
「僕も魔物が人間を傷つけないことは知っている。」
「そうか、魔物が嫌いなのか?」
「嫌っては居ない、だけど彼女達が居ると僕達はいずれ滅んでしまうんだ。」
「人間と魔物の間には魔物しか産まれないからか?」
「そうだ。」
「もうすぐ人間と魔物の間からでも男が産まれるようになるらしいけどな。」
「そうか…、良かった。」
「…迷ってるんだな。」
「みんなは教えてくれなかった!魔物が人間を愛している事も!人間を食べないことも!それを知って僕は心が壊れそうになった!」
「ならどうしたいんだ?」
「それでも、僕は君と戦う。」
「結局お前も奴らと同じか。」
「そう言われても仕方ないかもしれない、だけど僕は勇者としてでなく、「ただの戦士」として君と闘いたい。」
「まさかあんたがここに来た理由って…。」
「魔王城に攻め込めば、強い奴と戦えると思った。」
「そうか、なら俺も挑まれた勝負は受ける。」
「ありがとう、君の名前を聞かせてくれないか?僕はレオだ。」
「俺はジュン、そろそろ始めようか。」
と言ってたくさんの視線に気付き辺りを見回すと、教団の戦士も、魔王軍の魔物達も俺達の戦いを見ていた。
「どういうことだ…?」
「僕にもわからない…。」
「魔族に味方する人間よ、1つ提案がある。」
「あんたは?」
「私はジェイン、彼の親友だ。」
「提案?」
「君とレオの一騎討ちの結果を、この戦いの結果にしたい。」
「つまり俺が勝ったらそのまま引き返すのか。」
「まあそうなる。」
「…、その話に乗る。」
そして戦いが始まった…。
「…始めようか。」
「そうだな。」
そこから先は、ひたすらに力と力、技と技のぶつかり合いだった。
「…強いな、お前。」
「君こそ、敵じゃなかったら…。」
「お互い、次が最後みたいだな。」
「そうみたいだな。」
「今までの全部を、この一撃に…。」
「僕も、負けない…。」
ギィン!
「ぐっ!」
俺は立っていられず、膝を着いた。
「僕の…。」
と言い終わるか終わらないのうちに、レオの鎧がバラバラになり、彼は倒れた。
「勇敢な勇者達よ!貴方方の将は俺に敗れた!ただちに引き返すなら追撃を加えさせはしない!」
『ジュンが、教団の人間を生かした!?』
「…引き下がることにするよ、提案を受けてくれて感謝する。」
「引き返して、お前達がどうなるかは知らないけどな。」
『それなら私達の捕虜になった方がいいわよ♪』
「…少なくとも死なないぞ。」
「ならそうさせてもらうか。」
とりあえず、犠牲は最小限で戦いは終わったようだ。
15/04/13 01:29更新 / サボテン
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