読切小説
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アマゾネス体操20歳
「どうしてこうなった…」

 就職活動で苦しんでいた大学3年生の私は、ちょっとした気晴らしに郊外の自然公園を散歩していたら、いつの間にか異世界に入り込み、アマゾネスと呼ばれる魔物の集落で、嫁と暮らす破目になってしまった。某銀戦車のスタンド使いのAAが脳内で再生される方々もいるだろう。はっきり言って、この出来事から1年たった今でも信じられないのだ。では、その信じられないその経緯について説明しよう。

 私がこの世界に迷い込んだのは、忘れもしない去年の3月の土曜日。その時私は神経質な性格もあってか、就職職活動でかなり精神的に追い込まれていた。履歴書を書いていて、失敗してはブチ切れて履歴書を破り、クラ○ザーさんの如く叫び、ヘドバンしたこともあった(その時誤って角にでこをぶつけて散々な思いをしたのは内緒である。)。またある時は、選考試験に落ちてしまい、某ギター、ドラムゲームの楽曲であるM○D B○ASTのムービーの如くとち狂った時もあった。さらに、10社以上落ちた時は、顔が某ホラーゲームに出てくる屍人の様な面をしながら奇声を発しながら笑ってしまった時もあった。そして悪いことに、自律神経失調症の気も出始めていた。

「さすがにヤバい…」

そう思った私は、気晴らしにどこか出かけることにした。ゲーセンで気晴らしでもしようかとでも考えたが、やりこみすぎて手に特大級の血豆が出来ているのを見ると、我ながら何とも哀れな気分になってしまったので、ゲーセンはやめにして、森林浴にでも行くことにした。

 そして土曜日、私は某G県にあるD公園に出かけていた。ここの公園は、以前子供の頃に何回か来たことがあったので、ある程度どんな風になっているかは知っていた。公園内には、たくさんの木々が生い茂っており、3月も後半ということもあってか、桜やパンジー等の花が咲き乱れ、何とも心が落ち着くような光景であった。そんな中を散歩していてか、かなりリラックスすることが出来た。

 昼食を食べ終えた私は、午後からちょっとした探検に出た。探検と言っても大したことはなく、以前なかった山道を歩く程度である。まぁ、さすがに熊は出ないだろうとは考えていた。万が一出たとしてもその時はその時である。さっそく山道を歩いて行くと、春ということもあってか鳥のさえずりがよく聞こえた。ウグイス、ヒヨドリ、メジロ、セキレイ、エトセトラエトセトラ…。さらには、様々な花の香りが漂ってきて、この世の天国かと思わせるような雰囲気だった。精神的に疲れていた私は、非常に癒された。

「自律神経失調症?What?。」

「この世の私に春が来たー!!。」

「なぁーが○君、一緒に遊びましょう!。」

こんなテンションでルンルン気分でいられたのは久しぶりである。もうこのまま自然の中に蕩けてしまいそうなほど精神的に充実していたのである。


 
但し、目の前にあった崖から落ちるまでの話である。


 …どれぐらい寝ていたのだろう。声にならない叫び声を上げながら某B博士のように落ちて行き、そのまま気絶してしまったようである。しかしあたりはまだ明るいことからそんなに時間は経っていないようである。手を回してみたり、伸びをしたりしても、どこも痛くはなかったことから怪我の心配はないようである。だが問題が一つあった。


それは、明らかにさっき見た光景と違う、否、明らかに日本の森林ではないのだ。

周りには、図鑑でしか見たことがないような草木が生い茂り、さっきの春うららな雰囲気とは180度違い、毒々しい花、よくわからない昆虫、やかましい動物の鳴き声が響いていた。

「とうとうストレスがたたって、幻覚が見え始めたか…」

そう思い、ほっぺたをつねったり、木をけっ飛ばしたりしたが、痛みを感じていた。つまり、これは現実なのである。

「俺の人生もここで終了か…」

テンションがブルーになりながら、どこか出口を見つけようと思い、歩き始めようとした時、茂みの向こうから何か声がしたのである。それも女性の声がである。

「人?この周辺に集落があるのか?」

そう思うと、少しは気分が晴れた。私は、茂みに隠れながら彼女らの話を聴くことにした。

「こいつはくせーっ、このあたりから男の精の匂いがぷんぷんするぜーっ!この匂いからすると…童貞だな!」

「長様、匂いだけでそんなことがわかるのですか?」

「当り前よ。今までどれだけあなた達を率いて男狩をしてきたと思うの?」

「すごーい!」

「ははっ、褒めても何も出ないよ。それよりもエリー、今から私がその男を見つけてやるから、そいつを婿にしちゃいなよ!」

「えっ、いいのですか!?」

「当然だろ。お前ももうすぐ20歳になるというのに独り身は寂しいだろ?」

「あ、ありがとうございますっ!」


(…洒落にならん!何なんだあいつら!?)

 茂みに隠れて彼女らの会話を聞いていた私は、震えていた。いきなりわけのわからない土地に飛ばされた揚句、謎の部族の婿になるなんてどう考えてもありえない。きっと神話に出てくるアマゾネスのように、散々搾り取られたら殺されるのではないかという恐怖心もあった。

(どうやって逃げ出すが…)

私は、茂みの中に縮こまりながら考えていた。音で気を引く作戦はどうか。いや、あいつら精の匂い云々言ってたから匂いでばれるから無理だ。では、匂い消し作戦はどうか。…畜生、いつもなら小さいエイ○フォーを持っているはずだったがどこかで落としてきてしまった!そう考えている最中にもあいつらの声はこっちに近づいてくる。さてどうするか…

そんなことを考えていると、いきなり棒の様なもので背中を押された。

「あqwせdrfgtひゅじこlp;!!」

私はヘ○ポーの如く、自分でもなんて言っているかわからないよう叫び声を上げ、つい茂みの中から出てきてしまった。すると、目の前には声の主と思われる2人の女性が立っていた。

「ほら、こんなところにいたじゃないか。よかったな、婿が手に入ったぞ。」

「わぁ、これでもう寂しい夜をすごす必要がなくなるのですね!」

褐色の肌、ミロのビーナスも裸足で逃げるようなスタイル、豊満な胸、そして何より、奇妙な尻尾と角がその女性2人に生えていたのだ。それを見た瞬間、0コンマ1秒の速さで「ヤバい」と実感し、その0コンマ2秒後には、すでに走っていた。そしてその0コンマ3秒後には、彼女らも追いかけてきたのだ。

「あっ、逃げるなお前!」

「待て、私のお婿さん!」

(畜生、捕まってたまるか。こっちは陸上部で鍛え上げた足がある!高校生の時は写真部だったが、一念発起して成長した私は400mを50秒で走れるパワーと根性がある!貴殿らには捕まえられないのだよ!!WRYYYYYYY!!)

明らかに私のキャラクターが崩壊しているのだが、そんなことはお構いなしで逃げ続けた。50メートルぐらい走ったところでだいぶ差が出てきたのでこのまま逃げ切れるかと思っていた。


但し、足元に落ちていたバナナの皮を踏むまでの話である。

「ゲフッ、どんだけ、古風なボケなんだよ…」





あの後、バナナの皮を踏んで転んでしまった私は、案の定彼女たちにつかまってしまった。そして彼女たちは、アマゾネスはアマゾネスでも魔物であること、私を婿にしようとしていたのはエリーという若いアマゾネスだということ、私を殺すようなまねはしないということ等を聞き、想像とは違うことがわかりとりあえず私は安心した。ただ、搾り取られるということだけは当たっており、散々絞られた揚句、インキュバスと呼ばれる存在になってしまったようである。
 
 こうして、私は就職活動に苦しんでいたのが一転、エリーの婿として家事を行う所謂主夫となった。正直働かなくて済むので、精神的にはかなり楽である。また、妻となったエリーもこんな私を一途に愛してくれて、毎日がスペシャルな気分である。しかし、一つ気がかりなことがある。

(何で彼女らに日本語が通じたんだ!?)

それは永遠の謎である。
13/03/08 23:10更新 / JOY

■作者メッセージ
ちなみに何割かは私の実体験が入っています。どこかは内緒です。

後、初投稿でございます。何かアドバイス等がありましたらよろしくお願いします。

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