釜蓋
昔々S国に虎岩村と言う漁村に蓋島という島があった。その村と島には奇妙な言い伝えと信仰があった。 毎年男を1人、蓋島に住む神々に婿として与えれば、二千年した後、蓋島より救いの神現れ、下々の者に恵みの雨を与える。 その言い伝えが、その信仰がいつからあったかはわからない。ただいつからか、虎岩村に住む者たちはその言い伝えの通り、毎年冬至の日に男を贄として捧げていた。 男は年も、容姿も、性格もばらばらで、特に決まりはなかった。青年、老人、顔が醜い者、10歳にもいかないような幼子。ただ易により決められた男が、贄として蓋島にすむ神々に捧げられた。 しかし、贄として行くはずなのに、蓋島から笑い声は絶えることは無かった。 そしていつからか、蓋島にはまほらがあるらしいと噂されるようになった。 その噂を聞いてか、各地から蓋島に行きたいという男が多く来るようになった。そして男のみならず、女も蓋島に行きたいという声が出始めた。 そしてある大潮の時、彼らは島にわたる決意をし、島へ渡った。 すると、島に住んでいた神々は問うた。 我々の住む世界に住みたいか。幸せがそんなに欲しいか。 彼らはうなずいた。すると神々はこう答えた。 いいでしょう。あなた達に幸せを与えましょう。しかし、もうこちらの世界には戻れませんよ。 その答えにうなずいた人々は、島の中央にあった穴へと吸い込まれていった。 そして一夜にして虎岩村は消えた。ただ、蓋島より聞こえる笑い声を残して。 長い時が流れ、言い伝えも、信仰も忘れ去られた。そして舞台は現代に移る。 釜の蓋が開かれる。 |
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